ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
企みを胸に秘めた美人双子新婦、プランナーを困らせるクレーマー夫妻、新婦に重大な事実を告げられないまま、結婚式当日を迎えた新郎……。人気結婚式場のとある大安の一日を舞台に人生の悲喜こもごもをすくい取る。
(角川書店公式HPより)
<感想>
NHKさんにてドラマ化予定の本作。
主演は優香さん。
ドラマ自体は2012年1月10日(火)スタートとのことです。
詳しくは過去記事からどうぞ。
・辻村深月先生原作『本日は大安なり』がNHKさんにてドラマ化!!
・2012年1月10日、放送視聴しました。1話ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
「本日は大安なり」第1話「疑惑の結婚式場」(1月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
なんでも、優香さん自身の花嫁姿を披露する計画も進んでいるとのこと。
そんな本作『本日は大安なり』。
角川書店さんの『野性時代』にて2009年8月号から2010年8月号まで隔月で全7回連載されました。
視点人物は全部で5人。
それが入れ替わり立ち替わり物語を紡ぎます。
まず、プランナーである山井多香子。
次に真空。
鞠香と妃美佳姉妹。
最後に鈴木陸雄。
それぞれ、多香子が玲奈の結婚式を。
真空が東とりえの結婚式を。
鞠香と妃美佳は映一との結婚式を。
鈴木陸雄は、もちろん自身の結婚式についての視点人物となっています。
そして、この4組の結婚式は最終章へと進み意外な結果となるのです。
これが面白かった。
視点人物の変更が上手く活用されており、メリハリが利いていて良かった。
思わず次はどうなるのか……と気にかかってページをめくる手が止まりませんでした。
落ち着くところに落ち着くラストも良かった。
ちなみに、ゲスト出演しているあのキャラにも注目です。
◆関連過去記事
・『オーダーメイド殺人クラブ』(辻村深月著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
<ネタバレあらすじ>
山井多香子はウェディングプランナー。
同僚の岬と共に毎日、誠心誠意仕事に励んでいた。
さて、4組のカップルが大安吉日に挙式することとなった。
まずは、多香子自身が担当する怜奈のカップル。
彼女は何かにつけクレームが多く、多香子はほとほと手を焼いていた。
次に映一と妃美佳のカップル。
妃美佳には鞠香という双子の姉がおり、傍目には見分けがつかないほどそっくりの姉妹である。
そして、東とりえのカップル。
こちらは新郎である東が新婦の親族から信用されておらず、不穏な空気が漂っていた。
最後に鈴木陸雄のカップル。
陸雄はどこか浮かない顔をしていた……。
実は4組共にそれぞれ事情を抱えていた。
玲奈は男性に頼らずとも生きていけるだけの力を持っていた。
妃美佳は姉へのコンプレックスから映一を試す為に姉・鞠香と入れ替わっていた。
東は式のサプライズとして林檎を用意したイベントを考えていたが、りえの親族である真空から林檎に毒が仕込まれているのではないかと疑われていた。
そして、一番重大な秘密を持っていたのは鈴木陸雄。
彼には既に籍を入れている貴和子という名の妻が居た。
浮気がいつの間にやら結婚まで進んでしまったのだ。
勿論、貴和子も新婦もこのことを知らない筈だった。
このままいけば重婚である。
陸雄は式の中止を真剣に望んでいた。
式場に灯油を持ち込み、放火を目論むほどに。
4組の式が準備から淡々と進んでいく。
多香子は玲奈に悩まされながらも、少しずつ要求をクリアし実現へと漕ぎつけようとしていた。
映一は新婦に化けた鞠香を妃美佳として扱っていた。両親ですらこの入れ替わりに気付かない。
真空は東の友人・狐塚たちから東を信じ守ってくれないかと頼まれていた。
陸雄は貴和子を運命の女性と信じながらも、どうすることも出来ず運命に流されていた。
そこへ、あの事件が起こった。
厨房から失火したのだ。
陸雄の仕業ではない、偶然だった。
こうして、式は中止されてしまう。
多香子は、4組に迷惑をかけてしまったことに式場の人間として責任を感じていた。
そこで、上司に式の料金を返金した上で希望者のみ再度式を行う方法を提案する。
ところが、上司はこの案に反対。
多香子と上司は対立してしまう。
多香子は不利な立場に追いやられかけるが……そこへ、岬が援軍として現れる。
岬は多香子の提案を支持。
これを受けて上司も多香子の案を呑むことに。
多香子の案は意外な結果に。
4組のうち、再度式を挙げると決断したのはたった1組だったのだ。
実は火事により、4組それぞれに転機が訪れていた。
これまで批判的なことしか口にしなかった玲奈が多香子を支持し、マスコミに対しても式場のフォローにまわった。
結果、式場のイメージは損なわれることなく、むしろ対応がイイと評判になった。
だが、玲奈は式のやり直しを行わなかった。
東とりえのカップルはサプライズイベントとして林檎を持ち出した途端に火事騒ぎに巻き込まれた。
頼りにならないと思われた東だが、思わぬリーダーシップを発揮。
来客を逃がすよう指示を出す。
一方、真空は捨て置かれていた林檎を拾い、あることに気付いた。
林檎には中が空洞となっており、婚約指輪が隠されていたのだ。
東は真空の家族から婚約指輪も用意できない男として見下されていた。
もちろん、りえも肩身が狭い思いをしていたのだ。
それを解消する為に東が無理をして用意したものだった。
東のりえへの想いが本物であることを確信した真空は自分が家族を説得し、2人に協力することを誓うのだった。
東とりえは今後の生活に費用がかかることから、式のやり直しはしないことに決めた。
そして、陸雄はといえば……自身が犯罪に踏み切ることなく火事が起きたことを天佑と考え逃げ出そうとしていた。
だが、貴和子に陸雄を止めるよう依頼されていた貴和子の友人に捕まる。
貴和子は陸雄の裏切りを知っており、離婚するつもりだと言う。
しかも、貴和子は陸雄の子供を妊娠していた。
これにショックを受ける陸雄。
筋を通すべきだと諭された陸雄は新婦に事実を告げ、改めて運命の女性である貴和子を選ぶ。
もちろん、式のやり直しはしない。
式のやり直しを依頼したのは映一と妃美佳のカップルである。
火事騒ぎの際に、映一が真っ先に助けたのは新婦のふりをした鞠香ではなく、妃美佳だった。
映一は両親でさえも見抜けなかった2人の入れ替わりを見抜いていたのだ。
鞠香は嫌味も込めて、妃美佳が映一をテストしたことを明かすが、映一はそんな妃美佳だからこそ好きだと断言。
鞠香は完敗宣言する。
そこで、映一と妃美佳で再度式をやり直したのだった。
数年後、多香子はチーフになっていた。
そんな多香子の眼に、結婚式の申込書に記載された鈴木陸雄の名前が飛び込んでくる。
あの日の4組のカップルを思い出す多香子。
玲奈は今も活躍中らしい。
逞しい彼女ならば大丈夫だろう。
映一と妃美佳は式場を気に入ってくれたらしく、今もときどきレストランを利用している姿を見かける。
夫婦2人だけではなく、いつも双子の姉らしき人物も居ることが不思議だったが……。
しかも、双子がトイレから揃って出て来ると、決まって映一は「またか……」と呟くのだがどういう意味だろうか?
東とりえも時折、レストランを利用している。
東は真空と仲良しで、ロビーで携帯型ゲームに興じる2人の姿を見かけることが出来た。
そして、鈴木陸雄だが……申込書の新婦の欄が以前のものとは違うことに多香子は気付いた。
もしかして、あの火事が原因で別れてしまったのだろうか……と不安になった多香子だが、どうやら事情があるようだ。
陸雄が連れて来た女性は子供を抱いており、子供は陸雄に甘え、陸雄も子供を愛しているようだ。
よくは分からないが納得することに。
そんな多香子自身も先に結婚を控えている。
職場は結婚式場だけあって、結婚にも理解が深く今後も働けることとなっている。
多香子の未来の夫の名前は営業部に異動した岬であった―――エンド。
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