2011年10月31日

『造花の蜜』(連城三紀彦著、角川春樹事務所刊)

『造花の蜜』(連城三紀彦著、角川春樹事務所刊)ネタバレ書評(レビュー)あります。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

・上巻
歯科医の夫と離婚をし、実家に戻った香奈子は、その日息子の圭太を連れ、スーパーに出かけた。偶然再会した知人との話に気をとられ、圭太の姿を見失った香奈子は、咄嗟に“誘拐”の二文字を連想する。息子は無事に発見され安堵したのも束の間、後に息子から本当に誘拐されそうになった事実を聞かされる。――なんと犯人は「お父さん」を名乗ったというのだ。そして、平穏な日々が続いたひと月後、前代未聞の誘拐事件の幕が開く。各紙誌で絶賛を浴びたミステリの最高傑作がついに文庫化。

・下巻
その事件は、小川香奈子の息子の圭太が、スーパーで連れ去られそうになった出来事から始まった。幼稚園での信じられない誘拐劇。人質の父親を名乗る犯人。そして、警察を嘲笑うかのような、白昼の渋谷スクランブル交差点での、身代金受け渡し。前代未聞の誘拐事件は、人質の保護により、解決に向かうかのように思われた・・・・・・。だが、それはこの事件のほんの序章に過ぎなかった。二転、三転する事件の様相は、読者を想像を絶する結末へ導く。読書界で話題沸騰の長篇ミステリ、待望の文庫化。(解説・岡田惠和)
(角川春樹事務所公式HPより)


<感想>

二転三転する真相が面白い作品。
ただ、ひとつひとつのトリックにそこまでする必要があるのかどうかは疑問。
必然性はないかもしれない。
そこに引っかかりを覚えると辛いかも。

管理人は、それでも充分に楽しめました。
特に圭太と川田の真相が秀逸。
実は2人とも○○○だったことですね、これこそがメイントリックでしょう。
あれでこの物語は完結してると思います。

それなので、個人的な意見ですが、最終章が蛇足のような気がします。
「あれこそがイイ」という意見もあるでしょうが、どうにも納得できません。
あれが無くても完結していると思うんだけどなぁ……。
むしろ、アレがあるから散漫な印象を受ける。

ちなみにこの『造花の蜜』はドラマWにてドラマ化されるそうです。
それによると、あの最終章もドラマ化するとのことですが、あのトリックを映像化出来るのでしょうか?
物凄く気になります!!

なお、ネタバレあらすじはかなり簡略化(『罪と罰』のくだりなどをカット)しています。
順番も意図的に入れ換えていますので、興味を持たれた方は本作を読んでみることをオススメします。

<ネタバレあらすじ>

香奈子の息子・圭太が誘拐された。
誘拐犯の1人は香奈子の父が営む工場の従業員・川田と判明。
圭太は川田によく懐いていた。

どうも、謎の女が誘拐一味のリーダーらしい。
切れ者と名高い橋場警部も捜査に参加することに。

犯人に身代金を払うことにする香奈子だったが、ある秘密があった。
圭太は香奈子の実子では無かったのだ。
香奈子には山路という別れた夫がおり、圭太は山路と愛人との間の子供だった。
それを離婚を機に香奈子が引き取ったのだ。

衆人環視の中、渋谷のスクランブル交差点で身代金引き渡しが行われることとなった。
こうして、圭太は無事に香奈子のもとへと戻って来るが……圭太の鞄には身代金として渡した筈の1千万円がそっくりそのまま入っていた。
つまり、犯人グループは1円も奪わなかったのだ。
混乱する捜査陣。

一方、帰って来た圭太によれば、相手が親切にしてくれたので楽しかったらしい。
圭太には自分が誘拐されたとの認識がなかった。
香奈子が誘拐されたと思い込んでいたのである。
そこで、救出しようと誘拐犯グループの指示に従っていた。

こうして身代金を奪わない不可思議な誘拐事件は幕を閉じた。
だが、真の事件は水面下で進んでいたのである。

川田が逮捕された。
連行される川田は主犯である蘭に騙されたと思いながらも憎むことが出来なかった。
それどころか庇おうとすら心に決めていた。

蘭は自分から川田に接触して来た。
圭太の実母であると川田に名乗った彼女は圭太に会いたいと訴えた。
蘭の魅力に籠絡された川田は誘拐を手伝うことに。

蘭の計画はこうだ。
圭太を誘拐した後、香奈子に身代金を要求する。
だが、こちらは囮である。
本命は実父である山路に要求すること。
こちらからならば、2億5千万円を引き出せると見ていた。

囮は耳目を集められれば集められるほど良い。
そこで話題になるように運んで行った。
案の定、計画通りに進んでいったのだが、こうして川田は逮捕されてしまった。

川田の取り調べに当ったのは橋場警部。
川田は蘭を必死に庇うが……。

それはすべて無駄なことだった。
なぜなら、蘭が事実を書き記した手紙を捜査本部宛に送っていたのである。
それによれば、川田も利用されたに過ぎなかった。
いや、川田こそ本当の主役だったのである。

川田は偽名だった。
本名は沼田実。
長野の県議会議長・沼田鉄治の息子だった。
父親のやり方に反発し、家を飛び出していたのだ。

蘭の狙いは此処にあった。
身代金を要求したのは山路にではなく、沼田にだったのだ。
圭太の事件を公にし、その容疑者として川田の名前を報道させることで「息子を預かっている」と沼田を脅したのだ。
沼田は息子を助ける為に不正に貯めた2億5千万円を支払った。
もちろん、これにより政治家生命が絶たれることも承知で。
そこで、蘭から川田は解放されたのだ。

つまり、川田は逮捕されたのではなく、保護されたのだった。
蘭の真意を知り衝撃を受ける川田。
誘拐されたのが自分であると気付かなかった圭太と同じように川田も知らず知らずのうちに誘拐されていたのだ。

蘭からの手紙には川田への別れの言葉が書かれていた。
それを読んだ川田は反発していた父のもとへ戻ることを決めるのだった。

以上が東京の事件の顛末である。
この事件は大々的に報道され、蘭には多くのファンが出来た。

それから数ヵ月後、今度は光輝という少年が誘拐された。
犯行グループは東京と同じく蘭を名乗る。
これに対し、犯行声明を受け取った橋場警部が被害者宅を訪れた。
今度こそ雪辱を果たすという警部だが……。

光輝の姉・康美は複雑な気持ちだった。
彼女は蘭のファン。
蘭に光輝誘拐を依頼したのは彼女だった。
だが、橋場警部にも好感を抱いてしまった。

彼女は父と再婚相手の真樹が嫌いだった。
父は不正に貯めた現金を康美の部屋の書籍類に隠した。
金庫代りにしたのだ。
康美は金庫からの解放を望んだ。
それに蘭が応じたのだ。

すべて東京の事件と同様に展開していく誘拐事件。
橋場は執拗に犯人グループ逮捕への執念を語るが……。

いよいよ受け渡し。
身代金は3億円。
それをトランクに入れ、父が運ぶことに。

橋場の手を経て、渡されたトランクを握る父の顔は緊張に彩られている。
指定の場所で待たされる父だったが、そこへ謎の煙が。
爆弾を疑い、鞄をそのままに逃げ出すことに。

その間、わずかに1分。
爆弾ではないことに気付き、戻った父たちを待っていたのは1億円が抜かれたトランクだった。

やられた……半狂乱になる父だったが、光輝は無事に戻って来る。
橋場たちはそのまま証拠となるトランクを押収すると、姿を消した。

警察に任せて、自宅へと戻る父たち。
だが、康美には分かっていた。
あのトランクはもう戻って来ないと。

そう、あの橋場警部は偽物だったのだ。
すべて、蘭の仲間だったに違いない。

東京の事件を真似たのは、想定外のことが起こらないようにコントロールする為と偽の橋場を自然にあの場に送り込む為だった。
トランクから1億円が消えたのは、初めから2億円しか入っていなかったからだ。
橋場が運んだ時点で3億円のトランクとすり替えられたのだろう。
もととなった2億円は東京の事件で得たものと思われた。
その後、証拠品として2億円も回収。
結局、もとの2億円に加え3億円まるまるを手に入れたわけだ。

康美が橋場に好感を抱いた理由も、知らなかったとはいえ蘭の仲間だったからだったのだ。
こうして、事件は終わりを告げた。
康美は解放された喜び打ち震えるのだった―――エンド。

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