2011年11月07日

日曜洋画劇場 特別企画「悪人」(2010年、日本)

日曜洋画劇場 特別企画「悪人」(2010年、日本)ネタバレ批評(レビュー)です。

<あらすじ>

長崎の外れのさびれた漁村に生まれ育ち、身勝手な母親に捨てられ祖父母に育てられた祐一(妻夫木聡)。成長した彼は土木作業員として働き、祖父母の面倒をみながら暮らしている。恋人も友人もなく、趣味といえば車だけ。いったい何が楽しいのか、人生に喜びを見出せないでいた。

そんな彼が出会い系サイトで出会った福岡の保険外交員・佳乃(満島ひかり)を殺害してしまう。つまらない人生に罪まで背負ってしまった祐一だが、容疑者として浮上したのは事件当日に佳乃と会っていた裕福なイケメン大学生・増尾(岡田将生)だった。

恐怖と苦悩を押し隠し、いつもと変わらぬ日々を送る祐一。そんな彼のもとに出会い系サイトでメールをやりとりしたことがある光代(深津絵里)からのメールが届く。紳士服の量販店に務め、妹と2人暮らしを送る光代もまた、祐一と同様満たされない日々を送っていた。やがて2人は初めて直接会う約束をするのだが…。

一方で、殺害された佳乃の父・佳男(柄本明)は娘が出会い系サイトにアクセスし、売春まがいの行為をしていた事実を知らされショックを受ける。

そして、増尾が拘束されるが、DNA検査の結果、容疑が晴れると、いよいよ警察は祐一を容疑者として追い始める。
本当の息子のようにかわいがってきた孫が殺人犯に!?祐一の祖母・房枝(樹木希林)はマスコミに追い立てられ、さらには悪質なサギにあい追い詰められていく。

人を殺した祐一、その祐一を殺人犯と知りながら愛する光代、そして引き裂かれていくそれぞれの家族。
彼らの運命はどうなるのか?
「誰が本当の“悪人”なのか?」。
その問いが明らかになったときに迎える衝撃のクライマックスとは?
(日曜洋画劇場公式HPより)


では、続きから(一部、重複アリ)……

日々に意義を見出せず、自身の生き方に疑問を感じている男・祐一。
同様に心に空洞を抱え、寂寥感に支配されている女・光代。
2人は出会い系で出会った。

灯台を見に行きたい―――光代と祐一の出会いは光代のこのメールからだった。
祐一は光代に惹かれ、駅前で落ち合った。
2人はその日のうちに結ばれた。
祐一はある事情により人間不信に陥っており、光代に金を支払い別れようとする。
そんな祐一に光代は自身が本気であることを告げる。

祐一は光代に謝罪。
光代は祐一を許し、さらにデートを重ねる。
その日の夜、祐一は祖母・房江から電話を受けた途端に落ち着きをなくし、そのまま光代を連れ去ってしまう……。

ここで過去に戻る。

石橋佳乃という女性が殺害された。
容疑者として手配されたのは、佳乃が想いを寄せていた増尾圭吾。
増尾は旅館経営者の息子だった。
生前の佳乃が友人に語ったところによれば増尾と佳乃は交際していたらしいが……。

佳乃の父・佳男は娘を殺したとされる増尾への怒りを募らせる。

増尾が潜伏先のカプセルホテルで身柄を確保された。
ところが、増尾によれば佳乃を殺害していないと主張。
それどころか、増尾は佳乃を嫌っており交際すらしていないと証言する。

実は増尾と佳乃はナンパで知りあった仲であり、増尾は一夜の遊びのつもりだったが、佳乃は増尾と交際しているつもりだったのだ。
結果、増尾は佳乃を避け続け、佳乃は増尾を追い続けた。

事件当日の夜、たまたま増尾と出会った佳乃は別の相手との約束を反故にして増尾とドライブに出かけた。
増尾は佳乃への嫌悪感を膨らませ、人気のない峠の途中で置き去りにしてしまう。
その後、佳乃は何者かに殺害されたのだ。

こうして、増尾の容疑は晴れた。
佳乃殺害の容疑は約束していた別の相手にかかる。
佳乃は出会い系に登録しており、そこで出会った相手こそが約束の人物であった。
その人物の名は清水祐一、光代が現在共に居るその人である。

祐一の祖母・房江が詐欺商法にひっかかり傷心のまま帰宅したその晩、警察から祐一について問い合わせが来る。
房江は祐一に警察の存在を伝えるが……。
こうして、祐一は光代と共に逃げ出してしまう。

祐一は自身が佳乃殺害犯であると光代に打ち明ける。
大きな衝撃を受ける光代。
祐一が語る事件の真相は意外なものだった。

約束を目の前で反故にされた祐一。
気になった為に増尾の車を追ったのだ。
人気のない峠にて何かトラブルがあったのか、佳乃は車を降ろされてしまう。
助けようと駆け寄り、自分の車に乗るよう促したが、佳乃は拒否。
「気持ち悪い」と悪しざまに罵ると、「祐一に乱暴されたと訴えてやる」とまで口にする。
ワケの分からない祐一は混乱し、佳乃を黙らせようとして殺してしまう。

これが事件の真相だった。
祐一はこれから自首すると光代に告げる。

一方、無実が証明され、晴れて自由の身になった増尾圭吾は佳乃をこきおろすことで、今回の事件で容疑者となり傷つけられた自尊心を保っていた。

佳男は亡き佳乃の影を追って彷徨い歩いていた。

同じ頃、自首しようとした祐一だったが、光代に止められ翻意してしまう。

祐一が指名手配された。
房江の家には連日、マスコミが攻勢をかけることに。
祐一を捨てた母・依子も攻勢にあい、祐一を罵倒する。

祐一と光代は逃避行の末、約束の地である灯台へと逃げ込む。
潜伏すること数日、祐一は自身の境遇を光代に明かす。
母に捨てられた祐一は愛情を求めていたのだ。

いつしか、祐一は光代を本気で愛してしまっていた自分に気付く。

その頃、佳男は佳乃の死の原因となった増尾を追及。
だが、増尾に邪険にされ振り払われた挙句、怪我をしてしまう。
助けに入った見知らぬ男性を払いのける佳男。

光代は自宅に電話をかけるが、妹・珠代から「どれだけ迷惑をかけているのか」と責め立てられてしまう。
そこを通りがかった警官に保護される。
だが、光代は祐一を求めて逃げ出してしまう。

同じ頃、詐欺商法の事務所に飛び込む房江。
「金を返してくれ……」と必死に訴える。

一方、思い詰めた佳男は、尚も佳乃を笑い物にする増尾に激怒。
スパナを片手に襲いかかる……が、逃げ惑う増尾の姿に呆れ果ててしまう。
「人のことを笑って生きて行けばいい……」言い捨ててその場を去る佳男。

その頃、光代は祐一のもとへと辿り着いていた。
警察が周囲を取り囲んだその時、祐一は光代の首に手をかける。
そこへ突入して来る警察官たち、祐一は殺害未遂の現行犯で逮捕される。

同時刻、成果もなくトボトボと帰路に就く房江。
またも取り囲む取材陣。
取材攻勢は激しさを増し、遂に房江は祐一の祖母として頭を下げる。

佳男は妻・里子のもとへと戻った。

数日後、光代は職務に復帰していた。

とある休日、タクシーで佳乃の遺体発見現場へと足を運ぶ光代。
そこへ佳男が花を持って現れる。
慌ててその場を逃げ出す光代。

タクシーに乗り込むと運転手は光代に話しかけて来る。
「若い女の娘を殺すなんて酷いですよ、人間じゃない」

光代は呟く。
「そうですよね、悪人なんですよね……」

光代はふと思い返すことがある。
あの灯台で祐一と過ごした日々を―――エンド。

<感想>

吉田修一先生『悪人』の映画化です。
原作『悪人』は過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。

「悪人」(吉田修一著、朝日文庫)ネタバレ書評(レビュー)

今回の映画版ネタバレあらすじは、少し構成を変えていますので注意。

感想ですが、まとめきれませんでした。
取り留めもなく書いていきます。

愛情を求め続けている祐一。
耳鳴りシーンが痛々しかった。
彼は現実から逃げたがっていたのでしょうね。
彼は“自身”という膜を通じて世の中を眺めていたのかもしれません、自分が傷つき過ぎていた為に。
ラストで光代の首を絞めたのは、光代を自身の逃亡幇助の共犯者ではなく被害者として救うためか、それとも母親同様に失うことを恐れてなのか……。

そして、光代。
情の深い人のような気がします。
幸せな出会い方をしていれば上手くいったでしょう。
しかし、光代は祐一と出会ったことで非現実的な世界へと逃げ込んでしまった。
もともと、出会い系を利用することで運命の出会いを求めていた光代は現実からの逃避願望があった。
そこへ、非現実を具現化したような祐一の事件を知りそこに溺れた。
その意味で、流され易いタイプとも言えるのではないでしょうか。
ラストのあの台詞は意味深です。
光代は祐一をどう捉えているのか?

もし仮に、祐一の行動が光代を被害者として救う為だったとしたら、光代はそれを理解すればするほど、祐一の想いに応える為には祐一を否定しなければならなくなってしまう……。
もし仮に、祐一が光代を失いたくなくて手にかけようとしたのなら、それだけ愛されていたと感じているのか?
それとも、やはり周囲に流されてしまうのか……。

祐一は最初に佳乃ではなく、光代と会っていれば救われたのかなぁ……。

当の佳乃。
佳乃は見下していた筈の祐一にみじめな姿を見られたことに逆上してしまったんでしょうね。
だから、祐一に同情されまいと傷付けるような言動を繰り返した。
如何に錯乱状態だったとしてもやり過ぎた……。

祐一の母・依子。
祐一が依子に千円を貰いに行っていたのは、母の愛を求めての行動でしょうね。
お金が欲しいのならば、もっと金額を要求した筈。
ところが、依子は千円を渡すものの愛情は与えなかった。

祐一はどこまでも愛情に飢えており、求めていた。
佳乃に愛を求めるも拒否され、同じく愛を求めていた光代との間には愛情が成立したということでしょうか?

佳乃と祐一の母である依子はどこか似ていたのかもしれませんね。
だからこそ、祐一は佳乃に執着してしまった。

房江とバス運転手のエピソードはグッときました。

佳男が増尾に怪我をさせられ、通行人に助け起こされそうになるものの拒否するエピソードは、娘の佳乃と祐一の関係を思い起こさせました。
やっぱり、親娘なのでしょうか。

それにしても、増尾は保護責任者遺棄とかで追及できないものか?
佳乃を否定したいのならば、街中で堂々と否定すれば良かったのになぁ……。
あの性格ならば、友人の前で佳乃本人を呼び出し貶めそうなものだが……そうすれば、殺人までには発展しなかったような気がする。
でも、佳乃が傷つくのか……佳乃と増尾が出会ったことが間違いだったのかな?

そう考えると、増尾と佳乃、祐一と光代は対角線上に存在するカップル同士と言えなくもないような気がした。

ちなみに印象的な祐一と光代の出会いのシーンですが、佐賀駅南口です。
あのシーンを再現することも出来るそうなので興味のある方は下記の過去記事をどうぞ!!

あなたも「悪人」の登場人物に!?JR佐賀駅南口のロータリーに足跡出現!!

<キャスト>

清水祐一:妻夫木聡
馬込光代:深津絵里
増尾圭吾:岡田将生
石橋佳乃:満島ひかり
佐野刑事:塩見三省
久保刑事:池内万作
矢島憲夫:光石研
清水依子:余貴美子
清水勝治:井川比佐志
堤下:松尾スズキ
馬込珠代:山田キヌヲ
谷元沙里:韓英恵
安達眞子:中村絢香
石橋里子:宮崎美子
鶴田公紀:永山絢斗
清水房江:樹木希林
石橋佳男:柄本明
(公式HPより、順不同、敬称略)


◆関連過去記事
吉田修一さんの長編小説「悪人」映画化!!

映画「悪人」主題歌決まる&公開は9月11日に!!

映画「悪人」完成報告会見行われる!!

吉田修一先生の「悪人」が絵本に!?束芋先生による「惡人」が発売!!

映画「悪人」モントリオール映画祭出品!!

映画「悪人」ジャパンプレミア行われる!!

9月11日公開映画「悪人」について李相日監督がコメントを寄せられました!!

映画「悪人」について原作者・吉田修一先生がコメントを寄せられる

映画「告白」&「悪人」の仕掛け人、その正体とは!?

映画「悪人」出演の深津絵里さん、「モントリオール映画祭」にて「最優秀女優賞」受賞!!

映画「悪人」、書店員の勧める“みどころ”はここ!!&深津絵里さん凱旋帰国!!

映画「悪人」世界公開決定さる!!

映画「悪人」が第15回釜山国際映画祭に登場&海外進出最新情報も!!

映画「悪人」ロケ地マップが公開中!!

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映画「悪人(サントラ)」です!!
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