ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
関門海峡を挟んだ、壮大な身代金受け渡し!
下関の大学生・翔太郎は、偶然からヤクザ組長の娘と狂言誘拐をするハメに。だが本当の殺人事件が起り……。恋と青春のミステリー
大学の夏休み、先輩の手伝いで福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をヤクザ2人組から助け出してしまう。もしかして、これは恋の始まり!? いえいえ彼女は組長の娘。関門海峡を舞台に繰り広げられる青春コメディ&本格ミステリの傑作。 解説・大矢博子
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
『謎解きはディナーのあとで』で大ブレイク中の東川篤哉先生の作品です。
2012年にフジテレビ系列でドラマの放送が決定しています。
・東川篤哉先生『もう誘拐なんてしない』(文藝春秋社刊)がドラマ化決定!!
東川先生は『館島』にみられるように器械的で大がかりなトリックから、本作に見られるように叙述系のトリックまで幅広く得意とされる作家。
そう、本作はトリック分類でいえば叙述系、主に構成による錯誤となっています。
その意味で特徴的な作品と言えるでしょう。
他にも東川先生テイスト満載の作品となっており、東川先生のファンなら楽しめる筈。
幾分、古さを感じるところもありますが、それもまた味。
管理人的には、ネタバレあらすじをご覧になればお分かりの通り“ワカメ男”が印象に残りました。
ちなみにネタバレあらすじはトリックに気付くきっかけとなる潮流部分をカットしていますので注意!!
◆東川篤哉先生関連ネタバレ書評(レビュー)記事
・「謎解きはディナーのあとで」(東川篤哉著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『謎解きはディナーのあとで2』(東川篤哉著、小学館刊)ネタバレ書評(レビュー)
・ドラマ版ネタバレ批評(レビュー)追加しました(2012年1月4日追記)
スペシャルドラマ「もう誘拐なんてしない 大野智主演!!…あの“謎解き”の東川篤哉傑作ミステリーが遂にドラマ化!!突然あの娘に誘拐を頼まれた!?」(1月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
翔太郎:主人公、お人よしの男性。
絵里香:花園の娘、溺愛されている。
詩緒里:絵里香の妹。
皐月:絵里香の姉。
甲本:翔太郎が頼った相手。
山部:花園の部下の1人。
高沢:花園の片腕とされる人物。
シロ:花園の部下。
クロ:花園の部下。
先輩の手伝いの為に福岡県の門司でたこ焼き屋台のバイトをしていた樽井翔太郎。
彼は、ひょんなことからセーラー服の美少女、花園絵里香をシロとクロを名乗る2人組から助ける。
絵里香は一帯を根城とする裏社会のボス・花園の溺愛する娘だった。
シロとクロは花園の部下だったのである。
絵里香によれば妹・詩緒里は手術を必要としており、その手術代を捻出しなければならないらしい。
そこで、絵里香は狂言誘拐を目論む。
自身を人質に父親から手術代を手に入れようと言うのだ。
こうして巻き込まれた翔太郎。
頼った先の甲本も巻き込まれる。
甲本の船、「梵天丸」を舞台に身代金の入手方法を考えることに。
一方、花園は溺愛する娘・絵里香が誘拐されたことに逆上。
絵里香の姉・皐月が指揮をとり、対策を練る。
実は、皐月も絵里香の仲間だった。
これで、受け渡しは確実かと思われたが……。
何故かリーダーシップを発揮し始めた甲本により、橋の上から身代金を投げ落とさせる方法を採用する翔太郎。
受け渡しについて知らされた皐月は部下の山部と共に現地に赴く。
指定された日時は3時。
心を落ち着ける為にひと眠りした翔太郎と絵里香。
目を覚ますと行動を開始する。
甲本の運転で「梵天丸」は受け渡し場所へ。
橋の上から身代金が投下された―――(注@)。
他方、皐月はやって来た船に向けて身代金を投下する。
その横では船の正体を突き止めるべく、山部がカメラのシャッターを切っていた(注A)。
山部から皐月に渡された写真には翔太郎の姿がバッチリ写っていたが……。
こちらは甲本や翔太郎と絵里香。
身代金受け渡しは成功し、これで大団円となる筈だったが、そうは問屋が卸さなかった。
「梵天丸」に花園の片腕と呼ばれる高沢の死体が転がっていたのだ―――。
ええーーーーーっ!!と驚く一同。
さらに衝撃の出来事が!!
甲本が500万円を残し、2500万円と共に姿を消したのだ。
持ち逃げである。
困った翔太郎たちは、皐月に相談することにするが……。
絵里香は花園のもとへ戻ることに。
翔太郎は甲本を追う。
皐月は現場確認の為に山部と絵里香2人と共に梵天丸へと向かう。
そこで皐月はあることに気付く。
絵里香を帰らせると山部にカマをかける皐月。
高沢殺害は山部の犯行だと言うのだ。
だが、山部には皐月と一緒にいたアリバイがある。
しかし、皐月はそれをトリックだと見抜く。
その頃、翔太郎は甲本の行方を突き止めていた。
甲本は山部の部下に捕まっていた……やはり、山部が犯人だったのだ。
絵里香たちの誘拐計画に巻き込まれただけにも関わらずリーダーシップを発揮した甲本。
実は、裏で山部と繋がっており、その指示に従っていたらしい。
500万円だけ残したのは詩緒里の手術費用を考えて彼なりの情けだったようだ。
甲本から真相を聞き出した翔太郎は絵里香を助けに向かう。
皐月は山部のトリックを暴こうとしていた。
身代金の受け渡しは2度行われていたのだ!!
翔太郎が受け取った1回目(注@)と皐月が受け渡した2回目(注A)。
皐月も翔太郎も互いを相手だと思っていたが、実は2回とも相手が違っていた。
翔太郎が受け取ったのは偽金を用意した山部(注@)。
皐月が受け渡したのは甲本だったのだ(注A)。
そして、1回目と2回目の受け渡しの間には3時間の時差があった。
翔太郎と絵里香が寝ている間に甲本が時計の時間を3時間進め誤認させていたのだ。
これにより、アリバイを確保した山部こそが高沢殺害犯だったのである。
皐月相手にはシラを切り通せないと察した山部は罪を認める。
ところが、そこへ絵里香が戻って来てしまう。
山部にとってチャンス到来。
山部は絵里香を人質に逃走しようとする。
手も足も出ない皐月。
動き出す船。
そこへどこからともなく現れたのは翔太郎!!
絵里香を助けるべく船へと突撃するが……盛大に舳先に激突すると海に消えてしまう。
呆気にとられる一同。
山部などは「俺は殺していない、殺していないんだ……」とうわごとのように繰り返していた。
そこへ聞こえて来たのはヒタヒタと水の滴る音。
音の方向へと向き直ると全身を海藻に覆われたワカメ男が居た。
まさに悪夢のような光景である。
恐怖のあまり叫び出した山部はそのまま捕まってしまう。
後日、正気を取り戻した山部によれば、花園が高沢と皐月を結婚させることで後継者問題を解決しようとしていると知り許せなくなったと言う。
山部は組織のトップとなりたいとの野心と共に皐月を愛していたようだ。
だから、皐月にバレないようにとまわりくどい犯行を計画したのだ。
それはそれとして、今の現実問題はワカメ男である。
皐月と絵里香が警戒する中、ワカメ男が上げた声で正体が判明。
お分かりだろうが、海へと消えた翔太郎である。
「俺、格好良かっただろう?」と翔太郎に尋ねられた絵里香。
首を縦に振ることには抵抗がある。
助けを求めるように皐月を見るが、いくら優秀な姉でもこればかりは助けることが出来ないのであった―――エンド。
◆関連過去記事
・「本屋大賞2011」受賞作決定!!栄冠は「謎解きはディナーのあとで」、映像化の話題も浮上!?
・【祝】「謎解きはディナーのあとで」が漫画化!!
・東川篤哉先生「謎解きはディナーのあとで」11万部突破!!遂に「きらら」(小学館発行)にて連載再開!!
・【ドラマ化決定!!】東川篤哉先生『謎解きはディナーのあとで』(小学館刊)が遂に実写に!!
・ドラマ化も決定した『謎解きはディナーのあとで』に続編登場!!その名も『謎解きはディナーのあとで2』!!
・知人が「謎解きはディナーのあとで」でミステリにハマった!!では、次に奨めるべきミステリは?
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