2011年11月19日

『時計じかけの天使(「原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー」収録)』(永山驢馬著、東京創元社刊)

『時計じかけの天使(「原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー」収録)』(永山驢馬著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります!!注意!!

<あらすじ>

日本SF界初、前代未聞のオール新人作品アンソロジー!

●堀晃氏絶賛――「ぼくは《年刊日本SF傑作選》よりも『原色の想像力』のほうが面白かった」

第1回創元SF短編賞の佳作・高山羽根子「うどん キツネつきの」はじめ、力作揃いだった最終候補作から9編を選りすぐり、さらに受賞作家・松崎有理による受賞後第1作を収録した。日本SF界初、空前絶後のオール新人作品アンソロジー。巻末には、編者(選考委員)3名と編集部による「第1回創元SF短編賞 最終選考座談会」も採録。序=大森望・日下三蔵・山田正紀/編集部より=小浜徹也

目次
高山羽根子「うどん キツネつきの」(第1回創元SF短編賞 佳作)
端江田仗「猫のチュトラリー」
永山驢馬「時計じかけの天使」
笛地静恵「人魚の海」
おおむら しんいち「かな式 まちかど」
亘星恵風「ママはユビキタス」
山下 敬「土の塵」(第1回創元SF短編賞 日下三蔵賞)
宮内悠介「盤上の夜」(第1回創元SF短編賞 山田正紀賞)
坂永雄一「さえずりの宇宙」(第1回創元SF短編賞 大森望賞)
 *
松崎有理「ぼくの手のなかでしずかに」(第1回創元SF短編賞 受賞後第1作)

第1回創元SF短編賞 最終選考座談会 大森望・日下三蔵・山田正紀・小浜徹也
(東京創元社公式HPより)


<感想>

2011年11月26日、フジテレビ系列『世にも奇妙な物語』にてドラマ化される「いじめられっこ」の原作です。

<ドラマ版である「いじめられっこ」あらすじ>

女子高生・堂島百合(志田未来)は、クラスメートからいじめにあっていた。ある日百合は、いつものようにいじめられていると、クラスに転校してきた永瀬日菜子(大後寿々花)に助けてもらう。百合はかばってくれた日菜子へ話しかけるのだが、無表情でリアクションは薄い。そして、いつしかいじめの対象は日菜子へ。日菜子はいじめられ続けても感情を表に出さない。百合はいつしか日菜子のことを“身代わり”なのでは? と思い始める。
(フジテレビ公式HPより)


百合役に志田未来さん、日菜子役に大後寿々花さんとのこと。
期待できそうです。
そこで、原作に興味を持ち読んでみました。

それが、肝心の『時計じかけの天使』。

管理人は序盤と「世にも奇妙な物語」でのドラマ化であることから、「実は日菜子ではなく、百合がロボットではないか?」と妄想しましたが、大外れでした。
むしろ、外れて良かったほどハートウォーミングな友情物語です。
もしも「百合がロボット」だったらこれほどの爽快感は得られなかったでしょう。
ただし、単なる友情物語には留まらない。

本作はハートウォーミングな表層にも関わらず、その内容はかなりハードです。
いじめのくだりにはゾッとします。

一見、「ハートウォーミングな友情物語」でありながら、友情を育む2人がロボットと人間であることで、良心をなくし迎合し易い人間と本来無機質な筈のロボットとを比較する形式になっています。

ロボットよりも時に打算的で冷徹、自己保身に奔る臆病で弱い人間という種。
そして、ルールに沿ってしか動けない筈のロボット。
ところが、ロボットが情に基づいて動いた時、そこに垣根は無くなる……。
崇高な理念という点では、もしかすると造った者と造られた物とが逆転することすらありうる。

では、ロボットと人間を分けるものはなんなのか?

その意味でもまさにSFに相応しい抒情的な良い作品だと感じました。

さて、そんなラスト。
管理人的には日菜子はやはりロボットだったと思いますが、日菜子の自我を確認し彼女と友情を築いた百合にとってはどうでもいいことなのでしょうね。
人と人(ロボット)との繋がりはあっさりと高い垣根を越えてしまうことも出来るのかもしれません。
本作はロボットでありながら「人間賛歌」の物語でもあるんだよなぁ……。

ここは感想の後にあるネタバレあらすじで確認してください。

ちなみにドラマ版のあらすじを視る限りでは、そのまま友情物語に仕上げるか、原作最初の法案を最後に持ってくるかのどちらかがラストになりそう。
原作の良さを伝えることが出来るか、注目です!!

◆関連過去記事

「量子回廊 年刊日本SF傑作選」(大森望/日下三蔵 編、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『時計じかけの天使』と共に「世にも奇妙な物語」でドラマ化される『憑かれる』の原作はこちら。
『憑かれる(「崩れる 結婚にまつわる八つの風景」収録)』(貫井徳郎著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
百合:主人公、いじめに遭っている。
日菜子:転校生、百合に代わりいじめに遭うが……。
咲良:街の有力者の弟の娘。百合、日菜子をいじめている首謀者。

政府は氾濫するいじめの対応に苦慮し、画期的な解決策を導入した。
各学校にいじめられる役割を背負わせたロボットを導入することに決めたのだ。
これで人間のいじめられっこは居なくなる……そう考えたのだ。
テストケースとして幾つかの学校が選ばれるが……。

百合は咲良にいじめられていた。
発端は百合の父が咲良の叔父の経営する会社を脱サラしてラーメン屋を始めたことにあった。
咲良の叔父はこの地域一帯を牛耳る大会社の社長である。
咲良は女王のようにクラスに君臨していた。

学校という狭い社会の中では逃げ場など無い。
かといって、迷惑をかけるワケにもいかず父に相談することも出来ない百合。
甘んじていじめを受け続けた……それがまずかったのかもしれない。

初めは無視だった。
親友と思っていた人間たちが、ある日を境に次々と百合から離れて行った。
辛かったがまだ耐えられた。

次に物が隠された。
授業に必要な物も隠されるようになり、教師に訴えたが教師も咲良の味方だった。
百合はさらに孤立を深めた。

そのうちに授業を受けることもままならなくなった。
仕方なく、荷物を見張る必要が生まれ休憩中も動けなくなった。
トイレに行くことさえも、不自由することとなった。

咲良のいじめはさらにエスカレートする。
それはやがて性的なものも含むようになった。

同級生の前で脱衣を強いられる。
スカートをめくられる。
茶巾蒸しと称して下半身を露出させられ視界を塞がれた。

少しずつ貞操の危機を感じる百合。
一学期が終わり夏休みに入ったときは心底ほっとしていた。

しかし、それも永遠では無い。
二学期に入り身を切るような辛さの中で登校する百合。

そんな時だった、彼女が転校して来たのは。
その少女の名は永瀬日菜子。
見る者に異質な雰囲気を感じさせる少女だった。
百合は咲良が彼女に興味を持ったことに気付いた。

その日から、日菜子へのいじめが始まった。
百合の場合と同じことが続く。
無視、物を隠す、そして暴力へ―――。

いつしか、百合は気付いていた。
日菜子が犠牲になっている限り自分はいじめられないことに。
そして、例の政府による解決策を思い出す。
もしかして……日菜子はロボットなのではないか?

もしも、日菜子がロボットだったら……。
今はいい。
だが、いずれ咲良がそれを知ってしまったら……日菜子への興味を無くし百合がまたいじめられるのではないか?

その想像は百合を怯えさせた。
百合は何とか日菜子がロボットかどうか確認し、もしもロボットだったら正体がバレないようにフォローしようと決める。

日菜子の正体を確認しようとする百合。

まずは食事だ、試しにおむすびを与えると食べた。
だが、そんな機能が搭載されているだけかもしれない。
まだ分からない。

尾行する百合。
その途中、怪我をした日菜子の腕から血が流れていないことを発見。
日菜子がロボットだと確信する。

日菜子にロボットかどうか問い質すことにした百合。
「ロボット」だと日菜子は認める。
百合は永瀬日菜子の名前から「流し雛」を連想。
彼女が自分を助けてくれると思うように。

百合は誰にも見られないよう時間を工夫すると、日菜子にぼろが出ないよう人間らしく振る舞う教育を施す。
最初は必死だった。
だが、やがて2人切りの時間が楽しく感じられるようになっていた。

ある日、日菜子は泣いた。
これまで百合のように接してくれた人間はいなかった、と。
百合は打算で利用しようとしたことを詫び、真摯に向き合おうとする。

その間も日菜子へのいじめはエスカレートしていた。
百合の友人たちも戻って来る。
どうしようもないんだ……自分に言い聞かせ続ける百合。

ある日、ライトが落下する事故が発生。
百合を庇った日菜子に当ってしまう。

周囲から上がる悲鳴。
なんと、日菜子の腕がちぎれていた……その腕は機械のものだった。

日菜子の正体を知った咲良は興味を無くし、標的を百合へと切り替える。
またも離れて行く百合の友人たち。

日菜子も助けてはくれない。
それはそうだろう、ロボット3原則に「人間に危害を加えてはならない」とあるからだ。
百合を助けることは咲良を排除することになる……。

百合のいじめは以前にも増して激しくなった。
日菜子に加えられ加速していたいじめがそのまま引き継がれたのだ。
何故、咲良はいじめを繰り返すのか?

その答えは百合の父が握っていた。
百合の父は脱サラ前には元社長秘書を勤めており、咲良の生い立ちについても知っていたのだ。

咲良は幼児期に母親から虐待を受けていた。
咲良の母親は精神を病み、人形を娘として可愛がると咲良を忌避した。
咲良は母親のように無抵抗なものを人形とみなしいたぶることで精神の均衡を保っていたのである。

その翌日、異変が百合を待ち構えていた。
クラスの黒板に、咲良と思われる女性が人形を弄ぶ落書きが描かれていたのだ。

咲良は犯人を百合と決め込み追及。
逃げ出した百合だが、咲良たちは執拗に追跡。
遂に屋上へと追い詰められる。

このままでは殺される……死の恐怖を感じる百合。
咲良は百合の首に手をかけるとそのまま締め上げる。
百合の意識が消えかけた……。

不意に咲良の手が緩む。
そこには日菜子が居た。
日菜子は咲良たちを振り払うと百合を助ける。

ロボット3原則がある限り、日菜子にはどうしようも無い筈……。
混乱する百合は咲良と共に屋上から転落してしまう。

幸い命に別状の無かった百合だが入院することに。
咲良は掠り傷らしい。

担当の看護師によれば日菜子が輸血してくれたとのことだった。

3原則がある限りロボットが人間を止められないし、輸血も出来る筈がない。
あの腕は義手なのだ―――百合は自分が日菜子をロボットだと思い込んでいたと考える。
日菜子に感謝する百合。

この騒動の為に咲良の権威は失墜。
クラスからいじめは消えた。
だが、百合は知っている学校という制度がある限り、いじめはなくならないことを。
今は無風状態なだけなのだ。

だから、百合はその時間を日菜子と共に過ごした。
その時間はとても貴重だった。

やがて、日菜子が引越しすることになった。
そして3月3日、雛祭りの日。
日菜子は来た時と同じく静かに街を去って行った。
ただひとつ違ったのは百合が居たこと。

百合は駅のホームまで見送ると、去り行く列車が見えなくなるまで手を振り続けた。
その顔は涙でグショグショだった。

日菜子が消え、百合は彼女に手紙を書いた。

「日菜子さん、お元気ですか?

学校にロボットがやって来ました。
このロボットは外見からして如何にもロボット然としています。
数日間、男子にいじめられてすぐに壊れてしまいました。

そうそう面白い話があります。
母があなたのことをロボットだったと言うのです。

なんでも、輸血は同じ名字の別の生徒であなたでは無い。
ロボット3原則も改訂されたと譲らないのです。

私はカッとなって口論になってしまいました。
念の為、担任の先生にも確認しましたがロボットでは無かったと教えて貰いました。
やっぱりね。

でも、私にとってあなたがロボットであっても良いのです。
私は人間だろうとロボットだろうと“日菜子さん”自身が好きなのだから。

お返事待ってます。   百合」―――エンド。

ドラマ原作『時計じかけの天使』が収録された「原色の想像力 (創元SF短編賞アンソロジー) (創元SF文庫)」です!!
原色の想像力 (創元SF短編賞アンソロジー) (創元SF文庫)



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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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