ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
あなたの周りに狂気が潜む……。
崩れる女、怯える男、誘われる女……。ストーカー、家族崩壊など、現代の社会問題を「結婚」をテーマに描き出す、狂気と企みに満ちた、傑作ミステリ短編。
『慟哭』『乱反射』の著者が描く、震撼ミステリ短編集!
結婚することは本当に幸せですか?
名手が抉り出す傑作!
仕事もしない無責任な夫と身勝手な息子にストレスを抱えていた芳恵。ついに我慢の限界に達し、取った行動は……(「崩れる」)。30代独身を貫いていた翻訳家の聖美。ある日高校の同級生だった真砂子から結婚報告の電話があり、お祝いの食事会に招待されるが……(「憑かれる」)。家族崩壊、ストーカー、DV、公園デビューなど、現代の社会問題を「結婚」というテーマで描き出す、狂気と企みに満ちた8つの傑作ミステリ短編集。
(角川書店公式HPより)
<感想>
収録作の1つ「憑かれる」が、2011年11月26日放送される「世にも奇妙な物語」の1編としてドラマ化されるとのことで書評(レビュー)を敢行することにしました。
ちなみに同様にドラマ化された「いじめられっこ」の原作はこちら。
・『時計じかけの天使(「原色の想像力 創元SF短編賞アンソロジー」収録)』(永山驢馬著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
実は、管理人は一度本作『崩れる』を読んだことがあります。
その際には「全体的に可もなく不可もなく」そして「『憑かれる』についてはあんまりかなぁ……」との印象でした。
さて、再読の結果や如何に?
では、感想を。
内容についてはタイトル通り主人公が友人に……との怪談らしい結末。
詳しくはネタバレあらすじをどうぞ!!
やっぱり微妙です。
何かを感じたりする作品ではありません。
貫井先生ならば、他にもっとオススメできる良作があります。
それについては著者である貫井先生も文庫版あとがきにて認めていらっしゃいます。
次のような感じです(下記は管理人による意訳)。
「本作は2日で完成。正直、完成度は他の収録作より低い。しかし、全体的なバランスをとる為に本作を収録作として加えた」
つまり、本作は他の収録作との比較の中でこそ活きて来る類の作品であり、単体では面白くない。
正直、何故、コレをドラマ化しようというのか分からない。
ドラマ化するならば『我が母のおしえたまいし歌』(東京創元社刊『光と影の誘惑』収録)の方が絶対に良い。
『光と影の誘惑』については、過去にネタバレ書評(レビュー)しているので興味のある方は是非。
ドラマ化して成功させるにはかなり原作を改変する必要がありそう。
でないと、普通の怪談で終わってしまい「奇妙な物語」にはならないと思う。
ドラマ版でどう捻りを加えて来るのか、あるいは直球勝負か、興味が尽きません。
ちなみに貫井先生は『ななつのこ』で知られる加納朋子先生の旦那様でもあります。
最近ではNHKさん「探偵Xからの挑戦状!」に「殺人は難しい」を提供していらっしゃるのでご存知の方も多いのではないでしょうか。
そんな貫井先生の著作について興味をお持ちの方は本記事下部に過去作のネタバレ書評(レビュー)があるのでどうぞ!!
<ネタバレあらすじ>
倉田聖美は独身の翻訳家。
結婚という既存のシステムに批判的でいるうちに結婚し損ねたのだ。
そんなある日、高校時代の同級生・及川真砂子から電話がかかる。
「結婚したのでお祝い会を開きたい、ついては聖美に出席してくれないか」とのことだった。
真砂子の結婚相手が同じく高校の同級生だった神原と聞いて驚く聖美。
神原は聖美の高校時代の彼氏だった。
多少、複雑な気持ちながらも素直に祝福する聖美。
実は聖美は真砂子に対してある負い目があったのだ……。
高校時代、神原はサッカー部のスポーツマン。
同い年の女子からモテモテだった。
もちろん、聖美と真砂子も例外ではない。
聖美はひょんなことから真砂子が神原に焦がれていることに気付き、橋渡しを口実に神原に近付くと交際を始めたのだ。
結局、大学進学を機に神原とは別れてしまったが……。
お祝い会への参加を了承した聖美は、参加すべく真砂子のもとへ。
そこには真砂子1人だった。
疑問に思いつつも気を取り直してお祝いを述べると、真砂子は妙な事を口にしだす。
「私が居ると男の人を殺してしまう」
何を突然言い出すんだと驚く聖美をそのままに真砂子は話を続ける。
弟も父も死んだ。
神原との結婚は再婚なのだが、前夫も死んだ。
そのとき、妊娠していた前夫との間の子供も死亡した。
男の子だった。
どんどん気分が落ち込んで行く聖美はここに居ない誰かに助けを求める。
その願いが通じたのか、神原が合流する。
ところが、神原にも構わず話を続ける真砂子。
それでね、私祈ったの。
もう置いて行かれるのは嫌だって。
そしたら、かなっちゃった。
見れば神原も頷いている。
神原は真砂子に続ける。
実はね、僕たち新婚旅行で海外に行ったんだ。
でも、飛行機が墜落してね。
だけど、こうして此処に2人で居られる。
幸せだろう。
ゾッとする聖美はそのとき気付いた。
神原と真砂子が必要以上に青ざめていることに。
真砂子が手を握って来るがその手も冷たい。
まるで体温が無いかのように。
「ひやぁぁぁぁぁぁぁ」
思わず叫び出してしまう聖美。
と、神原と真砂子が急に笑い出す。
高校時代の真砂子の復讐だと言うのだ。
からかわれたと思った聖美は激怒しその場を去る。
帰宅した聖美。
テレビをつけると海外の旅客機事故が報じられていた。
その被害者に神原と真砂子の名前を見つける聖美。
まさか……。
そこへ再び鳴る電話。
出てみると「ああ、聖美。帰国したらまた呼ぶから」との真砂子の声が―――エンド。
【貫井徳郎先生関連過去記事】
・「乱反射」(貫井徳郎著、朝日新聞出版刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「慟哭」(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「光と影の誘惑」(貫井徳郎著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・探偵Xからの挑戦状!「殺人は難しい」(貫井徳郎著)本放送(4月21日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【関連する記事】
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