ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
社会人になったばかりの白戸修。アルバイト先や、落とし物を拾ったところで事件に巻き込まれる。人の頼みを断れない、困っている人を見過ごせない、そんなお人好し青年だけど、いつの間にか事件を解決。サクッと読めてクスッと笑える癒し系ミステリー。
(アマゾンドットコムさんより)
<感想>
『福家警部補』シリーズ(東京創元社刊)で知られる大倉崇裕先生『白戸修の事件簿』シリーズ(双葉社刊)の2冊目です。
シリーズとしては前作『白戸修の事件簿』と本作『白戸修の狼狽』の2冊。
・前作『白戸修の事件簿』ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『白戸修の事件簿』(大倉崇裕著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
本作『白戸修の狼狽』の収録作は次の5編。
・『ウォールアート』
・『ベストスタッフ』
・『タップ』
・『ラリー』
・『ベストスタッフ2・オリキ』
それぞれ、専門用語をタイトルとしているのが本シリーズの特徴。
これは前作『白戸修の事件簿』から引き継がれている。
基本的に主人公である白戸が事件に巻き込まれるパターンが踏襲されているのも特徴。
それと、『狼狽』は前作『事件簿』と違い、ほぼすべての事件を白戸自身が能動的に解決しているのも特徴。
本作収録5作品のうち、唯一の例外作といえるのは『ラリー』ぐらいか。
その『ラリー』には、同作者による双葉社から発売された『無法地帯―幻の?を捜せ!』の大場久太郎と宇田川が登場してるのでファンの方はチェック。
ちなみに『白戸修の事件簿』シリーズ(双葉社刊)はドラマ化決定。
気になるキャストは、白戸修役に千葉雄大さん、黒崎仁志役に本郷奏多さんとのこと。
黒崎はドラマ版のオリジナルキャラクターかな。
・大倉崇裕先生『白戸修の事件簿』シリーズ(双葉社刊)がドラマ化!!
大倉先生著作のドラマ化は、NHKさんで永作博美さん主演で2009年にドラマ化された『福家警部補シリーズ』の『オッカムの剃刀』以来のこと。
あちらはかなりのハイレベルでした。
こちらのドラマ版は如何に!?
<ネタバレあらすじ>
・『ウォールアート』
中堅出版社「世界堂出版」に就職した白戸。
早速、試用期間ということで様々な編集部に配属される。
今度の配属先は「月刊模型」、模型専門誌である。
有名になった画家の表紙絵で発行部数を保っているこの雑誌。
当然、画家に辞められたら困ると遺留に必死。
深夜でも画家から注文があれば塗料の入ったスプレー缶を届けなければならない。
今日も今日とて注文が入ったことで白戸にとっての鬼門「中野」に赴くことに。
この時点で嫌な予感はしていたのだ。
スプレー缶を抱えて歩いていると警備員風の男に呼び止められてしまう。
周辺で流行っている“落書き犯人”と疑われたのだ。
弁明する白戸の努力の甲斐あって、なんとか納得して貰ったのだが……代わりに犯人逮捕に協力させられてしまう。
男は本職の警備員だった。
犯人逮捕に躍起になっている町内会。
町内会長とその孝行息子も夜回りに出るほどの力の入れようである。
なんでも、町内会長宅も被害に遭ったらしい。
数日後には落書きを落とす為の一斉清掃も予定されていると言う。
引っ張り回される白戸だったが……意外な経緯で犯人があっさり捕まる。
犯人は白戸がスプレーを届けようとしていた画家だった。
編集部員が届けたスプレーがそのまま犯行に使われていたのだ。
これで一件落着と思われたが、警備員は彼が町内会長宅の落書きに関与していないと知ると逃がしてしまう。
彼の目的は別にあったのだ。
実は彼の恩師が何者かに襲われ入院していた。
その犯人が町内会長宅の落書き犯人らしい。
その話を聞いた白戸は真犯人に気付く。
真犯人は町内会長の息子だった。
息子は酔っぱらった被害者に絡まれ、身を守るべく相手に怪我を負わせてしまったのだ。
その際に被害者の血が飛び散った為に、上から落書きで誤魔化したのだ。
警備員は恩師にも非があると知り、町内会長の息子を許すことに―――エンド。
・『ベストスタッフ』
大学時代の先輩・仙道に呼び出された白戸。
嫌な予感は的中し、仙道が勤める「ベストスタッフ社」が派遣する警備員のバイトをさせられてしまう。
警備先はアイドルのコンサート。
もしも、此処で事件が起これば責任は仙道が負ってしまうらしい。
白戸は仙道を助けることに。
実はベストスタッフ社に恨みを持っていた元警備責任者が恨みを晴らす為にコンサートを妨害していたことが判明。
犯人がアイドルに仕掛けた最後の罠が、コンサートの照明を足場が分かりにくいことを利用した段差トリックだと気付いた白戸は転落したアイドルをその身を呈して救うことになるのだった―――エンド。
・『タップ』
前回、身を呈したことにより腰を痛めた白戸。
整体に通うことに。
場所はまたも中野だった―――。
案の定、駅で落し物を拾った白戸は盗聴器発見会社のエージェントに協力を求められてしまう。
とある女性が盗聴されているので救いたいと言うエージェントに付き合う白戸。
女性に盗聴器を仕掛けたのが女性の恋人を轢き逃げしたグループと判明。
女性の身が危ない!!
ところが、白戸はある事実に気付く。
女性は轢き逃げ犯グループに殺害されそうになっていた。
そこへ現れた白戸とエージェントは女性を救う。
しかし、救われた筈の女性は激怒する。
女性は轢き逃げ犯に自分を殺害させることで明確な殺人罪を背負わせようとしていた。
盗聴器も女性が相手に仕掛けようとしたものだったのだ。
それに気付いた白戸が先回りして女性の計画を阻止したのだった―――エンド。
・『ラリー』
妙なパスを拾った白戸。
落とし主はトイレに立て籠もり白戸がいくら話しても相手にしない。
困っていたところに落とし主の相棒らしき男がやって来る。
男は白戸に相棒の代わりを求めるが……。
こうして巻き込まれた白戸。
男の名は宇田川、とあるレースに参加しているらしい。
パスはその証明書だった。
と、突然、襲撃を受ける白戸。
宇田川の活躍により難を逃れるが、先の男が逃げ出した理由はコレだったかと気付く。
とはいえ、一度乗りかけた船から逃げる白戸では無い。
宇田川に付き合うことに。
パスを巡り次々と襲い来る刺客。
それを退治していく宇田川。
宇田川によればパスを持ったままゴールすれば、レアなフィギュアを貰えると言う。
価値を聞いた白戸は驚く。
それは大金だった。
ゴールを狙う宇田川だが、どうにも動きがおかしい。
自ら敵を捜しているようなのである。
真っ直ぐにゴールした方が良い筈だが。
ようやくゴールした宇田川。
しかし、彼らは2位だった。
既に先客が居たのだ。
先客の正体は1人の老人と2人の子供。
宇田川の狙いは彼らに優勝させることだった。
その障害になりそうな敵を自分たちが囮となり始末していたのだ。
子供は最近、両親を亡くしたばかり、負債を抱えており清算する為にも優勝賞品が必要だったらしい。
老人はその後見人だった。
彼らは賞品を手に入れ、ほくほく顔で帰途に就く。
一方、大会を荒らした宇田川には主催者からの制裁が待っていた。
宇田川は参加賞のフィギュアを白戸に残すと1人戦いに挑む。
白戸にはどうしようもないが……。
そこへ通りがかった大男。
男は参加賞のフィギュアを欲しがっていた。
主催者の1人を軽くいなすほど腕っぷしも強いようだ。
白戸は大場久太郎と名乗るその大男に参加賞フィギュアと引き換えに助けて欲しいと依頼する。
大場は快諾すると助ける相手を宇田川ともしらず意気揚々と主催者を倒して行くのだった―――エンド。
・『ベストスタッフ2・オリキ』
仙道には関わるまい―――そう決めていた白戸。
しかし、そうは問屋が卸さない。
仙道の頼みでまたもアイドルのコンサートの警備を任されてしまう。
そして案の定、事件が発生。
何者かによりステージと客席を分ける柵のボルト緩められていたのだ。
身体を張ってファンの大群を抑え込んだからいいようなものの、危うく大惨事に発展するところだったのだ。
しかし、これにより仙道が負傷。
すべてを白戸に託し仙道は病院へ。
仙道の為にもボルトを緩めた犯人を見つけねばならぬ。
使命感に燃える白戸にアイドルの追っかけが近付く。
彼女はオリキというものらしい。
オリキとは、追っかけに力を入れているファンのこと。
このままではオリキに被害が出るかもしれない―――オリキを守るため、彼女は白戸に協力することに。
2人で調べたところ、犯人が判明。
犯人はホテルの設備改善を訴えるグループのメンバーだった。
コンサート会場となったホテルの品位を守る為にやったと言う。
こうして事件は解決したかに思われたが、白戸はまだ事件は終わっていないと気付く。
犯人は白戸に協力してくれたオリキに恨みを持つ、別のオリキだったのである。
彼女は気に喰わないオリキを叩きのめす為に、自分も応援していた筈のアイドルを陥し入れようとしていた。
柵のボルトを緩めたメンバーは単なる囮。
本命はアイドルのコンサート中に位置を誤らせ、ステージから転落させることだった。
それに気付いた白戸はまたも身体を張って落下したアイドルを守る。
だが、気絶してしまうのだった……。
数日後、目を覚ました白戸は仙道に礼を言われる。
前回に続き今回も、身を呈してアイドルを救った白戸の行動は謎のヒーローとして讃えられているのだった―――エンド。
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