ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
シングルマザーで、子連れで、刑事ですが、何か?――育児のグチをぶちまけながら、高子と葵の凸凹刑事コンビ+橋蔵(1歳)が事件解決へとひた走る! 爽快感120%の新シリーズ!
(河出書房新社さんより)
<感想>
『アンフェア』シリーズの原作で知られる秦建日子先生の著作です。
本作『ダーティ・ママ!』はまさに雪平夏見をさらに先鋭化させたものに他なりません。
『アンフェア』のファンならば本作も楽しめる筈。
あの「アンフェア」に続編登場!!その名も「アンフェア2」、ついに完結するのか注目集まる。
ただし、本作はかなり男性批判が強烈な作品。
模範的で格好いい男性が登場しません。
高子視点でコテンパンにのされているので世の男性諸氏は注意!!
男性が本作を手に取る場合にはそれなりの覚悟が必要でしょう。
それにしても、キャラと設定が濃い。
紅白コンビに東などが居るかと思えば、子連れ狼然とした“仕込みベビーカー”には驚きました。
他にも人間嘘発見器など、もう凄いです。
そんな『ダーティ・ママ!』。
日本テレビ系列水曜22時枠にてドラマ化されるそうです。
ストーリー的には苦しいので、キャストが合えばヒットするかもしれませんね。
ドラマ版や如何に!?
・秦建日子先生『ダーティ・ママ!』シリーズ(河出書房新社刊)がドラマ化!!
ちなみにときどき書店で女性作家コーナーに並ぶ秦先生ですがれっきとした男性ですので注意!!
<ネタバレあらすじ>
・「はじめてのダーティ・ママ」
長嶋葵は交通課の婦警。
派出所勤務だが刑事を目指すイケメンの卓也という恋人もおり、それなりに満足した生活を送っていた。
そんなある日、刑事課から何故か葵の引き抜きがかかる。
困惑する葵だが、ダルビッシュのサイン入りボールと引き換えに上司に売られてしまう。
こうして、恋人よりも先に何故か刑事になってしまった葵。
卓也からは冷ややかな態度をとられ、得体の知れない職場に放り込まれた葵の運命は……。
さて、転属初日。
葵は引き抜かれた理由を知ることに。
彼女を待っていた仕事はベビーシッターだったのである。
刑事課には1人の女丈夫が居た。
その名は丸岡高子。
検挙率ナンバーワンの彼女には誰も逆らえない。
そんな彼女は職場に自身の愛息・橋蔵(赤ん坊)を連れて来ていた。
高子はひとときたりとも橋蔵を手放さない。
橋蔵の世話をするベビーシッターが必要だったのだ。
そこで葵が選ばれたのである。
しかも、刑事課は葵の知る交通課に比べると遥かに異質な集まりだったのである。
こうして、卓也が望んでやまないような仕事とは到底思えない名誉(!?)な職に就いた葵。
そこへ早速、最初の仕事が舞い込む―――強盗未遂事件である。
FX会社で働く女性が襲われた。
高子とコンビを組んだ葵は3人(ベビーカーに乗った橋蔵含む)で被害者女性に事情を聞くことに。
女性によれば犯人は腕に“台”と書かれた刺青をしていたらしい。
ふと女性が首にしていたペンダントに注目した高子。
橋蔵をだしにペンダントを拝借すると何かを確認する。
去り際、何故か高子は橋蔵に女性について尋ねるが……高子の問いに「ダー、ダー」と答える橋蔵。
被害者と別れてからの高子の動きは早かった。
女性のペンダントがUSBメモリであると気付いた高子はこっそりデータをコピーしていた。
データの解析を始めると共に女性の雇い主である三宅を訪ねる。
授乳に見せかけて三宅不在の社長室に乗り込むとデータを奪う高子。
違法捜査の連続に呆気にとられる葵だが、驚く暇もなく自身も協力を余儀なくされる。
三宅が戻って来ても高子に動揺する素振りは無い。
ここでも橋蔵に三宅について尋ねる高子、橋蔵は「ダー」と答える。
直後に、強盗未遂の犯人が自首して来る。
ところが、自首して来たのは被害者の証言とは似ても似つかぬ二人組。
にも関わらず、被害者は証言を一転するや彼らが犯人だと認めてしまう。
こんな形で事件解決……と肩の力の抜ける葵だったが……。
その晩、高子は三宅が何かを隠していると主張し彼の自宅を張り込む。
と、そこへ何者かが侵入。
高子たちの目の前で三宅は殺害されてしまう。
所轄署が到着する前に情報を集めるべく、近所の主婦のふりをしながら三宅の自宅へ潜入する高子。
ベビーカーを押す彼女を疑う者は誰も居ない。
あっさり、部屋へと侵入した高子はそこに“台”の文字を発見する。
ペンダントのデータ解析に成功。
その内容は驚くべきものだった。
三宅の会社は詐欺を行っていたのだ。
しかも、バックには大きな組織がついていたらしい。
三宅が口封じに殺害されたと察した高子は最初の強盗未遂の被害者の身が危ないと気付く。
案の定、何者かに連れ去られる被害者。
高子は犯人グループの1人を捕まえると拷問して情報を吐かせる。
無理矢理吐かせた情報で埠頭に居ると知った高子たちは現場へ急行。
そこでは三宅社長殺しの犯人が銃で被害者を殺害しようとしていた。
その腕には“台”の刺青が……。
駆け付けた高子は橋蔵のベビーカーから銃を取り出すと発砲。
相手を制圧する。
しかし、そこへ何者かの狙撃。
犯人は射殺されてしまう。
第2射を恐れた葵は高子を庇うべく突き飛ばす。
結局、真の黒幕へ繋がる犯人には逃亡を許した高子は悔しがる。
一方、幸い2射目は無かったが、この突き飛ばしにより葵は高子より「ラッセル」との不名誉なあだ名を貰うのだった―――エンド。
・「ダーティ・ママは三度吐く」
葵と恋人・卓也との仲は葵が刑事になってから微妙なまま。
高子の隙を突き、無理をしながらやっとデートの約束を取り付けたその日。
勝負服に身を包み、待ち合わせ場所へと向かおうとした葵の目に高子が映る。
頭を抱える葵、案の定、事件発生である。
とりあえず、卓也に待って貰うことにして勝負服のまま現場へと駆け付けることに。
事件は殺人、死因は刺殺、被害者は若い女性だった。
生前はさぞかし美人だっただろうと思われる面持ちも嘔吐物にまみれてしまっては発揮しようもない。
血と吐瀉物に勝負服を汚されながら捜査する葵。
急がなければならない。
なにしろ、卓也が待っているのだ!!
そんな中、容疑者があっさりと浮上。
被害者の不倫相手の男性である。
妻が居るその男性によれば、被害者とは別れるつもりだったと言う。
ところが、被害者は妊娠していた。
それを聞いても動揺しない男性、事情は知った上で妻の方が大切なので別れるつもりだったと言う。
この言葉に高子は拒否反応を示し、吐き気を催す。
一方、いつもは「ダー」と反応を示す橋蔵も今回ばかりは高子の問いかけに反応しない。
不倫していた女性が死亡したとなれば、不倫相手の男の妻がもっとも怪しい。
妻に確認するものの、妻も平気なもの。
彼女によれば「男を追うから逃げるので、追わなければ寄って来る」と言う。
だから、夫を許すのだそうだ。
これは名言だと納得する高子。
今回も橋蔵に何やら尋ねるが無反応である。
気になった葵が何を確かめているのか尋ねると意外な事実が判明。
実は、橋蔵は生きた嘘発見器だったのだ。
父親が嘘吐きだった為に、嘘を吐く人間を見ると父親と思うらしく「ダー」と口にするのだそうだ。
本気にしない葵だが、高子は大真面目だった。
橋蔵の嘘発見器が正しいとすれば、夫婦は犯人ではない。
次に、被害女性の会社へ向かうことに。
被害者の上司に話を聞いた高子はまたも吐き気を催す。
上司・島崎は男性上位主義者だったのだ……。
あからさまに女子社員に嫌われている様子の島崎。
ところが、橋蔵による嘘発見器が反応してしまう。
島崎は何かを隠している……標的を定めた高子。
被害女性を調べるうちに、島崎とも交際していた可能性が浮上。
そう、被害者は二股していたのだ。
それを知った島崎が逆上して殺したに違いない。
だが、交際の証拠が無い。
そこで、島崎宅に潜入した高子と葵。
葵はいきなり高子から馬乗りで殴りつけられる。
顔をボコボコに殴られ、服を裂かれた葵。
そこへ現れた島崎は大パニック。
そんな島崎に「葵を襲った現行犯で逮捕する」と脅迫する高子。
別件逮捕して絞り上げる気なのだ。
「無茶苦茶な」と怒る島崎だったが、隠していた携帯を高子に発見されたことで罪を認める。
その携帯には被害者とのやりとりがおさめられていた。
被害者に好意を抱いていた島崎。
男性上位主義者らしく女性は守るものと見守るだけだったが、ある日、酒の勢いで襲ってしまう。
罪を謝罪し、贖罪すべく被害者の言いなりになった島崎は彼なりの愛情を捧げていたが……。
被害者の本命が別に居ると知り、ショックを受ける。
しかも、妊娠したのは島崎の子供だったが、それを伏せた上で妊娠をネタに相手の家庭を壊すと言う。
怒り狂った島崎はお腹にいた自身の子供ごと殺害してしまったのだった。
こうして事件は解決。
ところが、当然の如く卓也との待ち合わせには間に合わない。
卓也とも気まずいままの葵。
このままではと考えた時に例の言葉が甦る。
「自分は追わない、相手の意志を尊重しよう」そう決めた葵。
「最後でいいので話を聞いて欲しい」と卓也宅を訪ねる。
最初は渋々だった卓也。
しかし、怪我を負った葵(高子に殴られたからだ)を見て驚き、慌てて家の中へと招き入れる。
こうして、久しぶりに恋人同士の時間を過ごすのだった―――エンド。
・「父親参観日のダーティ・ママ」
土曜日の郵便局で強盗事件が発生!
犯人は局員に撃退され盗るものも盗らず逃げ出したらしい。
高子が居らず、大慌てで対応する葵。
そこへ今度は、「父親参観日の幼稚園を爆破する」との予告電話が。
犯人の要求は「刑事課のイケメン刑事を連れて来い」との奇妙なもの。
こうして刑事課はてんやわんやの大騒ぎに。
高子と連絡の取れた葵は郵便局強盗を追うことに。
橋蔵の認知調停に向かう筈だった高子は物凄く不機嫌。
血の雨が降ると確信した葵は、高子のしたいがままに任せる。
哀れな郵便局強盗が追い詰められ、逃げ込んだ先は爆破予告のあった幼稚園だった。
立て籠もった郵便局強盗・矢部は爆破のこととなど露知らず人質を盾に逃走手段を用意するよう要求。
このままでは大惨事になると考えた高子たちがとった方法とは……。
素直に事情を教えることだった。
最初こそ信じなかった矢部だが、目の前で鉢植えが破裂したことで信じるように。
慌てた矢部は人質交換を要求。
こうして、高子が人質になってしまう……。
調停を延期するわけにはいかない高子は葵に代理として参加するよう命令。
葵は橋蔵を連れ調停へと向かう。
とりあえず人質になった高子だが、矢部に爆弾を捜すよう提案。
すると、掃除用ロッカーから園児の1人・希衣が見つかる。
希衣の両親は離婚しており、母親が新しい交際相手と付き合っていたことでショックを受けていた希衣は、この場を離れないと堅い覚悟を見せる。
そんな姿に自身の家族を思い出す矢部。
矢部は経営が上手く行かず、借金を負い、巻き込まないように妻子と離婚した。
いずれ、返済が終われば再婚する約束だったのだが……。
ある日、訪ねてみると妻には新しい男が居た。
しかも、娘からも境遇を同情されてしまう。
金さえあれば家族は帰って来ると考えた矢部は強盗に踏み切ったのだ。
希衣に娘の姿を重ね油断した矢部は高子に不意を突かれ制圧される。
強盗事件は解決した。
だが、爆破予告は解決していない。
未だ爆弾は見つからない……が、高子には犯人の見当がついていた。
希衣の鞄を探ったところ、出て来たのはヘリウムガス入りのスプレー缶。
希衣こそが脅迫の犯人だったのだ。
幼稚園の父親参観だが、離婚の為に父親の来ない希衣は中止させようと考えたのだ。
鉢植えが割れたのはビニールに入れたドライアイスをセットした為だった。
高子にこっぴどく怒られる希衣。
そして、希衣が要求したイケメン刑事の正体は……。
家族サービスにディズニーランドへ行っていた東刑事が急報を聞き現れる。
彼の頭にはミッキーの帽子が。
「あっ、あの人!!」
息を呑む希衣。
東は確かに一見、イケメンだがある秘密があった。
高子に帽子を脱ぐよう促された東、彼が帽子を脱ぐとそこにあったのは……いや、なかったものは!!
光輝く東の頭頂部。
それに気付いた希衣は途端に興味を失くし、「ないわ……」と呟くのだった。
一方、葵は調停が代理では受けられないと知り何も出来ないでいた。
ところが、相手方も本人ではなく母親が来ていたことで痛み分けとなる。
橋蔵を連れ現場へと戻った葵は何故か感傷的になっている高子を見る。
その視線の先には遅れながらも愛娘の為に駆け付けた希衣の父親の姿があった―――エンド。
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