「月刊チャンピオンRED 2012年1月号」(秋田書店刊)にて木々津克久先生「Phase20」が掲載されました。
もちろん、連載中の「フランケン・ふらん」も同時掲載。
つまり、世に言う2本立てというやつです。
で、これが2本ともクオリティが高かったので、本作を知っている人には改めて、知らない人にはオススメする意味も込めてネタバレ批評(レビュー)しちゃいます。
今回は「Phase20」です。
<ネタバレあらすじ>
魔法少女が宝石店を襲撃、魔法を用い宝石を躍らせ強奪する事件が発生。
刑事の金田一は3代目二十面相の仕業を疑う。
早速、二十面相が通う学校を訪れてみる金田一。
二十面相を見つけ問い詰めてみるが、自身の犯行ではないらしい。
逆に、「捕まえたい」とのことで協力を申込まれてしまう。
わざわざ魔法少女の姿で犯行を行っていることや、大金を盗みながらも満足していない様子から、自己主張の強い性格と見抜いた二十面相は罠を仕掛ける。
金田一の全面的なバックアップのもと、自らが魔法少女を演じ誘き出すことにしたのだ。
白昼堂々、報道陣のテレビカメラを前に宝石店を襲撃した二十面相は魔法を使って宝石を動かし始める。
と、そこへやって来たのは件の魔法少女強盗。
二十面相に挑戦状を叩きつけることに!!
こうして、対決することとなった2人の魔法少女。
二十面相が箒に乗って空を飛べば、魔法少女も対抗して空を飛ぶ。
……が、性能に差があるのか二十面相有利である。
魔法少女は二十面相に追い込まれてしまう。
窮地に立った魔法少女は二十面相を批難する。
スペックが違うから卑怯だと言うのだ。
魔法少女が指し示した先には、空の色と同化した無音ヘリコプターがあった。
そこから二十面相へとピアノ線らしきものが伸びているが……。
そう、2人の魔法は種も仕掛けもあるイカサマだったのである。
宝石が踊るのはピアノ線で動かしたもの。
箒による空中浮遊も空を飛ぶ乗物からピアノ線で吊り下げているだけだった。
ただし、二十面相が機動力のある最新鋭の無音ヘリコプターであるのに対し、魔法少女は飛行船だった。
性能差が勝敗に直結したのだ。
二十面相は、魔法少女の正体が初代から仕えていた博士の孫娘と看破。
二十面相が起こした数々の犯罪は博士の道具によるところが大きいらしい。
当の孫娘は祖父の偉業を二十面相が盗んだと批判する。
あんたほどの組織力を持っていれば……と睨みつける孫娘に「大所帯ゆえの苦労を知らない」と頭を抱える二十面相。
激情に駆られた孫娘は二十面相に突進。
ピアノ線が絡み合った2人はそのまま地上へと墜落して行く。
悲鳴を上げる孫娘に対し、二十面相は余裕綽々。
衝突寸前、箒を地上に向けると圧縮空気の塊を打ち出し、クッションに代えるのだった。
二十面相に追いついた金田一、そこには魔法少女の姿は無い。
二十面相は飛行船を指差し、アレで逃げたと主張。
警官隊は飛行船を追って行く。
全員が去った後、影から魔法少女が出て来る。
魔法少女は二十面相に感謝、父同様に仕えることを約束する。
これで終わったかに思われたが……実はこの様子を窺っている人物が居た。
金田一である。
「こんなことだろうと思った」
颯爽と現れた金田一は二十面相たちを捕まえようとするが……。
「詰めが甘い」
そう言い残すと二十面相は切り札を用い姿を消してしまうのだった―――エンド。
<感想>
本作かなり面白かった。
テンポ良く進むし、軽妙洒脱だしで、一読の価値はある。
その点、ネタバレあらすじでは上手く伝えきれていないと思う。
この漫画の纏っている空気感がイイのだと思う、キャラクターも立っているし。
これは是非本作を読んで感じて頂きたいと思います!!
コミックスはまだか!?
さて、作者である木々津克久先生と言えば、管理人にとっては「週刊少年チャンピオン」本誌での「ヘレンesp」の作家さんとのイメージ。
「ヘレンesp」は、盲目のヘレンがその特別な力(ESP能力)を駆使し、愛犬や叔父さんたちに見守られながら同年代の友人や幽霊など様々なものと交流する物語。
衝突したり理解し合えなかったりと苦難がヘレンを襲うものの、その都度ヘレンの純粋な心で相手に向き合い相手との心の壁を乗り越えていくさまは、心に響きました。
確かにあらすじだけ聞くとよくある展開かと思うものの、本作は不思議な“熱”と“説得力”を持っており、透明感のある淡い絵柄も加え、なかなかの名作といえるでしょう。
既に連載自体は終了していますが、こちらもオススメです。
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