日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season10(ten)」第9話「あすなろの唄」(12月14日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
とある研究室。
白衣の男が、ある水槽の前で溜息をつく。
これは揺り籠だ……男の脳裏に甦るのは仲間の熱の籠った声。
城南大学の微生物学研究室で、教授の高松肇(酒向芳)が遺体で発見された。
「明日の石油となる技術」―――高松教授は「バクテクロリス」という細菌から重油とほぼ同じ成分を作りだす画期的な研究を進めていたらしいが……。
当初、高松は心臓に持病があった為に病死と判断される。
ところが、遺体の臭いに右京(水谷豊)が疑問を抱く。
死因は病死では無く硫化水素の吸引による窒息死だったのだ!!
果たして他殺か?自殺か?
右京は遅れてやって来た神戸(及川光博)と共に捜査に当たることに。
ロシアのエネルギー企業などからも引く手あまただった「バクテクロリス」。
そんな「バクテクロリス」を培養している“高松ルーム”を調べようとしたところに1人の男が。
高松の共同研究者で光合成細菌を専門とする客員教授の栗田(利重剛)だった。
栗田から「バクテクロリス」について説明を受ける右京。
そのエネルギー効率は凄まじく、トウモロコシの5万倍らしい。
日本で育てれば、日本が世界有数の産油国になれる―――ほどの夢のシロモノだそうだ。
栗田によると、高松教授なら高濃度の硫化水素を作りだすことも可能らしい。
栗田は高松教授が自殺したと主張したいのだ。
しかし、高松が高濃度の硫化水素により死亡したとしても、そんな痕跡は現場にない。
栗田はもう1つの可能性として固形物として呑みこんだのではないかと指摘する。
あくまで自殺を主張する栗田だが、右京は他殺の可能性もあると付け加える。
捜査一課も捜査に参入。
栗田は「私が彼を殺した」と発言。
「資金集めの責任を高松教授に押しつけていたが、上手くいかなかった為に自殺したのではないか」と言うのだ。
しかし、研究室の職員によれば、高松のもとには資金提供や共同研究の申し出が相次いでいた。
食い違う証言。
そのことを尋ねられた栗田は、高松教授がその申し出を断っていたと話す。
高松教授は、資金難の中、資金提供の話を断っていたのか?
謎が残る中、捜査一課の捜査は自殺で打ち切られてしまう。
だが、伊丹たちは独自で捜査を継続。
出資を断られた企業を探ることに。
その頃、栗田は在りし日の高松教授を思い出していた。
バクテクロリスの水槽の前で陽気に歌を歌う高松教授。
「明日は檜になろう……つまり、あすなろだ」と呑気な高松。
一方、こちらは右京たち。
栗田教授の元同僚によれば「栗田は真面目で研究一筋」とのこと。
青潮の原因となる硫化水素を抑える細菌を発見したのも栗田らしい。
青潮を抑える為に青潮を用いたのだ。
バクテクロリスに硫化水素を蓄積する性質があることも判明。
右京は事件が硫化水素で繋がれたことに栗田の関与を確信する。
伊丹たちの捜査は難航。
出資を断られたものの、誰も高松を殺害するほどの動機はないらしい。
しかも、断られたのは海外企業ばかりだった……。
青潮を抑える為に青潮を用いる―――毒をもって毒を制する栗田の思考法に注目する右京。
一方、神戸は栗田が「これからの日本に有為な人物である」として、犯人ではないことを祈っていた。
伊丹の捜査の結果、エネルギー資源を輸出する海外のとある企業が高松と共同開発の約束を結んでいたことが判明。
ところが、高松が死亡したことでこの計画は頓挫していた。
共同研究者である栗田が反対していたからだ。
伊丹からこの情報を受けた右京は動機が分かったと呟く。
資金援助を断っていたのは高松教授ではなく、栗田だった。
つまり、栗田はこの技術は純日本製でなければならないと考えていたのだ。
にわか科学は目的を見失う。
目的なく開発してしまえば、科学は混迷してしまう―――そう口にしていた栗田。
栗田の目的は日本に資源を残すこと。
これは国益とも合致する有用な研究に間違いない。
右京たちは栗田を訪ね、バクテクロリスの株を提供して貰う。
硫化水素が残留しているかどうか、また残留していれば高松の殺害に利用されたものと一致しているかどうか鑑定する為である。
栗田は研究室のバクテクロリスから抽出された硫化水素と高松の死因となった硫化水素が合致したとしても自分の犯行だとの証拠にはならないと主張。
自分の研究で世界を救ってみせると豪語するが……。
休日を返上した米沢の献身により、“高松ルーム”にあったバクテクロリスから高松教授の命を奪った硫化水素が検出。
その夜、栗田は支援者の1人である衆議院議員・武井久美子に相談を持ちかけていた。
予算の援助をして欲しいと訴えたのだ。
さらに、国外持ち出し禁止も要求。
そして、もう1つ依頼を―――。
右京は無理を押して、さらに米沢に調査を依頼。
その内容は高松教授の身体に付着した硫化水素が何時のものか特定してくれとのもの。
右京に対し嫌とは言えない米沢は……引き受けることに。
武井は栗田の要求を国会で取り上げていた。
テレビを見つめる角田は「こういうのがあると思うと心強いね」と支持。
このタイミングだけに、右京は何者かの作為を感じるが……。
案の定、刑事部長に呼び出される右京たち。
国益となるバクテクロリスの研究者・栗田への捜査を取り止めろと圧力をかける。
もっとも、それで止まる右京ではない。
神戸も右京に賛同する。
右京は栗田に毛髪の提供を求める。
高松教授殺害後、犯人にも硫化水素の痕跡が残っていると考えたのだ。
それと被害者である高松に残された硫化水素の日時が一致すれば、犯人は栗田となる。
栗田は一旦拒否したうえで、一晩考えさせてくれないか……と訴えるが、右京はそれを認めない。
こうして、回収された栗田の毛髪。
哀れ米沢は今日も徹夜を余儀なくされる。
その頃、栗田はとある決意を固めていた。
栗田は特命係を“高松ルーム”へと呼び出す。
深夜、人気のない其処へ呼び出された右京たち。
急に現れた栗田に閉じ込められてしまう。
“高松ルーム”内は硫化水素が充満していた。
栗田は特命係を抹殺するつもりのなのだ。
少しして、確認しようと扉を開けた栗田。
と、中からガスマスクを着用した右京と神戸が飛び出してくる。
驚く栗田を取り押さえる2人。
右京は栗田の計画を予期していたのだ。
こうして、栗田は捕まった……。
「目的を見失っているのではありませんか?」
右京たちだけではなく、他に被害者を出しかねなかった凶行に、右京は栗田を諭す。
栗田は悄然と真実を語り始める。
高松教授は資金援助に行き詰まりを感じ、海外からの支援を受け入れようとしていた。
しかし、あくまで純国産に拘る栗田は高松の排除を画策。
トイレの水を流すと硫化水素が流れる仕掛けを施して殺害したのだ。
栗田はバクテクロリスは自分にしか開発できないと主張。
自分が捕まれば、開発は頓挫すると脅迫するが……右京に通じる筈もない。
しかも、“高松ルーム”内にあった栗田のバクテクロリスは全滅してしまう。
理由は1つ―――栗田が特命係を抹殺すべく使用した硫化水素だ。
彼の行いが“彼の研究全て”をぶち壊してしまったのである。
事実を知った栗田は自身の罪深さを初めて思い知る。
硫化水素を分解できるバクテクロリス、それが何故、硫化水素に敗れたか?
バクテクロリスは水中では硫化水素を分解できるが、空気中では分解できなかったのだ。
これまで知られていなかった特性だと言う。
事件は解決した。
しかし、これで日本のエネルギー開発は世界に比べて立ち遅れてしまう。
自身の行いが本当に正しかったのか―――悩む右京。
そんな右京に、神戸は鑑定用に抽出していた“バクテクロリスの株”を城南大学の研究室に返還しようと思うと述べる。
もしかしたら、この株から研究が始められるかもしれない。
「でも、研究できるのは栗田教授1人では?」右京が問う。
「信じてみようと思うんです」神戸が力強く答える。
右京は神戸の行動を認め、親指を立てニヤリと微笑むのだった。
希望はまだ残されているのだ―――9話了。
<感想>
2011年最後のシーズン10(ten)となった第9話。
脚本は櫻井武晴さん。
メインテーマは「公的な国益と私的な殺人を秤にかけるとどちらが重いか」。
「相棒」では何度か取り上げられているテーマですね。
もっとも、今回は栗田自身が暴走してしまった為に考慮する余地も無くなってしまいました。
途中まで、神戸と右京が対立するかと思われたところはドキドキしましたね。
以前、神戸は「シーズン9」の「暴発」にて、右京と志を異にしたこともあるだけに今回もそうかと思っちゃいました。
・「相棒season9」第6話「暴発」(12月1日放送)ネタバレ批評(レビュー)
そういえば、「暴発」も脚本は櫻井武晴さんか。
でも、今回は神戸と右京は共同歩調。
しかも、ラストで淡い希望を見せるなど心憎い展開。
正直、ホッとしましたし、やっぱり時を経て背中を許せる相棒となっているんだなと一安心。
特に今回は神戸がかなり活躍していましたね。
さて、それ以外で今回の見所はというと……「米沢さんの受難」と「久しぶりの特命係危機一髪」でしょうか。
まずは「米沢さんの受難」。
右京に使われる米沢さん。
今回で右京を殺す動機を持つ人間ランキング1位に輝きかねないこととなりました……って。
右京さん、米沢さんを休ませてあげて〜〜〜と米沢さんファンの悲鳴が聞こえてきそうです。
これが何処かで伏線になるのかな。
そして、「久しぶりの特命係危機一髪」。
亀山の頃は割とあったように思えますが、神戸になってからは久しぶりかな。
シーズン8や9は知的ゲームとしての推理面が強調されていて、犯人側も「古畑任三郎」のように決め手を押さえられた後は潔さを見せていました。
ところが、今回はかなりのはっちゃけぶり。
ピンチからの逆転劇には、血沸き肉踊りましたね。
今回の抹殺計画は栗田の必死さを表現したものでしょうか。
などなど、なかなか面白かったですね。
シンプルかつ上手くまとまっていて良かったと思います。
淡いながらも希望の残るラストだったのも効果的でした。
さて、2011年の「相棒シーズン10」放送はこれで終わり。
次の10話は2012年1月1日放送です。
で、10話以降では次の方々の出演が決定しているとか。
11話:高橋克実さん
12話:鈴木杏樹さん
14話:梶芽衣子さん
高橋さんで“相棒”といえば、シーズン5に出て来たマーロウこと探偵・八木明役。再登場ですね。
そして、鈴木杏樹さんで“相棒”といえば、言わずと知れた代書屋の女房・月本幸子。こちらも再登場。
食えない八木と、前向きに生きることにした幸子。
共に神戸とは初顔合わせとなりますが、どうなるのか……気になりますね。
さらに、梶さんと言えば『鬼平犯科帳』の「おまさ」役の名演が記憶に残っています。
こちらも是非期待!!
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