本作以外に『彷徨える美袋』のネタバレがあります、注意!!
<あらすじ>
ファン待望の新刊、綾辻行人「奇面館の殺人」と法月綸太郎「キングを探せ」の冒頭部分を先行掲載!著者お二人のメッセージ付きです!!さらに大人気シリーズ「QED」完結記念特別座談会として、著者と歴代担当者が創作の秘密を語り尽くします!
“メフィスト初登場ミステリ作家競作”では三木笙子、高井忍、詠坂雄二、相沢沙呼が執筆。第46回メフィスト賞受賞作や、“メフィスト総選挙”の結果発表など盛りだくさんな内容は見逃せません。
西尾維新最新作はじめ、山口雅也「垂里冴子シリーズ」、麻耶雄嵩「メルカトルシリーズ」や倉知淳、初野晴、上遠野浩平、化野燐、木原浩勝、深水黎一郎など話題作も目白押し。
豪華長編連載陣に、恩田陸、今野敏、我孫子武丸、二階堂黎人、あさのあつこ。
二階堂黎人「覇王の死」と、円堂都司昭「大胆エンタメ進化論」は、今号が最終回です!
(講談社公式HPより)
<感想>
銘探偵・メルカトル鮎シリーズ新作です。
2011年『メルカトルかく語りき』に続く新シリーズのタイトルは『メルカトル鮎 悪人狩り』。
あれ、メルカトル狩られちゃうん?との疑問をさておいて(おくなよ……)、その第1話が『囁くもの』。
・メルカトル鮎シリーズ新章突入!?タイトルは『メルカトル鮎 悪人狩り』に!!
メルカトルが鈴木君化してます……。
モチーフは、『彷徨える美袋(メルカトルと美袋のための殺人)』の変形。
ただし、使い方が全然違う。
あちらは意図的に犯行を起こすように誘導していたメルカトルだが、こちらは見越して犯行前から犯人を絞り込む為に行動を起こす……まさに神がかっています。
そして“囁くもの”って……正体を推測すること自体が無粋で無意味なのでしょうが、作者や作品世界を俯瞰しうる存在だとすれば、メルカトルがさらにメタ化してるともとれる!?
もともと逸脱した存在でしたが、もう超越者になってるな……。
此処までくると美袋が鳥取に来たのさえ、メルカトルの配剤のように思えて来る。
『かく語りき』のようにテーマがあるとすれば『悪人狩り』はこの路線でいくのだろうか。
加害者をコントロールし、被害者をコントロールし、容疑者をコントロールした。
だとすれば、次に来るのは……何だ!?
要注目です!!
<ネタバレあらすじ>
美袋は1人、鳥取へと足を運んでいた。
砂丘から死体が見つかる出だしの新作の取材旅行である。
と、そこでシルクハットにタキシード姿の人物を目にしてしまう。
見なかったことにして通り過ぎようとする美袋だが、例の着信メロディが。
ああ……と天を仰ぐ美袋だがもう遅い。
こうしてメルカトルに捕まってしまうのであった―――。
悪漢に捕らえられた姫ならぬ、メルカトルに捕らえられた美袋。
取材旅行の為になんとか逃げ出そうとするものの、当の目的そのものを潰されてしまう。
美袋の考えたモチーフ……砂丘から死体が見つかる物語はごく最近にテレビドラマで放送されたものだったのだ。
鳥取へやって来た意義も失い、もはや逃げ出すことも叶わぬ美袋はメルカトルに付き合うことに。
メルカトルはとある依頼に応じてやって来ていた。
依頼人の秘書・郡家に迎えられたメルカトルは意味ありげな視線を郡家に送る。
囁かれているんだ……ふと何かの拍子に口にしたメルカトルの言葉が美袋の胸に残った。
郡家に誘われ依頼者宅を訪れたメルカトルたち。
そこで、メルカトルは常の彼らしからぬ行動を次々と取り始める。
ガムを噛むメルカトル。
妙に蘭に興味を持つメルカトル。
ワケもなく喧嘩を売るメルカトル。
突然、演説を始めるメルカトル。
そのすべてに“囁き”が関連しているらしいが……。
矢先、郡家が死体で発見される。
早速、メルカトルの出番となったのだが……既に答えは出ていた。
メルカトルは消去法であっさりと犯人を導き出してしまう。
犯人は依頼人の子供である姉弟だった。
2人は姦通しており、それを郡家に知られていたので口封じを図ったのだった。
あっさりと解決した事件に拍子抜けする美袋。
しかし、ふと気付く。
今回の事件、あれだけ簡単に容疑者が特定できたのはすべてメルカトルの常にあらざる行動の賜物だった。
それにより、犯行時刻が確定し、ある者にはアリバイが生じ容疑者リストから消えることとなった。
そうでなければ、もっと難航していた筈だ。
メルカトルは囁かれた結果、あれらの行動をとった。
郡家が死亡する前から郡家殺害犯を導き出す為の行動をメルカトルは取っていたのだ!!
「囁きが聞こえるんだ」
メルカトルは誰にともなく嘯くのだった―――エンド。
◆関連過去記事
【メルカトルと美袋シリーズ】
・「メルカトルかく語りき」(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「メフィスト 2010 VOL.1」より「メルカトルかく語りき 第二篇 九州旅行」(講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「メフィスト 2010 VOL.3」より「メルカトルかく語りき 最終篇 収束」(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・「貴族探偵」(集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「隻眼の少女」(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・話題の新作「TRICK×LOGIC(トリックロジック)」収録シナリオが明らかに!!
・オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)
【関連する記事】
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