2011年12月13日

『オール・スイリ2012』(文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『オール・スイリ2012』(文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

本作以外に、感想にて『小人闍処ラ不善』のネタバレがあります、注意!!

<感想>

去年に引き続き発行されたオール讀物増刊です。
去年の「オールスイリ」についての感想は過去記事をどうぞ!!

オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)

2012年版である本作に収録されているのは次の8作品(敬称略)。

湊かなえ『望郷、夢の国』
東川篤哉『魔法使いと失くしたボタン』
貫井徳郎『籠の中の鳥たち ハーシュソサエティ』
麻耶雄嵩『バレンタイン昔語り 神様シリーズ』
乾くるみ『殺人テレパス七対子 美人雀士探偵』
奥泉光『海のクワコー』
有栖川有栖『探偵、青の時代 火村シリーズ』
辻村深月『君本家の誘拐』

これに特集記事で構成されている。

印象に残ったのは、やはり麻耶雄嵩先生『バレンタイン昔語り』。
原因と結果がひっくり返る『小人闍処ラ不善(『メルカトルと美袋のための殺人』収録)』の「神様シリーズ」バージョンである。
これには驚いた。
間接的にメルカトルと神様は同等となったのか?

東川篤哉先生『魔法使いと失くしたボタン』は魔法使いが主人公……と思わせといて男性刑事が主人公。
ファンタジーミステリでは前例があるものの、魔法使いの魔法により証言と証拠の正当性を担保したのは面白かった。
キャラも活きている。
なんとなく、特殊能力を持つお手伝いさんとの設定に筒井先生の『家族八景』を思い出した。

湊かなえ先生『望郷、夢の国』はいつもの湊先生テイスト満載の作品。
サプライズこそないが、著者特有の“毒”はみられた。

貫井徳郎先生『籠の中の鳥たち ハーシュソサエティ』は「フーダニット」と見せかけた「ホワイダニット」もの。
なかなか面白かった。

奥泉光先生『海のクワコー』は、ドラマ化が決定している「クワコーシリーズ」最新作。
ちょっとポイントが絞り切れず雑多な印象を受けたが、そこが味になっていた。
ちなみにクワコーとジンジンの間に恋愛フラグが立ちそうなのは……気のせいかな。

奥泉光先生『クワコーシリーズ』が2012年ドラマ化決定!!

辻村深月先生『君本家の誘拐』。
育児ノイローゼを描いた作品。流石に上手いなぁ……。
辻村先生はその著書『本日は大安なり』がドラマ化予定。

『本日は大安なり』(辻村深月著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

ただ、全体的にやっぱり大人しめの印象。
「これは!!」という圧倒的存在感を示すほどの傑作は無かった。
でも、今のミステリの流れが分かるラインナップではあると思う。
一読の価値あり。

<ネタバレあらすじ>

◆湊かなえ『望郷、夢の国』

夢都子(むつこ)は東京ドリームランドに憧れていた。
しかし、家族を拘束する祖母によりその夢は果たせていなかった。
結婚し子供も生まれた夢都子は、遂にその夢を果たす。
しかし、どこか達成感が無い。
地元の玩具みたいな遊園地を訪れた夢都子は此処こそが自分の求めていた「夢の国」だと気付く。
拘束から解き放たれた解放感。
しかし、夢都子はこの解放感の為に過去に薬を失くした祖母を見殺しにしていた。
心の奥がチクリと痛む―――エンド。

◆東川篤哉『魔法使いと失くしたボタン』

泉田健三は義兄である槙原浩次を殺害した。
その帰路、交差点で自宅のお手伝いさんに似た女性を轢き殺しそうになってしまう。
慌てて周囲を確認するが、その女性の姿は消えていた。
まさか……と思いつつ帰宅すると、彼女は其処に居た。
車よりも速い人間が居る筈がない、健三は見間違えだったと1人納得するが。

翌日、刑事の小山田が捜査の為に来訪。
彼は健三宅のお手伝いを見て、大変に驚く。
それもその筈、彼女は顔見知りの魔法使い・マリィだったのだ。
小山田は以前にもマリィの主人を犯人として逮捕していた。

マリィによれば「昨晩、健三の運転する車に轢かれそうになったが咄嗟に箒で空へと逃げた」と言う。
健三の証言通りならば、その時間そこに健三が居る必要はない。
こうして、マリィの協力で健三を調べることに。

自白を迫る紅茶により、自身の犯行を認めた健三。
あとは証拠を押さえるのみだ。

実は健三は大きなミスを犯していた。
健三の証言通りだと車庫に入れた車から健三は降りることが出来ないのだ。
こうして、犯行の露見した健三は車で逃走。
しかし、マリィにより車ごと横転させられてしまい捕まるのだった―――エンド。

◆貫井徳郎『籠の中の鳥たち ハーシュソサエティ』

別荘へとやって来た僕たち6人。
しかし、別荘付近で暴漢に襲われた千鶴を助ける為に河内が相手を殺害してしまう。
僕は河内の行為に罪があるとはどうしても思えず、他のメンバーと共に彼を庇うことにする。
しかし、正義感の強い河内は塞ぎ込んでしまう。

直後に千鶴を含めた仲間2人が殺害されてしまう。
外部犯は考えられない。

残った4人のメンバーの中に犯人がいるのか?
悩んだ僕だが、犯人は分かり切っていた。
しかし、彼が2人を殺した理由が分からない……。

千鶴たちを殺害した犯人として河内を告発する僕。
河内は罪を認める。
動機は「暴漢を殺した河内を庇うという罪を犯した者たちに償いをさせるため」だった。
犯行が露見した河内は自殺してしまう。

僕たちは、河内が暴漢を殺害したあのとき、一体どうしていればよかったのだろうか―――エンド。

◆麻耶雄嵩『バレンタイン昔語り 神様シリーズ』

俺こと桑町淳は神様・鈴木にお伺いを立てていた。
川合高夫を殺害した犯人について尋ねたのだ。
探偵団のリーダー・市部からは近付かないように釘を刺されていたのだがどうしても確認したかったのだ。
鈴木は俺に「犯人の名は依那古朝美」であると告げる。
その名前には聞き覚えが無かった。

それもその筈、朝美とは数日後に転校してきた同級生の母親の名だったからである。

本当に川合を殺害したのは朝美なのか?
川合と同病院の同年同月同日に生まれたというその親友・赤目と共に調査に乗り出す俺。
実は、俺と川合、赤目には因縁があった。

俺は川合と赤目から交際を求められたことがあったのだ。
結局、2人から交際を求められたこと、当時、赤目に彼女が居たこともあって、俺は2人ともを拒否した。
川合は赤目が原因だと考え、憤りを覚えていたらしい。
その数日後、川合は神社にて死体で発見される……。

この事件の犯人が朝美なのか?
朝美に近づく俺たち。
真相を掴むべく、神社の丑の刻参りについて触れる赤目。
朝美に動揺の色が見られた。

朝美を監視する俺たちだが、意外な光景を目にすることに。

朝美は神社に赴くと丑の刻参りを始めたのだ。
呆然とする俺たちに気付いた朝美は見られたからには生かしてはおけぬと口封じを目論む。
俺を庇った赤目は殺害されてしまう。
朝美は捕まり、なんとか俺は助かるが……。

後日、市部との会話で朝美が川合を殺害していないことが明らかになる。
では、鈴木の千里眼は外れたのか?

市部は首を振る。
鈴木の言葉を正しくする解釈が1つだけある、と。
それは、川合と赤目が生まれてすぐに取り違えられていた可能性だった。

つまり、川合は赤目で、赤目こそ本当の川合高夫だったのだ。

鈴木の言葉は千里眼では無く予言だった。
そして、鈴木の言葉により間違いなく赤目……本物の川合高夫は殺されることとなったのだった―――エンド。

◆奥泉光『海のクワコー』

クワコーは文芸部員と共に海に来ていた。
そこで事件が発生!!
部員の水着が盗まれたのだ。
しかも、それがクワコーのバッグから出て来てしまう。
クワコーは身に覚えが無く、無実を訴える。
真犯人は別に居る!!
怪しい人物は其処彼処に居るのだが……。

遅れてやって来たジンジンが出した答えとは―――。

武市の甥と姪が犯人だと言う。
武市は黄色い水着を見せることで復縁のサインとしていた。
甥っ子たちは武市が復縁することでアミューズメントパークに連れて行って貰う約束が消えることを恐れた。
そこで、誤って部員の黄色い水着を盗んだ。
しかし、隠す暇がなく近くにあったクワコーの鞄に入れたのだった―――エンド。

◆辻村深月『君本家の誘拐』

良枝はベビーカーに乗せた娘・咲良をショッピングモールで見失う。
誘拐なのか……従業員が大騒ぎする中、良枝は1人、物思いにふける。

実は、良枝は育児ノイローゼにかかっており咲良が消えたと騒いだのは狂言だったのだ―――エンド。

「オール・スイリ2012」です!!
オール・スイリ2012





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