2011年12月16日

『キングを探せ』(法月綸太郎著、講談社刊)

『キングを探せ』(法月綸太郎著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

殺しのターゲットは4人
シャッフルされた犯行の行方は?
完璧な交換殺人を目論む男たちに、綸太郎の頭脳は勝てるのか
法月綸太郎シリーズ長編書き下ろし!

奇妙なニックネームで呼び合う4人の男たち。なんの縁もなかった彼らの共通項は“殺意”。
どうしても殺したい相手がいる、それだけで結託した彼らは、交換殺人を目論む。誰が誰のターゲットを殺すのか。それを決めるのはたった4枚のカード。粛々と進められる計画に、法月警視と綸太郎のコンビが挑む!
(講談社公式HPより)


<感想>

法月綸太郎先生『生首に聞いてみろ』以来4年ぶりの長編です。
法月綸太郎先生と言えば『都市伝説パズル』が管理人の中で短編ベスト3に入る作家さん。
それだけに期待していました!!

そして、その期待は見事に報われたのです!!
本作は間違いなく2012年のランキング本命候補の1つでしょう!!

著者の企みに満ちた一冊であることは間違いありません。
誰が誰の殺人を担当したのかがキモ。
ラストの犯人すら意図しなかったトランプの意味が出現するシーンで震えました。
タイトルにも深い意味が……キングは初めからいない、居たのはジョーカーのみ。
なかなか、諧謔的な結末にも脱帽。オススメです!!

ネタバレあらすじでは意図的に改変している部分があります。
改変部分は是非、本作を読んで確認してみてください。

これに興味を持たれたら『法月綸太郎の功績』収録の『都市伝説パズル』も是非!!
あれも凄い!!

<ネタバレあらすじ>

四重交換殺人を目論む4人の男たちが居た―――カネゴン、夢の島、りさぴょん、イクル君。
それぞれをニックネームで呼び合うこの男たちの目的はひとつ。
それぞれが抱える殺したい相手を殺すこと。
そこで四重交換殺人となったワケだ。

それぞれがそれぞれの標的を交換し殺害する。
自身の標的が殺害される日時には完璧なアリバイを作る。
そうすれば―――完全犯罪が成立する筈だった。

4人のリーダー・カネゴンはそれぞれの担当の選定と実行の順番を決めるべく、トランプを持ち出す。
カネゴンによれば、標的の名前とトランプのアルファベットは対応しているらしい。
例えば頭文字。例えばイメージ。
「Q」は「クイーン」だから「妃」、そこで「妃名子」といった具合だ。

4人はカードで順番を決めると、成功を祈願して乾杯するのだった……。

夢の島の担当はイクル君の叔父・安斉。
安斉は資産家で疑い深くイクル君は迷惑しているらしい。

夢の島はイクル君から安斉の特徴を聞き出すと、実行に移る。
強盗に偽装すべく夢の島は安斉を拘束すると、その隠し資産を聞き出す。
安斉の隠し資産は天井裏に隠されていた。

イクル君に警戒を呼び掛けられていた夢の島は札束から糸が伸びていることに気付く。
安斉は札束の一部に穴を開け、糸を通し、その先に警報装置を繋いでいたのである。
罠に気付いた夢の島は穴の開けられていない札だけを選び、盗み出す。
罠が仕掛けられていることに気付いた強盗犯が安斉を殺害したとのシナリオだ。
こうして、夢の島は安斉を殺害する―――。

捜査担当となった久能刑事は動機のあるイクル君を取り調べるが、イクル君自身には鉄壁のアリバイが。
当然だ、手を下したのはイクル君ではないのだから。
こうして、悲願を遂げたイクル君は自分の義務を果たす番に。

次の標的は夢の島の妻・妃名子。
妃名子は縊死体で発見される。
自殺なのか、他殺なのか?

この事件の捜査に当たったのは、法月警視。
当然、綸太郎も出馬。

自殺に見せかけた他殺か、それとも本当に自殺か?

保険金の受取人となっていた夫・夢の島への疑惑が強まり、夢の島には監視がつく。
一方、当の夢の島は妻の友人から脅迫されていた。
妃名子が自殺ではないかと言うのだ。
もしも、自殺ならば保険金は受け取れない。
もちろん、交換殺人による死である以上、それはありえない筈。
だが、それを言ってしまうワケにもいかない夢の島は一度だけ脅迫に応じることに。

支払いにあてたのはあの時盗んだ安斉の隠し財産。
銀行のATMで振り込もうとした矢先、あることに気付く。
脱兎のごとく逃げ出す夢の島は、慌てた拍子に車にはねられ、捜査員の目の前で事故死してしまう。

何故、夢の島は逃げ出したのか?
捜査員の監視に気付いた?
答えはNO。

それは意外な結果だった。
夢の島が安斉宅から盗み出した札はカラーコピーによる偽札だったのだ。
安斉は2重の罠を仕掛けていたのだ。
1つは警報装置、2つは使用不可能な偽札。
ところが、夢の島はそれに気付かずATMで使用しそれに気付いた。
もしも、偽札に気付かれ入手経路を問い質されれば全てが露見する。
そこで、夢の島は必死に逃げようとして誤って命を落としたのだった。

こうして、安斉殺害犯として夢の島が断定。
加えて夢の島の所持品から「A」のトランプが出て来てしまう。
「A」はもちろん、「安斉」のイニシャル「A」だ。

さらに、イクル君が謎の失踪を遂げる。
イクル君の自宅から「J」のトランプが発見され、綸太郎は交換殺人を確信。
しかも、二重ではなく三重交換殺人に思い至る。

綸太郎の助言を受けて、最近の事件で犯人の捕まっていないものを調べ始めた法月警視。
謝花(じゃばな)という市民運動家宅が銃撃された事件などが浮かぶ中、上条(じょうじょう)という男性が焼死した事件を突き止める。
上条は家族の鼻つまみものとなっており、弟からは殺してやりたいと罵られていたことが判明。
当然、容疑は弟に向いていたが彼には鉄壁のアリバイがあった。

またも、アリバイ!!
しかも、上条のイニシャルは「J」だ。
怪しんだ綸太郎は上条の弟こそが交換殺人のメンバーの1人であると考える。
そこからさらに推理を進めた綸太郎はもう1人の存在に行き当る。

四重交換殺人の可能性に思い当たったのだ。

もう1人居るかもしれない……。
最後の1人を焙り出すべく、綸太郎は古典的な罠を仕掛ける。

イクル君の名前を使い上条の弟あてに手紙を送ったのである。
手紙を受け取った上条の弟は激しく動揺。
メンバーの残った1人である関本に連絡を取る。

上条弟は小説家志望の塾講師。
関本はモデルガンショップの店長。

そして、りさぴょんこそ上条弟。
カネゴンこそ関本であった。

彼らはゴミ収集のボランティアで出会った。
交換殺人を目論む関本にとって志を同じくする仲間を捜す場として最適だったのだ。
そこで、4人1グループとなった相手が、夢の島、りさぴょん、イクル君だった。
彼らの特異なニックネームはこのボランティアから生まれたのだ(りさぴょん+イクル君=リサイクル)。

思わぬところから追い詰められ、錯乱するカネゴン。
そんな関本をリーダーの器では無かったと冷たく分析したりさぴょん。
りさぴょんはイクル君からの手紙を受けて、ある策を実行に移す。

上条弟と接触したことにより関本が捜査線上に浮上。
法月警視は2人の身辺調査を命ずるが……矢先に上条弟が自首してしまう。
上条弟の所持していたトランプは「K」。
まだ、殺害を実行していないので出頭したと言う。

「K」の標的は関本の税理士らしい。
関本は彼が妻と浮気していると思い込んでおり、殺意を募らせたと聞いていると上条弟は供述。
ところが、浮気の事実は存在すらしていなかった。
関本の思い込みが事件の引き金となったのでは……と感想を述べる上条弟。

次いで、身柄を押さえられた関本も供述を開始。
関本が担当したのは「Q」、つまり夢の島の妻「妃名子」。
しかし、関本によれば妃名子は既に死んでいたと言う。
妃名子は自殺だったのだ。

彼らの供述によれば―――

「A」夢の島が安斉殺害。
「J」イクル君が上条殺害。
「Q」カネゴン(関本)が妃名子殺害(実際は自殺)。
「K」りさぴょん(上条弟)が実行前に自首。

となる。法月警視は殺人の実行犯は2人。
夢の島とイクル君のみで、夢の島は既に死んでいるのでイクル君を追うしかないと語る。
こうして、四重交換殺人事件は終わったかに思えたが……。

ところが、この結末に綸太郎は疑問を抱いていた。
上条弟の書いた小説を目にする機会のあった綸太郎は、彼がこじつけの名手であることに着目。
今回の事件にも作為の影があると感じる。

そこから遂に真相を導き出すことに。

綸太郎の推理を受けて、精神的に弱い関本から崩すことにした法月警視。
案の定、関本は法月警視の指摘を受けて完敗宣言することに。

真相は次のようなものだった。

イクル君からの手紙を読んだ上条弟は捜査本部が大きな勘違いをしていることに気付いた。
何故なら、イクル君は既に関本により殺害されていたから。
イクル君は標的をどうしても殺すことが出来ず、メンバーからの離脱を望んだ為に口封じされたのだ。
イクル君は「J」担当、上条を殺害している筈だが……どういうことなのか?

実は4人が標的を決める際に使用したカードに理由があった。
綸太郎は「A」「J」「Q」「K」の4枚だと思い込んでいた。
ところが、4人が使用したのは「A」「J」「Q」「ジョーカー」の4枚だったのだ。
そう、「J」のターゲットは2人居たのだ。

そこで、これを利用して犯行を偽装することにした。
本来無かった「K」を加え「ジョーカー」を破棄すると、関本の「K」と上条弟の「Q」を交換したのだ。

「A」こと安斉は夢の島の担当。
ここまでは正しい。
しかし、ここからが違う。

上条弟は「Q」の担当。
つまり、彼は妃名子の自殺を発見した人物。

そして、関本こそが「ジョーカー」にして上条の担当。
関本はイクル君殺害の前に既に殺人を実行していたのだ。

イクル君の担当は銃撃事件のあった謝花の「J」だった。
イクル君は関本から渡された銃で殺害を狙ったが、怖くなって果たせず義理を果たすべく自宅への銃撃に留めたのだ。

謝花を殺したがっていたのは関本。
謝花はサバイバルゲームで弾に当ってもゲームを続行するゾンビ行為の常習犯。
それを関本が注意したところ、逆恨みし関本の店への嫌がらせを続けた挙句、娘にまで手を出そうとしたので関本に憎まれたのだった。
関本が交換殺人に拘った理由は此処にあったのだ。
約束を果たさなかったイクル君はこうして人知れず抹殺された。
謝花については実際に手を汚していない上条弟が担当する予定だったらしい。

関本と上条弟が語った事件の構図には大きな歪曲が含まれていたのだ。
事実はこうだった。

「A」夢の島による安斉殺害。
「J」イクル君による謝花殺害未遂。
「Q」上条弟による妃名子殺害(実際は自殺)。
「ジョーカー」関本による上条殺害。

そして、関本によるイクル君殺害。

これが事件の全貌だった。
「K(キング)」を探していた綸太郎。
だが、リーダーが関本から上条弟に代わったように、初めから「K」こと「キング」は居なかったのだ。

そして、綸太郎は気付いてしまった。
実際に死亡した4人を死亡順に並べるとトランプ通りの並びとなることに。
それは決して犯人が意図したものではない筈にも関わらず―――エンド。

「キングを探せ」です!!
キングを探せ





『都市伝説パズル』が収録された「法月綸太郎の功績 (講談社文庫)」です!!
法月綸太郎の功績 (講談社文庫)





コミック版もあります。
「都市伝説パズル―法月綸太郎の事件簿 (SUSPERIA MYSTERY COMICS)」です!!
都市伝説パズル―法月綸太郎の事件簿 (SUSPERIA MYSTERY COMICS)






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