2011年12月19日

『七人の敵がいる』(加納朋子著、集英社刊)

『七人の敵がいる』(加納朋子著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

ワーキングマザーのPTA奮闘小説!
出版社勤務の陽子は、息子が小学校に入学して初めてのPTA役員決め保護者会で空気を読めず、早速「敵」を作ってしまう。(「女は女の敵である」)…等、働くママと7人の敵との戦いを痛快に描く。
(集英社公式HPより)


<感想>

本書はとある女性による6年間の戦いの記録である!!

凄いです、一息に読めました。
管理人の中では加納先生と言えば『ななつのこ』と思っていただけに、本作はまさに衝撃でした。
『ななつのこ』『ささらさや』『アリスシリーズ』など、芯が強いとはいえ、どちらかといえば線の細い女性を主人公にしていた加納朋子先生。

ところが、本作は「勝気」で「強気」な女性主人公。
ここでまず意表を突かれました。

そして、「家族愛」があって「人間愛」があってと盛り沢山のテーマ。
強い女性たちも見どころ。

これが痛快!!見ていて快哉を叫びたくなるほど!!
女性たちが奮闘する姿は上品な筆致で描かれており、男性でも充分楽しめる。
むしろ、女性の気持ちを知るバイブルと言えましょう。
オススメです!!

収録作は次の7編にエピローグを加えた8編。

・女は女の敵である
・義母義家族は敵である
・男もたいがい、敵である
・当然夫も敵である 
・我が子だろうが敵になる
・先生が敵である
・会長様は敵である
・エピローグ

印象に残ったのはある秘密が明かされる『我が子だろうが敵である』とすべてが此処にまとまる『エピローグ』。
圧巻です。
ミステリでは無いけど、本当にオススメ!!
管理人のネタバレ書評(レビュー)など、ものの数ではありません。
是非、本作を読んで頂きたい!!

ちなみに本作は2012年にドラマ化が予定されています。
原作通りドラマ化すれば絶対面白い筈です、超期待!!

<ネタバレあらすじ>

【女は女の敵である】

息子・陽介ももう6歳。
小学校進学で少しはラクになるかも……と考えているのは兼業主婦にして編集者の陽子。
しかし、この考えは甘かった!!

入学早々、初の保護者会に参加した陽子はその認識が大間違いであると気付かされる。
父兄から役員を決めることになったのだ!!
陽子は、編集者という仕事柄、土日もなく平日も無きに等しい、時間も不規則である。
当然、通常の仕事を抱えた上に、役員の仕事を全うすることなど出来はしない。
あっさりと結論付けた陽子は仕事を理由に真っ先に就任を拒否してしまう。
これがマズかった……。

この陽子の行動を周囲の母親たちは敵対行動とみなしてしまう。
陽子がしまったと気付き、慌ててフォローを入れるも焼け石に水。
むしろ、事態は悪化するばかり。

しかも、会議は陽子の拒否を皮切りに混沌の度合いを増し、遅々として結論が出ない。
ところが、強気の陽子は仕事の時間が迫っていることもあって「相手に出来ない」と途中で帰ってしまう。

後にこの判断を陽子は悔やむことになる。

陽子が欠席した為に勝手に役割りが割り振られてしまったのだ。
給食費の回収係にされた陽子は、同じく係にされた村辺と共に役目を全うすることに。
本当はもう1人、五十嵐という保護者も居たのだが彼女は興味がないとエスケープしてしまう。

アクシデントがあったものの、的確に物事を進める陽子の力で回収は成功。
さて合計金額を……と確認したところ何故か5千円足りない。
困惑していたところにひょっこり五十嵐がやって来る。

五十嵐は髪を染めた明らかに普通とは思えない出で立ちで現れた。
呆気にとられる陽子を前に、五十嵐は村辺が盗人だと指摘する。
その指摘通り、村辺の所持品から見つかる5千円。
村辺には盗癖があったのだ、かなり有名な話らしい。
これまた呆気にとられる陽子。

ここで、陽子ははたと気付く。
このクラスでの陽子の認識が村辺や五十嵐と同じ、いや、それ以下であるということに。

このままでは陽介にも影響が出てしまう―――陽介を守るべく陽子は戦い抜くことを選択。
村辺の盗癖をネタに村辺を支配下に収めると、五十嵐にも協力を要請。
係の仕事を無事にやり遂げるのだった―――エンド。

【義母義家族は敵である】

陽子は夫・信介の母、つまり姑に恵まれていると思っていた。
陽子が仕事を続けられるのも、姑が陽介の面倒を見てくれているからなのだ。
それ以外でもいろいろと姑に助けられている。

陽子は姑についての評を看護師をしている友人・遥に洩らすと、嫁として姑が自分に不満が無いか探ってくれないかと頼む。

実は最近、姑に頼りきりの自分を小姑に批判されたばかりなのだ。

遥に依頼した数日後、姑から「体調が思わしくないので陽介を迎えに行けそうにない」と陽子に電話がかかって来る。
ところが、陽子も仕事で陽介の迎えが出来ない。
そこで、信介に頼んだらどうかと提案したところ、姑は「だったら自分で」と引き受けた。
気にはなっていたものの、後で夫に尋ねると「元気だった」と言う。

この言葉を鵜呑みにしたのが甘かった。

翌日、小姑から連絡があり、確認したところ姑が熱を出したらしい。
やはり、無理をしていたのだ。

来訪を伝え姑を訪ねると、小姑たちも揃っていた。
陽子は姑の負担も考え、今後は出来るだけ自分たちだけで何とかすること。
それでも無理な時は姑にお金を払って助けて貰う形に落ち着けることを主張する。

反発する小姑たち。
「仕事を辞めれば、そこまでする必要はない」と言うのだ。

陽子はこのときの為のとっておきの切り札を切る。
「仕事なんですが、あのドラマ化されている作品を担当してるんです。ドラマの現場にも顔を出しました」と。

これは効果覿面だった。
小姑たちは忽ちミーハーになり、陽子の仕事を褒め称える。
もはや、辞めろなどとの雰囲気ではない。
それどころか、陽介の世話を協力してくれると言うのだった。

こうして窮地を切り抜けた陽子。
後日、遥に例の質問の結果を聞かされる。

その答えは―――「何の不満もない」とのものだった。
陽子は姑に恵まれているのだ―――エンド。

【男もたいがい、敵である】

子供会に参加するのも親たるものの役目である。
陽子はこちらの役員にもなっていた。

毎年恒例のレクリエーションを行うこととなった。
会長はやる気を見せてスイカ割りを行うことを提案するが、陽子は具体性に欠けるその提案を完膚無きまでに論破してしまう。

職場ではブルトーザーと揶揄されている陽子。
名付け親はある作家で、その作家によれば理路整然と詰め寄り、何もかもを薙ぎ倒すさまを例えたらしい。
作家は陽子のそんなところに好意を持っており、一時期は交際に発展しかけたこともあった。
結局、公私を混同しない陽子のポリシーによりそこまで進まず、陽子は信介と結婚したのだ。

さて、陽子には職場でも敵が多い。
そして、それは男性である。
編集部あての電話をとらない後輩や、そんな後輩を支持する上司などもそんな1人だ。
陽子はついつい衝突してしまう。
彼らに対しても先の会長と同じことを繰り返すからなのだが、こればかりは身に染みついた性根だからどうしようもない。

レクリエーション当日がやって来た。
陽子は信介や陽介と共に参加することに。

ここでも陽子はてきぱきと場を仕切り、成功に導く。
そんな中、会長は一度でも自身が発言したことを曲げたくないのか、どこかからスイカを持ち込む。
男のプライドの高さに呆れるやら感心するやら。

ソフトクリームを巡りマナーの悪い参加者を叱りつけるなど、活躍する陽子。
一方、陽子の予想に反し、スイカ割りは男性からの受けが良く子供も大人も大いに盛り上がった。
有言実行した会長を見直した陽子は一部費用を負担すると申し出るが……会長の反応は予想外だった。
会長が唐突に泣き出したのだ。

会長は陽子を見て妻のことを考えたのだと言う。
会長の妻は大人しい人物で学校関係の役員を背負わされた結果、いじめに遭い引きこもるようになってしまったそうだ。
「妻があなたみたいな人だったら……」と洩らす会長に、陽子は「そんな人だからこそ好きになったんでしょう」と答えるのだった。

数日後、陽子は出版関係のパーティーの席上で例の作家と出会った。
そこにはあの上司と後輩も同席していた。
彼らは陽子の異名・ブルトーザーをだしに作家に親しげに話しかけるが、作家はそれぞれの弱点を指摘する。

後輩が電話に出ないのは、過去にストーカーで酷い目に遭っていたため。
上司は最近、離婚の危機らしい。
そそくさと逃げ出す2人。

情報通の作家。
ところが、作家は陽子の結婚についてだけは知らないと言う。
何故なら、知りたくない情報は耳に入れないからだった……。

【当然夫も敵である】

思えば夫に任せたのが間違いだった―――今更ながら陽子はそう思っていた。

自治会の出席を信介に任せた陽子。
帰って来た信介は陽子に気軽に話しかける「あ、自治会長になったから」と。
凍りつく陽子。
信介のことだ、仕事を理由に陽子に丸投げして来ることが分かっていたからだ。
案の定、陽子に実務を任せる様子の信介。
しかも、他にPCが出来る人間が居ないとの事情で総務係も引き受けたらしい。

たださえ忙しいのにこれ以上はこなせない……決意を固めた陽子は自治会に夫の代理として参加。
役職を断ろうとするが……先代の自治会長は首を縦に振らない。
それどころか、陽子を責め立てる始末。
困り果てた陽子は総務係だけでもと、本来総務を担当する筈だった小川に引き受けるよう迫る。
しかし、陽子の剣幕に小川は泣き出してしまう。
泣きたいのはこっちだ……と思う陽子だが、泣く子と地頭には勝てぬ。
強く出られない内に周囲は小川を支持し始める。
結局、これがまたも反感を買うことに。
しまった……と気付いた時にはもう遅い。
あっという間に陽子包囲網の完成である。

もうどうしようもない、退くに退けない陽子は総務係だけは絶対に引き受けないと不退転の決意を見せる。
議事はそのまま進行。
先代会長から自治会長として信任を受けてしまう陽子。
一方、総務係を引き受ける筈の小川は泣いたままで動かない。
先代の総務係・岬は困惑しながらも取りまとめに奔走。
とりあえず、その場を解散まで進めることに成功する。

総務係問題は棚上げとなってしまった。

しかし、陽子は気付いていた岬が優秀な女性であることに。
実は先程のトラブルを大事にせず未然に収めたように、先代の自治会はすべて岬が切り盛りしていたのだ。
岬は元大手企業の人事担当、自分の両親と夫の両親の介護の為に仕事を辞めてしまったが、人を視る目には自信があると言う。

そんな岬が提案した問題を解決する妙案とは。

自治会長と総務係の仕事を分けるのではなく、合わせた上で陽子と小川の適正に合わせて再配分するとのアイデアだった。

自治会長の職分には地元の老人会や商工会との折衝も含まれる。
祭りの際には労働力の提供も求められるらしい。
そんな交渉ごとは陽子よりも、可愛がられ易い小川の方が適していると指摘。

一方、書類仕事や事務仕事、データの分析業務や仕切りなどは陽子が適している。
単純なコピーや配布仕事ならば小川も出来るだろう。
こうして、2人で仕事を分ければ得意分野が活かせて丸く収まるだろうとのものだったのだ。

陽子は岬の慧眼に舌を巻く。
事実、岬の提案は的を得たものだった。

陽子と小川の役割分担は功を奏し、互いに水を得た魚のように成果を上げて行く。
地元の老人たちに可愛がられる小川の特性がフルに発揮されたのだ。

そんなある日、岬の養父は死亡したとの報が届く。
自治会長としては弔慰金を届けなければならない。
岬の家を訪ねた陽子は変わり果てた岬の姿を其処に見つける。

なんでも岬は介護に疲れており、養父が死亡した際につい「1人減った」と口にしてしまったらしい。
それは悪意でもなんでもなく岬にとって単なる事実だったのだが、夫が聞き咎めて出て行ってしまったと言う。
もっとも、夫は岬が居ないと介護ができないのでやがて戻って来るだろうとのことだが……。
仮に死亡したのが実父だったとしても同じことをしたと告げる岬。
陽子は彼女を励ます言葉を持たなかった……。

数日後、信介は屋台で焼きそばを焼いていた。
夜祭の人手として陽子が貸し出したのだ。
自治会長らしい仕事もしていないのだし、それくらいはいい筈だ。
と、そこへ小川とその娘がやって来る。
2人とも楽しそうだ。

小川は自治会の仕事を通じて知り合った人物に仕事を斡旋して貰ったらしい。
自治会の仕事も決して無駄ではなかったと無邪気な感想を述べる小川。
そんな小川に就職祝いとしてかき氷をプレゼントする陽子。

幻想的な祭りの風景。
陽介も信介も活き活きとしている。

陽子は思う。
こんな景色こそ守って行って貰いたい、と―――エンド。

【我が子だろうが敵になる】

陽介が4年生になった。
ということは、陽介の自由時間が増えてしまう。
親としては陽介には何かしていて貰いたい。
そこで、スポーツを奨めることにした陽子。
この目論見は半分成功、半分失敗する。

野球を選んで欲しかったのだが、陽介は先輩に憧れてサッカーをしたいと言い出したのだ。
これには父親の信介も乗り気になってしまい、陽介はサッカーのスポーツ少年団に入団することに。

ところが、これが間違いだった。
陽子は仕事柄、常に応援には行けない。
当初こそ、元気いっぱいだった陽介は、半年もしないうちにみるみる生彩を欠いていく。

気になった陽子が調べたところ、スポーツ少年団では親の応援は当たり前。
結果、四六時中拘束されることになり、専業主婦でないとこなせないのだ。

愕然とする陽子。
しかも、陽介は陽子が継母だから自分を可愛くないのだと呟く。

どこから聞いたの!?
問い質してしまう陽子。
それは陽介にはまだ秘密だった。

陽子には日向という従妹が居た。
陽子は日向を娘のように可愛がった。
日向もまた陽子を母のように慕った。

やがて、日向に恋人が出来た。
そのまま日向は結婚してしまう。
陽子は日向の結婚相手を憎み、当人から「父親みたいだ」と評されていた。

日向は妊娠。
その頃、陽子は仕事に無理をし過ぎ倒れてしまう。
日向は妊娠中にも関わらず、臨月になるまで陽子の世話を焼いた。
ある日、日向は陽子に儚く微笑んだ……それが日向の最期の笑顔となった。

出産当日、日向の出産は難産で母体か子供か選択を余儀なくされた。
陽子は母体を選ぶよう日向の夫に迫るが、夫は「どちらも大事、選べない」と拒否。
結果、日向は死亡してしまう。
元気な赤ん坊を残して。

日向の夫は陽子に日向の最期の言葉を伝えた。
「2人で子供を助けて」と。
そして、日向の遺した子供の名前には陽子と日向の夫の名が1文字ずつ入っている。

そう、日向の遺した子供こそ陽介。
そして、日向の元夫こそ信介である。

最初は反発していた陽子だったが、日向のように信介に惹かれて行く。
また、信介も日向のように陽子に惹かれていたと言う。
こうして、2人は結婚し陽介を育てたのだ。

陽子と血の繋がりが無いと泣きじゃくる陽介を抱き締める陽子。
陽子もまた泣きながら自分が如何に陽介を想っているかを伝えるのだった。
陽介はそんな陽子の姿に「母を守る」と誓う。

後日、陽子は陽介に事実を告げた親戚に絶縁を宣言。
スポーツ少年団についても時間的に不可能であることを理由に退団。
陽介には憧れの先輩から直接指導を受けられるように陽子が計らった。
陽介自身はサッカーよりも先輩に近付けることの方が大事だったらしく、満足しているようだ―――エンド。

【先生が敵である】

村辺から連絡が入った。
娘が困っている助けて欲しいと言うのだ。
村辺と言えば盗癖を持つ女性である。
1年で係として協力して以来、疎遠となっていただけに訝しがる陽子。

だが、村辺の娘には恩があった。
陽介が誘拐犯に連れて行かれそうになったときにその場に居て助けてくれたのが彼女だったのだ。

そこで話だけでも聞くことに。

村辺によれば、担任が娘に良からぬ気持ちを抱いているらしい。
しかも、娘は教師により万引きの現行犯を押さえられても居た。
それも弱味を握り言うことを聞かせる為ではないかと疑う村辺。
当初は村辺に心を開いていた娘も最近では何も言わないらしい。

村辺の娘の担任は評判の好青年、まさかと思いつつも気に留める陽子。

学年が進み、村辺と陽介が同じクラスになった。
他には遥の娘と五十嵐の息子も同じクラスである。

陽子は仕事柄専門家を通じて情報を得ることの大切さを聞いていた。
そこで、遥や五十嵐からも情報を収集することに。

その結果、明らかなクロではないものの、限りなくグレーであると判明する。
担任教師は女子には優しく、男子にはそっけない。
しかも、着替え中に覗くこともあったようだ。
村辺の娘には特に厳しく接しているらしいとも分かる。

陽子は村辺に懇願されて協力。
まずは、学校に頻繁に出入りすることで抑止力になることを提案。
村辺と陽子は役付きになって学校に出入りするように。

さらに、父兄参観を利用して担任の正体を窺う。
陽子の見たところ、相手はかなり怪しい。
しかも、父兄の好感を得ることが得意なようだ。

これは、簡単には化けの皮をはがせない。
陽子は方策を考える。
一方、村辺の盗癖がまだ治っていないことを知り落胆する。

遂に作戦が実を結ぶ日がやって来た。
とある証拠を手に担任教師に迫る陽子、村辺、遥、五十嵐の4人。
証拠は放課後に担任が放ったある台詞だった。
そこには“育ててやる”やら“結婚”やら、とても教育者とは思えない言葉が吹き込まれていたのである。
陽介たちを使い録音したものだった。

これにより、担任をやり込めた陽子たち。
万引きも、担任の仕掛けた罠だったことが判明。
担任は盗癖のある村辺の子供だから自分が何とかしなければと思ったと言い逃れを図るが、陽子が逃す筈が無かった。
完膚無きまでに叩きのめされた担任は念書を書くことに。

4人は作戦の成功を祝い、ファミレスで乾杯する。
村辺は初めてママ友が出来たと感激。
さらに、担任が言い逃れに盗癖を利用したことにショックを受け、娘の為にももうしないと心に誓うのだった。
もっとも、その帰りにはファミレス据え置きのシュガースティックを持ち去ろうとする村辺の姿があったのだが―――エンド。

【会長様は敵である】

PTA会長・上条―――陽子も認める女傑である。
陽子は彼女とだけはことを構えたくないと思っていた。
何故なら……自分と似ているのだ、とても良く。

ところが、陽子の望む望まないに関わらず上条と対決することになってしまう。
上条は陽子の噂を何処かから聞きつけ、陽子に向け戦端を開いて来たのだ。
どうも、村辺の事件で担任教師を退職に追い込んだのが原因らしい。
実は、陽子はあの後に校長に真実を告げ、村辺に謝罪させていた。
それが、上条にとって許せなかったようだ。

出し物の予算案で上条と揉めた陽子は手を抜いていたこともあって、完敗してしまう。
上条の正論は完璧で、下手に反論すれば絶対に勝てない。
陽子は上条が高く評価していた出し物を吸収合併するとの奇策でこれを乗り切る。
だが、決して上条に勝ったワケではないことは陽子が一番分かっていた……。

そんな上条はある改革案を持ち出して来る。
子供たちの登下校を母親たちで見守る運動を起こしたのだ。
しかも、地元開催の祭りにはPTAの積極参加を推奨する。

このままでは、仕事が出来なくなってしまう……。
上条の正論には太刀打ちできない……悩む陽子だが。

五十嵐と出会った陽子。
息子の為に仕事を捜していると言う五十嵐。
陽子は職探しに協力すべく履歴書の書き方を完璧に教える。
五十嵐と話しているうちに陽子は上条打倒の策を思いつく。

とある講演会。
陽子は上条に講演を依頼し、その場に呼び出す。
そこには陽子の呼び掛けにより、多数の父兄が集まっていた。
上条が檀上に立った途端、攻撃を開始する陽子。

登下校を母親だけで見守るには時間的に限界がある。
そこで、単純にその時間を半分にする方法があると主張。
夫である父親にも協力して貰えばいいと提案したのだ。
子供を愛するのならば当然だと結ぶ陽子。

紛うことなき正論である。
正論には正論をぶつける、それが陽子の策だった。
上条は言葉もない。

さらに畳みかける陽子。
その場を臨時総会に仕立てると、髪を黒く染めた五十嵐を呼び込む。
五十嵐は元女優志望、演技派だった。
五十嵐を上条に代わる会長に推す陽子。
サクラを仕込んだ甲斐もあって、五十嵐は圧勝。
上条は解任されてしまう。

後日、改革派と目される陽子がPTAを握ることを恐れた学校側より仲裁が入る。
結局、上条は解任では無く自主的に退任。
しかし、後任には五十嵐では無く学校側が選んだ人物に決まった。
さらに、警戒された陽子たちには役付きの仕事が回らないことに。

これは陽子の狙い通りだった。
陽子は上条の案さえ阻止できれば問題なかったのだ。

こうして目的を達成した陽子。
だが、陽子は真に戦うべき相手が何かに気付きつつあった―――エンド。

【エピローグ】

陽介は中学生になった。
子育ても一段落つき、時間的にも余裕が出来た陽子は上条の自宅を訪れる。

仇敵の来訪に驚く上条だったが、そこは陽子も認める女傑である。
冷静に対応する。

「これまでたくさんの戦いを繰り広げました、外に出れば七人の敵と言いますがまさにそう。
特にあなたは強敵でした……」
切り出した陽子。

それを受けた上条。
個人的には嫌いだが、陽子の手腕は評価すると述べる。
陽子と上条は似た者同士。
だが、ある一点で対照的だった。

陽子は子供も仕事も両方選んだ。
だが、上条は元官僚の職を投げ捨てて子供を選んだのだ。

元官僚―――通りでやり手の筈だと納得した陽子はお茶を呑みつつ、早速本題に入る。

陽子はこれまでの経験を活かし、役員や学校行事に関して父兄の代理やサポートを行うビジネスを興そうとしていた。
そこで、核となるべき上条の助けが欲しいと依頼する。

呆然とし、拒絶する上条。
陽子は続ける。

仲間は既に何人か居る。
まずは、岬。
岬は遂に実の父母や義母も亡くし、夫とも上手くいかず孤独感を募らせていた。
夫との仲も頑張れば大丈夫と励ました陽子は、彼女にビジネスへの参加を求める。
岬は縫物が得意。
それを活かして貰おうとのアイデアだ。

次に、遥。
看護師をしているので医療知識を提供して貰える。

そして、村辺。
簿記の免許を持っているので会計を任せる。
最近では盗癖も治まっているとの噂なので大丈夫だろう。
もしも……の場合も、岬を監査につけるので安全である。

五十嵐には……上条の件で分かったが不思議なカリスマがある。
社長役を担って貰う。
本人も乗り気だ。

地元とのパイプを築いている小川にも参加して貰う。

そして、上条。
経験豊富でそれこそ情報通の彼女が協力してくれれば計画はより具体性を増すに違いない。

陽子のアイデアを否定する上条。
ビジネスとして先が見えていると指摘したのだ。

やはり、この人は凄い!!
陽子は上条のセンスを改めて確認し、切り札を切る。

現に子供を進学させれば親は仕事が増える。
そこには金銭を支払ってでも負担を軽減させたいと望む親も居る筈だ。
第一、PTAという組織が残っているように、仕事は永遠に無くならない。

この言葉に上条は遂に折れる。

「七人の敵と先程仰いましたね。その言葉に続きがあるのを御存知ですか?」
上条は続ける。
「七人の敵がいる、されど八人の味方あり」
まさに昨日の敵は今日の友、陽子はにっこりと微笑むのだった―――エンド。

「七人の敵がいる」です!!
七人の敵がいる



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