<あらすじ>
紅蓮次郎(船越英一郎)は、神奈川県美津原市消防署の火災調査官。数年前に妻を亡くし、ひとり息子の俊介は北海道の大学に進学。現在は、アメリカ育ちの姪・キャロライン泉(葵わかな)と同居中だ。ある夜、紅が美しい女性を連れ帰ったのを見て、彼の妻の座を狙う近所の主婦・鴇田早苗(山下容莉枝)はビックリ。だが、その女性は黒崎刑事(平泉成)の姪に当たる、新聞記者の内田鮎子(井上和香)で、このところ美津原市内で起きている連続放火事件を火災調査官の視点から追跡したいからと、紅に密着取材することになったという。
その直後、マンションの1室で火災が発生、住人の女性・野中美里(おおたにまいこ)が死亡する事件が起きた。一報を受けた紅は鮎子と共に現場に向かおうとするが、黒崎からなぜか病院に向かってほしいという電話が入る。第一発見者で、被害者を助けようとして負傷した男が警察の事情聴取に応じないばかりか、紅を指名。「紅蓮次郎を呼んだら、すべてを話す」と言っているというのだ。
いったいどういうことなのか、いぶかしみながら病院に急ぐと、そこにいたのは…かつて、紅が犯行を暴いた連続放火魔、山室誠一(津田寛治)だった。10年前、山室は7件の放火と、義理の父親を焼き殺そうとした殺人未遂事件を犯し、9年の懲役に服した過去を持っていた。山室は死んだ美里と交際しており、これは自分に罪を被せるための放火殺人だと断言。「真実を突き止めて自分の無実を証明してほしい」と頼みながらも、紅に挑戦的な笑みを向ける。それを聞いた灰田警部(マギー)は、紅を恨む山室が、ただの失火を放火だと言って混乱させているだけだと推理。連続放火事件も山室の仕業に違いなく、すべては“紅への挑戦状”ではないかと疑う。
翌朝、マンションの火災現場の調査をはじめた、紅。一見、キッチンの天ぷら油からの失火と思われたが、美里の死因が“気道熱傷”だと聞いて疑問を抱く。気道熱傷ということは、激しく燃え上がる炎を吸い込んだはず。だとしたら、もっと激しく周囲が焼け焦げていなくてはおかしい。やはり山室の言うとおり、放火なのか。山室の発言を重く受け止めはじめた紅に対し、鮎子は放火魔のいうことを信じるなんて失望した、と激しく非難する。
そんな中、美里が実は資産家だったとわかる。2年前に会社経営者の夫を亡くし、3億円もの遺産を相続したという。このままいけば美里の財産は、実の姉の佐和子(河合美智子)と弟の敦(本田大輔)のものとなる上、佐和子の夫、中山久雄(中西良太)は美里に多額の借金があった。また、美里の亡夫が遺した会社の現社長・前島要介(遠山俊也)は解任寸前で、大株主の美里を疎ましく思っていたことも判明する。彼らのうちの誰かが、美里のマンションに火をつけて殺したのか…!?
それとも、放火魔という暗い過去を持つ山室が、再び火を弄んだのか…!?
その後、紅は放火の決定的証拠を発見するのだが、いったいそれは何なのか…!?容疑者が特定できない中、それを知ってか知らずか、山室は「自分と組んで放火犯を見つけよう、自分なら犯人の心理がわかる」と紅に持ちかけてくるのだが、彼の真意は…!?そして、美里の放火殺人と連続放火事件の関連は…!?さらなる凄惨な事件が起こる中、紅は執念の調査で意外な“火元”を見つけ出していく…!
(あらすじ・写真共に公式HPより)
では、続きから……(あらすじと重複あり)
美里の放火にラジコントリックが使用されていたことを見抜いた紅。
ラジコンを利用することで犯人が現場に居なくとも発火出来るのだ。
美里と同居し、過去に放火を起こし、ラジコンに造詣の深い山室が犯人かと思われたが……。
山室はあくまで犯行を否定、逆に真犯人を突き止めると意気込む。
黒崎たちは美里周辺を捜査。
聞き込みの最中、久雄は佐和子と結婚したことはハズレだったと断言。
佐和子を憮然とさせる。
一方、自然に山室と共同戦線を張ることになった紅。
山室は頻発していた連続放火犯の行動を分析し、連続放火の傾向が囮と本命を織り交ぜていると指摘。
3件目の被害を受けた家の息子がイジメを行っていた過去を突き止め、そこからイジメの被害者が連続放火犯であると推理する。
山室の推理に可能性の光を見出した紅はこの意見を支持。
容疑者を絞り、張り込むことに。
その夜、早くも犯行に赴こうとする若者を捕まえる。
彼はガソリンのみを所持していた。
ライターとガソリンを別々に所持していれば、放火魔とは疑われない。
犯人はライター担当とガソリン担当の2人が居たのだ。
ライター担当もすぐに捕まることに。
こうして犯人2人が逮捕されるが、彼らは美里殺害は否定する。
山室の貢献で連続放火事件は解決したのだが……。
各紙が紅と山室の活躍を称賛する中で、ただ1人鮎子は紅を攻撃。
紅と山室が癒着していると非難したのだ。
美里殺害はあくまで山室の犯行とする鮎子は容赦がない。
紅は美里の死因が非公開にされていると前置きした上で、“気道熱傷”であることから、炎を操ることで美里を確実に殺害できると確信した人物の犯行―――つまり、犯人が「炎の動きが読める人間」だと説明。
山室はおろか自分でも無理だと語る。
ところが、鮎子はそれでも山室犯人説に固執。
山室を庇っていると、紅攻撃の手を緩めない。
山室が美里殺害で前島を脅迫していたことが判明。
山室はカマをかけただけだと主張するが、誰にも信用されない。
紅は「犯人捜しから手を引く」よう山室を諭すが、山室は聞く耳を持たない。
鮎子は山室を尾行。
当の山室は美里の葬儀から帰宅する佐和子、敦、久雄を強襲。
「俺を嵌めた奴を絶対に許せない、考えがあるんだ」と宣言する。
その帰り道、待ち構えていた美里は山室に接触。
その際に、美里の死因が“気道熱傷”であることを明かしてしまう。
山室が弁護士を連れて、美里宅にあった私物の返却を求める。
何かに気付いた山室が現場の痕跡を調べる為に用いた方便である。
山室は一通り調べると満足げに頷くが……。
山室が美里の死の真相に気付いたと察した紅は何に気付いたのかを尋ねる。
だが、山室は「教えて欲しければ土下座しろ」と要求。
それでも、真相を求める紅は要求に応じ土下座する。
しかし……山室は「ハッタリですよ、ハッタリ」とおどけて誤魔化してしまう。
一方、鮎子は夫と息子・正隆に話しかけていた。
その姿を見かける早苗だが、早苗には鮎子1人しか見えない。
紅にその様子を伝えた早苗。
泉は「きも〜〜〜い」と侮辱するが、紅はそんな泉を一喝。
実は鮎子は1年前に夫と息子を火事で失っていた。
「急に失ったものをまだ認められないんだ」
紅は妻を亡くした己の過去と重ね合わせて鮎子の気持ちを慮る。
その夜、山室を尾行していた鮎子が何者かに襲われ昏倒させられる。
それに気付かぬ山室は何者かと対決。
金で口封じしようとする相手に対し「金じゃないんだ」と言い切る山室だったが……。
病院に搬送された鮎子は軽い怪我ですんだ。
だが、山室の行方はわからくなってしまう。
同夜半、中山建設の事務所から出火。
炎は第一発見者の親子を巻き込み燃え広がる。
中から救護された敦と、中山久雄と山室の遺体が発見される。
唯一の生存者・敦は自身の目撃したという真実を語る。
美里殺害は久雄の犯行で、山室は久雄を脅迫していたらしい。
挙動不審な久雄を敦が尾行したところ、久雄が鮎子を昏倒させる現場を目撃。
さらに、久雄は山室と密会。
ナイフで山室を拘束すると「何故、自身の犯行に気付いたか」を聞き出すべくガソリンを床に撒き脅迫。
そこで隠れていた敦に久雄が気付き、山室らと揉み合いになるうちにガソリンに引火したらしいが……。
久雄と山室の死因が美里と同じく“気道熱傷”と判明。
それを聞いた紅は不審に思う。
山室たちはロッカーに遮断され、直接、火を吸い込む環境になかった。
すなわち“気道熱傷”になる筈がないのだ。
矢先、鮎子が姿を消してしまう。
精神的にも不安定な鮎子を心配した紅は行方を必死に捜す。
鮎子は夫と息子の幻影を目にし、入水自殺しようとしていた。
危機一髪、間に合った紅は鮎子を止める。
「亡くなったご主人や息子さんが生きている鮎子を呼ぶ筈がない!!
きっと……生きることを望んでいる筈です!!」
紅の説得を受けて鮎子は死を思い留まる。
鮎子は前向きに生きると決める。
山室の改心は本物だったと信じる紅は、山室の死体を前に「無念は晴らす」と固く誓う。
同日夜、早苗たちと話していた紅は、ペアと火傷という言葉から真相に気付く。
美里、久雄、山室ら“気道熱傷”で亡くなった被害者の鼻を調べるよう指示を出すと共に、山室が美里のバッグを注視していたことからバッグの購入先を突き止めようとする。
さらに現場へと赴くと、ある痕跡を捜す。
関係者全員を呼び出した紅は実験を始める。
“気道熱傷”とは気道が焼け爛れて呼吸困難になること。
つまり、火事により気道熱傷となったのならば、咽喉はもちろん、鼻の奥も煤で真っ黒になる筈。
ところが、山室たちからは煤が検出されなかった。
これは、どういうことか。
何らかの人為的な工作がなされていたに違いない。
実験と称して、鉄パイプを口の中に入れ気道まで届かせると、その鉄パイプを放射器で炙る紅。
人体モデルは“気道熱傷”と同じ症状を示したが、煤は検出されない。
犯人はこれをやったのだ。
証明するように、火災現状から鉄パイプが見つかっていた。
しかも、小型の空気ボンベも発見。
真犯人は久雄と山室を拘束すると、鉄パイプで気道熱傷を工作。
放火すると、自身はバスタブの水の中に浸かり、空気ボンベで呼吸を確保したのだ―――助け出されるまで。
つまり、犯人は―――。
「中山敦、火元はお前だ!!」
名指しされた敦を庇おうとする佐和子。
そんな佐和子の所持するバッグに注目する黒崎。
そのバッグは、美里が佐和子とお揃いにすべくネットで2つ注文したもの。
届いたのは美里が殺害された当日だった。
佐和子はいつそのバッグを手に入れたのか―――美里殺害時にしかありえない。
山室は美里の遺留品を調べ、そのバッグが無くなっていたこと。
さらに、佐和子が当のバッグを持っていたことから美里殺害犯の正体に気付いたのだ。
「あんたたちは共犯だった。お前も火元だ、中山佐和子!!」
紅が佐和子を糾弾する。
鮎子を昏倒させたのも佐和子だった。
山室に犯人だと見破られた佐和子は鉄パイプのトリックで山室を殺害。
次に久雄を拉致すると、罪を着せる為に同じく殺害したのだ。
佐和子は長女としての立場を負担に思っており、美里を殺害したのも自由な立場を妬んでの犯行らしい。
敦も美里に司法試験の受験を断念させられたと恨み言を述べる。
そこへ鮎子が取材結果を持って現れる。
敦の受験を断念させたのは、前島の会社に入社を薦める為。
佐和子には、美里自身の財形貯蓄の一部を譲り渡すつもりだったらしい。
美里は美里なりに姉弟に報いようとしていたのだ。
これを聞いた敦。
「言わなかった美里が悪い、口封じの金に応じなかった山室が悪い」と叫び、「馬鹿ばっかりだ!!」と連呼する。
口汚く罵る敦に怒りを爆発させた紅は敦を殴りつける。
一方、殴られた敦も無抵抗ではない、手近にあったパイプを拾うと紅に襲い掛かる。
掴み合う2人を無理やり引き離す灰田とその部下たち。
こうして、佐和子と敦は逮捕された。
ちなみに黒崎によれば、久雄と山室の殺害時に巻き込まれた親子は無事回復したらしい。
鮎子は「更生していた山室」を記事にすると約束。
数日後、その記事は新聞に載った。
記事に使われた写真には、山室と美里が幸せそうに微笑んでいる。
山室に疑いがかかるよう工作したのは敦だった。
ちなみに紅は山室が好きなラジコンを殺人に利用する筈がないと早々に気付いていたとのことだ。
そして……今回もまた早苗に追われ逃げ出す紅。
今日も平和である―――エンド。
<感想>
火災調査官・紅蓮次郎シリーズ12作目。
シリーズ前作の放送は2010年11月21日なので、実に1年2か月ぶりの放送となりました。
前作はネタバレ批評(レビュー)ありますね。
・土曜ワイド劇場「火災調査官・紅蓮次郎 二度焼かれた死体と燃えないガソリンの謎消防vs鑑識が全面対決プロフェッショナルな真犯人か!?」(11月20日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「火災調査官・紅蓮次郎スペシャル 乳母車が突然炎上!キャベツと黒焦げの中の白い足跡秘密の関係…真犯人と超科学トリック対決」(2月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
今回、かなり評価は高い。
まず、鮎子の自殺を防ごうとするシーンが高評価。
力が入ってて、説得力があった。
普通の2時間ドラマだと1言、2言であっさりだけど、こちらはじっくりと説得しててなかなか迫力があった。
あれはイイ。
紅=船越さんの熱さが台詞とストーリーに反映されており、良かった。
さらに、真犯人の動機もかなり身勝手かつショッキングなものだったことで、勧善懲悪ものとして善に共感しつつ視聴することが出来た。
山室役の津田さんの演技も後半が特に良かった。
前半のエキセントリックなところはミスリードゆえ仕方がないだろう。
ミステリ的には「犯人が何故、美里を生きたまま“気道熱傷”に導き殺害したか」という謎が秀逸。
「そう見せかける為の工作であり、最初から“気道熱傷”で殺害されていた」との「逆転の発想」は良かった。
あえて、後半の謎をこれのみに絞ったのも良い判断と思われる。
などなど、鮎子と山室のエピソードの関連性がイマイチ活きていなかった点はモヤモヤしますが、全体的にかなり良く出来ていたように感じました。
ラストの早苗のシーン(紅さ〜〜〜ん)など、シリーズのお約束も健在。
視て損はないように思えます。
シリーズ次作にも十分期待できるでしょう。
<キャスト>
紅 蓮次郎:船越英一郎
白井勇一:河相我聞
黒崎 一:平泉 成
鴇田早苗:山下容莉枝
灰田 修:マギー
山室誠一:津田寛治
内田鮎子:井上和香
中山佐和子:河合美智子
中山久雄:中西良太
中山 敦:本田大輔 ほか
(敬称略、順不同)
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紅は煙草の不始末によるもらい火が原因の火災で妻を亡くし、現在の火災調査官となりました。(この火災の原因を作った人物は5作目に登場し、名前は蝦沢辰巳といいます。前田耕陽さんが演じました。)
今回登場した鮎子は、「放火による火災」で夫と息子を亡くしたという、紅と似た境遇を抱えた女性でした。
あの説得も、紅だからこそ、鮎子の心に響いたのではないかと思います。
「理不尽に大切な人を奪われる」という辛い過去を経験している紅だからこそ、あのシーンは成立しているのだと思います。
こんばんわ!!
管理人の“俺”です(^O^)/!!
なるほど、紅の過去が反映されて、あの熱のこもった説得に繋がったんですね。
だからこそ、鮎子にも伝わったワケだ。
そして、視聴者にも真剣さが伝わるようなシーンでした。
納得です(^O^)/!!