<あらすじ>
「ジャーニーサポート」で働く各務章祐(奥田瑛二)の仕事は遺品整理屋。亡くなった人の遺品を整理したり、死後放置されたままの住まいをきれいにするなど、遺族が嫌がる作業の代行を請け負っている。各務はまるで遺品の声を聴くかのように、部屋を見ただけで故人の性格や生活習慣、そして残された思いまで察することができるため、社長の玉枝陽子(渡辺えり)からは全幅の信頼を寄せられているが、部下の樋口奈央(佐藤めぐみ)にはちょっとした変人と思われていた。
そんな奈央が1年前に、初めて生前予約の契約を交わした金子俊光(冨家規政)が、歩道橋から落ちて死亡する。奈央は動揺するが、亡くなる直前に意識を取り戻した金子が、自分で足を滑らせたと救急隊員に告げていたことから、警察は事故死と判断して遺品整理はスムーズに実行される。
金子は、遺品のすべてを廃棄処分にするよう希望していた。だが、几帳面に整理された金子の部屋から発見された遺言書には、預貯金のすべてを特別養護老人ホーム「卯月の里」に寄付すると書き記されていた。日付は生前予約の契約を交わした翌日。同じ日に開設された口座には、律儀に毎月5万円ずつの入金があり、総額は40万円ほどに達していた。各務は、最近になってその口座から不定期な出金があることに気づくが、詮索しようとする奈央を制止し、通帳と印鑑を「卯月の里」に届けに行く。
金子に身寄りはなかったが、勤め先だったパン屋の配達を通して「卯月の里」と関わりを持っていたらしい。ところが、社長の桜木英子(とよた真帆)は受け取りを拒否。英子に言わせれば、富裕層向けの有料老人ホームを全国展開させる桜木ケアネットワークにとって、金子の寄付金は「これっぽっち」の金。もらうに値しないというのだ。「遺品の声を聴いてあげてほしい」という各務の真摯な申し出にも、英子は決して耳を貸そうとはしない。
仕方なく各務と奈央は一旦引き上げることにするが、そんな二人を呼び止めたヘルパーの沢口花梨(高部あい)が、驚いたことに金子は殺されたのだと訴え始める。だが、その様子をうかがっていた同僚の水原勇樹(前田倫良)が険しい表情で近付いてきたかと思うと、話の途中にも関わらず花梨を強引に連行。呆気にとられたまま奈央と各務は取り残される…。
翌朝、金子の供養に寺を訪れた各務は、意外なことに英子と遭遇する。各務は鋭い洞察力で金子と英子の間には、なにか因縁があると察知。だが、相変わらず皮肉な態度の英子はそれを認めず、二度と会うことはないと言って去っていく。
そのころ奈央は、詮索するなという各務の指示に反発し、真相を突き止めるべく警察に乗り込んでいた。そこで偶然にも花梨と再会した奈央は、一緒になって金子の事故を再調査するよう頼み込む。結局、二人の努力はたらい回しにされただけで徒労に終わるが、金子を父のように思っていたという花梨の気持ちを汲み、奈央は真相究明を続行すると約束。ところがその翌日、水原が金子と同じように墜落遺体で発見され、花梨が事情聴取を受けることに!そんな中、「卯月の里」のずさんな入居者管理が明らかになっていく…。
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
金子の遺品を預かった各務は次の事に興味を持つ。
金子の遺体の下に敷かれていたと言う1万円札。
金子宅には綺麗に整理整頓された布団や衣服類が。
同じく目覚まし時計が2つあるものの、腕時計はない。
通帳を確認したところ、最近になって不定期に数万円ずつ引き出されていた。
これらにはどんな意味があるのか?
生前の金子は、パン工房・有島の従業員。
有島のパンは、保存料を使わない自然発酵、日持ちしない為に「卯月の里」ではその日の分だけ日々購入しているらしい。
有島は自社のパンに誇りを持っていた。
一方、「卯月の里」副社長の飯島は社長の桜木英子を脅迫していた。
ネタとなったのは、死亡した金子俊光。
飯島の言う通り、金子の死に英子は関与しているのか?
それを証明するように、翌日、金子の同僚・村田修一の顔を見た英子はそこに金子の姿を見出し激しく動揺する。
矢先、水原勇樹が墜落死する。
金子とほぼ同様の手口となれば、連続殺人も疑われるが……。
水原殺害について、花梨に容疑がかかる。
中村刑事によれば、水原の死の前日、花梨と水原が真剣な表情で何やら言い合っていた為らしい。
調べ始めた各務と奈央は「卯月の里」の入居者から「管理が杜撰な為に死人が出た」と聞かされる。
「卯月の里」の職員は妄想だと一笑に付すが……。
花梨に真相を問い質す各務たち。
花梨は「2週間前に心臓に持病を持つ入居者が死亡していたこと」を打ち明ける。
「卯月の里」では従業員の絶対数が不足しており、勤務についても虚偽報告している状態らしい。
飯島から「もしもこの事実を明るみに出せば、解雇した上に不良ヘルパーとして何処にも再就職できないようにしてやる」と脅されている為に誰にも言えなかったと涙ながらに語る花梨。
花梨は金子にこの事実を相談、金子は「何とかしてみせる」と応じていたらしい。
そして、金子が死亡。
さらに、水原の死もこの事実の告発を決心した矢先の出来事だと言う。
責任を感じているらしい花梨だが……。
そんな花梨を励ますべく奈央の提案で各務宅に宿泊することに。
そこで、「花梨の名の由来が庭にあった花梨の木であること」、「花梨が4月生まれであること」を聞く各務たち。
金子は花梨の木の話を聞くと樫の木も隣に植えるべきと笑っていたそうだ。
「樫(貸し)」と「花梨(借りん)」をかけて、「お金は貸しても借りん」との言葉遊びである。
さらに、花梨は英子こそ理想の上司であると熱く語る。
英子はもとヘルパー出身らしいが……。
各務は、それとなく中村刑事に情報交換を持ちかける。
結果、飯島には水原殺害時アリバイがあったと判明。
英子と食事をしていたのだ。
では、犯人は誰なのだろうか?
翌日、当の飯島が各務を業務妨害で訴えると圧力をかけてくる。
さらに、各務たちから調査の口実を奪うべく金子の寄付金を受け取ろうとする。
しかし、ここで「ジャーニーサポート社長」の玉枝陽子が奮起。
受けて立つと宣戦布告することに。
こうして、ジャーニーサポートも巻き込むことになった。
有島パンの社長・有島に金子について話を聞く各務。
各務は、金子が腕時計をしていなかったこと、その部屋にあった布団や衣服がきちんと畳まれていたことから、金子が過去に服役していたと推理。
手錠を思い出すので腕時計を嫌ったと考えたのだ。
この推理は的中、有島は各務の推理を認める。
23年前、金子は町工場を経営していたが上手く行かず、酒場で会った男に誘われ強盗に加担した。
見張り役を担当した金子、事前の計画ではすんなりと事が運ぶ筈だったが、被害者に見つかり抵抗されてしまう。
結果、主犯が被害者に暴行を加えた挙句、放火、金子を連れ逃亡した。
被害者は命を取り留めたが、逮捕された金子たちは強盗傷害、殺人未遂、放火の罪で20年収監されることに。
金子には妻と娘が居たが、家を出たと言う。
そして、その妻の名こそ桜木英子だった。
同じ頃、飯島は金子との関係をもとに社長の座を譲るよう英子に迫っていた―――。
その夜、各務は金子の最期を看取った救急隊員から彼の最後の言葉を聞き出していた。
そこからあることに気付いた各務は図書館、パン工房と調べ物をしながら渡り歩く。
翌日、英子のもとを訪ねた各務は彼女を連れ出す。
向かった先は金子と英子が夫婦だった頃に暮らしていた家。
庭には樫の木と花梨の木が植えられている。
そこで、英子は過去を語り始めた。
英子は強盗した金子に失望した。
当時生まれたばかりの子供と2人で生きて行こうと決めるが、世の中は甘くなかった。
結局、上手く行かず子供をつれて無理心中を図る。
これは失敗し母子ともに命を取り留めるが、英子は子供を巻き込むことを恐れ里子に出した。
その後、必死になって働き、現在の地位を築いた。
しかし、里子に出した子供は帰って来ない。
そこで子供を想って「卯月の里」を立ち上げた。
何故なら、子供は「卯月」である「4月」生まれだったからだ。
そう、花梨は金子と英子の間の娘だったのである。
花梨を捜さなかった英子だが、ある日、偶然に見つけてしまう。
以降、居てもたっても居られなくなった英子は花梨を見守って来たそうだ。
そこへ、英子たちを監視していた飯島が現れる。
飯島は今の英子の告白が金子を殺したと認めるものだと非難するが……。
そんな飯島の前に各務が立ち塞がる。
金子と水原は同一犯により殺害されている。
つまり、どちらか一件にでもアリバイがあれば不可能。
ここで思い出さなければならない。
水原殺害時における飯島のアリバイは何だったか。
そう、飯島は英子と食事をしていたのだ。
飯島にアリバイが成立するように英子にもアリバイは成立する。
さらに、各務は飯島の不正を告発。
飯島は人件費を不正に計上するなど不正経理を行い、そこで得た差額を自身の口座に貯えていた。
証拠がないと言い張る飯島だったが……これにも各務は既に手を打っていた。
パン工房・有島の伝票こそが証拠となると主張。
有島のパンは、保存料を使わない自然発酵、その日の分だけ日々納入している。
そして、パンは職員と入居者数分だけ納入されている。
つまり、パンの数から「卯月の里」に居た人間の数が分かるのだ。
がっくりと肩を落とす飯島。
陰で様子を見ていた中村刑事に逮捕されることに。
しかし、金子と水原を殺害した犯人は誰なのか?
各務は金子と水原を殺害したのは英子でも花梨でも飯島でもないと断言、真犯人のもとへ。
各務が足を運んだ先には、パン工房・有島の従業員である村田修一の姿が。
金子の通帳からは不定期に数万円ずつ引き出されていた。
これは金子が何者かに脅迫されていたからに違いない。
そして、金子が脅迫に応じたすれば英子と花梨との関係しかない。
では、金子を脅迫したのは誰か。
図書館で当時の資料を調べたと言う各務。
そこには23年前の強盗事件の主犯の写真がバッチリ掲載されていたらしい。
そう、金子を巻き込んだ強盗の主犯こそ村田だったのだ。
奇しくも出所した2人は出所先のパン工房・有島で再会してしまったのだ。
村田は英子と花梨のことで金子を脅迫。
「強盗犯が元夫であり、父親だと世間に知られたらどうなるか」と金子を脅したのだ。
金子は脅しに屈していたが、村田はさらに欲を出した。
そこで、金子と揉み合いになり、誤って金子が転落死したのだ。
金子は自身と英子、花梨との関係を伏せる為に「自分で落ちた」と嘘を吐いていた。
水原殺害についての動機はこうだ。
水原は飯島の不正と共に、その不正に関連して殺害されたと思われていた金子の再捜査を求めようとしていた。
再捜査されれば、自身の犯行がバレてしまう。
そこで、水原を殺害したのだった。
あくまで、証拠がないと主張する村田だったが……。
そんな村田に金子の遺品の1万円札を突き付ける各務。
金子を脅迫した村田の指紋が其処には残っているのだ。
しかも、村田の家を調べれば其処にも金子の指紋が付着した残りの1万円札がある筈だ。
切羽詰まった村田は逃走しようとするが、先回りした中村刑事に逮捕される。
こうして事件は解決した。
英子と花梨に金子の最期の言葉を伝える各務。
「家族はいらっしゃいますか?」と尋ねた救急隊員に金子は「私には家族がいます」と答えていた。
金子にとって最後の瞬間、その時、金子には確かに庇うべき家族の存在があったのだ……。
英子は金子の寄付金を受け取る。
花梨には実母として見守って行くつもりらしい。
こうして、金子の遺志を伝える奈央の仕事は無事に終わった。
数日後、各務と奈央は今日も故人の遺志を伝えるべく仕事に励むのだった―――エンド。
<感想>
「遺品の声を聴く男」シリーズ第3弾です。
前作は2010年9月18日に放送されているので、実に1年4ヶ月ぶりの新作となりました。
前作についてはネタバレ批評(レビュー)してますね。
・土曜ワイド劇場「遺品の声を聴く男2白骨遺体が語る愛憎劇美人妻と愛人との交錯する執念…遺品整理屋は見た!!15年前の誓い…哀しき殺人者の逃亡の果て」(9月18日放送)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
きっちり伏線も張ってますし、その回収にも成功してます。
かなりの高評価です!!
「情」と「ロジック」がバランスよく配されていたように思います。
水原殺害時、飯島の英子への脅迫シーンで飯島と英子2人にアリバイを作ったのは良かった。
なんだか新鮮に感じました。
パンを使って人数を明らかにするロジックも良かった。
パンのくだりは全く注目していなくて、目から鱗でした。
登場人物もさして多くなく、それでいてミスリードも効果的でした。
濃厚な人間関係も描けていたように思えます。
さらに、中村刑事のいぶし銀の活躍も良し。
全体的な完成度も高く、かなりのものと思います。
2012年1月時点で「女タクシードライバー6」と並んでベストと呼んでも過言ではないかも。
あちらは「情」、こちらは「ロジック」で高い評価が出来ますね。
是非、シリーズ次回にも期待!!
そして、次回は「土曜ワイド劇場版 十津川警部」。
愛川欽也さん最後の亀井刑事役になるとのこと、要注目です!!
<キャスト>
各務章祐:奥田瑛二
樋口奈央:佐藤めぐみ
桜木英子:とよた真帆
沢口花梨:高部あい
金子俊光:冨家規政
村田修一:五代高之
有島輝夫:志賀廣太郎
水原勇樹:前田倫良
飯島亮二:半海一晃
中村欣也:中西良太
玉枝陽子:渡辺えり ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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