日本で100番目に早い(たぶん)、「相棒season10(ten)」第11話「名探偵再登場」(1月11日放送)ネタバレ批評(レビュー)。
<ネタバレあらすじ>
―――プロローグ―――
1人の男が捜査一課に取り調べを受けている。
男はどこか取り調べを楽しんでおり、伊丹たちは困惑する。
「何を考えてんだか……」
「ほら、こいつあれだよ。美大生のときの……」
伊丹たちの視線の先に居た男の正体は―――。
暫く後、特命係。
遅刻した神戸の前に例の男の姿があった。
見知らぬ人物を警戒する神戸に男は立ち上がって告げる。
「やぁ、私はマーロウ矢木と言います。あなたの新しい相棒です」と。
―――1―――
その日、神戸(及川光博)が遅刻して出勤すると、右京(水谷豊)のデスクに見知らぬ男が座っていた。
男は右京と顔なじみの私立探偵・矢木(高橋克実)。
矢木は自らをマーロウ矢木と名乗る探偵、かつて美大生殺害事件(シーズン5 第10話)で右京らの捜査に割り込んできた男である。
ハードボイルドに憧れ、どこかお調子者。
その矢木に新しい相棒と名乗られた神戸は困り果て、右京に連絡を取る。
右京によれば、大手探偵社「メトロポリタン・リサーチ」の社長・樋本(鈴木省吾)の他殺体が廃ビルで見つかった事件に矢木が関わっているらしい。
現在、右京もこの事件について捜査を開始しているとのこと。
そこで、矢木に協力するよう指示されてしまう。
さらに「遅刻の罰です」と告げられた神戸は仕方なく矢木とコンビを組むことに。
ここに急造コンビが結成された。
一方、右京は米沢と共に樋本の殺害状況を確認していた。
樋本殺害の凶器は柳刃包丁、死因は腹部の刺し傷らしい。
同じ頃、こちらは神戸と矢木の急造コンビ。
矢木への不信感が払拭できない神戸に、矢木が事件に関わった理由を説明していた。
半年ほど前に樋本と別れた元妻・栗山佳美(陽月華)のアリバイ証人が矢木だったのだ。
だが、矢木は佳美を疑っていた。
矢木によれば、佳美の内縁の夫・稲尾真紀彦と関わりがあったのが始まりだったと言う。
佳美は弁当屋でパートまでしている献身的な女性。
稲尾は結婚まで視野に入れるほどのぼせ上っていた。
そんな稲尾から「高校の同窓会に行く佳美を見張ってくれ」との依頼を受けた矢木。
佳美を尾行していたが、途中で見つかってしまう。
逆に「相談に乗ってくれ」と佳美に頼まれた矢木。
そこで、ラブホテル「エーゲ海」で相談を聞いていたそうだ。
ところが、「エーゲ海」に入った矢木は酒をかっくらい1時間ほど寝入ってしまったと言う。
つまり、アリバイになっていないのだ。
それどころか、逆に怪しいと矢木は考えているとのことだが……。
ところが、いくら矢木が佳美が怪しいと訴えたところで、捜査一課は樋本が「鬼龍会」に恨まれていたことから容疑をそちらに向けており、相手にしてくれないらしい。
大体、背景を把握した神戸は矢木と共に動き出す。
―――2―――
「メトロポリタン・リサーチ」に聞き込みに訪れる神戸と矢木。
矢木は盗聴器に興味を示す。
さらに神戸を使い担当者の気を惹くと、その間に矢木はある資料を見つけ出す。
右京と合流した2人。
矢木が「メトロポリタン・リサーチ」で見つけたのは、福栄義英(松熊信義)の名前。
福栄義英は財界の大立者で今も隠然たる権力を持っているらしい。
なぜ、矢木がそんなに詳しいのか問う右京。
猫が逃げ込んだ可能性があったので……と説明する矢木。
そのまま福栄家の家族構成について説明し出す。
福栄義英には英雄という息子がいたが急逝。
今は、義英自身と、英雄の妻・春子、その息子で英則、執事の倉橋の4人が暮らしているらしい。
義英には300億円の資産があると言うが……。
相変わらず人を食った矢木は、右京たちを「ギムレットを飲みましょう」とカラオケスナックへ連れて行く。
親しげに矢木に話しかけてくるマスター、彼こそは稲尾真紀彦その人である。
ギムレットとして出されたのはライムサワー、呆れる神戸。
稲尾は矢木に「見せたいものがある」と用紙を持ち出す、それは婚姻届だった。
そこには稲尾真紀彦と栗山佳美の名が。
佳美の要望で1月23日に提出するつもりらしい。
稲尾は両親もなく天涯孤独、家族が出来て嬉しいと大喜びである。
そこで、ふと棚に飾られている人形を見た右京は「あれも栗山さんが?」と尋ねる。
これまた幸せそうに「ええ」と大きく頷く稲尾。
ここで稲尾に矢木への依頼について確認する右京。
どうも矢木はたまったツケの代わりに依頼を引き受けていたようだ。
ちなみに佳美と出会ったのは、ちょうど半年前らしい。
稲尾は佳美がバツイチであることを知らないようだ。
―――3―――
樋本と福栄家が半年前に集中して通話していることを突き止めた右京。
しかも、最近になってその通話は復活していた。
どうも、なんらかの関係があるようだ。
こうして、福栄家を訪ねる一行。
矢木が先頭に立って挨拶する中、あっさりと通される。
春子は「樋本が福栄義英に何を依頼されたか」について興味津々。
それには応じず、右京は福栄義英が死亡した場合の遺産相続について確認する。
法定相続人は英則1人らしいが……。
そのとき、奥でベルの音が。
これに「あれ、福栄義英さんの部屋ですか」と矢木。
春子は口元に手を当てながら「ええ」と答える。
その手には指輪が光っていた。
右京は何かに気付いたようだが……。
福栄家を退出した一行。
矢木は福栄義英の依頼は遺産に関わるものと言って譲らない。
またまた呆れる神戸。
そんな中、右京は矢木にある依頼を……。
右京の依頼に従った矢木。
稲尾に会うと「結婚はやめてくれ、私も佳美ちゃんが好きになったんだ」と宣言する。
その頃、弁当屋で働く佳美を眺める右京と神戸の姿があった。
―――4―――
1人事務所に帰った矢木を佳美が待っていた。
佳美は「結婚を辞めさせようとするなんて、どういうことよ」と矢木に詰め寄る。
そこへ現れる右京たち。
「なんで、こんなに早く現れたんです?誰から聞いたんですか?」
矢継ぎ早に佳美を問い詰める右京。
「聞いていたんですね、盗聴器で」
止めを刺す神戸、その手には稲尾の店に飾られた人形が握られていた。
肩を落とし、諦めた様子の佳美。
すべては稲尾の出自に関わっていた。
稲尾は「福栄義英の落胤」だったのだ。
そこで、樋本に命じられた佳美は稲尾に近付いた。
樋本は稲尾の相続する遺産を目当てに佳美に稲尾と結婚するよう仕組んでいた。
1月23日に拘ったのは、樋本と佳美が離婚したのは7月だったから。
民法上、女性は離婚後半年ほど結婚できないのだ。
佳美が何故、矢木の尾行に気付いたか。
仮にも矢木はプロである。
気が付いたのは盗聴器により情報が筒抜けだったからだった。
佳美が矢木をホテルに連れ込んだのは、樋本の指示だった。
「300億円の為だ、我慢しろ」と言った樋本、あわよくば佳美に色仕掛けを行使させるつもりだったらしい。
だが、佳美は矢木に嫌悪感を抱き、指示通り連れ込みはしたものの何もしなかったと言う。
どうやら、矢木も佳美の狙いに気付いていた。
佳美に連れられたホテルで酒を飲み寝たのもその為らしい。
しかし、これで佳美の容疑は晴れた。
佳美と樋本は予め通じていたのだから、いまさら抜け出してまで、樋本を殺害する動機は佳美には存在しえない。
では、誰が樋本を殺害したのか?
その頃、捜査一課が、樋本殺害の容疑者を連行する。
「鬼龍会」の関係者ではないらしいが……。
―――5―――
連行されたのは稲尾だった。
稲尾は殺害当日に佳美の携帯を通じて樋本の存在に気付き、怪しんで「メトロポリタン・リサーチ」に会いに出かけたらしい。
そこで、外出する樋本を見かけた稲尾は「佳美と別れてくれ」と詰め寄った。
結果、揉み合いになり樋本が気絶したそうだ。
それを聞いていた右京は「稲尾の後に別の人物が現れ、樋本を刺殺した」と断定する。
その頃、矢木あてに何者かから電話が……。
一方、凶器の柳刃包丁から金と銀と銅が検出。
つまり、18金である。
頭を悩ませる神戸。
その横では、いくら電話しても繋がらない矢木を右京が気にかけていた。
同時刻、当の矢木は何者かにスタンガンで不意打ちを受け気絶させられ―――。
―――6―――
数十分後、福栄家を訪問する右京と神戸。
そこへ、ひょっこり矢木が登場する。
その傍らには英則も居る。
かくれんぼしているところを英則に見つかったらしいが……。
「おやおや、監禁されていたのを助けてもらったんですね」と右京。
どうやら、矢木は監禁されることを予測し、英則にかくれんぼと称して助け出すよう計らっていたらしい。
ここで、右京により事件の全容が解明される。
矢木は稲尾だけではなく、福栄義英からも依頼を受けていた。
福栄家を訪ねた際、私立探偵を名乗りながらもあっさり面会できたのも、ベルの音を聞いて福栄義英の呼び鈴と分かったのも、すべては矢木と福栄家に繋がりがあったからだ。
矢木が樋本の事件に福栄義英の名前を持ち出したのも、すべては矢木の計算通りだったらしい。
福栄義英は矢木に落胤である稲尾の捜索を依頼していた。
矢木は依頼を達成。
そこで、矢木に新たな依頼をした。
稲尾を守るよう依頼したのだ。
こうして、矢木は稲尾に近付いた。
ご落胤の捜索を担当したのは樋本ではなく、矢木だった。
では、福栄義英が樋本に依頼したのは何か?
それこそが、樋本が殺害される理由だった。
樋本は殺害される直前に佳美との電話で「300億円のためだ」と語った。
だが、これがそもそもおかしい。
英則がいるのだ、稲尾は全財産は相続できない。
ところが、樋本は福栄家の全財産を狙っていた。
つまり、樋本には英則の相続分も奪うつもりだったに違いない。
そう、英則にはある弱みがあった。
英則が生まれたのは、英雄の死後9ヶ月後。
これを危惧した福栄義英は、樋本に英則のDNA鑑定を依頼したのだ。
結果は―――英則は英雄の息子ではなかった。
春子と他の誰かの間の子供だったのである。
ところが、樋本は鑑定結果を伏せると、春子を脅迫した。
英則が継ぐであろう遺産200億円を寄越すよう迫ったのだ。
結果、脅迫に追い詰められた春子が樋本を殺害したのだった。
あくまで犯行を否定する春子だが、凶器から春子の嵌めていた指輪の18金が検出されたことで罪を認める。
そして、執事の倉橋も。
すべては倉橋の指図だったらしい。
7年前、英雄が急死。
このままでは、福栄家が途絶えることを懸念した倉橋は春子に「父親は誰でもいいから」と出産を迫った。
今回、矢木を監禁したのも倉橋。
こうして、倉橋も連行され事件は解決した。
依頼人に悪いことをしちゃったなぁ……とぼやく矢木。
「隠しておくべき真実を隠しておけるのが探偵、隠しておけないのが刑事」かと漏らす。
そんな矢木に、監禁を立証する為と、住居不法侵入で聴取を受けるよう促す右京。
矢木は苦笑いするしかない。
―――エピローグ―――
翌晩、特命係にて。
右京が神戸に福栄家の今後について話している。
福栄義英は英則を養子とすることに決めた。
すべては矢木の差配らしい。
「見かけによらず名探偵だったんですね……」矢木に感心する神戸はある疑問を口にする。
矢木は稲尾に福栄義英の落胤であることを伝えたのか―――。
その頃、矢木は稲尾の酒の相手をさせられていた。
「佳美が消えちゃったんだよぉ〜〜〜、矢木ちゃんのところに居るんじゃないの〜〜〜」
「あれは稲尾ちゃんの愛を確かめようとしただけだってぇ……」
どうも、2人は仕事抜きの友情を育んでいるようだ。
「では、ちょっと早めにあがりましょうか。」
右京が席を立つ。神戸も同じである。
「どこかに飲みに行きませんか?」
「いいですね、もちろん飲むのは―――」
2人の声が重なる「「ギムレット!!」」。
そして、部屋の明かりが消された―――11話了。
<感想>
1月11日に11話放送と1が並んだシーズン10(ten)第11話。
脚本は戸田山雅司さん。
さて、今回はというと……。
今回のテーマは「民法」ですかね。
佳美を通じて、誰の子供か明確にするために女性は離婚後6ヶ月再婚できないこと。
にも関わらず、春子を通じて夫の死後9ケ月後の子供が認められることに触れていました。
合理的と言えば合理的なのでしょうが、どこか不可思議ですね。
そ・し・て。
やっぱり、矢木は良かったですね〜〜〜。
くわせものぶりが存分に発揮されていました。
今回、シナリオ自体はシンプルだったのが、そちらに気を取られることなく矢木に注目出来て、彼の有能ぶりをより強調していたように思います。
ただ、矢木が目立った分、神戸君が……。
矢木の割を食ったかな。
流石、くわせものの矢木。
今回は、ベストとまではいかないが、結構、面白かったですね。
そして、次回は「つきすぎている女」。
いよいよ、鈴木杏樹さん演じる月本幸子の登場です!!
果たしてどんな物語になるのか。
そして、14話では梶芽衣子さんが登場。
梶さんと言えば『鬼平犯科帳』の「おまさ」役の名演が記憶に残っています。
こちらも是非期待!!
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