2012年01月30日

『Do you love me ?』(『不思議の足跡』収録、米澤穂信著、光文社刊)

『Do you love me ?』(『不思議の足跡』収録、米澤穂信著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

収録作品 伊坂幸太郎 吹雪に死神/石持浅海 酬い/恩田 陸 あなたの善良なる教え子より/鯨統一郎 ナスカの地上絵の不思議/桜庭一樹 暴君/柴田よしき 隠されていたもの/朱川湊人 東京しあわせクラブ/高橋克彦 とまどい/畠中 恵 八百万/平山夢明 オペラントの肖像/松尾由美 ロボットと俳句の問題/道尾秀介 箱詰めの文字/宮部みゆき チヨ子/山田正紀 悪魔の辞典/米澤穂信 Do you love me ?
(光文社公式HPより)


<感想>

ノンシリーズの短編です。
これはシリーズ化すべき出来!!
それくらいイイ!!

テーマは「ホワイダニット」と「ミッシング・リンク」。
何故、被害者が殺害されなければならなかったのか?
その謎の手がかりが被害者自身の口から語られます。
此処で提示されていく謎がまた、いい意味でぶっ飛んでる。
読んでて興味を惹かれるし、かといって謎の解答については見当もつかないし。
管理人なんかは、てっきり「羊」に「角」や「川」の登場で「漢字」に意味があるのかと身構え、次に「天秤」で星座を疑ったのですが、完全に裏をかかれました。
この「ミッシング・リンク」の正体、あなたには解けるでしょうか?

それにしても、菜摘怖い。
あれは誰だろうと末路は同じだよね……。

ちなみに、同じく米澤先生による『ボトルネック』にも登場した川守も名前だけ登場してます。
川守と言えば『ボトルネック』でリョウが駅で出会った相手ですね。
「東尋坊に1人で行ってはならない」と忠告した子供と言えばご存知でしょうか。
たしか、川守はあの際に女性に呼ばれていましたが、あれは渡良瀬みことだったのかも。
これを考え合わせると『ボトルネック』の世界は―――。

<ネタバレあらすじ>

渡良瀬みことは不機嫌だった。
銭湯に行く直前に来客が現れたからだ。

来客は部屋の隅ですまなさそうに縮こまっている。
彼の名は今谷。職業は元学生、現在は幽霊である。
そう、今谷は死者だった……。

渡良瀬のもとにはよくこの手の来客が現れる。
いわば、渡良瀬は彼らの相談役みたいなものだ。
それなりに実績もあり、彼らが未練を残さないように彼らの抱える疑問や謎を解決することもある。

その客が今回は今谷だったというワケだ。
川守に紹介されたと言う今谷の依頼は「何故、自分が殺されなければならなかったか」を知りたいとのものだった。

つまり、彼を殺した犯人は分かっている。
今谷によれば、彼の恋人・菜摘らしい。
歯がゆいことに今谷は自身を殺した恋人であるにも関わらず、菜摘のことについて話すとうっすらと頬を染める。
どうやら、初恋らしい。
最初にして最後の恋になったワケだ。

とはいえ、渡良瀬は早く銭湯に向かいたい。
惚気話を打ち切ると、今谷に状況を教えるよう促すのだった。

今谷が菜摘と出会ったのは大学一回生のコンパの席だったらしい。
今谷は初心な男で場に馴染めずオドオドしていたところ、同じように壁の花だった菜摘に声をかけたのだ。
これがとんとん拍子に話が進み、そのまま交際が始まったらしい。

菜摘は聡明ながら少し変わった女性だったようだ。
今谷に「私のことが好き?」と再三尋ねるとともに、必ず「神かけて」と念を押していた。
それに今谷はいつも「うん」とはっきり答えていた。
自分が好きかどうか不安な気持ちは分かるが「神」まで持ち出すのは些か大袈裟ではなかろうか。

ある日も、いつものように菜摘は愛情を確認すると、今谷に片腕を上げさせ菜摘とともに我慢比べをしたらしい。
これは菜摘が先に根をあげたそうだ。

またある日も、愛情を確認したのち、2人で羊をどちらが呼び寄せられるか競ったそうだ。
これは、羊がどちらにも行かなかったためにご破算となった。
その折、菜摘は羊に角がついていないことに不満を漏らしたそうだが。

またある日にも、愛情を確認したのち、湯に落とした指輪を拾うよう頼んだとも云う。
湯は煮え滾っていたが、幸い火傷することもなく拾うことが出来た。
菜摘は物凄く喜んでいたそうだ。

今谷は菜摘に殺害される理由が全く分からないと首を傾げるが、渡良瀬にはある程度想像がつきつつあった。

そして、菜摘に今谷が殺害された当日。
菜摘は古い天秤を持ち出して来た。
それを覗き込んだ今谷の首に刃物を突き立てたのだそうだ。
これが今谷が死亡した原因である。
今谷の最後の記憶によれば、天秤の近くには引き裂かれた羽毛枕が転がっていたと云う。

これに確信を得た渡良瀬。
ついに菜摘の動機が解明される。

渡良瀬によれば菜摘の行動は常に一貫していた。
今谷は試されていたのだ。

では、誰に?菜摘?
いや、違う。神に試されていたのだ。

菜摘が行ったのは、すべて宣誓者が嘘を吐いていないかを見極める古代の儀式、すなわち神判であった。

まず、腕を上げさせたのは「十字架神判」。
宣誓後に腕を上げ続けなければ嘘を吐いていたことになる。
今谷は菜摘よりも後だった。
愛は真実と証明された。

次に、羊。
これは中国古来のもので「羊は嘘吐きに寄っていく」の記述による。
どちらにも寄って行かなかった。
愛は真実かどうか断定できないが、嘘とも云えない。

湯は「盟神探湯」である。
沸騰した湯に手を浸け、火傷すれば嘘を吐いたことになる。
今谷は火傷しなかった。
愛は真実と証明された。

そして、最後の天秤。
これは「秤の神判」。
心臓と羽毛を秤にかけることで、羽毛よりも心臓が軽ければ真実、重ければ虚偽と判断される。

渡良瀬は今谷に告げる。
菜摘が首を刺したのは、心臓に傷をつけないため。
心臓を秤にかければ、羽毛よりも重い。
今頃は「愛しているって言ったのに、嘘じゃない!!」と怒っているだろう、と。

菜摘は「今谷が好き」なのではなく、「(今谷を通じて)愛しているかどうかを確かめる作業」が大好きだったのだ。

今谷は衝撃冷めやらぬ様子で肩を落とすと、その場を後にする。
去り際、「僕は本当に愛していたのに」と残して―――エンド。

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不思議の足跡―日本ベストミステリー選集 (光文社文庫)





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