<あらすじ>
待ち合わせの時間には秒単位まで正確、手帳に書き込むスケジュールは分刻み、野菜ジュースを作る際には、素材の量まできっちり測るなど、潔癖すぎる性格の東京地検検事・矢場健(舘ひろし)。周囲からは、「ヤバケン」と呼ばれ疎まれているが、検事としての仕事ぶりは超一流で、他人が何と言おうと、自身の信念を曲げずに一つの真実を徹底的に究明する。
今回、矢場が担当するのは殺人事件。過去に数々の無罪犯罪を勝ち取り、「鉄の女」の異名を持つ弁護士・山下美由希(愛華みれ)が、自身の依頼人であるイベントプロデューサー・堀田貴則(黒田アーサー)を殺害したとされ、世間の注目を集めている。山下は自ら電話で警察に通報し、自首していた。
矢場は、事務官の大隈進一郎(河相我聞)と共に、山下の取り調べを始める。被害者の堀田は急なイベント中止によって多大な被害を被った複数の関連業者から損害賠償の訴訟を起こされ、その弁護を山下に依頼していた。事件当日、訴訟に関する相談で堀田に呼び出され、「不利な状況にあるので、和解に持ち込むべき」と提案したところ、堀田が逆上し強引に関係を迫られ暴行されそうになったため、必至で抵抗した結果、殺害してしまったと山下は話す。
山下は自首をしており、全面的に犯行を認めているため、簡単に片付くと思われた案件であったが、矢場の下した結論は、10日間の勾留延長であった。状況証拠もそろっており、犯行を裏付ける物証もあり、被疑者が犯行を認めている簡単な案件に、矢場が抱いた疑問とは? 事件の真相を究明するために、徹底的な調査を行った矢場が、見つけ出した真実とは一体?
(金曜プレステージ公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
新居を購入した当日、婚約者に捨てられた矢場。
今では、その元婚約者の妹である女医の彩と友達以上恋人未満という微妙な関係を続けている。
そんな矢場は一度気になると解決するまで周囲を振り回すヤバい人間だった。
そんな矢場が手掛けることになった事件、それは堀田という男性が殺害されたもの。
被疑者は堀田の弁護士である美由希。
以前、堀田を殺人容疑から救った経験があり、今回の約束不履行についても弁護に立ったと言う。
ところが、不利な条件を呑まざるを得ないと美由希が説明したところ、堀田に襲われ抵抗した際に殺害してしまったらしい。
襲われ倒れ込んだ際に、窓から向かいのビルの屋上に飾られた星の形のネオンを見たと供述していた。
美由希の供述には一点の非も無いように思われた。
だが、矢場はその独特な思考法から、美由希の供述に異質なものを感じ取っていた。
こうして、美由希を拘留延長することに。
事件関係者の証言を集めるべく、訴えを起こしていた1人、フラワーショップの女性経営者・篠崎恵美を訪ねる矢場。
恵美は大隈の身分証を目を細めて見詰める。
そこへ通りがかったのは、恵美の息子・マサル。
マサルはスワローズファンらしいが、何故かジャイアンツの帽子を被っていた。
そして、その帽子にはケンダーマンという古いキャラクターのバッジが着けられていた……。
現場を訪ねる矢場。
大隈も参加し、現場を検証するが美由希の供述に不審な点は見られない。
例のネオンサインも確かに確認できた―――とはいえ、星ではなく金平糖だったが。
ネオンの正体は「金平糖の玄武堂」のもの。
このネオンサインは21時に消えてしまうとのことだった……。
美由希について調べ始めた矢場。
担当案件を調べた結果、美由希が10年前から子供絡みの案件を避けていたことに気付く。
美由希のプライベートを調べた矢場は、10年前に美由希の息子・タカシが暴走トラックに轢かれ死亡していたことを突き止める。
それ以来、人情派弁護士だった美由希は完璧を求めるようになっていた。
おそらく、タカシのことを忘れる為に敢えて変貌したのだろう。
さらに調査を進める矢場。
タカシの墓を訪れたところ、其処にどら焼きが供えられているのを見つける。
しかも、周囲にも同じようにどら焼きが。
その共通項は幼い子供の墓であること。
矢場は、そのどら焼きが“草月庵”のものであると気付き驚く。
2年前、草月庵の店主が殺害されており、その容疑が堀田にかかっていたのだ。
この際の堀田の弁護士が美由希だったのだ。
“草月庵”を訪ねたところ、毎年、鈴木美津子名義で美由希がどら焼きを大量購入していたことが判明。
これを追及された美由希は、2年前の殺人は堀田の犯行であり、それと知らず無罪にしてしまったが、それをネタに脅迫されていたと明かす。
襲われた際に、このことが頭にあり、殺意もあったかも……と供述を変える美由希。
これが事実ならば、傷害致死と思われたが……。
矢場は、さらに拘留延長を決定。
これに美由希は激しく動揺する。
反発する美由希を連れ、現場検証する矢場。
美由希の再現は矢場に2つの疑問を抱かせる結果となった。
1つ、美由希が襲われた際に倒れ込んだ場所を間違え、訂正したこと。
2つ、凶器のブロンズ像をわざわざ離れた位置にあったシャンパンタワーに投げ込んでいたこと。
矢先、眼鏡をかけた大隈を見た矢場にある閃きが。
再度、恵美を訪ねることに。
以前、恵美は大隈の身分証を見る際に眼鏡をかけているにも関わらず、視づらそうに目を細めた。
これにより、矢場は恵美の眼鏡の度が合っていないことを指摘。
眼鏡が普段使っているものとは別のものであると確認する。
そこへ、マサルが帰宅。
相変わらずジャイアンツの帽子を被っているが、何故かバッジは無くなっていた。
スワローズファンのマサルがジャイアンツの帽子を被っている理由は祖父にあった。
祖父からの贈り物らしい。
ところが、当のマサルの祖父は既に亡くなっていた。
マサルの祖父は小林泰三、タクシーの運転手。
1ヶ月前に酔って川に転落、そのまま死亡したとのことだった。
恵美によれば、泰三とは不仲だったらしい。
10年前、恵美はマサルを妊娠、泰三の反対を押し切り、駆け落ちした。
直後に相手は事故で死亡してしまい、母1人子1人で生活していた。
ところが3年前、何処で知ったのか泰三が現れ、泰三とマサルの間に交流が復活したと言う。
結局、自身とは最後まで和解出来なかったと語る恵美だが……。
一方、美由希が精神錯乱を理由に入院してしまう。
彩は美由希に詐病の疑いがあると考える。
美由希は詐病を使ってまで一体何を隠そうとしているのか?
美由希に泰三のことを尋ねる矢場だが、美由希は知らないと供述。
矢場は美由希が嘘を吐いたと見抜く。
矢場は、タカシの命日に、その墓前に泰三が参っていたと聞き込んでいた。
泰三は男の子を連れていたらしい。
これがもしもマサルだとすれば、泰三を通じて美由希と恵美にも関連があることになるが……。
泰三宅を訪ねた矢場は、恵美が掃除どころか家賃まで支払い続けていることを知る。
恵美と泰三は不仲ではなく、既に和解していたのだ。
美由希同様に恵美もまた、嘘を吐いていたことになるが……。
さらに、泰三が10年前の8ヶ月間だけ献血していないことを突き止める。
大量の輸血をしたのではないか、との彩の推理を聞いた矢場はタカシとの関連性に気付く。
タカシが事故死したのも10年前である。
矢場は、ある確信を持って大隈にシャンパンタワーを調べるよう指示を出すと、自らはタカシについて調べ始める。
泰三がタカシに輸血していたこと、シャンパングラスの破片の中に別のガラスが混入していたことが判明。
さらに、矢場はマサルの帽子にあったケンダーマンのバッジに注目。
最初の訪問ではあったそれが、2度目の訪問では無くなっていた。
恵美を訪ねた矢場は、恵美がバッジを取り外したことを確認し、遂に真実に辿り着く。
美由希を堀田殺害現場に呼び出す矢場。
矢場による謎解きが始まる。
美由希が倒れ込んだ場所を間違えたのは何故か?
美由希は金平糖のネオンを星と間違えて証言した。
星を視認することが出来る視力があれば、隣の文字を読むことで金平糖であることは理解出来た筈だ。
それが出来なかったのは、視た人間が美由希とは別人で、目が悪い人物。
これを誤魔化す為に美由希は倒れ込んだ場所を訂正しなければならなかった。
つまり、美由希はその人物の身代わりとなっているのだ。
この間違いが起こった理由は何故か?
美由希は身代わりとなった人物に事件について聞いた。
しかし、その人物は目が悪く金平糖を星と誤認。
ところが、美由希にはそれを確認することは出来なかった。
何故なら、ネオンは美由希が駆け付けた21時には消えていたから。
美由希は再現時にこの間違いに気付き、倒れ込んだ場所を変えたのだ。
では、堀田を殺害したその人物は、視力矯正器具を着用していなかったのか?
否、着用していたが堀田と襲われた際に壊れてしまったに違いない。
ここから、眼鏡が壊れたことが導き出される。
では、壊れた眼鏡はどこへ消えたのか?
ここでシャンペンタワーである。
眼鏡の破片を回収し切ることは不可能。
そこで、木の葉を隠すのは森の中の要領で、シャンペングラスを壊し、その破片の中に眼鏡の破片を紛れ込ませたのだ。
そして、事件関係者の中で眼鏡を替えた人物が1人居る―――恵美である。
恵美は壊れた眼鏡を取り換えたのだ。
その頃、取り調べを受ける恵美は真相を告白していた。
泰三と親娘として関係回復した恵美。
ところが、当の泰三は殺害されてしまった。
この殺人者こそ堀田だったのだ。
タクシー運転手をしていた泰三は、堀田を客として乗せた。
そこで、堀田が別の顧客相手に約束を反故にしたことを自慢気に話している所を見てしまう。
この様子を録画していた泰三は、堀田に謝罪と賠償を要求。
しかし、堀田に殺害されてしまう。
泰三が恵美に遺した手紙から、堀田に殺害されたと察した恵美は、自首するよう堀田に直談判に赴く。
ところが、其処で開き直った堀田に襲われてしまった。
抵抗した恵美は、手近にあったブロンズ像で堀田を殴りつけた。
最初こそ、身を守る為だったが、復讐心もあり、そのまま打ち付けて堀田を殺害してしまったのだった。
此処に美由希が駆け付け、恵美を庇ったのだった。
では、美由希がタイミングよくやって来れたのは何故か?
泰三の手紙には続きがあった。
其処には美由希を頼るよう記されていた。
だが、堀田の弁護士をしていた美由希に恵美は頼ることが出来なかった。
しかし、直前になって連絡だけは入れたのだ。
これを聞きつけた美由希が現場に到着した時には、既に堀田は死亡していたのである。
美由希は何故、見ず知らずの恵美を庇ったのか?
10年前に、泰三は8ヶ月ほど献血出来なかった。
そう、タカシが事故に遭った際に病院まで運び、タカシの為に輸血していたのだ。
タカシが死亡した後も、泰三は美由希の心の支えとなっていたらしい。
これ以来、美由希は泰三を恩人と思うようになっていた。
恩人である泰三が殺害された。
しかも、殺したのは自身が弁護した男である。
さらに悪いことに、その男は弁護した案件でも実際に手を下していた。
そして、恩人の娘がその男を殺害してしまい窮地に立たされてしまっている。
もう、身代わりしかないと思ったと言う美由希。
例のバッジはタカシの遺品だった。
恵美に身代わりを申し出た美由希はせめてもとタカシのバッジを託す。
託された恵美は、泰三の遺したマサルの帽子に着けた。
ところが、矢場たちがやって来たことで危機感を抱き、外したのだった。
これが矢場に最終的な確信を持たせることになったのは皮肉であった。
「タカシ君があなたの誤りを正したんですよ。あなたは身代わりなどではなく、弁護士として恵美さんを守るべきでした」矢場の言葉に涙する美由希。
遅まきながら恵美を守る為に戦うと宣言する。
こうして、事件は解決した。
今回の事件を通じ、大隈は矢場専属となることに。
そして、今日も彩は矢場の朴念仁ぶりに振り回されるのだった―――エンド。
<感想>
原作なし、オリジナル作品です。
では、ドラマの感想を。
伏線がかなり緻密に作り込まれていて、面白かった。
シャンパングラスから恵美の眼鏡にはすぐに気付いたのですが、マサルのバッジには気付かなかった。
それと、美由希が倒れた位置を訂正したことへのロジック。
あれは秀逸でした。
ネオンサインからこれが導き出され、そこからシャンパングラスと眼鏡に繋がるのは見事。
普通ならば、眼鏡とシャンペングラスのロジックのみだったでしょう。
その点でも、好印象です。
ただ、矢場は“ヤバ検”と呼ばれる割には、「京都地検の女」の鶴丸検事ほどのインパクトは無かったかな。
舘さんも好演されていましたが、ちょっとイメージが違ったかも。
佐野史郎さんみたいなタイプの方が、このキャラクターには似合っていたかもしれませんね。
とはいえ、全体として十分に及第点と言えるでしょう。
シリーズ化して頂きたい作品です。
次回作にも是非、期待です!!
<キャスト>
舘 ひろし
原 沙知絵
愛華みれ
河相我聞
○
山本 圭
○
遠藤久美子
宮下裕治
黒田アーサー
○
矢崎 滋 ほか
(公式HPより、順不同、敬称略)
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