2012年02月24日

『夏に消えた少女』(我孫子武丸著、新潮社『Mystery Seller(ミステリーセラー)』掲載)

『夏に消えた少女』(我孫子武丸著、新潮社『Mystery Seller(ミステリーセラー)』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

すべてのミステリファンに捧ぐ。文庫史上最も華麗なアンソロジー。

日本ミステリー界を牽引する8人の作家の豪華競演。御手洗潔、江神二郎など、おなじみの主人公から、気鋭の新たな代表作まで、謎も読後感も全く異なる八篇を収録。どの事件から解くのもよし。極上のトリックに酔いしれること間違いなし。すべてのミステリーファンに捧げる、文庫史上もっとも贅沢なアンソロジー。著作リストも完備して新規開拓のガイドとしても最適です。
(新潮社公式HPより)


<感想>

我孫子武丸先生の短編です。
かなり、いい感じですね。
我孫子先生の代表作を彷彿とさせる手際は「鮮やか!!」の一言。

ラストの後味の悪さもかなりのものです。
同時に2重のトリック(誤認)に気付きます。
すると、本作の持つもう1つの顔が見えて来る贅沢な仕掛け。
本格の短編として完成度は高いので、一読の価値はある!!
読むべき!!

内容に踏み込んで説明したいところですが、それをすると完全にネタバレになっちゃいますね。
この説明自体が既にネタバレっぽいですが。
もうこれは本作を読んで貰うしかないでしょう!!

注意を1つ。
管理人のあらすじはこのトリックを上手くまとめられているとは思えません。
このトリックを楽しむ為には『夏に消えた少女』を読むことをオススメします!!

<ネタバレあらすじ>

後方支援担当の警察官である私は、とある目的の為にある家を訪れていた。
これから、目の前に居る母親に事実を告げなければならない。
だが、この瞬間が一番つらい。

「付近の公園で小学生の女子児童が中年男性に連れ去られる姿が目撃されました。目撃者によるとお宅の夏紀さんのようです」

案の定、それを聞いた母親からは血の気が失われて行く。
それと共に「嘘よ、嘘よ」と繰り返すと錯乱状態に陥った。
全くもってその気持ちが理解できるだけに痛ましい。

「ご主人は会社ですか、ご主人を呼び戻して頂けますね」
私の要請にこくこくと頷く彼女。

だが、彼女はまだ知らないことがある。
この近辺で多発している女子児童への悪戯および、遂には殺害に至った事件の犯人と、今回の犯人が同一人物であると確認されたのだ。
したがって、被害者の身に危険が迫っていることは容易に想像できた。
被害者に時間は余り無いのだ……。

このことは今はまだ伝えるべきではないだろう。
私は必死に母親を宥め落ち着かせることにした……。

遡ること数時間前、38歳の誘拐犯は公園で1人の少女に声をかけた。
少女は重傷を負った小鳥を抱え、おろおろと戸惑っていた。
其処へ男が「早く病院に連れて行こう」と告げると、彼女はあっさりとついて来た。
男は車を走らせると、自身が良く知る人気のない山奥へと向かうのだった。

一方、私の前に家の主である夫らしき人物が慌てて帰って来た。
彼は変事を知らされると忽ち狼狽えた。
もっとも、その妻ほどでは無かったようだ。
暫くすると、あることを切り出してきた……。

誘拐犯は山の中へと少女を誘い込んだ。
自身の置かれた立場を理解し始めた少女は、いやいやと首を横に振ると身体を震わせた。
誘拐犯はズボンからベルトを引き抜くとそれで少女を打擲する。
「穴を掘れよ、小鳥を埋められる穴を」
男の剣幕に怯えた少女はおそるおそる泣きながら穴を掘り始める。
その穴は小鳥のサイズを遥に上回り、さらに大きくなっていく。
それと共に少女の手は土で汚れ、爪からは血が滲み出る。
男はさらに興奮すると、もっと大きな穴を掘らせようとして……。

「警察です、動くな!!」
そこへ、私が駆け付けた。
こうして、犯人の男は逮捕され少女は無事保護された。

すべては夏紀の父親の証言通りだった。
彼は38歳の息子である夏紀が行きそうな場所に心当たりがあると、この山を教えたのだ。
そう、誘拐犯こそ夏紀であった。

私は思う。
同じ女として夏紀の母親には同情を禁じ得ない。
何故なら、私にも年頃の息子が居るのだ。
彼は非常に親孝行ないい息子である。
だが、それは親に向けた表の顔かもしれない。
もしも、夏紀のようなことを仕出かすとしたら……そう考えると夜も眠れないのだ―――エンド。

<我孫子武丸先生関連過去記事>
【「狼と兎のゲーム」】
「狼と兎のゲーム(第1回)」(我孫子武丸著、講談社メフィスト連載)ネタバレ書評(レビュー)

「狼と兎のゲーム(第2回)」(我孫子武丸著、講談社メフィスト連載)ネタバレ書評(レビュー)

・[速水三兄妹シリーズ]
「8の殺人」(講談社)ネタバレ書評(レビュー)

「監禁探偵」(我孫子武丸原作、西崎泰正画)まとめ

探偵Xからの挑戦状!「記憶のアリバイ」(11月18日)本放送ネタバレ批評(レビュー)

探偵Xからの挑戦状!「記憶のアリバイ」解決篇(11月25日放送分)ネタバレ批評(レビュー)

「TRICK×LOGIC(トリックロジック)」5話「亡霊ハムレット」推理にチャレンジ&発売からほぼ一週間が経過して……
(我孫子先生担当の「盗まれたフィギュア」について推理)

「Mystery Seller (新潮文庫)」です!!
Mystery Seller (新潮文庫)





我孫子先生が原作を担当したコミック「監禁探偵 (マンサンコミックス)」です!!
監禁探偵 (マンサンコミックス)





我孫子武丸先生の「殺戮にいたる病 (講談社文庫)」です!!
殺戮にいたる病 (講談社文庫)





同じく「弥勒の掌 (文春文庫)」です!!
弥勒の掌 (文春文庫)





◆我孫子武丸先生のその他の作品はこちら。


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