ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
すべてのミステリファンに捧ぐ。文庫史上最も華麗なアンソロジー。
日本ミステリー界を牽引する8人の作家の豪華競演。御手洗潔、江神二郎など、おなじみの主人公から、気鋭の新たな代表作まで、謎も読後感も全く異なる八篇を収録。どの事件から解くのもよし。極上のトリックに酔いしれること間違いなし。すべてのミステリーファンに捧げる、文庫史上もっとも贅沢なアンソロジー。著作リストも完備して新規開拓のガイドとしても最適です。
(新潮社公式HPより)
<感想>
麻耶雄嵩先生の短編です。
やっぱり、曲者ですね。
本作も捻ってます。
いや、作品としては直球なんです。
捻ってるのは登場人物。
特に探偵役(と言っていいものか……)。
これは同シリーズ続編『転校性と放火魔』でも一貫してます。
ラストには度胆を抜かれました。
そのラスト、どう考えても「仕方なくもない」し「情が深くもない」よなぁ……。
殺人でしょ、あれは。偽装もしてるし。
間違いなく“悪”です!!
それをあのテンションでトークされると、かなりコワイ。
あのコンビは似た者同士なんだなぁ……と考えるとやはりコワイ。
第一、あの人の証言を鵜呑みにしてもいいものか……。
などなど、考えさせられる作品です。
やっぱり、凄い!!
ただ、麻耶先生の作品としては些か弱いかもしれない。
<ネタバレあらすじ>
俺は恋人の真紀と一緒に買ったペアのウサギの御守りを失くしてしまった。
真紀にバレないうちにと必死に捜す俺だったが、一向に見つからない。
そんな時、街の有力者の娘が恋人である教師と駆け落ちしたとのウワサを耳にする。
ところが、当の2人が公園から死体で発見される。
教師は後頭部を鈍器のような物で殴りつけられていた。
有力者の娘は短刀で胸をグサリである。
どうやら何者かに殺害されたようだが……。
2人の駆け落ちを警戒し、監視するべく家の者に雇われていた叔父によれば、「何時の間にやら逃げられていた」らしいが……。
ある夜、御守りを捜していた俺は叔父の留守宅に上り込む。
案の定、其処には御守りがあった。
そして、血に塗れた地蔵までも……。
帰宅した叔父に何の気なく問いかける俺。
叔父は天気の話でもするように、真相を打ち明ける。
駆け落ちできるよう娘に頼まれた叔父は、プロとして依頼料の2重取りはタブーと知りつつ引き受けた。
変装させて教師との約束の場所まで車で送り届けようとしたところ、急いでいた所為か誤って男性教師を車で撥ねてしまう。
結果、男性教師は傍にあった地蔵に頭を打ち付け死亡してしまう。
それを見た娘は後を追うべく所持していた短刀で咽喉を突こうとし、それを止めようとした叔父と揉み合いになり叔父は胸を刺してしまった。
こうして、2人に死なれた叔父は此処に放置するのも可哀想だと考え、2人を逢引場所の公園へと移動させたのだ。
叔父さんの人情深さを知っている俺は叔父さんの配慮に感動する。
だが、今はそれよりも御守りを見つけた喜びの方が勝っているのだった―――エンド。
◆関連過去記事
【メルカトルと美袋シリーズ】
・「メルカトルかく語りき」(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「メフィスト 2010 VOL.1」より「メルカトルかく語りき 第二篇 九州旅行」(講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「メフィスト 2010 VOL.3」より「メルカトルかく語りき 最終篇 収束」(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『メルカトル鮎 悪人狩り「第1話 囁くもの(メフィスト2011 vol.3掲載)」』(麻耶雄嵩著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』関連記事】
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第1話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2012年10月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
・『弦楽器、打楽器とチェレスタのための殺人』第2話(麻耶雄嵩著、光文社刊『小説宝石』2013年1月号掲載)ネタバレ書評(レビュー)
【その他】
・「貴族探偵」(集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「隻眼の少女」(麻耶雄嵩著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・話題の新作「TRICK×LOGIC(トリックロジック)」収録シナリオが明らかに!!
・オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)
【関連する記事】
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- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)