2012年09月01日

『柘榴』(米澤穂信著、新潮社『Mystery Seller(ミステリーセラー)』掲載)

『柘榴』(米澤穂信著、新潮社『Mystery Seller(ミステリーセラー)』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

すべてのミステリファンに捧ぐ。文庫史上最も華麗なアンソロジー。

日本ミステリー界を牽引する8人の作家の豪華競演。御手洗潔、江神二郎など、おなじみの主人公から、気鋭の新たな代表作まで、謎も読後感も全く異なる八篇を収録。どの事件から解くのもよし。極上のトリックに酔いしれること間違いなし。すべてのミステリーファンに捧げる、文庫史上もっとも贅沢なアンソロジー。著作リストも完備して新規開拓のガイドとしても最適です。
(新潮社公式HPより)


<感想>

米澤穂信先生の短編です。
やっぱり凄いです!!

読後の後味の悪さは強烈。
「柘榴」の意味に気付いた時、世界が180度変わるのも特徴。
なんとも淫靡で意味深長な作品といえるでしょう。
それと、この作品世界を支配している成実の心情描写がないのも……。

グッと凝縮された背徳的な世界観に酔いたい方にはオススメです!!

<ネタバレあらすじ>

容姿端麗なさおりは大学で運命の出会いを果たした。
相手は眉目秀麗な男性・成実。

さおりは居並ぶライバルを排除し、遂に成実を射止めた。
成実はさおりにとってトロフィーだった。

結婚まで考えるさおり。
そんなさおりを母は応援し、父は反対した。
母は成実を見て一目で気に入ったのだ。
父は成実を見て「あれはダメだ」と洩らした。
結果は、父が正しかったのだ……。

だが、さおりは成実と結婚した。
すぐに子供が出来た。
名前は夕子。
夕方に生まれた女の子だからだ。

そして、妹も生まれた。
名前は月子。
月が見える夜に生まれたからだ。

だが、この頃にはさおりは気付いてしまった。
成実に生活能力がないことに。
しかも、殆ど家に寄り付かないことに。

成実は決して家族を愛していないワケではない。
だが、彼の愛情はあくまで自分本位な物だった。

さおりはそれに振り回されながら必死に働き、娘2人を育てた。
娘は中学生になった。
夕子は母親譲りの美貌を備えた。
月子は母親譲りの美貌に加え、庇護欲をそそる儚げな弱さを備えるようになった。
共に自慢の娘である。

そんなある日、さおりは成実と離婚することになった。
意外にも成実は親権を主張してきた、さおりの勝ちは揺るがないと思われたが……。

夕子は母を尊敬していた。
父の力を借りずに1人で娘たちを育てているからだ。
だが、夕子は父も愛していた。

こんなことがあった。
ある夏祭りの夜、母の許しを得て浴衣を着て父を含めた家族全員で出かけた神社の境内。
そこで、夕子は父から「柘榴」の話を聞いた。
夕子は父と「一緒に柘榴を食べること」を約束した。
そして、その約束はそれからすぐに果たされた。

今、両親は離婚しようとしている。
このままでは、親権は母のものとなるだろう。
夕子は月子と相談し一計を案じた。

そして、自宅にあった靴ベラを持ち出すと互いの身体を打ち据えることにした。
まずは月子に自分を打たせた。
月子は泣きながら、どこか遠慮がちに叩きつけた。
さぁ、今度は夕子の番だ―――。

さおりは驚いていた。
親権が成実のものとなったのだ。
その理由は自身が娘2人を虐待したとの身に覚えの無いものだった。
ワケの分からないさおりだが、娘たちが成実を選んだことだけは理解できた……。

夕子は1人悦に入っていた。
親権が父のものとなったからだ。
確かに母には悪いことをした。
だが、それでも喜びが勝っていた。

何故なら、これで成実を独占できるから。
母は老いたとはいえ、容色が衰えず勝てないと思っていた。
ところが、母は自ら身を退いた。
チャンスは今しかない。
そこで、姑息な計略を使った。

さて、残るは妹の月子だ。
夕子は気付いていた。
月子もまた成実を愛していることに。
それは父親としてではなく、異性としてである。
月子は危険だった。
美貌だけではなく、儚さも備えている。
将来的に強敵になることは間違いない。

そこで、靴ベラで打ち据えた。
最初に自分を打たせ、断れないようにした上で、あえて思いきり叩きつけ肉を裂き一生残る傷をつけたのだ。
あれだけ綺麗だった月子の背中も今はそれほど脅威ではない。
夕子は愛する男を独占できることに安堵の溜息を吐いた―――エンド。

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「Mystery Seller (新潮文庫)」です!!
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