2013年05月22日

『転校性と放火魔』(麻耶雄嵩著、新潮社『小説新潮 2012年02月号』掲載)

『転校性と放火魔』(麻耶雄嵩著、新潮社『小説新潮 2012年02月号』掲載)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<感想>

麻耶雄嵩先生の短編『失くした御守り』のシリーズ続編です。
やっぱり、曲者ですね。
本作も前作同様に捻ってます。

前作を読んでいれば、結末がどうなるかは想像できるでしょう。
その通りの結末です。
そして、あの結末を淡々とやられるのが怖いんだよなぁ……。
静かな雰囲気の中に、あのやりとりを盛り込まれることで歪に浮かび上がる2人が……。

そのラスト、どう考えても「仕方なくもない」し「情が深くもない」よなぁ……。
殺人でしょ、あれは。偽装もしてるし。
第一、証言を鵜呑みにしてもいいものか……。

叔父は明らかに計画的だよねぇ……。
3件目が発生した時点で真相を明かさなかったことで、自身の罪の隠蔽と想い人への接近を狙ったとしか思えない。
しかも、あの人に罪も着せるし……。
潟田が可哀想だから隠蔽したのでは間違ってもないよね。

などなど、考えさせられる作品です。
やっぱり、凄い!!

ただ、麻耶先生の作品としてはやっぱり些か弱いかもしれない。

<ネタバレあらすじ>

・シリーズ前作はこちら。
『失くした御守』(麻耶雄嵩著、新潮社『Mystery Seller(ミステリーセラー)』掲載)ネタバレ書評(レビュー)

俺の暮らす街に幼馴染の明美が戻って来た。
明美の母と義父・桐也が離婚したことで故郷に帰って来たのだ。
過去に俺と恋人同士だった明美の登場に真紀はヤキモキしっぱなしである。

そんな中、連続放火事件が発生。
3件目でついに潟田という女性が殺害されてしまう。
警戒を募らせる中、明美宅に桐也が現れ妻子を道連れに無理心中を図る。
だが、放火殺人事件を警戒中だった警察により桐也が逮捕され、事件は未然に防がれることに。
これまでの犯行すべてが桐也によるものかと思われたが……。

何気なく叔父宅を訪ねた俺。
叔父は明美の母と顔見知りで、今回も防犯対策ということで明美宅に泊まり込んでいた。
結局、役には立てなかったよ……と苦笑いを浮かべる叔父を励ます俺。
だが、叔父はどこか歯切れが悪い。
またも、何か隠しているのでは……と疑った俺は打ち明けるように促す。

それに応じて叔父が語った真相とは。

放火事件の真犯人は桐也ではなく3件目の被害者・潟田だった。
潟田は桐也を愛しており、復縁を望む潟田を明美の母にとられぬよう排除を目論んだ。
そこで桐也を麒麟とした5獣の考え方で、朱雀、白虎、玄武、青竜の土地に放火し、この中に明美宅を紛れ込ますことで真意を隠蔽しつつも桐也の独占を計画したのだ。

ところが、3件目で明美宅を襲撃したところで通りがかった叔父に捕まってしまう。
揉み合いになった2人だったが、事故により潟田は死亡。
このままでは、潟田が可哀想だと考えた叔父は潟田宅へと運び込んだ。
さらに、これで放火事件が終わってしまえば、犯人が誰か分かってしまう可能性がある。
そこで、放火犯の3件目の犯行に見せかけたのだと言う。

叔父によれば桐也が捕まってしまうとは思わなかったらしい。
叔父の優しさに絆された俺は、真相を明かす必要はないと諭すと共に、最近、疎遠になりつつある真紀とどうやって距離を縮めるかへと思考を移すのだった―――エンド。

◆関連過去記事

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小説新潮 2013年 02月号 [雑誌]





『転校生と放火魔』掲載「小説新潮 2012年 02月号 [雑誌]」です!!
小説新潮 2012年 02月号 [雑誌]





前作『失くした御守り』収録「Mystery Seller (新潮文庫)」です!!
Mystery Seller (新潮文庫)





こちらは旧版「翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 (講談社文庫)」です!!
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2011年5月10日発売「メルカトルかく語りき (講談社ノベルス)」です!!
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コミック版メルカトル鮎はこちら。
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化粧した男の冒険-メルカトル鮎の事件簿- (秋田コミックスサスペリア)





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