2012年03月07日

「三億円事件奇譚 モンタージュ」第76話(講談社ヤングマガジン連載中)ネタバレ批評(レビュー)

「三億円事件奇譚 モンタージュ」第76話(講談社ヤングマガジン連載中)ネタバレ批評(レビュー)です!!

三億円事件奇譚 モンタージュ1


登場人物一覧:

【現代】

鳴海大和:主人公、三億円事件の犯人の息子と呼ばれるが……
小田切未来:大和の幼馴染み、両親の行方不明後は大和と共に逃亡中

鳴海鉄也:大和の父、五つの首(首、手首、足首)を失くした遺体で発見されるが……
未来の両親:突然姿を消した。関口が行方を知っているらしい……。

鈴木泰成:未来の両親の後輩、要所要所にて不穏な動きを見せていたが……
水原:福岡県警所属の巡査。上司曰く「検挙率100%男」。15話より登場。
夏美:泰成の塾の教え子。大和に一目ぼれする。14話より登場。

土門:過去編の土門その人。足を洗い東海林とは友情を築いていた。47話時点では既に死亡している、病死らしい。享年70歳。
土門あきら:46話で登場した土門の孫娘。未来より1つ年下の17歳。

関口:元祖悪徳警官、眼鏡の男の命令に従い大和と未来を追う
眼鏡男:関口に指示を与えている男、どうも謎の男と同一人物らしい(42話)。

沢田幹事長:19話で登場、謎の男を従えているが……
謎の男:シルエットのみ登場した沢田の腹心。関口に指示を与える人物と同一人物らしい(42話)

松葉杖の男:30話で登場、小田切家を訪ねたシルエットの人物。48話で川崎雄大と判明。

朝霧:46話で登場、沢田の部下らしい。45話で石川を殺害したのは彼。64話で関口に殺害される。

小柳翔太:61話で登場、負傷した大和と水原を助けた。以後、大和と行動を共にする。
茜:61話で名前のみ登場、翔太の彼女で社会人らしい。69話で大和たちを匿う。

森田:1話にて関口と共に現われた捜査員。以降、本編に出番なし。
血塗れの男性:元刑事、1話にて殺害される。これは関口の犯行だった。実は過去篇の東海林。
ボート小屋のオヤジ:軍艦島付近でボート小屋を営んでいた。6話で関口に殺害され、この殺人容疑が大和と未来にかかっている。
土居:18話に登場。ミステリ作家兼コメンテーター。三億円を信じていなかった。
島田:5話より登場。関口の部下だったが、19話で失態を犯し関口に処刑された。
夏美の母:関口と男女の関係にある。
水原の祖母:44話より登場。その自宅は東京での大和たちの活動拠点となっている。
石川:東海林の同僚、45話にて登場。同話にて朝霧に口封じされてしまう。
東海林の息子:45話にて登場。東海林の一人息子だが東海林とは折り合いが悪かったらしい。
高野:65話で登場。関口に協力し証拠を隠滅した。69話で関口に殺害される。

【三億円事件当時】

川崎雄大:22話より登場。三億円事件では白バイ警官役を演じたらしい。和子との間に一子をもうける。
望月竜:23話(22話は名前のみ)より登場。雄大と共に三億円事件を実行した。
響子ギブソン:竜の恋人。竜と共に土門への対策を練っていた。
土門:地元の顔役(地廻り)。竜と対立するが……
東海林:25話にて登場。土門を追う刑事。雄大の機智に興味を持っていた。後に1話で殺害された老刑事が彼と判明(37話)。
沢田慎之介:26話より登場。竜の顔馴染み&雄大の友人、日本の行く末を憂慮していた。28話にて後の幹事長と判明。
横溝:26話より登場。竜の後輩。
和子:27話より登場。雄大と交際中の女性。雄大との子供を妊娠するも事故死。
和子の子供:28話に登場。雄大と和子の子供。未熟児で生まれた。現代篇の誰になるのか?

<第76話あらすじ>

〜〜フェリー篇、前回までのあらすじ〜〜

フェリーにて沖縄へと移動中の大和と未来。
その途上、室内(105号室)に保管していたトランクから、旧紙幣が半分盗まれてしまった。
物が物だけに被害届を出すワケにも行かず、困り果てる大和たち。
大和は犯人を捕まえようとするが……。

その旅程は、沖縄までもう1日を切っている。
果たして、大和と未来は犯人を突き止め、旧紙幣を取り戻すことが出来るのか?

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

旧紙幣を盗んだ犯人を罠にかけた大和たち。
その正体は―――OL風の女性だった。

大和は何故、彼女が犯人だと断定出来たか推理の過程を述べて行く。

すべては消去法により導き出せたと語る大和。

まず、容疑者は全5組。
老夫婦、50代男性、1人旅の女性、OL風の女性、ホスト風の男性である。

この中で、老夫婦は身に着けた貴金属類から金銭的に恵まれていると判断(73、74、75話)。
さらに、老夫婦2人で短時間に旧紙幣を運び出すのは体力的に不可能と断じる。

次に、ホスト風の男性。
こちらはサングラスをしていたので一見分からなかったが目が悪い。
それは、自室と大和の部屋を間違えたこと(73話)、コーヒーにガムシロと誤ってミルクを入れてしまったこと(74話)などから分かる。
眼が悪い以上、トランクを解錠するなどといった細かい作業は出来ない。
よって、彼も違う。

残るは3人。決め手は盗んだ旧紙幣をどう運ぶか。
トランクから盗み出された旧紙幣は嵩張るものだった。
当然、犯人にはフェリーから降りた後に運ぶ手段がある筈である。
それは車以外に考えられない。

だとすれば、常に酔っぱらっていた50代男性は運転出来ないから除外出来る。
これだけ慎重な窃盗を犯した犯人が飲酒運転などと簡単なミスを犯すことはないからだ。

残ったのは2人。

だが、1人旅の女性は、フェリー内で着替えた様子がなかった。
しかも、極力荷物を増やす行為を避けていた。
つまり、車ではなくバイクで移動しているのだ。
バイクでは旧紙幣は運べない。
よって、これも除外。

残ったのは―――OL風の女性である。
だが、OL風の女性はどうやって大和たちの行動を把握していたのか?
彼女はデッキへの通路に陣取っており、105号室の動向は掴めても食堂への出入りは確認できなかったはずである。

その答えは鏡にあった。
OL風の女性は、常にテーブルの上にコンパクトを開いた状態で置いていた。
彼女はこのコンパクトを合わせ鏡の要領で使い、食堂前をチェックしていたのだ。

そもそも、大和は消去法以前から彼女を疑っていた。
通路上にて子供と擦れ違った彼女、その長い髪が子供の持つ玩具に絡まった。
ところが、彼女は咄嗟に気付かなかった。
つまり、長髪は鬘なのだ。
更に、女性でありながら短く切り詰められた爪も目を惹いた。

髪が落ちないよう短髪にし、作業し易いように切られた爪―――これらから導き出された職業。
それが窃盗犯だったのだ。

此処までを聞いたOL風の女性は大和の推理に心底感嘆。
被っていた鬘を脱ぐと、そこから現れたのは大和の推理通り短髪の女性。

正体を現した彼女の次なる行動は如何に―――77話に続く。

<感想>


ロジック炸裂!!


風雲急を告げるフェリー篇。
4回目の今回は大和の推理が披露されました。
まさに、大和の能力が遺憾なく発揮されましたね。

さらに推理ですが、ミステリとしてかなりの完成度です。

まず、消去法を用いていたことが良かった。
このロジックがなかなかに面白い。
これまでの描写が万遍なく活かされていました。

老夫婦の体力や、車を用いて酔っ払いを消去までは割と想像できますが、残り2人の条件が特に良い。
ホスト風の男の「部屋の取り違え」と「ミルクとガムシロの取り違え」から「目が悪い」を導き出し、其処から「トランクを解錠できない」としたのは秀逸。
そして、75話の描写から1人旅の女性が車であるかのようにミスリードしつつ、それまでの行動から荷物を持てない状態であると指摘、「車ではなくバイクだった」とする流れはまさにミステリの醍醐味を味わいました。

ただ、ホスト風の男性については目が悪い割に携帯でやり取りが出来ているのが少し疑問かも。
電話が出来ると言うことは、携帯のあの小さいボタンを押せると言うこと。
したがって、数字錠を開けることも可能かもしれないので。
どちらかといえば、目が悪い為に大和たちを監視できなかったことがメインとした方が良かったかも。

続いて、大和たちの監視方法がコンパクト(鏡)であったことも良かった。
これは前回批評(レビュー)で述べたとおりですね。
管理人は角度と位置からコンパクトで死角を補ったと考えていましたが、合わせ鏡だったことも良かった。

そして、何より鬘を導き出した「髪が絡まったが咄嗟に気付かなかった」とのポイントには脱帽。
あの描写が意味ありそうと思いつつも、その意味を汲むことが出来なかったのは不覚です。

こうして考えると、読者に対しては描写の量的にOL風の女性が怪しいことも分かる仕掛けになっていたんですね。
非常に上手く構成されています。
無駄な描写が一切無かったワケです。
同時に、大和の凄さの片鱗を味わったワケで、これはもう物凄く考え抜かれてます。

アクションも確かにいいけど、推理物もいい。
これ、今後もやって欲しいなぁ……。

さて、当の窃盗犯。
関口たちとは関係なく、フェリー専門の窃盗犯で偶然に大和たちと遭遇したと思われます。
今後、どう動くのか次回が気になりますね。
大和たちの仲間になるのでしょうか。
裏社会を知る彼女は味方にすれば心強そうです。

彼女は、旧紙幣を目撃してしまっているだけに、その身も危険な筈。
特に、別に監視者が居て朝霧なみの相手ならば、口封じに殺害されてもおかしくない。
それを避ける為には、大和たちと共闘するしかないがどうなるのか。
ここにも注目ですね。

一方で、関口(あるいは泰成)に連絡を取っていたと見られる監視者が別に存在する筈です。
残りの4組の中に居ることになりますね。
あるいは4組共が何らかの関係者である可能性も否定できませんが。
奇しくも窃盗犯こそが背後関係がなく、大和たちにとって一番安全な相手となりそう。

変わって、現在の勢力図はこんな感じ!?

@大和たち(水原含む)
A沢田たち(眼鏡男、関口)
B雄大一派(雄大死亡!?)
C泰成一派

Aの沢田たちも眼鏡男と沢田の間には含みがある様子。
決して一枚岩とは言え無さそう。

以上のように争いは3つ巴から4つ巴に。
更なる激化は間違いないか?

とりあえず、今回はここまで。
逃亡し続ける大和と未来の明日はどっちだ!!
77話に期待です!!

ちなみに、2012年3月6日に「三億円事件奇譚 モンタージュ」最新第7巻が発売予定。
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◆関連過去記事
「ヤングマガジン27号」(講談社刊)より「三億円事件奇譚 モンタージュ」連載開始!!

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