ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
ミステリー界を仰天させた完璧無比の密室トリック、ついに文庫化!
日曜の昼下がり、株式上場を目前に、出社を余儀なくされた介護会社の役員たち。厳重なセキュリティ網を破り、自室で社長は撲殺された。凶器は?殺害方法は?推理作家協会賞に輝く本格ミステリ
防犯探偵が暴く密室トリック!
日本推理作家協会賞受賞作
巻末に法月綸太郎氏による、貴志祐介特別ロング・インタビューを収録
日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて・・・・・・。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。
(角川書店公式HPより)
<感想>
記念すべき防犯探偵シリーズ第1作目です。
シリーズには他に『狐火の家』『鍵のかかった部屋』がある(2012年3月現在)。
・『狐火の家』(貴志祐介著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『鍵のかかった部屋』(貴志祐介著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
やっぱり、面白い!!
器械トリックには抵抗がある管理人ですが、何故かすっと受け入れられました。
これは作品世界がきちんと作り込まれているからだと思われます。
特に魅力的な不可能犯罪と、登場キャラクターがイイ!!
これらがグイグイと作品世界に引き込ませる役割を担っています。
あとは、榎本同様に「あーでもない、こーでもない」と密室の謎にチャレンジするのみ。
気付いた時には、もう読み終えているという寸法。
以上のように、オススメの作品です!!
ただ1点、難があるように感じたのは、本作は2部構成なのですが、後半の犯人パートが前半の榎本による推理パートの勢いを削ぐこと。
最後まで榎本のみで突き進んだ方が良かったような気がする。
この点は、後のシリーズ作品で短編になったことで、達成されているので短編の方がより勢いがあるかもしれない。
ちなみに同シリーズがフジテレビ系列月曜21時枠にてドラマ化が決定しています。
榎本役は嵐の大野智さん。
詳細は下記過去記事をどうぞ!!
・貴志祐介先生『鍵のかかった部屋』(角川書店刊)ドラマ化決定!?
<ネタバレあらすじ>
登場人物一覧:
榎本径:防犯探偵その人。実は泥棒。
青砥純子:弁護士。榎本に良い感情を抱かない。
椎名章:被害者の会社を担当する清掃員。
介護ロボットの導入実現にまで漕ぎ着け、株式上場を果たそうとしていた介護サービス会社・ベイリーフの社長が殺害された。
死体を発見したのは、外部から窓の清掃をしていた清掃員・椎名章。
社長は室内にて頭部を何かで殴打され死亡。
室内には介護ロボットしか居なかった。
そして、社長室の窓は強化ガラス、廊下には監視カメラ、暗証番号付きエレベータと完璧なセキュリティが……。
唯一犯行可能だった専務が容疑者として拘束され、依頼を受けた純子が弁護を引き受ける。
もしも、専務が犯人でないとするならば、他に犯行可能な人物は存在しなくなってしまう。
この監視網を、犯人はどうやって潜り抜けて社長を殺害したのか?
純子は防犯コンサルタントを名乗る榎本の力を借りて、この難事件に立ち向かうことに。
実は榎本は現役の泥棒でもあった。
榎本の活躍もあり、死亡した社長と専務が100個のダイヤを隠し持っていたことが判明する。
だが、当のダイヤは無くなっていた。
犯人の目的はダイヤだったのか?
介護ロボットを利用した殺害説も疑われるが、ロボットには安全プログラムが組み込まれており、人に害を為すことは出来ないようになっていた。
さらには、介護マネキンによる錯誤説、秘書によるリレー説、監視カメラ工作説など、次々と仮説が立てられては消えて行く。
遂には殺人ではなく単なる事故の可能性まで浮上するが……。
やがて、榎本が気付いた犯人のトリックとは!?
犯人が行った殺害方法は次のようなものだった。
睡眠薬で眠った社長を介護ロボットを用い、窓際へ運んだ。
社長の頭部を窓に固定すると、外から窓越しに鈍器をぶつけた。
耐久力の高い強化ガラスは割れない、だが、振動を伝えられた人間の頭部は別である。
凶器は、「窓という硝子のハンマー」だった。
ここに密室の外から被害者を撲殺するとの特異な犯行が成立したのだった。
そして、これを実行出来たのは……窓の清掃業務に携わっていた椎名章のみ。
椎名の狙いは、闇金に殺害された両親の復讐を果たす為の資金。
そこで、ダイヤを狙ったのだ。
榎本はダイヤを盗んだことまでは認めるが、その為に殺人という手段を選択したことを非難するのだった。
こうして、椎名は純子に付き添われ自首することになった。
椎名の両親を殺害した闇金は捜査当局の手により立件される。
純子の依頼人の無実も証明された。
一方、椎名のもとから回収されたダイヤだったが、一部が偽物にすり替えられていた。
もちろん、誰の仕業かは語るまでもない―――エンド。
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