<あらすじ>
未解決事件の継続捜査を手がけ、“再捜査の鬼”の異名を持つ警視庁刑事・片岡悠介(寺島進)は、再捜査専門の特命捜査対策室に異動となった。唯一の部下として配属されてきたのは、以前迷宮入り事件の再捜査に共に当たったことのある奥村澪(原沙知絵)だった。
異動早々、悠介は、高校時代の同級生であり警視庁捜査一課の管理官に昇進したばかりの手塚高志(杉本哲太)から、12年前の未解決事件の再捜査を依頼される。というのも、大病院の院長・樋口常雄(陰山泰)が自宅で催していた“お香の会”で、突然乱入してきた喪服姿の女・須田さとみ(芳本美代子)に刺殺される事件が発生し、捜査一課の刑事・榎本香織(南果歩)らが捜査を開始したところ、犯人のさとみが12年前に夫の昭文(宮川一朗太)を東京・あきる野市の秋川渓谷で何者かに殺害されていたことが判明。そして、樋口に襲い掛かったとき、「人殺し!!」と叫んでいたことがわかったのだ。
今回の“お香の会殺人事件”には、12年前の未解決事件が絡んでいる…。あきる野署に異動になっていた元西青梅署刑事・浅野直樹(金子貴俊)の協力を得て、12年前の須田昭文殺害事件の再捜査を始めた悠介たち。死体の第一発見者の老人・川上澄男(なべおさみ)を訪ねたところ、供述調書には記されていなかった意外な事実を聞き出す。川上によると、12年前、昭文の遺体から香水のようないい香りが漂っていたというのだ。だが、その後、警官が駆けつけたときには香りが消えていたため、川上老人の証言は捜査本部に無視されたという。
悠介はまた、昭文の靴の裏に付着していた紫色のシミにも注目した。当時の捜査本部は、現場の渓谷に茂っていた山ブドウが付いたものと軽視していたが、悠介はこのシミがどのブドウ品種のものか再鑑定を命じる。すると、なんと“甲州”という種類のブドウ果汁だという新事実が浮かび上がる。
甲州といえば、山梨…。もしや昭文は山梨で殺害され、秋川渓谷は単なる死体遺棄現場だったのではないか…。悠介と澪は、踏みつけられたブドウの謎を探るため、山梨、そして長野のワイナリーへと向かう。長野の名門ワイナリーの経営者・兵藤耕作(益岡徹)、みどり(金沢碧)夫妻によると、以前、山梨でワイナリーを経営していた男がやって来て、しばらく働いていたが、10年前に病死したという。そのひとり娘・瑠璃子(三津谷葉子)は兵藤夫妻が養女にし、現在、ソムリエとして働いていたが…。実は、さとみが樋口を刺殺する数日前に、瑠璃子が彼女と会っていたという事実があった…。
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
30年前、雪山で真知子という女性が死亡した。
そして、現在。
大病院の院長・樋口常雄が、お香会の最中に公衆の面前で須田さとみに殺害された。
さとみはその場から逃亡、依然として捕まらないままである。
この事件が12年前のさとみの夫・須田が殺害された事件と関連していると考えた手塚は片岡に出馬を要請。
こうして、片岡が捜査に乗り出す。
須田の死体を発見した川上老人によれば、死体発見時に香水のようないい匂いを嗅いだと言う。
だが、通報で駆け付けた警官はそんな匂いはしなかったと主張。
結局、記録されなかったらしい。
そして、須田の靴の裏には“甲州”というブドウの果汁が付着していた。
須田の過去を調べた片岡は、須田があちこちから恨みを買っていたことを知る。
強引な地上げや脅迫を繰り返していたらしいのだ。
特に、山梨でワイナリーを経営する藤原という男性は会社を奪われていた。
藤原の恨みは深く、須田殺害も藤原の犯行では……と疑われていたほどだった。
藤原を追った片岡は、藤原が須田殺害の容疑をかけられ失意の中で既に死亡していることを知る。
さらに、その娘・瑠璃子が山梨の名門ワイナリーの経営者である兵藤夫妻の養女になっていることを突き止める。
なんでも、藤原が須田にワイナリーを奪われた際に兵藤に瑠璃子を預けたことが縁でそのまま引き取られたらしい。
そして、瑠璃子は樋口殺害事件の数日前にさとみと会っていた……。
樋口の妻によれば、学生時代の山岳仲間を名乗る人物が再三、樋口に金の無心をしていたらしい。
この友人こそが須田だった。
須田の殺害当日も、須田は樋口を訪ねていたことが判明する。
さらに須田について調べた片岡。
須田は、複数の大学の山岳部からなる「アルプス一万尺の会」に所属していたらしい。
ところが、現在ではこの会は存在しないと言う。
何でもある遭難事故が原因らしい。
その事故とは、若葉女子大学の吉野真知子が遭難死したものだった。
この際、吉野真知子と同行していたのが樋口と須田だったのだ。
樋口が須田の金の無心に応じていたことから、須田が樋口を脅迫していたと考える片岡。
そして、遭難時の山小屋の写真を目にした片岡は、そこに香炉が写っていることに気付く。
またも“香”が関わっていたのだ。
矢先、須田さとみが死体で発見される。
遺書も見つかり、覚悟の自殺かと思われたが……。
30年前、12年前、現在の事件を並べた片岡はすべてに“香”が関わっていると気付く。
30年前は山小屋に香炉があった。
12年前は川上老人が匂いを嗅いでいた。
現在は、樋口がお香会の席上で殺害されている。
片岡からお香が鍵を握っていると聞かされた手塚は、樋口の妻に接触。
樋口の所有する香木が、3本あった12年前に比べると1本減っているとの証言を得る。
さらに片岡は、伽羅ならば温めない限り匂いがしないことを知る。
樋口の所持していた香木は伽羅だった。
しかも、樋口の所持していた2本の香木から須田の指紋が検出される。
どうやら、消えた伽羅は須田が持ち去ったらしい。
川上老人に確かめたところ、須田の死体発見時に嗅いだ匂いは伽羅であると判明。
さらに川上によれば、さとみと会ったと言う。
その日は、さとみが樋口を殺害する前日だった。
さとみにお香のことを教えたのは川上老人だったのだ。
直後にさとみは「いつか聞いたあれだわ」と何かを納得していたようだが……。
さとみは川上老人から香について聞かされたことで、樋口を疑ったに違いない。
これが事実ならば、須田は死の直前に樋口と会っていたことになるからだ。
さとみは夫の敵討ちで樋口を殺害したのか?
だが、浅野は須田殺害が当時10歳の瑠璃子によるものではないかと推理。
これを聞いた片岡は「ありえない」と鼻で笑う。
一蹴され、肩を落とす浅野だったが、瑠璃子とさとみが連絡を取り合っていたことが判明。
瑠璃子が容疑者として浮上する。
一方、片岡は兵藤ワイナリーを疑うが……。
瑠璃子について調べ始めた片岡は、12年前に瑠璃子が「やっと実をつけた甲州の幼木」を引き抜いていたとの事実を掴む。
兵藤ワイナリーで見つけた12年前の瑠璃子が描いた絵。
片岡はこの絵の中に1房だけ他と色違いのブドウがあることに興味を惹かれていた。
美知恵は、その絵を見るや「ジュゼッペ・ペノーネに似ている」と断ずる。
美知恵からその理由を聞かされた片岡はあることに気付く。
片岡は再度、兵藤ワイナリーを訪れる。
12年前、瑠璃子は甲州の幼木を兵藤ワイナリーへと持ち込んでいたのだ。
瑠璃子の描いた色違いのブドウ、それはブドウの果汁を用いて描かれたものだった。
ジュゼッペ・ペノーネはブドウの絞り汁を絵具に用いた画家だったのだ。
そして、瑠璃子の絵に用いられた独特な色合いは“甲州”によるものだったのである。
つまり、兵藤ワイナリーにもたった1本だけ“甲州”が存在していたのだ。
片岡たちは須田殺害の真犯人を指摘する。
それは、兵藤耕作だった。
兵藤耕作―――婿入りする前の旧姓・鈴木耕作は「アルプス一万尺の会」のメンバーだった。
耕作と吉野真知子は恋仲だったのである。
そして、吉野真知子は須田と樋口の為に死亡してしまったのだ。
30年前の山小屋の写真に写っていた香炉。
その香炉で用いられたお香こそは、催眠効果のある甘藷だった。
その効果により眠り込んだ吉野真知子は、意識がないまま須田と樋口に玩ばれた。
覚醒し、何が起こったか気付いた真知子は、小屋から脱出したが遭難し死亡したのだ。
耕作はこの事実に気付いていた。
12年前、須田は立ち退きを求め兵藤ワイナリーを訪れた。
真知子の死に反省の色も見せず、逆に居直った須田に殺意を抱いた耕作は彼を殺害した。
須田の靴裏に残された甲州の果汁は、この際に付着した物である。
須田の死体から伽羅の匂いが漂ったのは、携帯懐炉の熱が香木を温めた為だった。
だが、川上老人が発見時に遺体を動かした為に熱が逃げ、匂いも消えたのだ。
須田殺害が父ではなく、耕作だと知った瑠璃子は、耕作が真実を語らず実父を見殺しにしたと非難する。
「もっと、早く知っていれば」と訴える瑠璃子。
さとみが樋口を殺害したきっかけは、瑠璃子がさとみを訪ねた為だった。
瑠璃子は須田殺害の真犯人捜しの協力をさとみに求めたのだ。
当初こそ断っていたさとみだが、川上老人から香についての情報を得たことで樋口が犯人と勘違いしてしまった。
そこで殺害してしまったのだ。
さとみの死は、復讐を果たしたと信じていたさとみによる自殺だった。
さとみに道を誤らせたと泣く瑠璃子。
「もっと早く真実を打ち明けていれば」と耕作は連行されて行く。
こうして事件は解決した。
そして、今日も片岡は再捜査に勤しむのだった―――エンド。
<感想>
「再捜査刑事・片岡悠介」の第3弾、オリジナルシリーズなので原作はありません。
前作は2011年6月26日に放送されているので、実に9カ月ぶりの続編となります。
これまでのシリーズについてはネタバレ批評(レビュー)がありますね。
・土曜ワイド劇場「再捜査刑事・片岡悠介 時効まであと10日!東京〜山形天童、2つの迷宮入り事件を結ぶ15年前の殺人免許証」(3月13日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「再捜査刑事・片岡悠介 函館〜横浜・同窓会不倫殺人!ホスト殺しと迷宮入り事件を結ぶネイルの傷とバターの謎!!」(6月25日放送)ネタバレ批評(レビュー)
では、第3弾の感想を。
後半がごちゃついたり、香はあんまり関係なかったような気がしましたが、なかなか面白かったですね。
ただ、ストーリーの味付けに用いるのは、香かブドウかどちらかに絞った方が良かったかなと思います。
個人的にはワイナリーが舞台と言うことで、ブドウとその絞汁を用いてジュゼッペ・ペノーネと絡めるのみで良かったのではと思います。
よくよく考えると、本作はいろいろ盛り過ぎかなぁ……。
登山に、香に、絵に、ワイン。
どれか1つで1作が出来るテーマを、少しずつの味付けに用いたのは勿体なかった。
これがごちゃついたように感じた原因だと思う。
この為に、そのどれもが浅く感じられた。
あと、犯人断定の根拠が後出しっぽい。
耕作が山岳サークルに所属していた伏線はまったく無いし。
“甲州”についても、22時15分過ぎ頃に漸く触れられてたし。
例の絵については22時30分過ぎ。
あと、管理人は川上老人が犯人だとばかり思っていました。
川上老人は真知子の親族かな、と。
で、真知子の死に関与した須田と樋口に復讐しているのだとばかり。
なにしろ、川上老人は須田殺害も樋口殺害にもそれなりに関与しているので。
管理人の中では、こんなストーリーが繰り広げられていました。
30年前、孫娘である真知子を亡くした川上老人。
12年前、須田に立ち退きを迫られ困っていた耕作の口から真知子の死の原因が須田と樋口であると知らされる。
だが、証拠も無く、時効も成立している。
そこで須田を殺害し、第一発見者に成りすます。
樋口の趣味が香であることを知っていたので、樋口を須田殺害犯に仕立て上げようと香について現場で言及するが、伽羅の特性を理解されず相手にされない。
そこで直接、樋口を殺害しようとするも、樋口に医師として海外へ留学された為に機会を失う。
さらなる機会を窺いつつ、12年後に現れたさとみに樋口が犯人であるとミスリードし殺害させた、と。
ただ、これだと確かに12年もの期間が空いた理由が説明がつかないから駄目なんだよな。
回りくどすぎるし。
でも、視てたらこっちの方だと思っちゃった。
キャスト的には兵藤耕作なんだろうけど、物語への関わり方から言えば川上老人しかいないよ!!
とまぁ、もろにレッドへリングに引っかかったんですが……。
なので、本作の感想については負け惜しみもあるかもしれないなぁ……。
う〜〜〜ん。
とりあえず、次回にも期待!!
<キャスト>
片岡悠介:寺島 進
榎本香織:南 果歩
奥村 澪:原 沙知絵
浅野直樹:金子貴俊
本田勇蔵:不破万作
兵藤耕作:益岡 徹
兵藤 みどり:金沢 碧
兵藤瑠璃子:三津谷葉子
須田さとみ:芳本美代子
手塚高志:杉本哲太
片岡美知恵:吉行和子 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
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