ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
周りを海で囲まれた平和な離れ小島の町シーヘブン。保険のセールスマン、トゥルーマン・バーバンク(ジム・キャリー)は看護婦でしっかり者の妻メリル(ローラ・リニー)や親友のマーロン(ノア・エメリッヒ)とともに平凡な毎日を送っている。ボート事故で父親を亡くした彼は水恐怖症で島から出たことはなかったが、大学時代に出会った忘れられない女性、ローレン(ナターシャ・マケルホーン)に会うためフィジー島へ行くというささやかな夢があった。ある日、トゥルーマンは、いつもと違う行動を取るとまわりの様子が落ち着かなくなることを発見。不安と疑問がつのり、妻のメリルに怒りをぶつけた末、メリルは家を出て行ってしまう。トゥルーマンは意を決し、地下室で寝ているふりをして海にボートで漕ぎ出して行く。実はトゥルーマンの家族や同僚は俳優で、住む島全体がロケセット、通行人はエキストラという、虚構の世界に生きており、生涯のすべてをテレビ放送されていたのだ。ディレクターの指示で彼の人生はコントロールされてきた。ディレクターのクリストフ(エド・ハリス)と会話を交わし、本当の人生を歩みたいを訴えるトゥルーマン。だが、虚構の世界へ戻るよう説得するクリストフは、装置を使って嵐を起こす。荒れ狂う波をくぐりぬけた果てに、トゥルーマンは虚構の世界=ロケセットの終端部にたどり着く。そこには外への出口があった。クリストフの呼びかけを無視し、トゥルーマンは出口から出て行く。そしてテレビでその一部始終を見ていた観客たちはトゥルーマンの勇気に拍手を送るのだった。
(goo映画公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……
トゥルーマンはローレンと恋に落ちていた。
ローレンは彼にこの世界の真実を教えようとする―――この世界はTV中継の為に作られたものだ、と。
だが、これによりローレンは追い出されてしまう。
ローレンを失ったトゥルーマンは悩み苦しむ。
自身の生活に疑問を抱いたトゥルーマンはローレンに会うべくこの世界からの脱出を試みる。
ボートを使い人工の海を渡る彼、その光景はTV中継されていた。
クリストフはスタッフに命じて、海を時化らせトゥルーマンを溺死させようとする。
天候の急変に息を呑む視聴者たち。
ボートは波に呑まれるが、トゥルーマンは挫けない。
遂に世界の果てに辿り着く。
其処には無機質な床と出口へと続く階段があった。
船を降りたトゥルーマンはゆっくりと階段を上って行く。
出口のドアにトゥルーマンが手をかけたそのとき。
意を決したクリストフは彼に語りかける。
「この世界は君に安定を与える、外の世界はそうはいかない」と。
この世界に存在する限り君はスターだと必死に説得するクリストフ。
うなだれ考え込むトゥルーマンだったが、次に頭を上げたとき、彼の顔には微笑みが浮かんでいた。
「会わないと、こんにちはもこんばんはも言えないからね」
そう述べるトゥルーマン、それは彼の口癖だった。
そのまま扉の向こうへと消えて行く……その手にはローレンの写真が握られていた。
この勇気ある決断に湧き立つ視聴者たちは手を叩いて喜ぶ。
中でもこの様子を固唾を飲んで見守っていたローレンは、トゥルーマンを出迎えるべくセットの入口へと向かうのだった。
一方、意気消沈するクリストフは放送を終えるよう指示を出す。
画面が砂嵐になって……こちらは警備員室。
トゥルーマン・ショーを視ていた警備員が2人。
そのうちの1人が呟く。
「次の番組を……TVガイドを取ってくれる?」と―――エンド。
<感想>
「トゥルーマン・ショー」です。
フィリップ・K・ディックの『時は乱れて』からプロットを借りているそうです。
さて、あらすじだと感動巨編のように書かれていますが、管理人的には違うと断言します。
この作品はある種のホラーです。
その証拠が、ラストでの視聴者である警備員2人の台詞。
「TVガイドを取ってくれる」と語った彼。
この警備員2人は視聴者の代表です。
つまり、視聴者の代表である彼らにとって、トゥルーマンの人生の転機である脱出劇はTVプログラムの1つに過ぎず、いうなればお気に入りの番組が最終回を迎えたに過ぎない程度のものだったことになります。
そして、次のような意味も秘めているのでしょう。
まず、トゥルーマンの番組が終了したことで、次なる刺激を求めていること。
これは、新たなるトゥルーマン(犠牲者)を熱望しているに他ならないでしょう。
そして、1人の人生がかかっている筈のトゥルーマンの番組が、彼らにとっては次に視聴するであろう番組と同じ程度の価値しかないと言うことは、フィクションの世界がノンフィクションと同等の価値を持つことになります。
以上のように、視聴者にとっては、トゥルーマンの人生は気が向かなければいつでもチャンネルを回せる程度であるということに他なりません。
特に次の番組(犠牲者)を求めている点は、主人公の脱出した街中にゾンビが徘徊するエンディングのようなもので、まさにホラーの形式と同じと言えるでしょう。
結局のところ、トゥルーマンの人生はどこまでいっても玩ばれているようなもの。
あの脱出劇は、クリストフにとっては不本意なものでしたが、「トゥルーマン・ショー」最終回としては大成功を収めています。
そして、脱出後のトゥルーマンの人生が実りあるものかどうかは難しいと言えるでしょう。
それとは知らないながらも予定調和の中に生きてきたトゥルーマンにとって外界は異世界に等しい。
奇しくも、セットがシェルター代わりの役目を果たしていたことは否めません。
これまでの肩書も用意されていたものに過ぎず、外界では通用するかどうか未知数。
ローレンとの恋も、あの世界に居たトゥルーマンだから起こったことと言えなくもありません。
何処まで行ってもトゥルーマンはあの世界の亡霊に追われ続けるのではないでしょうか。
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