ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
今春発売の西尾維新最新刊『悲鳴伝』発売記念の著者インタビューと新作「探偵都市伝説」第2回を掲載。
「綾辻行人と有栖川有栖川のミステリ・ジョッキー」は特別編として法月綸太郎をゲストに迎えます。さらに霧舎巧「霧舎学園シリーズ」新刊『一月は合格祈願×恋愛成就=日常の謎』の冒頭部分を先行掲載!と見逃せない内容です!
また、「講談社ノベルス創刊30周年企画」として44人の作家が一冊を選んで語る「My Precious 講談社ノベルス」は思わず唸る面白さ! 「アノ」人の一冊は!?
新連載に笹本陵平の「駐在刑事」。
“中国ミステリ王座決定戦”ではメフィスト賞受賞作家・丸山天寿とミステリーズ!新人賞受賞作家・秋梨惟喬が対決。
山口雅也「垂里冴子シリーズ」、篠田真由美「桜井京介returns1」、倉知淳、上遠野浩平、三津田信三、木原浩勝、など話題作も目白押し。
矢口敦子、岸田るり子、深木章子、円居挽はメフィスト初登場。
豪華長編連載陣に、恩田陸、今野敏、我孫子武丸。
(アマゾンドットコムさんより)
<感想>
流石は倉知先生。
まさに諧謔的な作品です。
意外な現地集合の理由とは何か。
それが語られたとき、読者は大きな驚きに包まれるでしょう。
そして、自身の本当の立場を知った主人公がとるラストの行動が何とも言えない。
ひょっとすると、あのサクラダすらオリジナルではなく、連綿と続けられているのかもしれない。
短編としての切れ味も鋭く、是非読んで頂きたい作品です。
<ネタバレあらすじ>
主人公は派遣切りにあった男性。
生活に困った彼は心身ともに追い詰められていた。
そんなある日、馬券場をぶらついていた彼に奇妙な関西弁を用いる男が接近して来る。
ハンチング帽に無精髭という出で立ちのその男は自らをサクラダと名乗った。
サクラダは銀行強盗に主人公を誘う。
弱り切っていた主人公は、悩みながらもサクラダの誘いに乗ることに。
もちろん、サクラダを完全に信用しきったワケではない。
互いに個人情報を一切明かさずにあくまでドライな関係を貫く。
サクラダによれば、主人公の他に2人ほど仲間が居ると言う。
引会わされた2人の名はスプリンターとレスラー。
彼らと共に銀行が一息つく午後1時を襲撃時刻に定める。
だが、奇妙なことに集合場所は現地集合だった……。
さて、決行日当日。
不安に苛まれながらも乗り込んだ主人公。
約束の時間が到来し、スプリンターとレスラーらしい男が現れるに及んで決行する。
ところが、何故か誰も行動することなく、互いに指示を待ち様子を窺うとの異常事態に。
気まずい時間が流れた挙句、それぞれがそれぞれに戸惑いの様子を浮かべ逃げ出してしまう。
外では、車で待機している筈のサクラダも居なかった。
こうして、襲撃は失敗した。
なんでこんなことになったのか、何がどうなっているのか……ワケの分からない主人公。
ところが、その日のニュースで驚くべき事実を知らされる。
なんと、同日に同じ銀行の別の支店が銀行強盗に遭っていたのだ。
被害額は3億円。
襲撃時刻は午後1時30分。
犯人は3人組。
これを聞いた主人公はサクラダの真の狙いを察する。
自分たちは囮にされたのだ。
自分がスプリンターとレスラーと思った2人は偽物だったのだ。
きっとあの2人は自分と同じようにスカウトされた人間に違いない。
彼らは知らずにスプリンターとレスラー役を演じさせられたのだ。
そして、自分は偽サクラダ役を意図せず演じさせられた。
だからこそ、偽物であることが分からぬよう現地集合となったのだ。
本物のスプリンターとレスラーはサクラダと共に銀行襲撃に加わっていたに違いない。
サクラダは午後1時こそが隙があると語った……だが、もっと隙だらけな時間があったのだ。
それは他支店の銀行強盗が失敗したとの報告を受けた時である。
その隙をサクラダは突いたのだ。
しかも、報道にあった支店は自分たちが襲撃した支店とは、同じ所轄署のちょうど正反対の位置にあった。
その意味でも陽動としては抜群の効果を上げたことになる。
悔しがる主人公だが、身元を隠していたこともあってサクラダのことは何も知らない。
思い出せるのは特徴的なハンチング帽と無精髭ばかり。
よもや、あれは変装だったのかもしれない。
今更後悔したところで、どうしようもないのだった……。
それから時が過ぎ―――なんとか、生活し続けている主人公。
最近、彼は無精髭を伸ばし始めている。
彼の胸にはある決意があった。
まず、自分と同じような境遇の男を捜す。
そして、妙な関西弁を使いサクラダを名乗ってあの計画を持ちかけるのだ―――エンド。
◆倉知淳先生関連過去記事
【ネタバレ書評(レビュー)】
・『壺中の天国』(倉知淳著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「ミステリ愛。免許皆伝!メフィスト道場 」&「ミステリ魂。校歌斉唱!メフィスト学園」(講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
(収録作『Aカップの男たち』について)
【その他】
・倉知淳さんの「猫丸先輩」が舞台化!!
・倉知淳先生の作品集「なぎなた」&「こめぐら」は東京創元社さんより9月30日発売!!
【関連する記事】
- 『どこかでベートーヴェン』(中山七里著、宝島社刊)
- 『通いの軍隊』(筒井康隆著、新潮社刊『おれに関する噂』収録)
- 『クララ殺し』最終話、第6話(小林泰三著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.7..
- 『自殺予定日』(秋吉理香子著、東京創元社刊)
- 『タルタルステーキの罠』(近藤史恵著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.76 ..
- 『歯と胴』(泡坂妻夫著、東京創元社刊『煙の殺意』収録)
- 『迷い箱』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『噂の女』(奥田英朗著、新潮社刊)
- 『追憶の轍(わだち)』(櫻田智也著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.69 F..
- 『コーイチは、高く飛んだ』(辻堂ゆめ著、宝島社刊)
- 『恋人たちの汀』(倉知淳著、東京創元社刊『ミステリーズ!vol.75 FEBRU..
- 『東京帝大叡古教授』(門井慶喜著、小学館刊)
- 『傍聞き』(長岡弘樹著、双葉社刊『傍聞き』収録)
- 『動機』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『動機』収録)
- 『愚行録』(貫井徳郎著、東京創元社刊)
- 『転生の魔 私立探偵飛鳥井の事件簿』(笠井潔著、講談社刊『メフィスト 2016v..
- 『声』(松本清張著、新潮社刊『張込み』収録)
- 『黒い線』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)
- 『図書館の殺人』(青崎有吾著、東京創元社刊)
- 『陰の季節』(横山秀夫著、文藝春秋社刊『陰の季節』収録)