2012年04月11日

「歩道橋で会いましょう」(魚屋猫助著、講談社刊週刊モーニング掲載)ネタバレ批評(レビュー)

「歩道橋で会いましょう」(魚屋猫助著、講談社刊週刊モーニング掲載)ネタバレ批評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

第31回MANGAOPEN大賞受賞作。
ネタバレあらすじをご覧頂ければ意外なラストに度胆を抜かれることでしょう。
かなり驚きました。

<ネタバレあらすじ>

とある歩道橋。
パイプ椅子に腰かけ交通量調査をしている2人組の姿があった。

眼鏡をかけた先輩と取り立てて特徴のない後輩の男2人である。

歩道橋の上を1人の老婆が歩いて行く。
(はて、病院だったような……)
老婆はいろいろと思考を巡らせながら歩道橋を進む。

そんな老婆をカウントしつつ「病院だな」と呟く先輩。
「そうですね」と応じる後輩。

暫し、人気が止んだ。
暇な先輩は後輩にプライベートな質問を重ねる。
「そういえば、奥さんや子供は居るの?」
「あっ……えぇ、別れました。仕事リストラされてこちらに来たので。再婚して上手くやっていると聞いてます」
その答えに気まずい空気が2人の間を流れる。

と、そんな空気を変えるように歩道橋の利用者が現れた。
男女の2人組である。

「駆け落ちですかね?」と後輩。
「だろうな」と先輩。

続いて、学生服を着こんだ一団が歩道橋を渡って行く。
先頭には旗を持ったガイドもいるようだ。

「修学旅行ですかね」と後輩。
「どうやら事故だな」と先輩。

喧騒に包まれる歩道橋。
それが去るや、先輩が席を立つ。

「ちょっとトイレ」
そのまま駆け去って行く先輩。
その後ろ姿を見送った後輩。

数分後、意外な人物が歩道橋に現れた。

「あなた……」後輩に呼びかける声。
後輩が顔を上げるとそこには別れた妻の顔があった。
その傍らには息子も居る。

「どうして此処に?」問う後輩に、妻の脳裏に新しい夫の顔が浮かぶ。
慌ててかぶりを振る妻。

「それにしても、三途の川がこんなことになっているとは思わなかったわ」
妻が素直な感想を洩らす。

「あぁ、最近では川幅が狭くなったらしくて。遂に歩道橋が架かったんだ」
よく見れば、歩道橋の側面には「三途の川橋」と書かれている。

そのまま、妻は息子と共に渡って去って行く。
後輩はその後ろ姿に再会を約束する。

と、いつの間に帰って来たのかバツの悪そうな先輩の姿が。
先輩は静かにパイプ椅子に腰かけるとトイレの使い心地について語り出す―――エンド。

<感想>

淡々としながら底力を感じさせる作品です。
絵柄も加わり、なかなかの完成度です。

ネタバレあらすじをご覧頂ければ既にお分かりの通り、あのオチです。
この歩道橋は「あの世とこの世を繋ぐもの」だったんですね。

この真相がいろいろと張り巡らされた伏線により推測できるようになっています。
例えば、最初に渡った老婆。
(病院だったような……)と考えていることから病院で老衰による死を迎えたと思われます。

次に、カップル。
駆け落ちということは心中でしょう。

そして、修学旅行生の一団。
ガイドまで居るので、バスの事故が考えられます。

さらに、主人公自体は「リストラされてこちらに来た」と述べているので、自殺したと思われます。

そして、その別れた妻と子。
主人公に尋ねられた際に新しい夫を思い出しているので、新しい夫に殺害されたと思われます。
DVでもされたのでしょうか。
ここらはかなり痛切な物語となっています。

改めて伏線ですが、もっとも驚くべきは最初の方に「○途の川橋」と小さく描き込まれているんですよね。
これにはビックリしました。
なかなかに豪胆です。

伏線以外にも、拍子抜けするようなラストなども味があります。
思わず2度3度と繰り返し読んでしまいました。
また、それを許せるだけの作品です。

作者である魚屋猫助先生は今後に要注目の漫画家さんでしょう。

「週刊モーニング 2012年4月12日号 NO.18」です!!
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モーニングで今(2012年3月現在)1番勢いのある漫画といえばコレでしょう。
「鬼灯の冷徹(1) (モーニング KC)」です!!
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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 漫画批評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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