2012年04月19日

『暑さ』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)

『暑さ』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

著者が傑作50編を自選。SF作家・星新一の入門書。バーで人気の美人店員「ボッコちゃん」。彼女には、大きな秘密があった。

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
(アマゾンドットコムさんより)


<感想>

「野生時代」の特集に触発されて、星新一熱が再燃した管理人です。
やっぱり、星先生の作品はいいですね。
短い中に濃いエッセンスがグッと凝縮されていて、読むとハッとさせられます。

本作『暑さ』は新潮社刊『ボッコちゃん』収録の一篇。
短編です。
男の言葉の意味に気付いたときの恐ろしさは背筋が凍ることでしょう。

ヒントは、男は夏になると殺意を抱く。
そして、一昨年の秋に飼った猿を去年の夏に殺してしまい、去年の秋には―――。
もうお分かりですね。
猛暑日を前にした男が何をするのか、想像すると恐ろしい。

まさに、ジメジメと湿度の高い夏の夜に読むに相応しい作品と言えるでしょう。

<ネタバレあらすじ>

季節は暑い夏のこと。
派出所に勤務する巡査の前に、ある男が出頭して来る。
何でも「自分を捕まえて欲しい」らしい。

「何もしていない人間を捕まえることは出来ない」と伝える巡査。
ところが、男は「猿を殺した」と述べると、驚き事情を尋ねる巡査に詳細を語り始める。

男は、数年前から夏場になると暑く眠れない日に苛立ちを募らせていた。
このままでは自分が壊れてしまう―――そう感じた男はストレスの捌け口を求めた。

ある日、蟻を潰したところ、不思議なくらいに気持ちがスッとしたと言う。
だが、それもすぐに慣れてしまった。
そこで、近所の子供に虫を貰い、それを潰した。
最初こそ効果があったものの、これも慣れてしまった。

もしかして、生き物に愛情を持てたらこの気持ちが解消されるのではと考えた男は、一昨年の秋から猿を飼い始めた。
ところが、あんなに愛情を抱いていたにも関わらず、これもまた去年の夏に殺してしまったのだ。

男はもう一度繰り返す、「猿を殺してしまった。また、殺してしまう」と。
しかし、巡査は「それでは罪にならない」と男に引き取るよう促す。

「そうですか……」
寂しげに呟く男の背中を見ていた巡査はふと申し訳なく思い声をかける。
「今日も暑くなるみたいだから、家に帰って涼しくなるよう工夫したらいい」と。

巡査の言葉に振り返る男。巡査は続ける。
「君も家族がいるだろう?」
「はい、去年の秋に結婚して家族が出来ました」―――エンド。

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【その他】
世田谷文学館にて「星新一展」開催中!!

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 星新一作品レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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