『月の光』（星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録）

『月の光』（星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録）ネタバレ書評（レビュー）です。

ネタバレあります、注意！！

＜あらすじ＞

著者が傑作50編を自選。ＳＦ作家・星新一の入門書。バーで人気の美人店員「ボッコちゃん」。彼女には、大きな秘密があった。

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群！　日本ＳＦのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。

（アマゾンドットコムさんより）

＜感想＞

「野生時代」の特集に触発されて、星新一熱が再燃した管理人です。
やっぱり、星先生の作品はいいですね。
短い中に濃いエッセンスがグッと凝縮されていて、読むとハッとさせられます。

本作『月の光』は新潮社刊『ボッコちゃん』収録の一篇。
短編です。

悲壮な結末ですね。
何者かに頼らなければ生きて行けない時点で、不自然な生き物となってしまっていたのでしょうか。
依存心の強さは身を滅ぼすとの教訓ともとれそうです。
それはタイトルにも示されていますね。
『月の光』つまり「陽の光なしには輝けない」ということです。

そして、管理人はこの『月の光』というタイトルにもう1つ意味があると考えます。
本作は読み手によって印象も感想も変わる作品であるということ。
まさに太陽の光により姿を変える「月」のように。
例えば、本作は「人と人を繋ぐのは言葉というコミュニケーション」であるとの捉え方も出来る。
例えば、本作は「主人に殉じた点で一種の愛を全うした」と捉えることも出来る。
この点で、読み手の思考や趣味が表に出る作品とも言えそうです。
まさに、懐の広い作品ですね。

＜ネタバレあらすじ＞

ある資産家にはペットが居た。
だが、このペットはそんじょそこらのペットではない。
おそらく世界に1つ、いや、1人のペットだろう。
そう、ペットとは1人の少女を指していた。

資産家は15年前に1人の赤ん坊を引き取った。
その後、15年かけて自分にしか懐かないように育て上げた。
資産家は少女に言葉を教えなかった。
資産家にとって、言葉なしでも分かり合えることこそが理想だったのだ。
その甲斐あって、少女は資産家が言葉を発することが無くともその希望を理解した。
少女は食事も資産家以外からは受け取らなかった。
資産家はこの成果に満足していた。

そんなある日、資産家が事故に遭い入院してしまった。
危険な状態が続いた。

資産家が居なくなったことで、少女は食事も咽喉を通らなくなった。
少女は日に日に痩せ衰えて行った。
この様子を資産家に仕える召使は傍観しているしかなかった。

そして、遂に召使のもとに主人の死を伝える連絡が届いた。
少女のもとへ駆け付ける召使。
だが、彼が見たモノは既に冷たくなっている少女の抜け殻であった―――エンド。

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