2012年06月26日

『人類愛』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)

『人類愛』(星新一著、新潮社刊『ボッコちゃん』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

著者が傑作50編を自選。SF作家・星新一の入門書。バーで人気の美人店員「ボッコちゃん」。彼女には、大きな秘密があった。

スマートなユーモア、ユニークな着想、シャープな諷刺にあふれ、光り輝く小宇宙群! 日本SFのパイオニア星新一のショートショート集。表題作品をはじめ「おーい でてこーい」「殺し屋ですのよ」「月の光」「暑さ」「不眠症」「ねらわれた星」「冬の蝶」「鏡」「親善キッス」「マネー・エイジ」「ゆきとどいた生活」「よごれている本」など、とても楽しく、ちょっぴりスリリングな自選50編。
(アマゾンドットコムさんより)


<感想>

「野生時代」の特集に触発されて、星新一熱が再燃した管理人です。
やっぱり、星先生の作品はいいですね。
短い中に濃いエッセンスがグッと凝縮されていて、読むとハッとさせられます。

本作『人類愛』は新潮社刊『ボッコちゃん』収録の一篇。
短編です。

人は皆、「人類愛」と言った「理想」を口にしつつも最後の最後では「個人的な感情」を優先しがちです。
しかし、それは人間が人間である以上、仕方がないこと。
それがなければ「人は人足りえない」でしょう。

何故なら、人には好悪の感情があり「万人に愛を注ぐこと」は個人の愛情に限界がある限り不可能だから。
もしも、個人が無限の愛を語れば、それは「万人に無関心」と同じことになるでしょう。
普遍の愛から恋愛感情が生まれないのと同じです。
愛とは「広いか」「深いか」の2つしかないのです。
両立は不可能。
従って、人である限り、好悪の情を極力排しようと努力することは出来ても、全く無視することは出来ません。
どう足掻いても個人的な好悪の情が先に立つのです。

例えば、あなたが仕事上で知り合った顧客に良い印象を抱いたとします。
あるいは、逆に悪い印象を抱いたとします。

あなたはプロとして、顧客に差をつけるワケにはいきません。
好悪の情を殺しつつ普段通りの対応をすることでしょう。
ですが、あなた自身が気付かない何処かで対応に差が出ている筈です。
笑顔に僅かに陰りがある、返答に0.01秒単位で差が出る、対応にキレがあるなどもそうかも。
これは人間である以上、致し方がないものです。

本作はそんな人間の本質を強調して描かれた作品です。

<ネタバレあらすじ>

宇宙救助隊に所属する主人公。
これまでも何度となく遭難者を助け20ヶもの勲章を得ていた。
そんな主人公のもとに、今日も救助信号が届く。

主人公は助けに向かうべく宇宙船を飛ばす。
相手の声は少しずつ小さくなっていく……声をかけつつ急ぐ主人公。

眠い……と洩らした救助対象者に主人公は焦りを募らせる。
眠れば死亡してしまうに違いない。
そこで、意識を保たせるべく話しかけることに。

「出身地は何処だ?」
「地球だ」

この答えに驚く主人公。
主人公もまた地球出身だったのだ。
これは救わなければならない。

「地球出身か、地球の何処だ?」
「日本だ」

再び驚く主人公。
主人公もまた日本出身だったのだ。
異郷の地で同胞と出会った喜びに救出を心に決める主人公。

「日本の何処だ?」
「東京だ」

三度、驚く主人公。
主人公も東京出身だったのだ。
此処まで来ればもはや運命だ―――主人公は助けるべく急ぐ。

「東京の何処だ?」
「……」

返答は少しずつ声が小さくなっていく。
だが、相手の住所は自分も良く知るものだった。
近所である。

主人公は人類愛、同郷愛に導かれ、ひた走る。
その甲斐あってか、相手のもとに辿り着いた。

そして、最後に尋ねる「名前は何だ?」と。
その答えを聞いた主人公は急にやる気を失う。

相手の声が消えるまで待つ主人公。
彼は思う―――人類愛も同郷愛も関係ない。
誰が妻と不倫していた相手を救おうと言うのか―――エンド。

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 星新一作品レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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