2012年05月01日

『誰がための刃 レゾンデートル』(知念実希人著、講談社刊)

『誰がための刃 レゾンデートル』(知念実希人著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

島田荘司選 第4回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作

自らが末期癌に冒されていることを知った若手の外科医、岬雄貴。自暴自棄となった彼は体を鍛え上げ街の不良を襲撃した! それがきっかけで、連続殺人鬼「ジャック」と接触を持った雄貴は、ジャックの思想に感化され、その共犯者になる。が、偶然助けた少女、沙耶と心を通わすうちに、自らの行動に苦悩し始める……。「ジャック」はなぜ殺人を繰り返すのか、少女はなぜ追われるのか。残り少ない命をかけ、雄貴は少女のために戦いを挑む。
(講談社公式HPより)


<感想>

かなり面白かった。

タイトル通り、病気により絶望し自身の存在意義を見失った男が1人の少女と出会ったことで新たな存在意義を見出していく様は必見。
そこから繋がる感動的なラストも印象的。

何より、物語の運び方が非凡。
「ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」史上でもナンバーワンのリーダビリティを誇っています。
ページをめくる手が止まりませんでした。

最後の対決部分も素晴らしかった。
まさに「ダイ・ハード4.0」のアレを思い出しました。

日曜洋画劇場「ダイ・ハード4.0」(1月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)

2012年4月発売作品中でも屈指の出来!!
べた褒めですが、その価値は十分にある作品です。

ネタバレあらすじについてはかなり改変してしまっています。
本作のリーダビリティーを表現し切れてはいません。
本作の真価は、是非、本作を読んで感じて頂きたく思います。

<ネタバレあらすじ>

若手の外科医・岬雄貴は自身の余命が短いことを知り絶望していた。
自暴自棄となった彼は自身の存在意義を求め、街の不良を襲う。
その過程で、世間を騒がせる連続殺人犯・ジャックこと川原に出会った雄貴。
悪人は排除しなければならない―――彼の思想に共鳴しその手駒になってしまう。

誘われるままに殺人に手を染めてしまう雄貴。
川原の狙いは、雄貴にジャックの罪すべてを被せること。
それが出来なくとも、複数人で犯行を続けることで捜査を攪乱させることにあった。

一方、ジャックを逮捕すべく捜査を続ける警察。
川原の狙いは当たり、捜査は混乱しつつあった。
そんな中、ベテラン刑事の松田は捜査一課の刑事・田中に不穏な空気を感じるが……。

ある日、雄貴は沙耶という少女を助ける。
沙耶は何者かに追われていた。
彼女と交流するうちに川原の思想に疑問を抱いた雄貴は川原と距離を置くように。
やがていつしか、雄貴は沙耶と恋に墜ちる。

沙耶を守ろうと決意した雄貴は川原に決別を宣言。
川原は役に立たなくなった雄貴殺害を目論むが……。
実はこれまでに自身の情報を必要以上には雄貴に教えていなかった川原。
だが、雄貴はジャーナリストなどを通じて情報を収集した結果、川原の正体を突き止めていた。
しかも、川原の犯行が恋人の敵討ちから始まっていたことも突き付ける。
これと自身の余命が短いことを切り札に、手出しせず黙認するよう要求する雄貴。
一旦は応じる川原だったが……。

沙耶が雄貴の殺人を知ってしまう。
混乱した沙耶は雄貴のもとを逃げ出す。
失意の雄貴は病が悪化し倒れてしまい入院を余儀なくされる。

冷静になった沙耶は事情を確認すべきだったと反省。
雄貴のもとへ戻ろうとするが、彼女を追っていた者たちに捕まってしまう。
その様子を雄貴の弱味を握ろうとしていた川原が目撃していた。

川原はこの状況を利用できると判断、入院中の雄貴に教える。
雄貴は沙耶の携帯を使い、彼女を連れ去った者たちとコンタクトをとる。
実はこちらについても沙耶から事情を聞かされていた雄貴、犯人の見当はついていた。

沙耶を連れ去ったのは暴力団組長の息子・楠木とその部下。
楠木は妹の為の臓器提供者を捜しており、どんな手段を使ってでも妹を助けようと狙っていた。
沙耶の所持するペンダントにそのドナーとなりうる女性の情報が記録されており、それを狙っていたのだ。
しかも、このペンダントを入手するべく、既に2人も殺害していた。

幸いペンダントは雄貴の手に渡っていたことから、雄貴は楠木に取引を持ちかける。
しかし、本当に取引するつもりは無かった。
雄貴は件のジャーナリストに連絡を取り、自分と川原、それに楠木の事件の情報を提供する代わりに沙耶の居所を調べさせる。
その上で、沙耶の監禁場所に乗り込むことに。

雄貴は自身の財産をコインロッカーに残していた。
既に死を覚悟していたのだ―――。

その頃、川原もまた沙耶の近くへと迫っていた。
事前に沙耶に発信機を付けていたのである。
川原はこの機会に自身の欲望を満たすべく、楠木の部下を1人、また1人と殺害していく。

一方、雄貴にきな臭さを感じていた松田は雄貴が退院したと知りその後を追う。
そこで松田は犯行中の本物のジャック……つまり、川原と出会ってしまう。
川原は松田の知る人物だった―――。

雄貴は半死人の身体を引き摺り、必死に沙耶を助けようとしていた。
途中、用心棒と戦闘になるがこれを退けると沙耶のもとに辿り着く。
遂に楠木と対決した雄貴は、医師の観点から彼の妹が既に手遅れであると告げ、何故、妹の傍に居ないのかと諭す。
妹の為には手段を選ばぬと自身に課していた楠木はこれに動揺。
其処へ妹の死亡を告げる電話が……。
ショックを受けた楠木は自殺してしまう。

松田は、薄々気付いていたとはいえ、目の前の人物に驚きを隠せなかった。
松田の前に居たのは田中だったのである。
田中は剣道でも屈指の実力者だった。
しかも、警察関係者なので情報入手も容易、捜査状況も把握している。
だからこそ、ジャックのような犯行が可能だったのだ。

田中の名を呼ぶ松田。
だが、田中は反応しない。
何故なら、今の彼の本名は川原だったから。
田中は母の再婚相手の苗字だったのだ。
だが、母を亡くした後に籍を抜き川原に戻っていた。
職場でこそ田中となっているが、川原は川原だった。

彼の様子にただならぬものを感じた松田は拳銃を抜き対抗する。
だが、川原はそんな松田に突っ込んで来る。

勝負は一瞬で着いた。
松田は刑事として優秀であった為に威嚇射撃を強いられた分、反応が遅れた。
そこを突かれ川原に首筋を斬りつけられあっさり殺害されてしまう……。

楠木と決着した雄貴だったが、空気から川原の到来を予感。
自身が時間を稼ぐ間に沙耶に逃げるよう言い含める。

遂に対峙する2人。
取引に持ち込もうとする雄貴だが、川原は応じない。
川原にとっては雄貴を殺害する欲求の方が上回っていた。
川原にとって悪人であるかどうかなどどうでも良くなっていた。
彼はもはや、殺したいから殺すのだ。
殺人者である雄貴を殺害することこそが欲求を満たすと信じているのだ。

戦いは避けられない……格闘する2人だが、優劣は明らかだった。
経験もあり、人を殺すことに躊躇しない川原。
病身で、弱っている雄貴。
どう考えても勝敗は明らかだったが、雄貴は沙耶を逃がす為に必死に食らいつく。

と、そこへ当の沙耶が戻って来てしまう。
銃を手に川原に立ち向かう沙耶。

だが、相手は川原だ。
勝てる筈がない。
雄貴は沙耶を庇い深手を負う。

このままでは沙耶が殺害されてしまう!!
沙耶を守りたい雄貴は大勝負に出る。
銃口を自身に押し当て川原から隠すと、自身の身体ごと撃ち抜いたのだ。
不意を突かれた川原はダメージを負う。

だが、川原は倒れない。
そのままナイフを雄貴の首筋へと……。

しかし、このとき、何かが雄貴の身体を突き動かした。
雄貴は理想的な体裁きで自身の持つナイフを川原の心臓に沈める。

こうして、稀代の殺人鬼・川原は死亡した。
だが、雄貴もまた……。

雄貴は傍らの沙耶に全財産がコインロッカーに残されていることを伝え、それで歌手になる夢を叶えるよう告げる。
沙耶を守り抜いたからか……何処か誇らしげな雄貴に、沙耶は感謝と共にある言葉を囁く。
それを聞いた雄貴は今度こそ本当に幸せそうな笑顔を見せる。
彼は自身の存在意義をこの瞬間に見出したのだ。
そして、それが受け継がれたことに安堵していた。
満ち足りた表情のまま、雄貴は逝った―――。

こうして事件は解決した。
事件の真相は、雄貴がジャーナリストに教えた情報で明らかになった。
川原と楠木の真実は世に出たのだ。
だが、そこに雄貴の名は無い。
ジャーナリストは何故か彼の名を表には出さなかった。
真実のすべてを知る者は1人で良いと考えたから……と本人は思っているが、案外、雄貴に影響されたのかもしれなかった。

そして、雄貴の墓前にて。
綺麗な歌声が其処から聞こえてくる。
歌っているのは沙耶。
その腕の中には雄貴とよく似た目元の赤ん坊が眠っていた。
赤ん坊は父親と同じ読み方の名を持っていた。
勇気(ユウキ)である―――エンド。

◆関連過去記事
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誰がための刃 レゾンデートル





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