ネット上で話題となっており、順調に版を重ねているとの情報も流れています。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。
というわけで、前回のネタバレ批評(レビュー)以降に掲載された作品をあらすじのみ、まとめておきます。
これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
では、本作の魅力をお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。
◆2012年4月26日「週刊少年チャンピオン」掲載
さぼり癖のある男子高校生・本田。
「学校の勉強が本当に役に立つのか?」
彼は何かと理由をつけては登校するのを渋っていた。
しかし、そんな彼を親が許す筈もなく……家に居づらくなった本田は登校するふりをして外へ出かける。
ふらふらと街を歩く本田。
そんな彼の目の前に同級生の加藤が。
加藤は本田が想いを寄せる女子生徒だった。
本田は加藤を言葉巧みに誘い、学校をサボろうとする。
誘いに乗った加藤は本田に連れられ山の中へと。
「何か目的があるのか」尋ねる加藤に、「特にない」と本田。
やがて、本田たちの前に壁が現れる。
本田は「これこそ醍醐味」とばかりに勇んでよじ登ろうとする。
そんな本田の行動に意味を見出せない加藤。
本田はそんな加藤の様子に気付くことも無く、「上へ登れば何かがある筈だ」と主張する。
本田の熱気に釣られたかのように加藤も壁を登る。
壁の上から2人が目にした光景とは―――!?
・
・
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其処には何もありはしなかった。
ただ雑草が生える地面が辺り一面見渡す限り続いていた。
加藤は溜息を吐き、本田は慌てて取り繕うように「何もないことが分かったんだよ!!」と力説する。
だが、既に加藤の眼中に本田の姿は無かった……。
加藤は「今からでも学校に行くね」と本田に告げる。
あれほど高揚していた気持ちはすっかり冷め、2人は無言のまま帰路に着いた。
別れ際、もう1度遊びに行こうと約束を交わす本田だったが、その後、加藤から返事が来ることはなかった。
本田は学校を辞めた―――エンド。
<感想>
2012年4月26日掲載のもの。
自由を求め、現実から逃げ続ける男子高校生・本田が主人公。
彼の理論武装は確かに説得力がある。
だが、その理論も現実社会の荒波の中では、何事か目的があって初めて成立するもの。
ただ逃げるだけではダメだった。
結局、本田にとって理論とは現実逃避に大義名分を与え、自分自身を騙すツールとしてしか機能していない状態。
その大義に、現実を生きる加藤を巻き込んだまでは良かった。
ところが、壁の一件を通じて、本田に夢も目標も何もないことが露骨に暴かれてしまったワケですね。
壁は逃げた先に何も無いことを視覚的に明らかにしてしまった……。
もともと現実に適応していた加藤は、これを見て失望し現実に戻ってしまった。
で、本田は更に逃げてしまい、退学してしまう……と。
先週に引き続き、実に救いのない物語となっています。
そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。
この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。
・『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
・阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)の1巻が発売!!不思議な魅力を湛えた本作に注目すべし!!&今週号ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月15、22日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月29日、4月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月12日、4月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
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