2012年05月19日

『18番テーブルの幽霊』(吉川英梨著、宝島社刊『しあわせなミステリー』収録)

『18番テーブルの幽霊』(吉川英梨著、宝島社刊『しあわせなミステリー』収録)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

“人の死なない”ミステリー
心がじんわり温まる4つの物語

超恐妻家の営業マン…本当の職業は殺し屋!?―――伊坂幸太郎「BEE」より

伊坂幸太郎(第5回本屋大賞受賞/第21回山本周五郎賞受賞)、中山七里(第8回『このミステリーがすごい!』大賞受賞)、柚月裕子(第7回『このミステリーがすごい!』大賞受賞)、吉川英梨(第3回日本ラブストーリー大賞エンタテインメント特別賞受賞)ら大人気作家が、“人の死なない”しあわせなミステリーをお届けします。殺し屋・兜が命がけで挑むのは……“蜂”?子供探偵・原菜月(8歳)が大活躍!あの宮沢賢治小説から飛び出したニヒルなヒーロー、人気シリーズ最新作・佐方検事も登場!

目次:
伊坂幸太郎『BEE』
中山七里『二百十日の風』
柚月裕子『心を掬う』
吉川英梨『18番テーブルの幽霊』
(宝島社公式HPより)


<感想>

シリーズには他に、長編『アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希』と同じく『スワン 女性秘匿捜査官・原麻希』が存在する。
2012年7月にはシリーズ最新作『マリア 女性秘匿捜査官・原麻希』が発売された。

シリーズ初の短編です。

麻希の宿敵であるリクルーターは登場しません。
“人の死なないミステリー”との看板通り、安心して読めます。

結論が些か強引ではあるものの、落ち着くべきところへ落ち着いたような感じかな。
今回もエンタメ作品としてなかなか良いと思う。
一読の価値アリ。

<ネタバレあらすじ>

登場人物一覧:
原麻希:主人公。フルネーム「ハラマキ」と呼ばれると怒る。
健太:麻希の夫である則夫の連れ子。
菜月:麻希と則夫との間に生まれた娘、8歳。
真理奈:高名なパティシエ。
雨宮:実は真理奈と関係が……。
剛毅:雨宮の息子。

健太と菜月はレストランの従業員をしている友人に相談され「18番テーブルの幽霊の謎」に挑むこととなった。
「18番テーブルの幽霊の謎」とは予約が入るものの、肝心の予約客が常に現れないとのもの。

健太と菜月は現場のレストランへ。
麻希も合流するはずだったが、事件が起きた為に遅くなってしまう。

仕方なく、麻希抜きで謎に挑む健太たち。
彼らは18番テーブルの位置に着目。
外から中を覗くにはその位置に客が居ては不可能であることに気付くと、店で働く著名なパティシエである真理奈を見る為に誰かが予約していると推理。
位置的に予約の主は雨宮しかあり得ないとの結論に至るが……。

その頃、麻希はある犯人を追っていた。
犯人は母親など自分を追い詰めた者たちを爆殺しようとしていた。
しかも、自らも自爆用の爆弾を身に着ける念の入れよう。
麻希が機転を利かせたことで火気を奪われた犯人は火の気を求めて彷徨う。

そんな犯人が辿り着いた先は健太たちが滞在する店だった。
キャンドルサービスの火気に目を着けたのだ。
こうして、立て籠もり事件が発生。
犯人は、雨宮の子供・剛毅と菜月を人質にとる。

麻希たちも駆け付け、現場は騒然。
そんな中、真理奈がパティスリーナイフで犯人を斬りつける。
この隙を突き、強行突入が行われ犯人は逮捕された。

こうして、麻希も合流し再び「18番テーブルの幽霊の謎」に挑むことに。
先程の推理を語って聞かせる菜月たち。
聞き終えた麻希は自身の推理を述べる。

外から中が見えるということは、中からも外が見えるということ。
18番テーブルに客が居て困るのは、中から外を見ようとした時も同じなのだ。
雨宮が真理奈を見ていたのではない。
真理奈が雨宮を……いや、剛毅を見ていたのだ。

真理奈は人質となった剛毅を助けようとして、パティシエナイフを使用した。
だが、このナイフはパティシエにとって命とも等しいものだった。
つまり、真理奈にとって剛毅はそれだけ大切な存在だったのだ。

そう、剛毅は真理奈の息子だったのだ。
真理奈と雨宮は元夫婦。
真理奈は離婚の際に親権を主張したが、雨宮に敗れていた。
そこで、少しでも剛毅を見ていたい、見守りたいとの想いから雨宮親子の姿が見えるこの店で働き始めたのだった。
その心情を知っているオーナーが意図的に18番テーブルを予約席にしていたのだ。

幽霊の正体はオーナーだったのである。

剛毅は雨宮により真理奈の悪口を聞かされ育てられているらしい。
そんな剛毅と真理奈が母子となることが出来るのだろうか……菜月の疑問に麻希が答える。
先程、逮捕された爆弾犯も母親を憎み時限式の爆弾を仕掛けていた。
だが、その爆弾には1時間のタイマーが組み込まれていた。
犯人の中でも、葛藤があったのだ。
それは剛毅も同様だろう。
どんなに憎んでいても母子である以上、何処かで愛しているものなのだ―――エンド。

◆関連過去記事
『アゲハ 女性秘匿捜査官・原麻希』(吉川英梨著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『スワン 女性秘匿捜査官・原麻希』(吉川英梨著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『マリア 女性秘匿捜査官・原麻希』(吉川英梨著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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