2012年06月10日

『怪しい人びと』(東野圭吾著、光文社刊)

『怪しい人びと』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

俺は同僚の片岡のデートのために一晩部屋を貸してあげた。その後、そのことを片岡から聞いた2人の同僚、本田と中山にも部屋を貸すことになってしまう。3カ月後のある日、いつものように、車から部屋に戻ると、見知らぬ女が寝ていて……。(「寝ていた女」)あなたのそばにいる優しい人が、いつの間にか怪しい人びとに――。著者ならではの斬新なトリック満載の傑作推理集!
(光文社公式HPより)


<感想>

タイトル通り『怪しい人びと』を描いた短編集です。
全体的に特に「コレ!!」と言うほどの物はなし。小粒な印象。
読み易く、リーダビリティもあるが、その分、印象にも残りにくい。
同じ著者による短編集ならば『犯人のいない殺人の夜』の方を推す。

『犯人のいない殺人の夜』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

では、ここから各短編の感想を。
感想の後に、ネタバレあらすじがあるので、未読の方は注意されたし!!

・『寝ていた女』

突拍子も無く始まり、モヤッとする結末で終わります。
皮肉なアレはなかなかですが……どちらかと言えばあんまりかな。

・『もう一度コールしてくれ』

皮肉なラストは流石。これはなかなか良かった。

・『死んだら働けない』

ワーカホリックの性でしょうか。
企業戦士の死に様としては切ない。

・『甘いはずなのに』

互いを愛するがゆえに……追い詰めてしまうんですね。

・『灯台にて』

思わぬ結果を得たものの、チャンスを逃さなかったということでしょうか。
収録作中ではベスト。

・『結婚報告』

意外な展開の連続が良し。ドタバタもの。

・『コスタリカの雨は冷たい』

う〜〜〜ん、悪くはない。
ラストはなかなか。

<ネタバレあらすじ>
◆『寝ていた女』

主人公・カワシマは自室を会社の同僚のデート場所に提供した。
そんなある日、自室に戻ったカワシマは其処に見知らぬ女性を見つけ驚く。
女はカワシマの意思など無視し、何故か部屋に居座ろうとするが……。

事の原因は「女に対しては見る目がある」と豪語する同僚・片岡の交際相手で同じく同僚の葉山広江にあった。
広江は小遣い稼ぎの為に、会社から溶剤を盗み裏で販売していた。
その溶剤の管理場所としてカワシマの部屋が選ばれたのだ。

これにはある勘違いが根底にあった。
片岡は広江との逢瀬にカワシマの部屋を利用していたが、その際に「部屋は自身の名前で契約しており、普段は空き部屋だ」と見栄を張る為に嘘を吐いていたのだ。
この言葉を鵜呑みにした広江は空き部屋だと信じ込み、溶剤の管理場所に選んだのだ。
カワシマの部屋に居た女は広江の共犯者だったのである。

真実を知ったカワシマに、未だ知らない片岡は「俺って見る目があるだろ」と繰り返すのだった。
もちろん、苦笑いを浮かべる他ない―――エンド。

◆『もう一度コールしてくれ』

芹沢豊は友人たちと共に強盗を働き、警察に追われることに。

仲間と離れ離れになり、1人で逃げる豊は因縁の相手の家へと向かう。
豊は高校時代に野球部に所属していたが、ある日の試合でセーフの筈の判定をアウトとされたことで此処まで身を持ち崩したと信じていたのだ。
因縁の相手とはその試合の審判員でアウトをコールした南波であった。

南波宅へ乗り込んだ豊。
南波は豊を覚えていた。
だが、あのコールは正しいと譲らない。
しかし、不思議なことに豊の主張もまた半分正しいらしい。
南波が認めないのはミスを認めたくないからだと判断した豊は、自身の正義を胸に南波宅を後にする。
ところが、逃走途中でミスを犯し逮捕されることに。

収監された豊に南波が面会にやって来た。
南波は豊の判定について、間違いはなかったと主張。
ただし、豊が誤解するのも無理はないと告げる。

あの日、豊は確かに一度はベースに触れたのだ。
だが、気が緩んだのか直後に手を放してしまった。
そこでアウトになったのだと言う。

南波の説明を耳にした豊。
今回、逃げ切れなかったように常に詰めが甘いのが自分の弱点だったのか……と今更ながら思い至るのだった―――エンド。

◆『死んだら働けない』

川島は自動車部品メーカーの社員。
この度、工場へと研修に赴いた。
期間が終われば、本社勤務である。

矢先、仕事人間で有名な林田が休憩室で死亡しているのが発見される。
原因は何なのか?

新型ロボットの暴走か、それとも―――。

答えは林田が仕事人間だったことにあった。
林田は、工場に機械を卸しているメーカーの山岡に殺害されたのだ。

仕事人間だった林田は休日返上で些細な機械の不調も許さぬ仕事ぶりだった。
そこで、何かあればメーカーの山岡を呼び出し修理を強要した。
山岡は仕事に疲れているところに、林田に呼び出され困惑していた。
それでも、仕事は仕事である。
誠実に対応した。
結局、休みにも関わらず夜10時までかかってしまった山岡。
10時からは山岡が楽しみにしていたドラマの最終回が放送されていた。

そこで、休憩室にあるテレビを借りて最終回を見ることに。
だが、ドラマに集中しようとする山岡の意に反して林田は未だに仕事の話を続ける。
一旦、仕事については片付いたものと思っていただけに山岡は苛立つ。
さらに、林田は鼻を啜り始めた。
この音がドラマの音声に重なり、ストーリーに集中できない。
ドラマは進む、だが、全然楽しめない。
苛立ちが頂点に達した山岡は林田を静かにさせるべく撲殺してしまう。

我に返った山岡は自身の行為に恐れ戦く。
そこで新型ロボットの暴走に偽装し、逃げ出した。

ところが、林田はまだ息があった。
気が付いた林田はロボットの暴走が原因と考え青褪めた。
そこで、隠蔽しなければとの意識が働き、休憩室に戻り絶命したのだった。

川島が本社に戻る日がやって来た。
川島を送り出す工場の面々、それは兵士を戦場に送り出す行為に似ていた―――エンド。

◆『甘いはずなのに』

新妻・尚美と共に新婚旅行にハワイへと出かけた主人公・伸彦だが、2人の間には新婚特有の華やいだ空気は無かった。
それもその筈、伸彦は前妻との間に出来ていた娘・宏子を尚美が殺害したのではないかと疑っていた。
尚美の事故死は宏子により仕組まれたものではないか……どうしてもその疑念が拭い切れない伸彦。

一方、何故か宏子殺害の容疑を否定しない尚美。
伸彦は遂に怒りの余り尚美を殺害してしまいそうになるが……。

何とか思い留まった伸彦にハワイで知り合った老夫婦が近付く。
彼らは「夫婦たるもの互いに互いを想い合うものである」こと、「誰にでも思い違いはあるものである」ことを伸彦に教える。

伸彦はこれに真相を察する。
宏子の事故死の原因は伸彦にあったのだ。
尚美は伸彦を苦しめまいと悪役を買って出ていたのだ。
伸彦に恨まれると知りながら……。

真実を知った伸彦は尚美とともにやり直す決意を固めるのだった―――エンド。

木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第5話「甘いはずなのに〜過(アヤマチ) 娘の死は他殺?トリックの鍵は二番目の妻」(8月2日放送)ネタバレ批評(レビュー)

◆『灯台にて』

僕は佑介に常に従わされてきた。
意に添わぬことでも、祐介に誘われれば断れないのだ。
それは大学生となり、もうすぐ卒業を控えた今も変わらない。

佑介の提案で卒業旅行することになった僕。
2人一緒ではなく、バラバラに巡ることになった。

僕はある灯台で灯台守の好意により宿泊することとなった。
ところが、この灯台守は同性愛者であった。
強引に迫られ、貞操を狙われるも何とか切り抜けた僕は、これを佑介への復讐に利用出来ないかと考える。

僕は事情を伏せた上で、灯台に泊まるといいと佑介に勧める。
佑介は疑うことなく灯台を利用した。

その翌日、灯台守が殺害された。
僕はその夜、灯台で何が起こったか正確に察することが出来た。

以来、僕と佑介の関係は逆転している―――エンド。

◆『結婚報告』

智美は友人・典子からの結婚報告を受け、驚く。
そこに写っていた写真の人物は典子とは似ても似つかぬ別人だったからだ。
事情を確認するべく智美は典子のもとへ。
この旅には意外な顛末が待っていた。

結婚報告の謎の女性は典子の夫・昌章の元恋人・秋代だった。
しかも、当の秋代は昌章たちの隣家の住人・桜井に殺害されてしまう。
桜井は昌章の持つ蝶のコレクションを盗む為に忍び込み、其処に居た秋代と遭遇し殺害してしまったのだった。

秋代は典子を昌章の妻と認めることが出来ず、自分こそが正当な妻だと主張し続けていたが漸く気持ちの整理をつけた矢先の出来事であった。

こうして、不思議な事件は解決。
智美は典子たちと再会を約しつつ、自宅へと戻るのであった―――エンド。

木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第9話「結婚報告〜疑(ウタガイ) 写真の親友は他人の顔?ハケン女絶体絶命の危機!」(9月6日放送)ネタバレ批評(レビュー)

◆『コスタリカの雨は冷たい』

僕はトロントの駐在員、妻・ユキコと共にコスタリカへ旅行に出かけることに。

ところが、コスタリカ旅行は散々だった。
なんと、強盗に遭ってしまったのだ。
地元の警察官に助けられ何とか救われるが……。

だが、カメラの電池カバーがきっかけでこの警察官も犯人グループとグルだと気付く。
警察官はカモになりそうな旅行客を犯人グループに教え、襲撃させた挙句、自身は助けるふりをして事を大きくしないように計らっていたのだ。

事件は解決したが、旅行自体は惨憺たる結果に終わってしまった。
こうして、肩を落としながら帰国することに。

だが、自宅へ戻ると隣家のタニヤ婆さんの「Welcome」との言葉が待っていた。
心が暖かくなる僕たち―――エンド。

◆関連過去記事

【東野圭吾先生原作ドラマ関連】
金曜プレステージ「東野圭吾3週連続スペシャル 11文字の殺人 あの日恋人はなぜ殺されたのか?無人島より殺意を込めて…11文字に込められた悲しき殺意!クルーズツアーで何が起きたのか?」(6月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「東野圭吾・3週連続スペシャル第二弾!“ブルータスの心臓” 完全犯罪殺人リレー バトンは死体!大阪〜名古屋〜東京をつなぐトリックと殺意!悪女に翻弄されるエリート研究者の運命は!?」(6月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ「東野圭吾・3週連続スペシャル第三弾!“回廊亭殺人事件” 最愛の恋人を殺され復讐の鬼と化した女…整形で顔を変え巨額遺産をめぐり欲望渦巻く一族に潜入!愛を奪った犯人は誰なのか?」(6月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)

金曜プレステージ 東野圭吾スペシャル 探偵倶楽部「大ヒット原作ドラマ化!名探偵最強コンビ誕生!大物社長突然の失踪に隠されたセレブ一族の醜い骨肉の争い…消える死体…驚愕密室トリックを暴け!」(10月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「流星の絆」(TBS系、2008年)

土曜ドラマスペシャル「使命と魂のリミット(前編) 病院に届く謎の脅迫状…犯人の狙いは?」(11月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)

土曜ドラマスペシャル「使命と魂のリミット(後編) 極限状況の大手術!結末に待つものは?」(11月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【東野圭吾先生著作ネタバレ書評(レビュー)】
「探偵倶楽部」(東野圭吾著、角川書店刊)

「白夜行」(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「幻夜」(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「殺意取扱説明書(毒笑小説より)」(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「夜明けの街で」(東野圭吾著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)

「11文字の殺人」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ブルータスの心臓」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「回廊亭殺人事件」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「ゲームの名は誘拐」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

「犯人のいない殺人の夜」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『マスカレード・ホテル』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『使命と魂のリミット』(東野圭吾著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『分身』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『プラチナデータ』(東野圭吾著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)

『あの頃の誰か』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)

『東野圭吾公式ガイド 読者1万人が選んだ東野作品人気ランキング発表』(東野圭吾作家生活25周年祭り実行委員会編、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【探偵ガリレオシリーズ】
容疑者Xの献身(文春文庫版)&映画版

「真夏の方程式」(東野圭吾著、文芸春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)

2夜連続ガリレオSP「ドラマレジェンド ガリレオエピソードΦ」(12月28日放送分)ネタバレ批評(レビュー)

【加賀恭一郎シリーズ】関連過去記事
・シリーズ7作目「赤い指」ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
「赤い指」(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ8作目「新参者」ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
「新参者」(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・シリーズ9作目「麒麟の翼」ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
「麒麟の翼」(東野圭吾著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)

・ドラマ版「新参者」ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
「新参者」(TBS、2010年)

・ドラマ版「赤い指」ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
東野圭吾ミステリー 新春ドラマ特別企画「赤い指 シリーズ人気No.1ドラマ化最愛の人が殺人を犯したら!?加賀が解く涙の連鎖・家族の絆とは “新参者”加賀恭一郎再び!」(1月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)

【その他】
米国版「容疑者Xの献身」発売される!!タイトルは「The Devotion of Suspect X」!!

韓国版『白夜行』遂に上陸!!2012年1月7日(土)日本公開!!

東野圭吾先生「人気作品ランキング」中間結果発表!!

東野圭吾先生が中国でブームに!?

東野圭吾先生「容疑者Xの献身」が上海で舞台化!!

東野圭吾先生原作『浪花少年探偵団シリーズ』(講談社刊)がTBS系月曜20時枠にてドラマ化決定!!

「エドガー賞 最優秀小説(作品)賞」受賞作発表、モー・ヘイダー『Gone(ゴーン)』に!!

東野圭吾先生原作の映画版『麒麟の翼』『夜明けの街で』『さまよう刃』が台湾にて2012年4月20日より公開!!

東野圭吾先生『容疑者Xの献身』がエドガー賞候補に!!気になる結果は2012年4月26日!!でも、何故2012年の今なのか、知りたいと思いませんか!?

東野圭吾先生『プラチナデータ』(幻冬舎刊)が映画化!!公開は2013年を予定!!

フジテレビ系列木曜劇場にて東野圭吾先生原作作品を続々ドラマ化!!その名も「東野圭吾ミステリーズ」!!

東野圭吾先生『○笑小説』シリーズから3本の短編が実写ドラマ化!!

「怪しい人びと (光文社文庫)」です!!
怪しい人びと (光文社文庫)





こちらは中国版「怪人們(怪しい人びと)(中国語)」です!!
怪人們(怪しい人びと)(中国語)





「あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12)」です!!
あの頃の誰か (光文社文庫 ひ 6-12)





「新装版 浪花少年探偵団 (講談社文庫)」です!!
新装版 浪花少年探偵団 (講談社文庫)





「新装版 しのぶセンセにサヨナラ (講談社文庫)」です!!
新装版 しのぶセンセにサヨナラ (講談社文庫)





「浪花少年探偵団―浪花の熱血先生と教え子探偵団の事件簿 (サスペリアミステリーコミックス―東野圭吾ミステリーシリーズ)」です!!
浪花少年探偵団―浪花の熱血先生と教え子探偵団の事件簿 (サスペリアミステリーコミックス―東野圭吾ミステリーシリーズ)





「東野圭吾公式ガイド 読者1万人が選んだ 東野作品人気ランキング発表 (講談社文庫)」です!!
東野圭吾公式ガイド 読者1万人が選んだ 東野作品人気ランキング発表 (講談社文庫)




【関連する記事】
posted by 俺 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評(レビュー) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック