<あらすじ>
新たに東京の世田谷に赴任した駐在・小林健(哀川翔)。かつては「オニコバ(鬼の小林)」と恐れられた警視庁の刑事だったが、今は妻の陽子(羽田美智子)と息子・修平(山崎竜太郎)と一緒に暮らし、駐在として地域住民の安全を守っている。
ある夜、健の担当地区で男の刺殺体が発見される。現場は成田郁夫(篠田三郎)邸の近くで、成田家の長男・史也(落合モトキ)の部屋からは現場を見下ろすことが出来そうだ。そこで世田谷中央署の山吹刑事(ベンガル)らは史也から話を聞こうとするが、母親の亜希子(多岐川裕美)に門前払いにされる。
翌日、亜希子が血相を変えて駐在所に駆け込んでくる。何年も自室にひきこもっていた史也が姿を消したというのだ。健は捜索の手掛かりを得ようと、史也のパソコンを起動する。するとそこには、三田村彩(水谷妃里)という若い女性と、刺殺された被害者・柴田(清水良太郎)の隠し撮り写真が保存されていた。柴田にしつこく迫られ困っていたという彩。刑事らはアリバイのない彼女に疑いの目を向ける。
しかしそんな中、彩の恋人・真彦(辻本祐樹)が何者かに襲われる。そして魔の手は健の息子にまで及ぶ。大切な家族を守るため「オニコバ」が立ち上がる!
(月曜ゴールデン公式HPより)
では、続きから……(一部、重複あり)。
健は派出所勤務の巡査。
妻・陽子、長男・修平と地域の平和を守るべく、日夜奔走している。
その地域にある成田家では、大きな悩みがあった。
長男・史也の部屋を訪れた亜希子だが、史也は顔も見せようとしない。
何かを話しかけようとする亜希子に対し、壁を叩きつける部屋の主。
亜希子はそのまま引き下がる……史也は引き籠っていたのだ。
数日後の夜、柴田が刺殺された。
柴田は浜野家に住み込みの家政婦として勤める彩に付きまとっていた人物。
彩は浜野家の長男・真彦と交際しており、彩か真彦が殺害したものと思われた。
しかし、真彦にはサークルの飲み会に参加していたとの完璧なアリバイが。
結局、彩が疑われることに。
一方、修平は真彦の妹・真理奈と同級生になった。
真理奈に恋をした修平は彼女とお近づきになりたいと願う。
放課後にこっそり真理奈の後を尾行した修平。
そこで、真理奈が初老の人物から絵の手ほどきを受けている姿を見る。
初老の人物の名は森と言った。
真理奈によれば、森は絵の教え方が上手いので密かに習っているとのことだった。
こうして、修平は真理奈と2人だけの秘密を持つことで距離を縮める。
彩が取り調べを受けることになった。
矢先、亜希子が派出署に駆け込んで来る。
史也が消えたと言うのだ。
史也の部屋を調べた健は、そのPCに彩と真彦、柴田の写真が保存されていることに気付く。
どうやら、史也は彩に好意を寄せていたらしい。
まさか、彩の為に柴田を殺害したのか?
こうして、捜査線上に史也も浮上することとなった。
その日の夜、健のもとへ管理官・神代が現れる。
実は健は「オニコバ」と呼ばれる凄腕の警部補だった。
どんな凶悪犯とも警棒一本で渡り合ったらしい。
健を高く評価する神代は「戻ってこないか」と声をかける。
健の為に席も開けてあると言う。
だが、そんな神代の誘いを断る健。
これには理由があった。
7年前、森雄三郎という名の画家を巡る事件で相棒・加藤を失った健。
加藤は陽子の元夫だった。
修平は加藤の実子だったのだ、このことは修平も知っている。
加藤の妻子を支えようとした健。
共に過ごすうちに、陽子と恋愛関係になった。
加藤の死に責任を感じていた健は、罪の意識から無謀な突撃を敢行するようになった。
警棒1本で拳銃を所持した凶悪犯に渡り合うその姿は、身を守ろうともしない半ば自暴自棄の行動であった。
「オニコバ」と呼ばれるようになった所以はコレである。
ところが、ある日、遂に凶弾に倒れた。
命は取り留めたが、陽子は健に「2度と危ないことをしないで」と懇願された。
陽子と共に生きて行きたいと思った健は彼女と結婚。
警部補を退き、家族と共に居られる派出所勤務を選んだのだ。
神代は健の決意が固いと知るとその場を去った。
同時刻、真彦が襲撃された。
柴田同様に、ナイフで刺されたのだ。
命に別状はなく、入院することに。
翌朝、襲撃時に使用されたナイフが発見され、柴田殺害と同一の凶器と判明する。
これにより、真彦襲撃時に取り調べを受けていた彩はアリバイが成立、解放される。
捜査本部の山吹たちは消えた史也の犯行を疑うが……。
ナイフを捨てた犯人を森老人が目撃していた。
だが、森は捜査本部に詳しいことを語ろうとしないらしい。
地域に密着している健ならば、森も心を開いてくれるのではないかと働きかける捜査本部だが……。
会話を盗み聞きした修平は「健の為になる」と考えて、森と接触。
ナイフを捨てた人物の似顔絵を描いて貰う。
ところが、その帰り道を何者かに襲われ修平は誘拐されてしまう。
犯人の狙いは、口封じではなく森の描いた絵であった。
森の正体は7年前の事件の発端となった画家・森雄三郎だったのである。
その絵には高い価値があった。
健は修平を救うべく、神代の用意した警部補に復帰。
神代と共に美術界の闇ブローカーに迫る。
警部補時代の華麗な動きを見せる健。
警棒1つで抵抗する犯人たちを次々と制圧していく。
追い詰められた首謀者は修平を盾にとるが……健は後方に廻り込むと奇襲をかける。
これには首謀者も対応しきれない、あっさり殴り倒されてしまう。
こうして健は「オニコバ」の異名通りの活躍を見せ、修平を助け出すのだった。
そのまま修平に正体を告げずに去って行く健。
森のスケッチブックを取り戻した健はそこにある人物の似顔絵を見出す。
スケッチブックに描かれていたのは―――。
ナイフを遺棄したのは成田郁夫であった。
郁夫は史也からナイフを渡されたと述べる。
史也はと言えば、郁夫から逃亡資金を受け取ると逃げたとのことだが……。
遂に史也が指名手配された。
この光景をテレビで見た健は真彦を訪ねる。
真彦は「史也に刺された」と主張。
史也の引き籠りの原因は真彦だった。
真彦と史也は同級生。
当時、真彦はイジメに遭っており、史也がこれを助けた。
ところが、標的は史也に異動。
史也は真彦に助けを求めるが、真彦は無視。
結果、史也は引き籠ってしまい真彦を恨んでいたらしい。
真彦は「史也は彩に気があったようなのでそれも理由だろう」と述べる。
救出された修平は入院していた。
そんな修平の見舞いに真理奈が訪れる。
真理奈から薔薇の栞を貰った修平は上機嫌である。
修平の様子に顔を綻ばせる健。
その日の午後、健は成田家で栽培された薔薇を見る。
さらに、浜野家の祖母がお礼に薔薇の種を配る癖があったことを知る健。
真理奈から成田家から貰った薔薇で栞を作ったとも聞かされる。
薔薇が事件を解決するカギになると考えた健。
科学捜査研究所の知人に栞に使用された薔薇の花びらの鑑定を依頼する。
鑑定結果を知った健は成田郁夫へのもとへ足を運ぶ。
成田家から採取された薔薇にはコバルトが含まれていた。
通常、薔薇にコバルトは含まれない。
つまり、成田家の薔薇の下にはコバルトを含む物質が埋められているのだ。
浜野家の祖母が配った薔薇の種、それを育てた結果、出来た薔薇の下には史也の死体が埋まっていた。
史也は半年前に既に自殺していた。
引き籠り生活を3年続けた末のことだと言う。
どうやら、史也は彩に恋していたらしいが、彩には真彦が居たことも原因だった。
亜希子は史也の自殺を受け入れられなかった。
もし、事実を受け入れれば亜希子は精神の均衡を崩してしまう。
そこで、史也が生きている芝居を続けた。
郁夫は真彦に協力を求め、2人で史也を演じ続けた。
柴田はそのことに気付き、真彦を脅迫した。
金と彩を求めた柴田。
これを真彦から聞いた郁夫は柴田を口封じした。
ところが、彩が容疑者にされてしまった。
真彦の提案で、彩を救うべく狂言を実行に移すことに。
真彦が自分で自分を刺し、郁夫がナイフを処理した。
史也を犯人にすることで事態を収拾しようとしたのだ。
「たとえ史也が犯人にされても、亜希子が史也の生存を信じてくれれば問題なかった……」と語る郁夫。
「たとえ史也君が居なくとも、奥さんを守るべきだった!!」断言する健。
こうして、郁夫は逮捕された。
亜希子は精神科に通うことになった。
修平は「オニコバ」が健であることを知らない。
今後も健は街の駐在として生きて行くのだ―――エンド。
<感想>
新シリーズ「世田谷駐在刑事」第1弾。
原作は濱嘉之先生『世田谷駐在刑事』(講談社刊)。
<あらすじ>
警察小説史上類を見ないヒーローが誕生した!
その「駐在員」が、全国屈指の暴力団捜査のエキスパートであることはまだ知られていない――
警察のすべてを知る著者が放つ「超(スーパー)」刑事小説
山間部ではなく、日本有数の高級住宅地の駐在所に赴任する異色の元刑事。警察捜査の第一線を知りつくしたその男が、地域警察ならではの情報力と機動力を発揮して諸悪と対峙する――
そんな新しいヒーローの活躍を描きたかった。(濱嘉之)
(講談社公式HPより)
ちなみに『鬼手 世田谷駐在刑事・小林健』は上記の続編ではなく文庫版であるので注意。
興味のある方はアマゾンさんのリンクよりどうぞ!!
さて、ドラマの感想。
なかなか面白かった。
当初、テンプレ的な展開が続いたので「真彦が犯人で、史也が彩の為に協力している」的なところかと推理していた管理人は、史也が死亡していたと明かされたときに驚きました。
そういえば、劇中でも史也は回想シーン以外出演していないんですよね。
あれは良かった、フェアです。
ネタバレあらすじでもそれを踏まえて、史也の存在はぼかしています。
極力、ドラマに忠実になるよう描写したつもりですが、成功してるかな?
サプライズ面ではかなり満足です。
ただ、内容的にモヤモヤする箇所もちらほら。
まず、捜査本部の面々(山吹など)が10時くらいから消えた。
それまでも、活躍らしい活躍もしていないし……存在意義が。
それと、史也の死を確定する薔薇が10時32分過ぎに出て来たのには驚いた。
まさにラスト直前。
あれはちょっと遅過ぎないか、せめて10時15分に欲しかった。
そして、何より納得いかないのは郁夫と真彦。
郁夫は真彦に利用されているようにしか見えないのだが。
息子の死の遠因は真彦(確かにイジメに加わってはいないが、彩関連もあるしなぁ、フォローはすべきだったか)。
柴田から脅迫されたことを郁夫に伝えたのも真彦(それとなく郁夫に柴田の排除を要請したと捉えられなくもない)。
恋人・彩を助けるべく史也に罪を着せる提案をしたのも真彦。
最終的に真彦には余りお咎めなしだろうし(郁夫関連で犯人隠避と真彦の死を隠していたことぐらいか、それと狂言関連)。
それどころか、すべての利益を得たのも真彦だし。
正直、郁夫は史也に罪を着せる提案を持ち出した時点で真彦を恨んでもいいと思うんだ。
それをしないのは郁夫が史也を愛しておらず、柴田殺害の罪を息子に着せることで保身に走ったとしか思えない。
そんな郁夫だから、史也は自殺したのではないか。
そして、郁夫の心は真彦に見抜かれていそうだ。
確かに、真彦は狂言とはいえ、自傷し危険であった。
ただ、理屈では理解できるが、感情が納得できない。
せめて、史也を犯人に仕立てる提案が郁夫側からならば、印象が変わったかも。
操りの構図で「実行は郁夫だが、真犯人は真彦」と言われても納得してしまいそうだ。
う〜〜〜ん、何故か真彦に辛くなってしまう……。
結局、真彦と彩についてエピローグで語られていないこともモヤモヤの原因だと思う。
さて、総評。
些か荒唐無稽な箇所もありましたが、エンタメとしては楽しめました。
上述した通りサプライズも良かったし、満足です。
シリーズ続編も見たい……そんな作品でした。
<キャスト>
小林健(こばやしたけし):哀川翔
○
小林陽子(こばやしようこ):羽田美智子
小林修平(こばやししゅうへい):山崎竜太郎
○
成田郁夫(なりたいくお):篠田三郎
成田亜希子(なりたあきこ):多岐川裕美
○
神代哲也(くましろてつや):嶋田久作
山吹昭夫(やまぶきあきお):ベンガル
○
浜野真彦(はまのまさひこ):辻本祐樹
三田村彩(みたむらあや):水谷妃里
成田史也(なりたふみや):落合モトキ
森雄三郎(もりゆうざぶろう):沼田爆
浜野真一(はまのしんいち):五代高之
柴田晃(しばたあきら):清水良太郎 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより)
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