<あらすじ>
北見志穂(松下由樹)は、警視庁捜査一課の刑事。自ら“おとり”となって事件の渦中に飛び込み、同僚の袴田刑事(蟹江敬三)の協力を仰ぎながら、数々の難事件を解決してきた。
ある日、都内で現金輸送車が拳銃を所持した3人組の男に襲われる事件が発生。志穂たちは犯人2人を逮捕したものの、残るひとりの男・岡村信雄(榊英雄)がオフィスビルに逃げ込み、人質を取って立てこもった。岡村が飛び込んだのは、桂木涼子(筒井真理子)という女性医師が開いている心療内科で、涼子はちょうど時間外のカウンセリングを行なっていたらしく、中には患者も1名いると思われた。
定期的に涼子のカウンセリングを受けているという所轄の巡査・中島一朗(村田充)からの情報で、院内の間取りを確認。特殊捜査班“SIT”が突入準備を整えていると、岡村がついに発砲し、涼子が負傷したという情報が入ってきた。そこで、医師にふんした志穂がケガ人の手当てをする名目で、中へ。幸い涼子はかすり傷と判明。志穂は隙を見て岡村を転倒させることに成功し、それがきっかけで確保に至った。
事件が落着してわかったのだが、涼子のほか、人質に取られていたのはカウンセリングを受けていた末永夏美(宮本真希)で、彼女もやはり所轄の警察官だという。涼子は、警察署の委託を受けているカウンセラーだったのだ。
翌日、志穂と袴田が涼子のもとを訪ねると、警視庁警務部の加納達也(松尾敏伸)が見舞いと諸手続きを兼ねてやって来た。加納も以前、涼子のカウンセリングを受けていたことがあるという。加納は志穂にどことなく好感を抱いたようで、袴田もまた涼子の穏やかで温かい人柄に、いつになく魅了されているようだった…。
事件はこれで終わったと誰もが思っていた矢先、なんと河川敷で中島の死体が発見される…! 別の場所で殺されて運ばれたようだが頭部を執拗に殴打されており、犯人はかなり深い恨みを抱いていたものと思われた。さらに遺体の歯と歯の間から、なぜか女性の毛髪の一部が見つかった。
まもなく、中島がスナックでケンカになったバーテンダー・橋本純平(西興一朗)が捜査線上に浮上。橋本は事件後、行方をくらましていた…。だが、その数日後、夏美が死体となって見つかるという事態が…! しかも、中島が殺害されたのと同じ凶器で、後頭部を一撃されたことがわかった。立てこもり事件に関わった警官2人が、相次いで殺害されたのはなぜなのか…!?
2人には、涼子のカウンセリングを受けていたという共通点もあった…。
はたして事件の真相はどこにあるのか…!?
志穂は決死のおとり捜査で、真犯人を突き止めていく…!
(土曜ワイド劇場公式HPより)
では、続きから(一部、あらすじと重複あり)……
立て籠もり事件が発生。
被害者はメンタルヘルスを営む精神科医の桂木涼子。
それに患者も1人、巻き込まれているらしい。
事件自体は、志穂の囮捜査により解決。
この事件を通じ、志穂と袴田は涼子とその患者・夏美、同じく患者の中島と出会う。
更に翌日、涼子を通じて加納とも出会うことに。
その数日後、中島が殺害された。
遺体の左腕に生まれながらの痣を発見する志穂。
しかも、中島の口中には女性の髪の毛が、袖口には奇妙な泥が付着していた。
一方、7年前に妻との離婚後、離れて暮らしていた23歳の一人娘・愛を殺害された袴田。
その心の傷は未だ癒えていなかった。
涼子と近づく袴田。
涼子との会話はそんな袴田の傷を癒していく……。
殺害された中島の部屋をその母・芳子と共に訪れる志穂。
志穂はその部屋でサッカーチームのカレンダーを見つける。
中島はサッカーを趣味にしていたのだろうか?
芳子はといえば、中島の机から涼子メンタルヘルスの診察券を発見し何やら考え込んでいた。
袴田は涼子との時間に潤いを感じていた。
涼子もまた袴田と過ごすことに喜びを感じている様子。
そんな2人の様子を加納が凝視していた……。
その3日後、今度は夏美が殺害されてしまう。
志穂は涼子メンタルヘルスに関わる人間が殺されていることに意味があると考える。
夏美殺害に中島殺害と同じ凶器が用いられていたことが判明。
主任の井原は同一犯による犯行と断定する。
中島の咥えていた髪の毛が夏美のものでは……と考える志穂だが、これは違っていた。
一方、夏美の担当した過去の事件を調べた結果、橋本の名前が浮上する。
橋本はホステスにストーカー行為を繰り返しており、夏美に説諭されていた。
夏美の暮らす寮を訪ねた志穂と袴田。
管理人によれば、夏美に恋人は居なかったらしい。
だが、先々週の土曜日にはまるで誰かに見せるように着飾って出かけたと言う。
しかも、先週の水曜日の夜には乱れた服のまま泥だらけで帰宅するのを見たとの証言を得られる。
同じ日にゴミ置き場も荒らされていたそうだが……。
先週の水曜日とは中島殺害のまさにその日である。
中島の袖にも泥が付着しており、志穂は涼子メンタルヘルスが2人の出会いの場になったのではないかと推理する。
涼子に確認したところ、患者のプライバシーを守る為に待合室も個室となっているのであり得ないと語る。
さらに、涼子によれば夏美は妄想に憑りつかれていたらしい。
ストーカーに追われていると怯えていたと言うのだ。
ストーカーは本当に夏美の妄想なのか?
疑いを抱く志穂に近付く加納。
遂にはデートの約束まで取り付けようとする。
中島の部屋で見かけたカレンダーからあるサッカーチームに目を着けた志穂。
そのチームが婚活シートを導入していることを知る。
婚活シートとは、参加希望者を募ると男女相席になるよう計らい出会いの場を提供するイベント。
それがちょうど先々週の土曜日に行われていた。
夏美が着飾って出かけた日と同じである。
中島がネットで婚活シートを購入していたことが判明。
だが、夏美の名前は購入者リストに記載されていなかった。
物がチケットだけに、代理者が購入したか、誰かにプレゼントされた可能性があるらしい。
カップルになった場合は、サービスとして記念写真を撮影することもあるとの担当者の弁。
調べたところ、中島と夏美が共に写った写真が見つかる。
しかも、夏美に代わり購入したとされる人物の名は―――涼子であった。
涼子はあっさりこの事実を認める。
なんでも、患者の為に出会いを提供する場を用意することもあるらしい。
既に次回のチケットを渡した人間が居ると語る涼子はそのまま相手に電話をかける。
相手は大野という交通課の婦警。
今回の参加は見合わせて欲しいと依頼する涼子に大野は素直に応じる。
志穂と袴田は婚活シートに関連し殺人犯が潜んでいると推理するが……。
夏美の服の泥と中島の泥の成分とが合致。
しかも、婚活シート当日の様子を撮影した防犯ビデオには夏美を窺う橋本の姿が映っていた。
橋本は夏美をストーキングしていたのだ。
聞き込みの結果、婚活シート当日に中島が誰か若い男と争っていたらしい事が分かる。
目撃者によれば、橋本とは別の男だと言う。
橋本の身柄が遂に確保される。
橋本は夏美をストーカーしたことは認めるが、殺害は否定。
夏美には警察官の恋人が居ると知り、諦めたらしい。
橋本は逃走理由を銃を密売していた為と主張、中島殺害当日にもアリバイが成立し、殺害に関しては無関係と分かる。
婚活シートのイベントを明日に控え、志穂が囮になると主張。
井原はこれを承認する。
婚活シート当日、参加した志穂は隣り合わせになった客から話しかけられる。
どうやら、相手に気に入られたようだ。
ところが、其処へ加納が現れる。
加納によれば、涼子からチケットを貰ったと言う。
しかも、加納は夏美が婚活シートを利用していたことを知っていた。
加納は志穂を口説き始めるが……囮とはいえ、こういった事態は想定していない。
思わぬ事態に志穂が困惑していると、婚活シートの相手が戻り加納と言い争いになってしまう。
と、揉み合う加納の腕に中島と同じ痣を見つける志穂。
さらに、中島と争っていた相手が加納だと判明する。
その場を何とか収める志穂だったが、加納は「交際してくれるなら、明日に大田区の若葉公園に来て下さい」と言い残し去って行く。
これを聞き、若葉公園に足を運んだ袴田は其処から涼子の姿が見えることに気付く。
試合は終了。
加納には尾行がつくこととなった。
その影で、一連の出来事を芳子が監視していた……。
夏美が婚活で知り合った男にストーカーされ困っていると洩らしていたことが判明。
加納なのだろうか?
囮捜査は続行されることになった。
標的は加納である。
一方、袴田は涼子に興味を持ち、その診察室を調べる。
付き合った志穂は、袴田の離席中に涼子の部屋から「母子鑑定」の結果報告書を見つける。
そこには「親子である可能性は0%」と記載されていたが……。
中島の遺体から検出された髪の毛が、中島の母親のものと判明。
袴田は母親である芳子が息子を殺害したと推理するが……。
芳子は取り調べを受けるが、黙秘を貫く。
鑑識が例の髪の毛を調べたところ、中島の遺伝子と似通っており、母子である可能性が99.9%と明らかになったそうだ。
中島が過去に女子大生相手にストーカー行為を行っていたことが判明。
その被害者・伊東由紀に事情を訊く袴田と志穂。
由紀によれば、一度は中島に暴行されかけたらしい。
その際に、髪の毛を食べられたとの証言が飛び出す。
由紀は眼鏡の似合う美人であった。
これを聞いた志穂は、中島には眼鏡をかけた美人に執着する強い性癖があったと考える。
夏美も眼鏡をかけていた。
夏美のストーカーは、加納ではなく中島だったのではないか……。
翌朝、未だ続く芳子への聴取。
だが、芳子は黙秘を貫いていた。
井原は過去の中島のストーカー行為や、婚活シートの現場に芳子が居たことを問い詰める。
これに、芳子は息子を殺した犯人を調べていたと供述。
さらに、芳子は髪の毛の主は自分ではないと主張を始める。
中島は芳子の実の子供ではなかったのだ。
鑑定結果は髪の毛と中島の遺体を用いて導き出された物だった為に分からなかったのである。
芳子は自身の髪を提供し、確認して欲しいと申し出る。
袴田は中島の実母を捜すことに。
その間に志穂は涼子に呼び出されてしまう。
涼子の車のトランクを見た志穂はそこに泥が堆積していることに気付くが、涼子にスプレーで眠らされてしまう……。
志穂の誘拐はすぐに捜査本部に知られることとなった。
一方、加納は若葉公園で志穂を待っていた。
しかし、志穂は涼子に連れ去られている……やって来よう筈がない。
捜査員が志穂に代わり断りを入れると、加納は涼子に何かあったのかと騒ぎ出す。
袴田は子供の仲介者から驚くべき事実を聞き出す。
当時、高校生だった涼子は奥多摩の別荘で指名手配犯に暴行され子供を妊娠していた。
敬虔なカトリックであった涼子の両親は教義の為に堕胎を否定。
涼子は出産することに。
だが、事情が事情だけに子供を育てることは出来なかった。
そこで、涼子は生んだ子供を里子に出した。
その左腕には痣があったと言う。
涼子は過去に暴行を受けた奥多摩の別荘に志穂を監禁する。
犯行について語り出す涼子。
涼子はカウンセラーとなり、加納に出会った。
その腕に痣を見たとき、涼子は嬉しかったと言う。
こんな好青年が私の子供だなんて―――と。
涼子は加納を子供だと思ったのだ。
一方、加納は涼子に好意を抱いていた。
涼子からも好意を持たれていると確信していた。
ところが、急に避けられるようになった。
そこで、涼子の気持ちを振り向かせるべく、あてつけで志穂に迫ったのだ。
涼子が加納を避けた理由は、DNA鑑定を行った結果、加納が子供ではないと涼子が知ったことにあった。
しかも、同じ頃に中島が現れたのだ。
その顔は暴行した父親にそっくりだったと言う。
まさか……と恐る恐るこちらも鑑定を行ったところ、親子だと立証されてしまう。
親子ではあるが、憎むべき相手と容姿だけでなく些細な行動までそっくりだった中島。
涼子は中島に複雑な想いを抱くように。
立て籠もり事件が起こり、涼子は過去のトラウマに悩まされることとなった。
矢先、良かれと思い夏美に用意した婚活シートが原因で、夏美がストーカーに付きまとわれるようになった。
確認したところ、ストーカーは中島だった!!
まさか父親が自分を襲ったように夏美を襲うつもりではないかと尾行した涼子。
案の定、中島は夏美を襲った。
自分と夏美を重ね合わせた涼子は中島に立ち向かった。
だが、中島はまるで獣だった。
夏美から涼子へと標的を躊躇なく変えると、興奮した様子で襲い掛かってくる。
もはや、眼鏡も何も関係ない。
この際に涼子の髪の毛が中島に食べられたのだ。
過去の記憶がフラッシュバックした涼子は、過去の自分の仇とばかりに中島を殴りつける。
こうして中島は絶命。
夏美が気絶し自分の顔を見ていないことを確認した涼子は中島の死体を遺棄したのだった。
ところが、数日後に夏美が涼子に自首を勧めて来た。
夏美が意識を取り戻したときに涼子が常用していたポプリの匂いがしたので気付かれたのだ。
夏美は「正当防衛の上、自分も中島の被害者として証言する」と伝えて来た。
だが、実の子供を殺害したことを世間に知られることは涼子にとって耐えがたい屈辱だった。
そこで口封じするべく夏美を殺害したのだった。
すべてを志穂に語り終えた涼子。
何もかも消し去らなければ!!
脅迫観念に駆られた涼子はすべてを灰にするべく、別荘ごと焼き尽くそうとする。
そこへ袴田が駆け付ける。
思い留まるよう説得する袴田だが、涼子は「2人を殺した以上、生きてはいられない」と火を点ける。
しかし、袴田は身を以て消火。
「俺でよければ寄り添うよ」と涼子に告げ、罪を償うよう告げる。
これに涼子は涙を流すのだった。
事件は解決した。
涼子のことを思い起こす袴田。
加納のことを思い起こす志穂―――エンド。
<感想>
土曜ワイド劇場「おとり捜査官北見志穂」シリーズ16作目。
前作は2011年4月11日に放送されているので、実に1年2ヶ月ぶりの最新作となる。
シリーズのいくつかは過去記事でネタバレ批評(レビュー)してますね。
興味のある方は過去記事をどうぞ!!
・土曜ワイド劇場「おとり捜査官北見志穂 口をふさがれた美女連続殺人!似合わない白いハイヒールを履いた美女の謎」(4月9日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ワイド劇場「おとり捜査官北見志穂 獄中女に間違われた女刑事!銀行襲撃犯が殺される理由…消えた拳銃と2300万の謎」(8月7日放送)ネタバレ批評(レビュー)
では、ドラマの感想を。
情報量がやけに多かったですね。
展開も急展開が多く、ついていくのに苦労しました。
いろいろとツッコミどころのある展開が多かったのもビックリ。
涼子は夏美を殺害した時点で、大義名分を失っていますね。
中島と夏美を同列に扱っちゃ駄目。
そして、あっさり消える火(あれで済む筈が……)。
何故か、性癖や嗜好に関係なく相手の髪を食べる中島。
焦っていたとはいえ眼鏡は関係ないのか?
嗜好が合致しなければ、髪を食べずに気絶させると言う選択肢もあった筈だが……。
他にも、加納が何故、婚活シートに興味を持っていたのか?
涼子へのあてつけならば、志穂へ接近したことだけで十分だろうし。
もしかして、夏美にもアプローチしていたのかなぁ。
志穂同様に涼子へのあてつけだったのでしょうか……。
となると、あんまり加納は好青年ではないような……割とドロドロとしたものを抱えていることになりそう。
志穂をあてつけに利用した時点で、既にドロドロしていますが。
ちなみに、表面化していないだけで中島には相当余罪がありそうな気がする……怖い。
婚活シートで獲物を見定めていたのでしょうか?
それと、あまり囮捜査は機能していなかったように思います。
囮捜査で得られた情報はあまり関係ないものが多かったし。
もっと、本筋と絡めた方が良かった気も……。
サブタイの「婚カツ美女連続殺人」は「男性被害者と女性被害者の連続殺人」であって、「婚活美女の連続殺人」ではないと言う……。
しかも、176人の容疑者は存在しませんでした。
まぁ、それも含めて「らしいと言えばらしい」気もします。
このシリーズならば何故か許せてしまう。
そんなこんなで結構楽しめました。
割と安定感のあるシリーズです。
16本目は伊達じゃない!!
ちなみにドラマ原作は「神狩り」で知られる山田正紀先生の「女囮捜査官(おとり捜査官)」シリーズ。
シリーズは「女囮捜査官 1 触覚」などのように「タイトル+五感」となっておりシリーズはきちんと5冊(触角、視覚、聴覚、嗅覚、味覚)発行されている。
もし仮に原作で次があるとすれば(ないだろうが)、「女囮捜査官 第6感(直感)」となるのだろうか?
あるいは「女囮捜査官 共感覚」かも……。
◆関連過去記事
・「共感覚」といえば思い浮かぶのはこれらの作品。
「臨床真理」(柚月裕子著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
「キョウカンカク」(天祢涼著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
<キャスト>
北見志穂:松下由樹
袴田刑事:蟹江敬三
桂木涼子:筒井真理子
加納達也:松尾敏伸
末長夏美:宮本真希
中島一朗:村田 充
中島芳子:奈良富士子
川端 愛:森下千里
井原主任:小木茂光
佳代:赤座美代子 ほか
(敬称略、順不同、公式HPより)
◆「おとり捜査官」シリーズ関連書籍です!!
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