<あらすじ>
安曇野の山道で、画家の中留浩介(内藤剛志)が何者かに腹部を刺され殺害された。現場に急行した安曇野北署の刑事・道原伝吉(松平健)と新人刑事の吉村(篠田光亮)は、目撃者の証言から、中留が「一切闇処(いっさいあんしょ)…自業自得だ…あの女に刺されるなら仕方がない…」と言い残し亡くなったことを知る。その言葉を裏付けるように、現場付近では赤いリボンの登山帽をかぶった不審な女性が目撃されていた。
中留は地獄絵図と菩薩の絵を描く長崎県雲仙在住の画家で、新作を描くために安曇野に来ていたという。中留が言い残した「一切闇処」とは、18種類あるという大叫喚地獄の1つで、婦女子を犯した者や人妻を奪った者が堕ちる地獄を指すことが判明する。道原は、遺体を引き取りにやって来た中留の妻・詩子(大谷直子)と弟子の川尻星輝(鳥羽潤)に、中留の最期の言葉を伝え心当たりを尋ねるが、中留と愛人関係にあった女性は大勢いてわからないとの答えが返ってくる。
その夜、吉村は道原の家に招かれ、道原の妻・康代(斉藤慶子)たちから歓待を受けることになった。同じ頃、遠く離れた長崎県雲仙の観光名所・大叫喚地獄では、九州新聞の記者・重見竜也(大城英司)が顎の下を刺されて殺害される。翌日、雲仙中央署から安曇野北署に事件の一報が入った。重見の手帳に中留と会う約束が記されていたことや、遺体の近くから中留が描いた地獄絵の複製画が発見されたことを聞かされた道原は、2つの事件は繋がっているのではないかと直感。四賀課長(平泉成)に直談判し、吉村とともに雲仙へと向かう。
雲仙中央署の捜査会議に出席した道原は、2つの事件は関連していると主張するが、雲仙中央署の伊吹刑事(斉藤暁)と真っ向から意見が対立してしまう。しかし、遺体のそばに置かれていた中留の地獄絵「吼々処」は、「一切闇処」と同じ大叫喚地獄のうちの1つで、嘘をついて他人を陥れた人間が落ちる地獄を描いたものだった。道原は、やはり2つの事件には繋がりがあることを確信する。
その晩、大松閣という旅館に泊まることになった道原たちは、館内に中留の絵が飾られていることに気付く。聞けば、女将の淡路陶子(野村真美)が好きなのだという。そこで中留が描く菩薩絵を初めて目にした道原は、菩薩の左目の下にほくろが描かれていることに気付く。その後、中留が描いた菩薩には全て左目の下にほくろが入れられていたことを知った道原は、菩薩にはモデルとなった女性が存在し、その女性が事件のカギを握っているのではないかと睨み、事件の真相を追い始めるが…。
(水曜ミステリー9公式HPより)
では、続きから(一部、重複アリ)……。
中留の弟子・川尻星輝から中留の人となりを聞く道原。
中留は「業があるから良い絵が描ける」と常々、口にしていたらしい。
中留浩介の絵を梱包していた古新聞から「1965年、画家・菊里の転落死」の記事を見つけた道原。
早速、現地に捜査へ出かける。
すると、意外な事実が発覚。
美術教師にして画家をしていた菊里が中留の絵の師匠だったことが判明したのだ。
しかも、菊里には妻子がありながら、中留の母とも不倫していた。
どうやら、これを恨んだ中留が菊里を殺害したらしい。
中留が背負っていた業の正体はコレだったのだ。
矢先、赤いリボンの登山帽の女の正体が判明。
大松閣女将の淡路陶子だったのだ。
しかも、その陶子が遺体で発見される―――自殺であった。
陶子は遺書を残していた。
陶子は中留と不倫しており、その事実を知った陶子の夫は自棄を起こし自殺未遂。
結果、昏睡状態で病床につくこととなった。
中留との関係に悩んだ陶子は、思い詰め、彼を殺害したらしい。
さらに中留の名誉を守る為に重見竜也をも殺害したと記していた。
この秘密とは、中留が菊里を殺害したことを指しているらしいが……。
だが、これを目にした道原は中留の秘密を守るつもりなら遺書にそのことを書く筈がないと指摘。
しかも、重見の遺体の傍に「吼々処」の絵があったことから「嘘を吐いた為」に殺害されたに違いないと断定する。
道原は陶子の遺書の内容は嘘であると判断し、「菩薩の女」こそが犯人だと捜査を続ける。
菩薩にだけ島原の顔料を使っていた事を知った道原は、島原へ赴く。
そこで、道原と地元の女性・工藤綾子が恋愛関係にあり、その綾子が入水自殺していたとの事実を掴む。
綾子には菩薩と同じく左目の下にほくろがあった。
しかも、綾子に息子が居たことも明らかに。
息子の名前は「星輝」だった。
中留の弟子・川尻星輝は中留の息子だったのだ……そして、星輝こそが2件の殺人の犯人だった。
星輝が姿を消した。
自殺しようとする星輝、それを止める道原。
「中留さんと陶子さんはあなたを庇ったんですよ!!死んじゃいけない」
星輝は母について語り始める。
綾子は中留と別れ、星輝を生んだ。
ところが、綾子は何故か自殺してしまう。
星輝によれば「中留が菩薩であることを望んだことに耐えられなかったのではないか」と言う。
星輝は中留を恨んだ。
それから時が過ぎ、中留の菩薩の絵を目にした星輝。
中留にとって母の存在が重要であったことを知った星輝は彼を許した。
こうして弟子になった星輝。
ある日、重見が現れた。
重見は「中留にとって綾子は既に過去の女だ、中留は陶子を菩薩として新たな絵を描いた」と嘘を吐く。
これを聞いた星輝は激しく動揺。
確認すべく中留に会った星輝だが、ふとした行き違いから逆上し中留を刺してしまう。
中留は「お前に足りなかったのは業だ、これで名作が描ける」と伝え、星輝を逃がす。
どうやら、重見の嘘はともかく、逆上させたのは星輝に業を背負わせる為に仕組んだことらしい。
その後、星輝を庇う為に「あの女に刺されるなら仕方がない…」と言い残したのだ。
重見は星輝に隠し子として名乗り出て共同執筆者になるよう持ちかけていた。
自身の本の話題作りの為に星輝に中留を告発させようとしていたのだ。
そこで嘘を吐いてまで、親子の仲を引き裂いた。
この事実に気付いた星輝は重見を殺害したのだ。
陶子は星輝の後に中留のもとに駆け付けていた。
実は陶子も中留を殺害するつもりだった。
しかし、既に中留は危険な状態に陥っていた。
意識も危うい中留は陶子に星輝について後事を託した。
陶子は中留の希望を叶えようと決意する。
そこで、星輝に接触した陶子は凶器のナイフを受け取ると、自身が犯人として自殺したのだった。
「お前が淡路陶子を殺した!!」
道原は星輝を責める。
この道原の指摘に星輝は罪を認めるのだった―――エンド。
<感想>
「信州あづみ野の名刑事道原伝吉の捜査行」シリーズ第1弾。
原作は梓林太郎先生『雲仙・島原湯煙地獄』(光文社刊)。
<あらすじ>
長野県の燕岳で登山中の夫婦が暴漢に襲われ、夫が殺された。時を同じくして長崎県雲仙市の温泉街で出版社の編集者が殺される。遠く離れた二つの地点で起こった殺人事件を追うため、安曇野署の道原伝吉は長崎へと向かった。そして事件を繋ぐ人物として著名なミステリー作家が浮かび上がる…。複雑に絡む人間模様、それぞれが背負う深い業が胸を打つ傑作ミステリー。
(公式HPより)
なんだか、原作とだいぶ変えて来てる感じですね。
では、ドラマ版の感想を!!
内藤剛志さん大活躍でした。
冒頭で殺害された時には「ええ〜〜〜これで退場!?」と困惑しましたが、過去回想で大活躍。
完全に生者を喰ってましたね。
道原役の松平健さんも誠実で朴訥な刑事役がマッチしており、良かった。
キャスト的にはベストと言えると思います。
ストーリー的には些か納得できない点もありますね。
まず、陶子が中留を殺害していない証拠が何一つ無いにも関わらず、道原が「陶子が中留を殺害していない」と断言できたのは何故か?
中留殺害は陶子、重見殺害は星輝という可能性もあった気がします。
2件の殺人で同一の凶器が用いられており同一犯を想定していたからとしても、最終的に星輝から陶子に凶器がリレーされたように凶器に対し犯人複数の可能性は捨てきれないと思うのですが……。
それと、あれだけ粘った割には重要情報は残り30分で一気に出ましたね。
正直、前半から中盤にかけての1時間30分は視聴する必要が無かった気がしないでもない。
特に綾子の存在は、もっと早くに視聴者に報せておくべきだと思います。
まぁ、菩薩が伏線と言えるとは思いますが……。
それと、菊里の件を活かすならば、菊里の妻なり娘なりこそが菩薩であった方がストーリー的には面白かったかもしれませんね。
管理人が「菊里の妻(あるいは娘)が中留の過去の犯罪を知りつつ、許したから菩薩」などの物語を妄想していたのはここだけの秘密です。
全体的になかなか面白かったとは思います。
特に次回作が見たいというほどではありません(今回は内藤さんの好演があってこそだと思う)が、あっても困るほどでは無いかな。
◆「梓林太郎先生」関連過去記事
・水曜ミステリー9「旅行作家・茶屋次郎 笛吹川連続殺人事件〜美女を狙う保険金殺人の罠!容疑者2人の死が迷宮の扉を開く」(11月30日放送)ネタバレ批評(レビュー)
<キャスト>
道原伝吉:松平健
道原康代:斉藤慶子
中留浩介:内藤剛志
中留詩子:大谷直子
淡路陶子:野村真美
四賀課長:平泉成
川尻星輝:鳥羽潤
伊吹刑事:斉藤暁 ほか
(順不同、敬称略、公式HPより転載)
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