2012年06月04日

『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)

『ヒトリシズカ』(誉田哲也著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)です!!

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

木を見て森を見ず――。細部に注意しすぎ、肝心の全体を見失うことのたとえで、事件捜査において、最も避けなければならないことである。この小説に登場する刑事は皆、これを徹底し犯人を逮捕していく。だが、彼らは気づかなかった。その森が想像以上に大きく深いということに……。5つの殺人事件。果たして刑事は真実をみたのか?今、注目を浴びる著者の連作警察小説。

見えそうで見えない。手が届きそうで届かない。時と場所、いずれも違うところで起きる五つの殺人事件。その背後につらつく女の影。追う警察の手をすり抜ける女は幻なのか。いまもっとも旬な著者の連作ミステリー。
(双葉社公式HPより)


<感想>

WOWOWにてドラマ化される原作です。

WOWOWにて誉田哲也先生原作『ヒトリシズカ』(双葉社刊)がドラマ化決定!!

5つの事件に関連する1人の女性・伊東静加―――彼女は一体、何者で何を行おうとしているのか?
静加以外の視点人物により物語が進み、進むたびに静加の残酷な姿が浮かび上がります。
ある意味、他者から見た伊東静加の一代記です。

収録された全6篇の短編タイトルは次の通り。

「闇一重(やみひとえ)」
「蛍蜘蛛(ほたるぐも)」
「腐屍蝶(ふしちょう)」
「罪時雨(つみしぐれ)」
「死舞盃(しまいさかずき)」
「独静加(ひとりしずか)」

ラストの「独静加」にて意外な結末が示されます。
ただ、この結末は些か突拍子も無いので驚くことになるでしょう。

静加の人間性がそれまでとは180度変わっています。
ああなりそうな伏線がそれまでに欠片も登場しないだけに、狐に摘ままれたような印象を受けることになるかも。
結局のところ、「それまでの月日とミオの存在が彼女を変えた」のだと思うのですが、その具体的な描写はあまり無く(「独静加」にて静加自身が明確に登場しない為に静加の心中が判然としない)、それまでの静加の残酷描写が苛烈過ぎて同一人物にどうしても思えない。
これについては、入替りを主張してくれた方が納得できるほど。
唯の運動会を見に来たことと、ラストのアレから「ミオが彼女にとって特別な存在」となっていることは分かるのですが……。
この点、「暴力を支配する」と語っていた静加が本当は何を望んでいたのかについて、もう少し作中に匂わせるような描写があればもっと腑に落ちやすかったと思います。

一応、作中から想像できる静加の心理の変遷はこんな感じでしょうか。

8歳にして「暴力を支配する」ことが真理だと考えるようになる。
以降、この考えに基づいて行動。
実父である南原に接近しこれを殺害すると、異母妹・ミオを連れ出す。
ミオとの生活を通じ、真理について考え方が揺らぎ始める。
自身の力をミオを守ることに注ぎ始める―――といったところか。

ただ、やっぱりそれまでの印象が強過ぎて「連続無差別殺人鬼が急に人類愛に目覚めた」ような違和感は拭えませんでした。
静加の考え方が変わることとなる1篇が挟まれていれば違っていたとは思うのですが。
或いは、静加視点の短編があれば……。
ここらは他者視点が仇になったかなとの印象。
おそらく、他者視点から静加を描くことで表面上と彼女の本質は別にあることを伝えたかったのかなとも思うのですが、それまでの他者から見た言動がどう見ても残酷な人物のソレにしか見えないので説得力が著しく欠けるのは仕方がないか……。

なので、ドラマティックな要素は多々あるのですが、最後にモヤモヤが残る作品と言えるかもしれません。
とはいえ、文体自体はスピーディーかつエキサイティングなソレが活きているし、エンタメ作品としてはなかなかのものと思われます。
著者のファンならば、一度読んでみるのもアリかもしれません。

ちなみに文庫版公式HPのあらすじに「つらつく」→「ちらつく」との誤字がありますね。
管理人も覚えがあるので気をつけなければ……。

<ネタバレあらすじ>

管理人なりにまとめた後に改変したあらすじとなります。
ポイントは押さえている筈ですが、その点をご了承の上でお進み下さい。


時と場所を違え、伊東静加の周囲で次々と人が死んで行く。
それは静加自身が望んだこと。

静加は「暴力を支配しコントロールしてみせる」と豪語する。
自身の女性としての魅力を知る静加はわずか8歳のときから、性を利用し男を惑わせ人を殺す。

それぞれの死に関わった捜査員たちは一様に伊東静加に辿り着くが、彼女を捕まえることは出来ない。
静加は刑事である伊東課長の血の繋がらない娘だったから。
ある者は課長への義理から見逃し、またある者は静加の罠に嵌り殺害される。
こうして、誰も静加を捕えることは叶わなかった。

静加は伊東のもとを離れアキを名乗ると、17歳にして暴力団幹部の南原のもとへ身を寄せる。
年齢を偽り南原の情婦となったのだ。
そして、南原の対抗勢力を利用し南原を殺害。
彼の娘・ミオを連れ去った。

何故なら、ミオと静加は異母姉妹だったから。
静加は実父と知りつつ南原に近付き関係を持ったのだ。
もちろん、南原はその事実を知らないまま死亡した。
静加はミオが実父・南原に虐待されていることを知り、南原を姦計により殺害すると彼女を救い出した。

それから長い月日が過ぎ去った。

伊東も自身が静加を庇おうとしたことに誤りがあったと認めたその頃、とある女性が死亡し、その身許が調べられたことから、アキこと静加とミオの存在がクローズアップされる。
死亡した筈の女性が結婚し、子供まで為し生きていたと言うのである。
どうやら、何者かが戸籍を入替ったらしい。
もしや、これが静加ではないか……?

その子供・唯の運動会当日。
警察は遂に静加らしい人物を逮捕する事に成功する。
しかし、連行する際に唯に見つかり、母親を追った唯は路上に飛び出し事故に遭ってしまう。
だが、唯を庇った人物が居るらしく、唯自身は軽傷のようだ。
代わりに庇った人物は危険な状態にあった。

静加らしき人物の取り調べが始まる。
だが、その中で意外な事実が判明する。

静加と思われていたその人物はミオだったのだ。
ミオは南原のもとを連れ出された後、静加により育てられていた。
静加はミオに献身的に尽くすと、ミオに別人の戸籍を与え生活する術を残し、姿を消したらしい。

では、静加は今何処に?
もしも、今も静加がミオを陰ながら見守り続けていたとしたら……。

その予感は的中していた。
唯を庇った人物こそ、静加であった。
静加はそのまま息を引き取るのであった。

それが暴力を支配しようとした静加の最後の選択だったのである―――エンド。

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