ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
未知なるヒーロー誕生。乱歩賞受賞作
連続爆弾犯のアジトで見つかった、心を持たない男・鈴木一郎。
逮捕後、新たな爆弾の在処(ありか)を警察に告げた、この男は共犯者なのか。
男の精神鑑定を担当する医師・鷲谷真梨子は、彼の本性を探ろうとするが……。
そして、男が入院する病院に爆弾が仕掛けられた。
全選考委員が絶賛した超絶の江戸川乱歩賞受賞作。
(講談社公式HPより)
<感想>
第46回江戸川乱歩賞受賞作。
続編として『指し手の顔 脳男2』がある。
2013年2月に映画が公開予定。
・『指し手の顔 脳男2』(首藤瓜於著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・首藤瓜於先生『脳男』(講談社刊)映画化決定!!
物語のメインは鈴木一郎という人物の正体。
彼が何者であるかがこの物語のキモである。
其処が楽しめるかどうかで本作への評価が変わって来るだろう。
どことなく世界観が『羊たちの沈黙』に似ているのも気になる。
この点でも評価が変わって来そうです。
ちなみに映画版のキャストは鈴木一郎役に生田斗真さん。
鷲谷真梨子役に松雪泰子さん。
茶屋刑事役を江口洋介さんが演じる。
<ネタバレあらすじ>
愛宕市で連続爆破事件が発生。
刑事の茶屋は捜査の結果、サラリーマンの緑川が連続爆破事件の犯人であると突き止める。
早速、緑川のアジトに踏み込むが……そこでは緑川と争う男の姿があった。
思わぬ事態に緑川は逃走。
争っていた男・鈴木一郎を逮捕したところ、鈴木は次なる爆破事件を予告する。
茶屋は鈴木一郎も緑川の共犯だと考えるが、鈴木はあくまで否定する。
では、何故、予告できるのか?
しかも、鈴木一郎は偽名であった。
鈴木の正体に迫るべく、精神科医・鷲谷真梨子が招聘された。
鷲谷は鈴木一郎の鑑定を行う内に、彼が常人ではないことに気付く。
鈴木は「物事に一切、主観を差し挟まない」。
あるものをあるがままに捉える超感覚の持ち主だったのだ。
その能力により、鈴木は膨大な知識と力、卓越した推理力を備えていた。
やがて、鈴木一郎が入陶大威であると判明。
入陶大威は幼い頃に自閉症と診断されていた。
祖父・入陶倫行を火事で失い、以後は祖父の友人である氷室友賢に育てて貰っていたが……。
矢先、緑川が鈴木の入院先の病院を爆破しようと目論む。
鈴木はやはり緑川の共犯ではなかった。
むしろ、対立していたのだ。
鈴木は悪人を殺害することで存在意義を感じていた。
緑川は鈴木の標的の1人に過ぎなかった。
そして、鈴木が緑川の標的を予告することが出来たのは、鈴木が緑川の行動理念を正確に予測していたからであった。
緑川は「ヨハネの黙示録」に彼独自の解釈で従い犯行を繰り返していたのだ。
鈴木はこれを推理により見抜いていた。
院内に潜伏しているに違いない緑川を見抜けるのは鈴木だけだ。
茶屋は渋々、鈴木を駆り出し緑川を捕えることに成功する。
だが、鈴木はその隙に姿を消すのであった。
数日後、鷲谷の前に鈴木が現れる。
鈴木は自身の過去について語り始める。
自分というモノが無く、ただ其処にあった日々。
ある日、泥棒により祖父が死亡した。
それでも、何も出来なかった。
自我が存在しなかったからだ。
だが、鈴木はその事件以降、少しだけ変わった。
氷室友賢に引き取られた鈴木。
ある夜、またも泥棒に遭遇する。
しかも、その泥棒は祖父の仇であった。
鈴木は何故か泥棒を殺してしまう。
それ以来、鈴木は自分を手に入れたのだと言う。
鷲谷はそんな鈴木を否定してしまう。
結果、鈴木は鷲谷の前からも姿を消してしまうのだった―――エンド。
◆関連過去記事
・『指し手の顔 脳男2』(首藤瓜於著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・第56回受賞作『再会(再会のタイムカプセル改題)』ネタバレ書評(レビュー)はこちら。
『再会』(横関大著、講談社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・第56回江戸川乱歩賞受賞作『再会』(横関大著、講談社刊)がスペシャルドラマ化決定!!
・第57回江戸川乱歩賞決定!!
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