2012年06月17日

『下津山縁起』(米澤穂信著、文藝春秋社刊『別冊 文芸春秋 2012年7月号』)

『下津山縁起』(米澤穂信著、文藝春秋社刊『別冊 文芸春秋 2012年7月号』)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

遠江国のふたご山。上津山と下津山。
下津山を削り、平地にする計画が持ちあがるが
(文藝春秋社公式HPより)


<感想>

かなりの意欲作にして実験作。
すべてが伏線であり、すべてが物語である。
この作品の本質をネタバレするには、全文を引き写すしかない……そんな作品です。

なんであんな古い資料から始まるのか?
なぜ、あんな未来の表記で終わるのか?
この間で1つの壮大な意思が抹殺されていたとは……。
一方で、自然の強大さ、人間の矮小さをも表現しきった作品。
短編なのにスケールがデカ過ぎるよ。

「もう、とりあえず読めよ」としか言いようがない。
素直に読みましょう。

一点だけ気にかかる点があるとすれば「富士山や北岳など人類のつけた名称が彼らの間で通用しているのは何故か」という点くらいか。
別名があるが、便宜上、作品中ではこの名前で通したという理解でいいのかな。

さらに、「野生時代 2012年8月号」(角川書店刊)では米澤穂信先生の読切が掲載予定!!
「野生時代」は角川書店の発行。
角川で米澤先生と言えば―――あのシリーズ(「古典部」)かも?
こちらも要チェックや!!

<ネタバレあらすじ>

遠江国に上津山と下津山という双子の山がある。
下津山の方が僅かながらに上津山よりも標高が高いのが特徴であった。

過去、ある武士は下津山に陣取ったところ、弓矢を鼬の被害で損失し、大敗を被った。
彼は死の間際に「ここで生き抜くことが出来れば、あの山を崩すものを」と言い残した。

現在、徳島代議士は下津山を切り崩し宅地にするとの政策を訴えたところ、政敵を破り大勝した。
しかし、国政に出馬したのち、下津山開発が頓挫。
原因は無意味な開発が見直された為だったが、彼は地団太して悔しがったという。
彼の支持者の多くはこの結末に落涙した。

一方、ある研究者は人間に意思があるように器物にも意思があると主張した。
しかし、彼はそれ以外にもっと身近に高次の存在があると述べ、学会で異端視された。

未来、遂に下津山が崩された。
理由は良く分からないが、何かの開発の為らしい。
しかし、何の開発なのかは全く分からない。
きっと開発など関係ないのではないか。
下津山を崩したかったから崩した……そうなのだろう。

実験として、山と交信が持たれた。
対象は北岳である。
この実験は長い年月をかけ遂に成功した。

北岳はわれわれ人類の存在を認識していなかった。
北岳によれば他の山も同じような意思を持っているらしい。
さらに詳しく知りたいところではあったが、北岳との交信は途中で切れてしまった。

どうやら、われわれの交信方法に問題があったようである。
人にとっての一生が山にとっての一瞬以下なのである。
一度の交信に300年以上の時間が必要となるようだ。

とある博士が遂に確実な交信方法を見出した。
だが、それには長い長い年月が必要となる。
彼は自身の寿命が尽きそうなことを悟ると、次代の後継者に研究を委ねた。
しかし、結果は誰も目にすることは出来なかった。
なぜならば、確実な交信に成功したそのとき、人類は絶滅していたのである。

山々による裁判が行われていた。
裁判長は富士山。
検事は阿蘇山だ。
そして、被告は上津山である。
容疑は下津山殺害について。

阿蘇山は述べる。
「被告は自身の身長が被害者よりも低いことに腹を立て、これの殺害を目論見ました。殺害方法も凶悪です。自身が圧力をかけることで人間を不快にすることが出来ると知るや、その人間の感情を利用し下津山を殺害させたのです。身勝手かつ明らかな計画的犯行で同情の余地はありません」

これを受けた富士山は上津山に有罪判決を出した。
決め手は、北岳が提出した人間との交信記録であった。

だが、上津山の弁護団は、北岳の語る人間という存在を疑問視。
他に記録が存在しないことを盾に控訴を決めている―――エンド。

◆「米澤穂信先生」関連過去記事
「インシテミル」(文藝春秋社)ネタバレ書評(レビュー)

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【リカーシブル】
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【古典部シリーズ】
「氷菓」(角川書店)ネタバレ書評(レビュー)

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「クドリャフカの順番」(角川書店)ネタバレ書評(レビュー)

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「ふたりの距離の概算」(角川書店)ネタバレ書評(レビュー)

【小市民シリーズ】
「夏期限定トロピカルパフェ事件」(東京創元社)ネタバレ書評(レビュー)

【S&Rシリーズ】
『犬はどこだ』(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

【太刀洗シリーズ】
『さよなら妖精』(米澤穂信著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)

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「蝦蟇倉市事件2」(東京創元社)ネタバレ書評(レビュー)
(ナイフを失われた思い出の中に)

【その他】
探偵Xからの挑戦状!「怪盗Xからの挑戦状」(米澤穂信著)本放送(5月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「別冊 文藝春秋 2012年 07月号 [雑誌]」です!!
別冊 文藝春秋 2012年 07月号 [雑誌]





米澤先生が解説を手掛けられました。
2012年6月15日発売予定「時計館の殺人<新装改訂版>(上) (講談社文庫)」です!!
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◆米澤穂信先生の作品はこちら。


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