2012年07月02日

『毒 poison』(深谷忠記著、徳間書店刊)

『毒 poison』(深谷忠記著、徳間書店刊)ネタバレ書評(レビュー)です。

ネタバレあります、注意!!

<あらすじ>

東京郊外にある病院の脳神経外科病棟で、入院患者が殺された。死因は筋弛緩剤の投与。事件直前、院内で同じ薬のアンプルが盗まれていた。殺されたのは、妻には暴力を振るい、看護師にはわいせつ行為を働き、他の患者には暴言を吐くという問題人物で、周囲の誰にも殺害の動機はあった。事件を調べ始めた看護師の柳麻衣子がたどりついた真実とは? 本格推理の名手が読者に挑戦した衝撃作!
(徳間書店公式HPより)


<感想>

テーマはタイトル通り「毒」。
凶器として用いられた「毒」と、人が発し相手に害を為す「悪意=毒」のダブルミーニングと思われる。
この点はなかなかだと思う。
犯人の口より語られた「毒」についての考察も効果的。

だが、シナリオが人を選ぶかもしれない。
二転三転するのはいいのだけど、余り意味のないどんでん返しが多いのだ。
作中にて明らかに犯人ではないとされる人物(主人公も理解している)に多くの筆を割いているのは効果的ではないように思う。
特に多々配されたミスリードが伏線になっているかと言うとそうでもないし……。

作中で取り上げられた社会問題である「虐待」についても、表面上に留まり訴求力は弱かったように思われる。
問題提起にまで踏み込めているとは感じられず、本作を飾る程度か。

推理部分では、犯人の決め手となるロジックについてはなかなか良かったと思われる。
其処に気付かなかったので驚かされた。

全体的に悪くはないが、特に読むべき作品とは言い難いかも。
ちなみに、ネタバレあらすじでは不要の混乱を避ける為に細かなミスリード部分を排し、かなり改変しているので注意!!

<ネタバレあらすじ>

・プロローグ

あの男は最低だ―――殺してやる。
男の息子はそう決意を固めていた。
あの男は母にあんな暴言を吐いたのだから……。

・1章

看護師の柳麻衣子は憂鬱だった。
担当患者の1人に顔を合わせたくない人物が居るのだ。
その人物の名は松永。

松永は、看護師にセクハラし、リハビリ中の患者やその家族には希望を奪うような暴言を吐くのだ。
彼の暴言により、何人が泣かされたか分からない。
それどころか、彼の暴言により死者すら出ていたほどだ。
松永と同じ病棟の患者で半身にマヒが残る池村なども、松永の心無い言葉に傷つけられた被害者の1人だ。
池村は松永の言葉にショックを受けている様子だったが……。
それだけではない、松永は自身の妻・綾乃に暴力を奮っていた。
麻衣子としては関わり合いになりたくない患者だった。

麻衣子は嫌なことは忘れようと楽しい事だけを思い浮かべた。
同じ病院に勤める医師であり、婚約者である真之である。
しかし、真之も松永が入院してから何処か精彩を欠いていた。

矢先、劇薬のマスキュロックが盗難される事件が起こる。
その直後、松永が殺害されてしまう。

・2章

松永の死因はマスキュロックによるものだった。

事件を捜査した警察は盗難されたマスキュロックが殺害に使用されたと考え、盗み出すことが可能だった病院関係者を疑う。
容疑がかかったのは真之だった。
真之は松永の死の直前に、彼の病室を訪ねていたのだ。

実は松永には肇という1人息子が居た。
だが、肇は学生時代に自殺していた。
なんでも、母・綾乃を虐待する松永への抗議の自殺だったらしい。

そして、肇と真之は同級生だった。
真之は肇から松永殺害の計画を持ちかけられ、止めるよう説得した。
真之の正しさを認め、殺意の持って行き場所を失った肇は自分が綾乃の枷となっていると考えた。
そこで抗議もかねた自殺を行うことで、綾乃を解放しようとしたのだ。
しかし、綾乃はそんな肇の気持ちを知らず、ずっと松永の虐待に耐えていたのだった。
真之は松永に肇の自殺の真相を伝え、抗議に赴いていたのだ。

こうして、容疑者とされた真之。
麻衣子は彼を救うべく調査を始める。

と、今度は一時帰宅を許された池村が死亡してしまう。
さらに驚くべきことに、池村の妻・通子、その息子・聖志によれば、池村が松永を殺害したらしい。
池村がワープロソフトで書いたと思われる遺書が見つかったのだ。

遺書によれば「松永は毒虫だ。奴は害悪を撒き散らす。自分は前々から自殺を考えていた。そこで奴を道連れに自殺することにした。自分は過去に製薬会社に勤めており、マスキュロックと硝酸ストリキニーネをこんな時の為にくすねておいた。薬品はともに自宅の金庫に保管してある。だが、今の自分は入院中で動けない。そこで、中身について教えず聖志に持って来させた。その後、隙を見て松永に投薬した。ただ、自分が投薬する前に何者かが来訪していたようだ。その人物に容疑がかかるのは本意ではない。そこで、こうして自身の行いを遺書として残すことにした。通子、聖志が判断すればこれを公開してくれ」となっていた。

遺書によれば、松永殺害は池村の犯行だったのだ。
こうして、真之の疑惑は晴れた。
事件は解決したかに見えたが……。

保険の調査員・畑中が麻衣子の前に現れたことで事態は急変する。
池村に保険金がかけられていたというのだ。
夫婦で互いに3000万円の生命保険に加入していたそうだ。
しかも、最近になって通子が明るくなったとも。
畑中によれば、池村は松永のように表には出さないが、同種の人間で、通子に虐待を繰り返していたらしい。
通子には池村殺害の動機があった。
池村の遺書も、本人から犯行を聞いた通子の偽造ではないかと疑う畑中だが……。

結局、証拠はない。
畑中は通子の犯行を立証することが出来ず、保険金は支払われることとなった。
麻衣子はかすかな違和感を憶えつつ、終わったこととして事件を忘れることに決める。

矢先、真之から「両親に会って欲しい」と告げられた麻衣子は遂に挨拶に赴く。
真之の父は息子の行動を大いに喜ぶが、実は理由があった。
過去、真之の父は真之のように看護師と恋に落ちた。
だが、看護師の親友で良家の娘だった今の妻と結婚したのだ。
自分と違い初志を貫徹した真之を褒め称えたる父。
意外な真之の父の告白に驚く麻衣子だが、相手の看護師の名を聞き更に驚くことに。
看護師は松永の妻・綾乃であった。
松永と綾乃が結婚することになった責任の一端が自身にあると語った真之の父は、その分も真之と麻衣子に幸せになって欲しいと望むのであった。

この話を聞いた麻衣子は帰り道に池村の本性について真之に伝える。
これを聞いた真之は激しく動揺し「犯人は肇だ」と口にする。

数日後、麻衣子と真之に呼び出された聖志の姿があった。
池村が自殺ではなく、殺害されたと考えれば遺書も偽装である。
そして、あの遺書が池村の手によるもので無ければ、犯人は聖志しかいない。
何故なら、遺書には「それと知らぬ聖志が池村に頼まれ毒物を運んだ」ことになっていた。
もしも内容が嘘で、聖志以外の人物による偽装ならば、聖志が「池村に頼まれ毒物を運んだ覚えはない」と証言する筈だからだ。

黙して語ろうとしない聖志に、真之は肇について語り出す。
聖志と肇、2人は共に同じ境遇の子供であった。
そして、行きついた結論もまた同じであったのだ。

聖志は思い出す。
母を苦しめた憎むべき父・池村の言葉を。
あの日、池村は聖志のことを出来損ないと呼んだのだ。
面と向かってならばまだいい、だが、その言葉は聖志にではなく通子を責める為に向けられた。
通子の小さくなった背中を聖志は見た。
その時からである池村を殺そうと機会を窺っていたのは。

チャンスは意外と早く訪れた。
池村は病気を患い入院した。
そこで聖志はもう1人の池村の姿を目にした、松永である。
池村自身も松永には酷い目に遭っていた。
さらに、通子までも被害に遭ったことで聖志は殺意を固めた。
特に抵抗は無かった。
そこへ、マスキュロック盗難事件が起こった。
まさに天佑であった。

池村と松永―――あいつらは毒虫だ。
いや、毒虫は身を守る為に毒を出す。
あいつらは他者を傷つける為にのみ毒を出すのだ。
生かしておく必要があるだろうか?

こうして、池村殺害のシナリオが組み上げられた。
まず、マスキュロックを用い松永を殺害することで、先の盗難事件との関連性に目を向けさせ容疑を逃れた。
その上で池村を帰宅させ、これを自殺に偽装し殺害。
偽の遺書で松永殺害を認めさせた。
この際に、母を巻き込まないよう遺書の運び役には自分を選んだ。
同時に自身の指紋が着いたとしても、誤魔化せるようにだ。

聖志はすべてが自身の犯行であると認める。
事実を確認した麻衣子と真之だったが、彼を見逃すことに。
これに「生きろ」とのメッセージを感じた聖志は密かに携帯していた自殺用の毒物を捨てるのだった―――エンド。

「超再現!ミステリー」第9回「“病院内の殺人SP”山村紅葉が抜群推理…夫殺したのは誰?美人看護師の完全犯罪か?深谷忠記著の本格推理小説“毒”の犯人を推理!」(7月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)

「毒―poison (徳間文庫)」です!!
毒―poison (徳間文庫)





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