2012年06月27日

2012年6月21日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)

待望の2巻発売も迫る阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)。
ネット上で話題となっており、1巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。

というわけで、2012年6月21日に掲載された作品のあらすじをまとめておきます。

これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。

では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。

◆2012年6月21日「週刊少年チャンピオン」掲載

父親の仕事の都合で、関西から関東へと転校してきた少女・藍夏。
内向的な彼女はなんとか新生活に馴染もうと緊張していた。
恐々と関西弁で自己紹介を始める藍夏。

関西からの転校生であると聞いたクラスメートたちは大盛り上がり。
「大阪なんだ〜〜〜」
「ボケは?」
「ツッコミは?」
と、次々と藍夏に声をかけてくる。
無事に転校デビューに成功したかに見える藍夏だったが……。

「ねぇねぇ、ボケてボケて」
「あれ、あんまり面白くないね」
「普通〜〜〜」

関西とはいえ、特に大阪出身ではない藍夏。
内向的な性格もあり、ボケもツッコミも分からない。
面白いことを期待されるが、応えられよう筈もない。
それでも、クラスメートは藍夏に「面白いこと」を強要し続ける。
藍夏のパーソナリティは否定され続けた。
勝手に期待し、勝手に裏切られたクラスメートは藍夏を憎悪。
そのうち、藍夏はクラスで孤立することに。

クラスメートにカラオケに行こうと声をかけても、無視される。
3人1組を作れば、ハブられる。
休み時間中は、孤独に耐えかね机に突っ伏す日々。
しかし、それさえも「起きてるんだろ〜〜〜」とネタにされる。

藍夏はどんどん追い詰められていった。
関西時代の友人に連絡を取ることが多くなった。
しかし、辛さを家族には言えない。
そんな藍夏を母がこっそりと見ていた……。

もう限界が近付いていた。
破局はすぐそこまで迫っていた。

そんなある日、母が藍夏に声をかける。
「ごめんね、藍夏ちゃん。また、転校だって。戻ることになったのよ」
父の仕事の都合で関西に戻るらしい。

ここから逃げられる!!
友達のもとへ戻れる!!

嬉しさのあまり、どう感情を表現していいのか分からない藍夏。
「よく頑張ったわね」
母の言葉に涙が溢れ出すのだった。

此処での暮らしは彼女にあまりに大きな苦痛を強いていたのだ―――エンド。

<感想>

2012年6月21日掲載のものです。

前回とは打って変わって「心にチクチク来る」作品。
このギャップこそがまさに「空が灰色だから」なのでしょう。

人は相手に対して勝手なイメージを持つことがあります。

強面の人には「怒っている」に違いない。
柔和そうな人には「親切」に違いない。
太った人には「よく食べる」に違いない。

これらは人を判断する役には立ちますが、時には相手を傷付ける凶器になることもあります。

太っている人はダイエット中かもしれないのに、大盛りサービスされたりとか。
強面の人は喜んでいるのに、怒っていると思われて遠慮されたり。

他にも、柔和そうな人が刺々しい言葉を口にしたところを見ると「意外」に思ったことはありませんか?
これも勝手なイメージの結論です。

そして、イメージは押し付けられるものでもあります。

男には「常に強くあれ」。
女には「おしとやかであれ」。
東京出身者は「都会派でオシャレ」。
大阪出身者は「面白くなければならない」。

今回の藍夏は、この「面白くなければならない」イメージを押し付けられ、自分の実像との差に苦しみました。
しかも、演じることすら出来ず、迫害を受けることに。
悲劇です。
このまま進めば、間違いなく押し潰されていたでしょう。
ラストで救われて読者もホッとした筈です。
藍夏の母は娘の窮地に気付き、それとなく夫を動かしたのでしょうか。

この転校生のイメージ問題、最近だと小田扉先生「団地ともお」でも取り上げられました。
あちらも、イメージと実像とのギャップに苦しむ転校生がテーマ。
自分に正直に生きようと決めた転校生に、ちょっと「ともお」らしからぬ意外なオチが待ち受けていました。
やはり、この問題は根深いのかもしれませんね。
本作と読み比べてみると面白いかもしれません。
各作品の特徴が出ています。

そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。

この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。

従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。

『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)

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