ネット上で話題となっており、1巻は今も順調に版を重ねているとの情報も流れています。
実際、読んでみると不思議な魅力を持つ本作。
面白いものを読んだら語らずにはいられない管理人にとって、十分に語るべき対象となる作品であります。
というわけで、2012年6月28日に掲載された作品のあらすじをまとめておきます。
これを読んで興味を持たれた方は、是非「週刊少年チャンピオン」本誌連載とコミックスにもチャレンジして貰えればオススメした甲斐があるかもしれません。
直に本作を目にして貰えればその不思議な魅力をご理解頂けるかと思います。
では、本作の魅力を出来る限りお伝えするべくネタバレ批評(レビュー)です。
◆2012年6月28日「週刊少年チャンピオン」掲載
恐怖趣味で奇妙奇天烈な絵を描く女子学生・来生。
彼女の絵は観る者を何処か不安にさせるものだった。
やがて、彼女はそんな趣味により周囲と一線を画していく。
そして、来生自身もそんな自分を愛し孤高を気取っていた。
そんなある日、同じクラスの女子学生・佐野とその仲間2人が声をかけて来る。
来生と自分たちが同好の士だと言うのだ。
どうやら、彼女たちも独自の世界観の持ち主であると自負しているらしい。
そして、自分たちなら来生を理解できると主張する。
(また、ぬるい奴が来た……)
内心、小馬鹿にしながら他者と違うことを知らしめる良いチャンスと付き合うことにした来生。
まずは小手試しとばかりに、ホラー映画へ。
悲鳴が上がる中、来生は平然と受け流す。
一方、佐野はどこか落ち着いており、他の2人は怯えている様子だ。
映画を終え、小休憩する来生たち。
話題は先程の映画の内容に。
来生は「あんなの作り物に過ぎない」と全否定、自身の抱くホラー感を事細かく語る。
「解放なのよ、解放。すべてはうちなるモノの解放なの!!」
衆人環視の中、熱く語る来生の手にはこれまた奇妙な怪物が描かれていた。
その場で絵にまでしたためた来生に、佐野以外の2人は困惑。
最終的に「あんたとは感性が違う」と言い捨て、その場を去ってしまう。
(やっぱり、私のセンスにはついて来れないよね)
満足する来生の目の前にはどこか恍惚とした表情の佐野が居た。
「正直、彼女たちではダメだと思ってた……そうなのよ、やっぱりそうなの!!来生さん、あなたとなら分かり合えると思ってた!!」
真の同士を見つけたとばかりに喜びに打ち震える佐野は、来生に秘密を知って欲しいと家へ招く。
些か展開に面食らったものの、相手を舐めてかかっている来生は佐野の家へ。
そこは、異臭と虫が這い回る歪な世界だった……。
そして、佐野もまたこれまでと違う空気を醸し出していく。
佐野に少しずつ威圧されていく来生。
そんな来生の変化に気付かぬ佐野は「この世界にはスパイが居るわ。彼らは私たちを狙っている。でも、私たちはこうして出会った。あなたと私は仲間なの」と心底嬉しそうに語る。
部屋の明かりを落とした佐野は、そのまま一糸纏わぬ姿になると奇妙なペイントを始める。
まずは頬、次いで額、そして胸から腹へ……全身へ。
いつの間にやら、髪の毛も無くなっている。
佐野の髪の毛はカツラだったのだ。
全身に目のペイントを施した佐野の姿を見た来生は真の恐怖を知り震え出す。
今まで来生が考えていた恐怖などはこれに比べればどうということは無かった……。
悲鳴を上げ、逃げ出す来生。
(早く、早く、早く、逃げなきゃ……。
助けて……お巡りさん、お巡りさん、お巡りさん)
思考がもつれる。
(助けて下さい、私が馬鹿でした。
もうしません。もうしません。もうしません)
涙を流し、地面を転がり、這うように逃げる来生。
「なんで?なんで逃げるの?」
全身ペイントまみれのまま、必死に逃げた来生を追う佐野。
受け容れられなかった驚きか、裏切られた痛みか、彼女も泣きじゃくっていた―――エンド。
<感想>
2012年6月21日掲載のものです。
他者と一線を画す為のファッション(本人は意識していないと思われる)だった筈が、本物に出会ってしまったことで大火傷する物語でした。
これは、来生、佐野ともに痛い出来事となりましたね。
「人とは違う自分」の立場に酔っていた来生にとっては一生もののトラウマとなりました。
佐野にとってもやっと出会えた理解者(と思える人物)に拒否されるトラウマものの結末に。
どちらにとっても利益なし。
この後のことを考えると寒気がします。
来生は逃げ切れたのか?だとしたら、佐野はどうなるのか?
佐野は追い付いたのか?だとしたら、来生はどうなるのか?
どうにも二者択一のような気がするのも怖いところ。
仮に、来生は逃げ切った上で、相手の趣味を認め佐野と距離を置く……ことが果してベストなのかも分からない。
ひたすらに「痛い」物語でした。
そんな「空が灰色だから」は「週刊少年チャンピオン」に連載中の漫画。
読むと心がざわついて何処となく落ち着かなくなる作風。
この間から何となく感じていたのですが、本作は過去に「週刊少年チャンピオン」にて連載されていた倉島圭先生「24のひとみ」にテイストが似ていますね。
従来の枠に囚われない世界観は両者の特徴と言えるでしょう。
その味は、古典部シリーズ『氷菓』のアニメ化で話題の米澤穂信先生の著作『儚い羊たちの祝宴』に通じるモノがありそうです。
・『儚い羊たちの祝宴』(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
・阿部共実先生「空が灰色だから」(秋田書房)の1巻が発売!!不思議な魅力を湛えた本作に注目すべし!!&今週号ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月15、22日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年3月29日、4月5日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月12日、4月19日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年4月26日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月10日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月17日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月24日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年5月31日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月7日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月14日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
・2012年6月21日の「空が灰色だから」ネタバレ批評(レビュー)
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