ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
月曜日、四人の男たちに各人各様に降りかかった災難。男たちは危機を回避すべく、それぞれに大金を得ようと、にわか仕込みの罠をめぐらす。複数の詐欺が輪舞する一週間が幕を下ろすとき、明らかになる鮮やかな結末とは? 洒落たユーモアに包まれた、クライム・コメディの新たなる収穫。「このミス」大賞作家の本領が如何なく発揮された、現時点における最高傑作。
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
船越、大牟田、江口、妹尾4人の男たちによる1週間の騒動を描いた作品です。
とはいえ、4人が行うのは詐欺なので、本来なら犯罪なのですが、その語り口の巧妙さとアノ結末とで重さを感じさせません。
まさに、騒動と呼ぶのが適している感じ。
物語の構成は、月曜日に4人が詐欺を行わなければならなくなった理由が語られます。
あとは、1人ずつ火曜日から金曜日が描かれ、その後の推移について知ることが出来ます。
最終的に土、日で騒動の顛末と、裏で動いていた意志について明かされるのですがこれがなかなか面白かった。
ただ、ラストについてはある程度予測がつくものなので、驚きは少ないかも。
本作の真価はその読み易さにあるのではないでしょうか。
全体的になかなかの作品だとは思うのですが、どちらかといえば長編よりは中編向きな気もします。
長編にするのならば、もう1つ何か欲しかったかな。
<ネタバレあらすじ>
とある月曜日、4人の男たちそれぞれに大金が必要となる事態が降りかかった。
こうして、船越、大牟田、江口、妹尾の4人は、それぞれが大金を手に入れるべく策を巡らすことに。
とはいえ、限られた時間の中で大金を手に入れるとなると選択肢は限られていた。
結局、全く図っていないのにも関わらず、彼らが選んだのは同じ方法―――つまり、詐欺であった。
火曜日、水曜日、木曜日、金曜日とそれぞれの計画が動いて行く。
遂に土曜日、日曜日を経て計画が実を結ぶとき、彼らはそれぞれに手痛いしっぺ返しを喰らうのであった。
誰1人成功せず、少しずつダメージを負ったのだ。
その頃、実はこの結末を演出した者たちが一堂に会していた。
彼女たち、その正体は―――船越、大牟田、江口、妹尾の縁者であった。
妻であり、恋人である者たち、彼女たちは船越たちの行為に気付き慄然とした。
実は、船越たちはそれと知らぬうちに自分で自分たちを詐欺の標的にしていたのである。
4人はそれぞれ別の人物をターゲットとしていたが、円環を描くように順番に詐欺の標的にしていたのだ。
それに気付いた彼女たちは「誰も犯罪者にしない方法」を考えた。
そこで、少しずつ痛み分けにし、事件を終わらせることにしたのだ。
結果は見事に成功。
こうして、人知れず事件は終わりを迎えたのであった―――エンド。
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