<ナビゲーションパート・オープニング>
『月刊ホワイダニット』編集長の倉敷(中井貴一)が編集長室で食べたオムライスにより毒殺された。
幽霊となった倉敷は自身の死体を前に淡々としている。
倉敷が語る容疑者は不倫相手と彼の部下の2人、このうちのどちらかが彼を殺したのだ。
刑事が到着し、本格的な捜査開始。
直後、倉敷のものとされる遺書が発見される。
もちろん、倉敷に覚えはない。
そうこうしているうちに、掃除婦の三沢さんと妻までもが現場に駆けつける。
誰も彼もが怪しいが……。
妻は遺書を倉敷の手によるものと認め、オムライスを主人の好物だと述べる。
だが、妻は料理を作ることなどしない。
さらに、嫉妬深い性格であった。
もしも、倉敷の浮気の事実を知っていたならば……。
そんな倉敷の目の前で、妻は愛人とにこやかに談笑する。
愕然とする倉敷。
すると、何かに気付いたかのように、妻がツカツカと倉敷の幽霊のもとへ歩み寄る。
そのまま、倉敷の居た場所に平手打ちを喰らわす。
間一髪、しゃがみ込んで逃れた倉敷は一言。
「このように妻とは、時に鋭いものなのです!!」
<本編『甘いはずなのに』>
中川伸彦(反町隆史)の娘・宏子(信太真妃)が石油ストーブの事故で一酸化炭素中毒死した。
その日、伸彦は宏子を家に置き、コンビニからファクスを送るべく外出した。
ところが、そこでコンビニ強盗に遭遇。
伸彦は気絶させられてしまう。
伸彦の再婚相手・尚美(加藤あい)が家を訪ねたときには、伸彦の娘・宏子は死亡していた。
1年後、伸彦と尚美は再婚し沖縄へ新婚旅行へ出かけた。
機中で指輪を交わす2人。
隣席に座った初老の藤村重雄(北見敏之)と照恵(大塚良重)夫妻に祝福される伸彦だが、その顔は晴れなかった。
伸彦と尚美は沖縄を楽しむ。
ホテルへと向かった2人はそこで、藤村夫妻と再会。
藤村は一緒に呑まないかと誘う。
ホテルの部屋に入った伸彦たち。
尚美は宏子の写真を持ち出し、3人で来たかったと呟く。
ラウンジで食事を済ませる2人。
尚美は藤村夫妻のように伸彦と末永く共に居たいと述べる。
どこか戸惑いの表情を浮かべる伸彦だが……。
その夜、ホテルの部屋へ戻った伸彦。
酔っぱらったと口にする尚美は一足先にベッドへ横になってしまう。
そんな尚美の姿を目にした伸彦の脳裏に、在りし日の宏子と尚美の様子が思い浮かぶ。
宏子はいつも尚美を避けていた。
それに対し「あの娘の母親になんかなれない」そう、尚美は言ったのだ。
「どうしたの?」尋ねる尚美。
「君が宏子を殺したのか?」伸彦は問う。
宏子の死亡当日―――寒がる宏子だったが、エアコンが故障し暖が取れない。
困った伸彦はガスストーブを家に連結している車庫から運び出し、火を入れた。
そこへ、会社の部下である後藤から電話が入った。
伸彦が持ち帰った仕事上の書類が急に必要になったらしい。
「じゃあ、届けるよ」
バイクで行けば30分である。
ストーブの灯油が切れかかっていることを確認し火を消すと、車庫に戻りバイクのエンジンをかけた。
そこへ再度、後藤から電話が。
原本は後でもいいので、ファクスで送って欲しいとのことだった。
こうして、伸彦は近くのコンビニでファクスを使うべく徒歩で向かった。
そこで、コンビニ強盗に遭遇。
巻き込まれた伸彦は怪我を負い、意識を失う。
次に気付いた時には病院のベッドの上であった。
次いで尚美から連絡が入る。
痛む身体を引き摺って慌てて駆け付けたが、既に宏子は死亡していた。
尚美によれば、会社に行く前に気にかかって寄ってみたところ、既に一酸化炭素中毒になっていたらしい。
そのときには手遅れだったそうだ。
ところが、近所の主婦の証言によれば、宏子の死亡当日に尚美が灯油を運び込んでいたらしい。
もしや、尚美が宏子を殺害したのではないか―――伸彦の疑惑は日を追うにつれ大きくなった。
宏子の生前、尚美は「宏子が居る限り、伸彦とは結婚できない」と主張していた……。
尚美の首に手をかけ、「君が宏子を殺したのか」と繰り返し尋ねる伸彦。
尚美は「殺して」と応じるが……。
「やっぱり、そうなんだな」
伸彦は尚美の首にかけた手に力を加え……。
伸彦は旅行に持参した大きめのアタッシュケースを凝視していた。
其処には尚美の姿はない。
藤村重雄が約束を果たすべく部屋を訪ねて来た。
酒を酌み交わす伸彦と重雄。
ふと、重雄は「妻を殺したいか」と伸彦に問う。
過去、重雄は息子を失っていた。
重雄は息子と2人で散歩していた際、踏切を挟んで照恵と出会った。
照恵が挙げた手に釣られるように、息子は重雄の静止を振り切り線路内に侵入し……撥ねられた。
何故、手を挙げ息子を呼んだのか―――重雄は照恵を憎んだと言う。
「でも、それは誤解だったんです。
妻は息子を呼んだのではなく、止めていたんです。
寧ろ、責められるべきは息子の手を掴んでいなかった私でした」
だが、照恵は重雄をまったく責めなかった。
「誤解と言うのは相手だけを考えていては解けないものですよ」
そう言い置いて砂浜へと向かう重雄。
残された伸彦はあの日を振り返る。
あの日、伸彦はバイクにエンジンをかけていた。
だが、コンビニからファクスを送るべく徒歩に切り替え、家を出た。
あのバイクはどうなっていたのか?
伸彦は砂浜へと駆け出す。
「やはり、お見えになりましたか」
そこには藤村夫妻と共に尚美が居た。
前日の夜、伸彦は尚美の首にかけた手に力を加え……止めた。
伸彦には尚美を殺すことは出来なかったのである。
「甘いはずだったのに……ね」
尚美は2人の関係を終わりにすると伝えると、伸彦の部屋を去っていたのだ。
「何故、教えてくれなかった?宏子を死なせたのは俺だったんだろ」
藤村夫妻の隣で憔悴した様子の尚美に伸彦は訴える。
朝方、ホテルの裏で倒れている尚美を藤村夫妻が見つけ、保護していたらしい。
藤村は、機内で同席したときから伸彦たちを気にかけ見守っていたそうだ。
藤村夫妻にとって、伸彦たちは自分たちと同じ匂いがしたのだ。
あの日、中川家を訪ねた尚美はガスの匂いに驚いた。
車庫のバイクから排ガスが屋内へ流れ込んでいたのだ。
そのとき、既に宏子は死んでいた。
救急車を呼んだ後、尚美は何が原因で宏子が死亡したか気付き愕然とした。
宏子は伸彦の過失で死亡したのだ。
そこで、伸彦の過失を隠すべく、尚美は灯油を注ぎ足しストーブの事故に偽装したのだ。
尚美の危惧は当たり、ストーブが原因とされた後も伸彦は自分を責め続けた。
もしも、バイクが原因だと分かれば苦しみは比ではなかっただろう。
それこそが、尚美が伸彦に真相を隠した理由であった。
「君を苦しめてしまった。もう、僕は一緒に居られない」
伸彦は尚美に離婚を申し込む。
「幸せになれなくても苦しみを分かち合うことは出来る。
奥さんはあなたの為なら死んでも構わないと命を懸けたんですよ。
御嬢さんを亡くしたのは確かに辛い、だが、あなたはもっと大事なモノを手に入れたのはないですか?」
重雄の熱い説得が、伸彦の胸に響く。
これを聞いた伸彦はそっと尚美の手を取る。
2人は改めて指輪を交わし合うのだった―――『甘いはずなのに』エンド。
<ナビゲーションパート・エンディング>
「羨ましい限りですね」
開いていた『甘いはずなのに』を手に倉敷が呟く。
そして、倉敷の事件に更なる登場人物が!!
「そんな中、頼れる人物が現れました。殺人事件のエキスパートミステリー作家です」―――6話『シャレードがいっぱい』に続く。
<感想>
原作は『怪しい人びと』収録の短編『甘いはずなのに』。
過去にネタバレ書評(レビュー)していますね。
・『怪しい人びと』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
では、感想を。
ラストの追加以外は原作に忠実でしたね。
オリジナル部分も含めて、かなり良かった。
ただ、ラストの重雄の台詞に些か引っ掛かりを覚えた。
「御嬢さんを亡くしたのは確かに辛い、だが、あなたはもっと大事なモノを手に入れたのはないですか?」
「もっと大事なモノ」は無いんじゃないかなぁ。
せめて「同じくらい大事なモノ」にしておけばいいと思うんだけど。
第一、伸彦は前妻を亡くしているから、一度、その「もっと大事なモノ」を失っているワケだし。
他はともかく、このテーマで家族に序列をつけるのはどうかと思うから、あそこは「同じくらい大事なモノ」にして欲しかった。
以上、個人的な感想。
そして、ナビパート。
『甘いはずなのに』について、「羨ましいですね」はないと思うのだが……。
確かに夫婦愛がテーマではあるが、それだけではないのが『甘いはずなのに』なのだが……。
そして、今回はミステリー作家が登場。
ただ、「殺人事件のエキスパート」というのがもう完全にフリになってるな。
彼もまた、妻やその他の容疑者のように怪しい行動を取りそう。
東野先生の著作では、「ミステリ作家」が「殺人事件のプロなんてとんでもない」が共通のスタンスだし。
「フィクションとノンフィクションとは別である」とは至言です。
どうにも、ナビパートが不安かなぁ。
パターン化することに異論はないが、その後の展開に繋がるとは思えない。
この調子で登場人物を増やすだけ増やして、「全員犯人」か「倉敷自身が覚えていないが自殺」でお茶を濁しそうな気配だなぁ……。
脱力系のオチにしかならないような……。
果たして、今後のナビパートが如何に展開するかも注目です!!
そんな次回のドラマ化は『シャレードがいっぱい』。
ただし、次回放送は1週休みの8月16日。
こちらは『あの頃の誰か』収録の短編です。
「A」と「掌」、2つの「シャレード(ある1つの事柄が別の事柄を指し示すこと)」の謎を解き明かす。
オードリー・ヘプバーンの名作映画「シャレード」をモチーフにしたと思われる時代を反映した作品です。
・『あの頃の誰か』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
今後、ドラマ化される他の作品についてもネタバレ書評(レビュー)ありますね。
興味のある方はどうぞ!!
・『犯人のいない殺人の夜』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『怪しい人びと』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『あの頃の誰か』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
◆「東野圭吾ミステリーズ」これまでの放送分ネタバレ批評(レビュー)はこちら。
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第1話「さよならコーチ〜罠(ワナ)」(7月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第2話「犯人のいない殺人の夜〜欺(アザムク) 完全犯罪殺人!予測不能の衝撃ラスト」(7月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第3話「エンドレス・ナイト〜哀(アイ) 哀しみのラスト…夫の死の謎に迫る女」(7月19日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・木曜劇場「東野圭吾ミステリーズ」第4話「レイコと玲子〜心(ココロ) 容疑者は多重人格少女!一体どちらが本物か」(7月26日放送)ネタバレ批評(レビュー)
◆関連過去記事
【東野圭吾先生原作ドラマ関連】
・金曜プレステージ「東野圭吾3週連続スペシャル 11文字の殺人 あの日恋人はなぜ殺されたのか?無人島より殺意を込めて…11文字に込められた悲しき殺意!クルーズツアーで何が起きたのか?」(6月10日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「東野圭吾・3週連続スペシャル第二弾!“ブルータスの心臓” 完全犯罪殺人リレー バトンは死体!大阪〜名古屋〜東京をつなぐトリックと殺意!悪女に翻弄されるエリート研究者の運命は!?」(6月17日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ「東野圭吾・3週連続スペシャル第三弾!“回廊亭殺人事件” 最愛の恋人を殺され復讐の鬼と化した女…整形で顔を変え巨額遺産をめぐり欲望渦巻く一族に潜入!愛を奪った犯人は誰なのか?」(6月24日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・金曜プレステージ 東野圭吾スペシャル 探偵倶楽部「大ヒット原作ドラマ化!名探偵最強コンビ誕生!大物社長突然の失踪に隠されたセレブ一族の醜い骨肉の争い…消える死体…驚愕密室トリックを暴け!」(10月22日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・「流星の絆」(TBS系、2008年)
・土曜ドラマスペシャル「使命と魂のリミット(前編) 病院に届く謎の脅迫状…犯人の狙いは?」(11月5日放送)ネタバレ批評(レビュー)
・土曜ドラマスペシャル「使命と魂のリミット(後編) 極限状況の大手術!結末に待つものは?」(11月12日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【東野圭吾先生著作ネタバレ書評(レビュー)】
・「探偵倶楽部」(東野圭吾著、角川書店刊)
・「白夜行」(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「幻夜」(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「殺意取扱説明書(毒笑小説より)」(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「夜明けの街で」(東野圭吾著、角川書店刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「11文字の殺人」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「ブルータスの心臓」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「回廊亭殺人事件」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「ゲームの名は誘拐」(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『秘密』(東野圭吾著、文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『犯人のいない殺人の夜』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『マスカレード・ホテル』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『使命と魂のリミット』(東野圭吾著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『分身』(東野圭吾著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『プラチナデータ』(東野圭吾著、幻冬舎刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『怪しい人びと』(東野圭吾著、光文社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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・東野圭吾先生『○笑小説』シリーズから3本の短編が実写ドラマ化!!
「浪花少年探偵団―浪花の熱血先生と教え子探偵団の事件簿 (サスペリアミステリーコミックス―東野圭吾ミステリーシリーズ)」です!!
浪花少年探偵団―浪花の熱血先生と教え子探偵団の事件簿 (サスペリアミステリーコミックス―東野圭吾ミステリーシリーズ)
浪花少年探偵団―浪花の熱血先生と教え子探偵団の事件簿 (サスペリアミステリーコミックス―東野圭吾ミステリーシリーズ)
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