ネタバレあります、注意!!
<感想>
2011年11月から始まった『リカーシブル』も遂に最終話。
う〜〜〜ん正直、急な最終話との印象。
まだまだ続きそうだったのに。
これまででも話の山場がイマイチ見えないところではありますが、数々の謎に決着はつくのか?
では、最終話を読んでみましょう。
……読書中……
完全にしてやられました!!
まさか、こう来るとは……。
確かに全部が伏線になってる!!
そして、リンカの正体がアレとは……完全に脱帽!!
奇しくも何度か書いていた通り「リンカ」の名前に「転生(リーンカーネーション)」の意味があったのだろうか。
しかも、ファンタジーな物語と理解していたのですが、実に現実的な物語だったんですねぇ。
ラストのアレがあるところも、流石。
とはいえ、些か急展開だったことも否めないなぁ。
あと1話はあっても良かったような気がする。
特にハルカの今後については物凄く気になるし。
たぶん、単行本化されるに際して書き下ろしで追加があると思うので其処に注目か。
予想では、ハルカとサトル共に救いのある追加が来ると思うんだけど。
それと、リンカ関係か。
ちなみに、タマナヒメと街の人間の利害は完全には一致していないような気がする。
「水野報告」が最たるものだし。
タマナヒメと街の人間、どちらが主でどちらが従なんだろう。
ここらはどうなんだろうなぁ……。
というワケでそこらも単行本化の際により詳しく書き下ろされることを期待しつつ、『リカーシブル』なかなか面白かったとまとめたいと思います。
米澤先生、連載お疲れ様でした!!
書き下ろしの追加部分と共に次回作も期待しております!!
<あらすじネタバレ>
ハルカにはすべてが見えていた。
サトルが消えた理由、それは母がサトルを街の人間に引き渡したからだ。
おそらく母は、この町での住居と仕事を条件に取引したのだろう。
では、何故、サトルがそんなに重要視されるのか?
サトルがタマナヒメの生まれ変わりだから……?
違う!!
サトルは「本当にその目ですべてを目撃していた」に過ぎないのだ!!
サトルの既視感はすべて4歳当時の体験を思い出していただけなのだ。
タマナヒメが死亡するとき、それは別の誰かが死亡したときである。
先代である常盤咲良は焼死した。
そのとき、前後して死亡したのは水野である。
おそらく、先代タマナヒメである常盤咲良の死を目撃したサトルは、彼女から水野報告を渡されたに違いない!!
サトルは彼が持っているであろう水野報告の為に狙われたのだ。
ハルカはある人物に電話を入れると「水野報告とサトルの身柄を取引しよう」と持ちかける。
次にハルカは「水野報告」が眠るであろう場所へ向かう。
其処はサトルが知っていた家。
つまり、過去、まだサトル4歳の頃に母と2人で生活していた家だ。
サトルには押入れの襖に物を隠す癖があった。
「水野報告」も其処に隠されているに違いない。
必死に探すハルカは遂に「水野報告」を発見する。
それはメモリースティックであった。
周囲が何処となく溶けているのは常盤咲良の焼死に関連したからだろう。
「水野報告」を手にハルカは取引場所へ向かう。
其処で待っていたのは、学校を休んでいた級友・リンカ。
「やっぱり、あなたが当代タマナヒメだったのね」
ハルカの言葉に頷く彼女。
思えば、ユウコを紹介された時、タマナヒメである筈のユウコより、リンカは上座に座っていたのだ。
あのとき、気付くべきだった……。
リンカによれば、ユウコはタマナヒメの影武者らしい。
今や巨大な敵となった級友とハルカは対決しなければならない。
「水野報告」と引き換えにサトルを解放するよう求めるハルカ。
そんなハルカにリンカは「水野報告」の中身を見たか確認する。
「見てない」と素直に応じたハルカ。
「見てたら殺さいといけないところだったわ」と何処かほっとした表情のリンカ。
どうにも様子がおかしい。
不思議に思ったハルカは再度、サトルを解放しなければ「水野報告」をこの場で破壊すると脅す。
だが、リンカは寧ろ望むところと言った様子だ。
ワケの分からなくなったハルカは「タマナヒメ」と「水野報告」の関係を尋ねることに。
すると、答えは明快だった。
街の死活問題となれば、権力者に差し出されたのが「タマナヒメ」。
そして、事終われば「タマナヒメ」は自殺して果てた。
つまり、「タマナヒメ」は権力者に性的な接待を行うのだ。
では、「タマナヒメ」が死亡するとき、もう1人が死亡するとはどういうことか。
これは、タマナヒメを求めた権力者もまた利用価値が無くなれば死亡するのだ。
こちらは街の人間による他殺である。
水野の場合も同様であった。
水野に性的接待を行うべく差し出されたのは常盤咲良、当時16歳。
水野はこれに溺れた。
1度だけの約束の筈が、何度も繰り返そうとしたらしい。
故に水野は報橋から投げ落とされ、殺害された。
事はこれで終わらなかった。
水野は水野報告に事もあろうか、常盤咲良との一夜について赤裸々に記載したのだ。
しかも、これを水野の助手である花木に見られてしまった。
欲心を起こした花木は「水野報告」を盾に常盤咲良を脅迫し、その身を凌辱した。
そして、あろうことかその一部始終を映像に保存し、「水野報告」に加えたのだ。
さらに、花木もまた水野と同様に常盤咲良と関係続行を求めた。
此処に常盤咲良は花木の目前で焼身自殺を行うこととなった。
これが先代タマナヒメの死の真相である。
この際、常盤咲良は誰の目にも触れぬようサトルに「水野報告」を預けたのである。
さて、これを知った街の人間は消えた「水野報告」を求め必死になった。
それがあれば街の活性化に繋がるのだ。
だが、サトルは母と共に街を出てしまったのである。
その後、母はハルカの父と再婚したものの、思わぬ事態に発展しこの街に戻って来ざるを得なくなった。
これまでのサトルの予知などは、リンカの仕業であった。
サトルが戻ったことで、再度「水野報告」を入手できるかもと考えたリンカ。
どの程度、サトルの記憶が確かなものか確認すべく、過去と同じ状況を再現しサトルの記憶を確認していたらしい。
今度こそ、全てを知ったハルカはリンカに「水野報告」を渡す。
リンカはそれをニッパーで引き裂いた。
「先代の屈辱を残すワケにはいかない」それが理由だった。
以降のリンカは、ハルカが知るリンカに戻った。
だが、もはやハルカはリンカの笑顔を信用出来なくなっていた。
しかし、何処かでハルカがリンカを信用しているのも事実であった。
花木について尋ねるハルカ。
どうやら、サトルのことを聞きつけ今頃のこのこ街に戻って来たらしい。
佐々木と名乗った男であろうと見当をつけたハルカは、近く報橋に溺死体が浮かぶことを確信するのだった。
それにしても……とハルカは思うのだ。
タマナヒメはあまりに命を粗末にし過ぎるのではないか。
それもこれも伝承通り本当に記憶が受け継がれているのだとしたら……。
リンカは一体、何歳なんだろう―――目の前のリンカを見るハルカの眼に畏怖の色が混じるのだった。
取引を終えたハルカ。
疲れた身体で自宅へ戻ると玄関の前に見覚えのある小さな影が―――サトルである。
泣いていたら、怒ってやろう。
泣いていなければ……褒めてやるべきか。
悩むハルカであった―――『リカーシブル』エンド。
【リカーシブル】
・『リカーシブル リブート』(『Story Seller 2』収録、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『リカーシブル 5章(連載第3回)』(『小説新潮 2012年02月号』掲載、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『リカーシブル 6章(連載第4回)』(『小説新潮 2012年03月号』掲載、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『リカーシブル 7章(連載第5回)』(『小説新潮 2012年04月号』掲載、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『リカーシブル 8章(連載第6回)』(『小説新潮 2012年06月号』掲載、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『リカーシブル 9章(連載第7回)』(『小説新潮 2012年07月号』掲載、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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・「追想五断章」(集英社)ネタバレ書評(レビュー)
・「折れた竜骨」(東京創元社)ネタバレ書評(レビュー)
・オール讀物増刊「オールスイリ」(文藝春秋社刊)を読んで(米澤穂信「軽い雨」&麻耶雄嵩「少年探偵団と神様」ネタバレ書評)
・「満願(Story Seller 3収録)」(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「万灯(小説新潮5月号 Story Seller 2011収録)」(米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『913』(『小説すばる 2012年01月号』掲載、米澤穂信著、集英社刊)ネタバレ書評(レビュー)
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・『一続きの音』(『小説新潮 2012年05月号 Story Seller 2012』掲載、米澤穂信著、新潮社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『下津山縁起』(米澤穂信著、文藝春秋社刊『別冊 文芸春秋 2012年7月号』)ネタバレ書評(レビュー)
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