ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
疑惑の女性の周囲をとりまく、「噂話」の嵐
「あの事件の犯人、隣の課の城野さんらしいよ…」美女OLが惨殺された不可解な事件を巡り、一人の女に疑惑の目が集まった。噂が噂を増幅する。果たして彼女は残忍な魔女なのか、それとも──。
(集英社公式HPより)
<感想>
『告白』などで知られる湊かなえ先生の新刊です。
『小説すばる』で連載されていたものを単行本化したもの。
話の内容自体は至ってシンプル。
テーマは「風評被害」、「無責任な噂話」、「人口に膾炙することの恐ろしさ」か。
それを多角的に文章にしている、他に仕掛けは無い。
それだけに、恐ろしさがストレートに胸に来る。
なかなかのモノと言えると思う。
ただ、単行本のボリュームに比べ、本編は意外と短い。
本作の3分の1ほどが作中に出て来る『週刊太陽』や『毎朝新聞』、『人気コミュニティサイト・マンマロー』の仮想記事で埋まってる。
これは、連載時に連載に合わせて集英社のサイト上で公開されていたもの(現在、閲覧不可となっている)。
仮想記事は雰囲気を盛り上げてくれることに一役買っている。
ただし、「それも含めて、小説である以上、安易な仮想記事に頼らず文章で表現することに意義があるのでは」との向きもありそう。
しかし、挿絵を否定するかと言えばそうではないように、これもまた作品を楽しむ為の1つの機能と見る向きもあろう。
どちらの立場に立つかによって評価がガラリと変わりそうである。
ちなみに、ネタバレあらすじではかなり改変しています。
大筋こそ押さえていますが、別物。
確認するためにも本作をチェック!!
<ネタバレあらすじ>
化粧石鹸「白ゆき」で知られる「株式会社 日の出化粧品」。
其処に勤務する三木典子が殺害された。
彼女は美貌を誇っており、白雪姫にも例えられるほどだったが……。
典子殺害と前後して同僚の城野美姫が「母親の病気」を理由に姿を消していた。
ところが、これが嘘だと判明し美姫に殺害の容疑がかかる。
マスコミは連日、美姫について報道。
「毎朝新聞」や「週刊太陽」は特集記事を組む。
「人気コミュニティサイト・マンマロー」では、自称関係者による無責任な噂話が独り歩きして行く。
美姫についてあらぬ噂や、これまで親しかった人々の彼女を批判するコメントが連日テレビで報道される。
それだけではない。
被害者である典子についても、プライベートが穿り返される。
それは批判や中傷の的となった。
しかし、真犯人は別に居た。
同僚の狩野里沙子だったのである。
里沙子は「白ゆき」を倉庫から盗み出し転売していた。
それを典子に知られたので口封じに殺害したのだ。
美姫は里沙子に唆され、典子が所持する人気グループのコンサートチケット欲しさに彼女に睡眠薬を飲ませた。
チケットを奪うと、典子をその場に放置したのである。
ところが、会場で美姫はエキサイティングするあまり、アイドルに怪我を負わせてしまう。
ファンからの報復を恐れた美姫はそのまま身を隠した。
同じ頃、里沙子は眠っていた典子を殺害していたのである。
事件を知った美姫だが、恐ろしくて今更名乗り出られない。
そうこうしている内に事態は悪化。
最終的に解決するまでに時間が必要となったのである。
こうして、事件は解決した。
美姫に代わり、真犯人として逮捕された里沙子が好奇の的となり、さまざまな情報が流れた。
美姫は、この数日に自身に降りかかったことを思い返す。
里沙子や典子も同じ被害に遭った同志のような気がするのだった―――エンド。
2013年7月15日追記:
『白ゆき姫殺人事件』が映画化されることが判明しました!!
詳細はこちら。
・湊かなえ先生原作『白ゆき姫殺人事件』(集英社刊)が映画化決定とのこと!!
追記終わり
◆関連過去記事
【ネタバレ書評(レビュー)】
・『告白』(湊かなえ著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・コミック版「告白」(湊かなえ原作、木村まるみ画、双葉社刊)ネタバレ批評(レビュー)
・『贖罪』(湊かなえ著、東京創元社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『少女』(湊かなえ著、早川書房刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『境遇』(湊かなえ著、双葉社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『オール・スイリ2012』(文藝春秋社刊)ネタバレ書評(レビュー)
(湊かなえ先生『望郷、夢の国』についてネタバレ書評)
・『長井優介へ』(湊かなえ著、文藝春秋社刊『別冊 文芸春秋 2012年7月号』)ネタバレ書評(レビュー)
【ドラマ】
・ドラマスペシャル 境遇「あの“告白”の湊かなえ初のドラマ書き下ろしミステリーすべては幼児誘拐から始まった!過去に翻弄された女達…35年前の殺人事件に驚愕の謎」(12月3日放送)ネタバレ批評(レビュー)
【その他情報】
・“本の雑誌”こと「ダ・ヴィンチ」にて湊かなえ先生特集が掲載、しかも古屋兎丸先生によるコミック版「贖罪」も!!
・2010年公開ミステリ系映画(「告白」、「悪人」、「インシテミル」)、DVD化続々
・湊かなえ先生『贖罪』がドラマ化!!
・湊かなえ先生原作『二十年後の宿題』(『往復書簡』収録)が映画化!!そこには意外なエピソードが……
【関連する記事】
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