ネタバレあります、注意!!
<あらすじ>
『さよならドビュッシー』の作家が放つ、元裁判官のおばあちゃんと女子大生のミステリー
お手柄続きの葛城刑事。でも実は事件を真相に導くのは、恋人の女子大生と元裁判官の彼女の祖母だった!?異色の探偵コンビ誕生!
警視庁捜査一課の葛城公彦刑事は、警官殺しの容疑がかかる過去の上司の潔白を証明するため、個人的に捜査をするが、行き詰まる。そこで、葛城が頼りにしたのは、名推理で過去に事件解決に貢献した女子大生の高遠寺円。でも、実際に事件の真相に導いていたのは、元裁判官である円の祖母だった!? 異色の探偵コンビが、軽やかに事件を解決。『さよならドビュッシー』『贖罪の奏鳴曲』で、注目の著者による連作短編のライトミステリー。(IY)
(文藝春秋社公式HPより)
<感想>
『さよならドビュッシー』や『連続殺人鬼カエル男』で知られる中山七里先生の連作短編集です。
個人的に『連続殺人鬼カエル男』は名作だと思うので是非。
さて、本作ですが「ミス・マープル」を連想させる安楽椅子探偵・静おばあちゃんが登場。
ここらは目次のタイトルから「ホームズ」を連想させた『要介護探偵の事件簿』と同じ遊び心を感じますね。
ただ、静おばあちゃんの場合は、本家ミス・マープルもびっくりのある秘密が!!
ラストにて明かされたアレには驚かされました。
てっきり、円が二重人格とか、そっちを考えていたので。
各収録作品については、些か小粒なトリックが多い気もしますが、器械トリックが好きな方はなかなかに楽しめると思います。
<ネタバレあらすじ>
最終話『静おばあちゃんの秘密』をネタバレ書評(レビュー)。
独裁国家の元首が訪日した。
経済に行き詰まり、国内資源の貿易に活路を見出す為に販路を求めているらしい。
元首には敵も多く、ファーストレディと親衛隊の精鋭を連れての物々しい来訪となった。
当然、日本側でも厳戒態勢が取られるが……。
ところが、強固な警備の壁は潜り抜けられ、あっさりと宿泊先のホテルで元首が暗殺されてしまう。
発砲音が聞こえた直後に部屋に踏み込んだが、既に射殺された後だったのだ。
しかも、犯人の姿は室内から煙のように消えていた―――監視の目を掻い潜りどうやって?
さらには、関係者には全員にアリバイが存在したのである。
このままでは国際問題に発展しかねない。
この謎に挑むべく葛城が招集される。
もちろん、葛城の背後に居る名探偵をあてにしてのことであることは言うまでもない。
そんな名探偵こそ、法律家の卵であり、葛城の恋人・円とその祖母・静である。
静の閃きが何度となく事件を解決して来たのだ。
今回もまた静の閃きが冴え渡る。
誰も出入りできない密室ならば、そもそも誰も出入りしていないのだ。
つまり、密室になる前に殺害は実行されたに違いない。
犯人の使用したトリックは殺害時刻の誤認であった。
具体的な方法は次の通りである。
事前に、元首をサイレンサー付の銃で射殺。
殺害後、偽の携帯電話を置く。
この携帯の着信に発砲音を設定。
時刻が来れば、携帯を鳴らせば発砲音が聞こえるワケだ。
しかし、中へ飛び込んでも誰も居ない。
密室の出来上がりである。
さらに全員にアリバイがあったことに注目。
そんな都合のいいことがあるだろうか?
つまり、全員が共謀し殺害したのだ。
そして、実行犯は元首の妻であった。
すべては元首が行った粛清への復讐らしい。
元首の妻は元王族。
だが、元首により家族が殺され、自身も無理矢理妻にされてしまっていたのだ。
親衛隊の精鋭も、それぞれが元首に恨みを抱いており、これに協力したのである。
こうして、事件は解決した。
影の功労者である円と静を労うべく、上司である財部と共に円宅を訪れた葛城。
そこでは意外な展開が!!
円により、彼女の両親を轢き逃げした犯人として財部が告発されたのだ。
あくまで否定する財部だったが、静を見た途端に震え上がり罪を認める。
それもその筈、静は幽霊だったのである。
両親を轢き逃げにより失った円を心配した静は、自身が病死した後も現世に留まり彼女を見守り続けていたのだ。
だが、財部を告発し終え、円を託すことが出来る相手―――葛城を見つけたことで満足してこの世を去るのであった。
1人残された円、そんな彼女に葛城がそっと寄り添うのであった―――エンド。
◆「中山七里先生」関連過去記事
・「さよならドビュッシー」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「おやすみラフマニノフ」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・「連続殺人鬼カエル男」(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
・『要介護探偵の事件簿』(中山七里著、宝島社刊)ネタバレ書評(レビュー)
【関連する記事】
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